バナージ・リンクスの受難【完結】 作:PureFighter00
「へぇ……ミネバの家ってこういうのもやってるんだ……」
「伯父さんがMIT卒で電子工学もやってたの!」
アリオ西新井玩具売り場の片隅。2人はガンプラバトルを見ていた。MIT卒の伯父さんは今隣のビルで妹と緊張感溢れる会談してる。
ビルドファイターズ時空の住民はみんなガノタである。その知名度は電気ネズミの数倍、ガンプラ販売数は新約聖書に匹敵し、小学生は「モビルスーツ、言えるかな?」でアホほどあるガンプラの名前を記憶する。正にガンプラ夢の国。バンダイ自らこんな夢想を言い出す辺りに微妙さを感じる筆者であった。
当然バナージもガンプラを嗜むし、ミネバの部屋には素組であるが旧キット「ビグ・ザム」が飾られていた。ドズルと一緒に幼き日のミネバが組んだものだ。程度としては薄いものの、彼らも現実世界ではガノタを名乗れる程度にガンダム世界を熟知している。そしてそれはこの世界では割と普通の範疇に入る。では、このビルドファイターズ時空におけるガンプラ環境とは……
1. 各小学校学区内に一軒程度は個人経営模型店がある。
学区は小学校のナワバリ。他の学区の店に行くのは軍事侵攻並みのプレッシャーがかかる。
2. 模型店が地域モデラーとの交流の場になってる。
高学年のモデラーから技術教授があったり。また、店のショーウィンドウには常連客の作例が飾られている。別に持ち込めば誰でも展示して貰えるのだが、暗黙の了解としてショーウィンドウ展示の「レベルを下げない」程度の完成度が求められる。店のショーウィンドウは地域モデラーの格を示す指標になっているのだ。また、地域限定技法やフィニッシュも存在する。
3. 小学生モデラーが結構上手い。
模型店を中心とした地域への帰属意識が高く、他の地域と争う様に技術向上に努めた結果、小学生から改造や塗装をするものが多い。高年齢層の作品見て「こうするンゴね……」と門前の小僧が習わぬ経を唱えるのだ。
ふーん、と読者諸兄は思うであろうが、これは1980年代初頭のプラモデル界隈の状況そのままである。現実世界ではMSV期を頂点としてZ、ZZ、逆シャアとガンプラ需要が低下し、町の模型店(多くの場合世帯収入は年金や世帯主収入に大きく依存しており、模型店経営はパートの様な補助収入に過ぎない)は激減して行くのだが……1/100 Zガンダムの出来が現在のMG並みに良かったのであろうか……この世界ではガンプラ需要は右肩上がりだった様である。
この様な環境が「都合良く継続した為」、バナージもガンプラはそこそこ組み立てている。もちろん同名の主人公が活躍するガンダムUCにはご執心で、ユニコーンガンダムは綺麗にパールカラー塗装を施して飾ってある。が、ガンプラバトルは「ガンプラが破損する」という難点があり、経済的にそれ程豊かではない彼はガンプラバトルには手を出して居なかった。ぶっちゃけガンプラは覇権コンテンツだが、ガンプラバトルは観戦者が多く参戦者は少ない。ある意味ではプロレスやボクシングの様な状況なのである。
しかしミネバの実家筋、ジオン工業がガンプラバトルに絡んでいるなら話は別だ。多少は遊んでおかねば都合も悪かろう。ギレン社長的には「多角経営の一環」でしかなく、大規模大会向けの業務用筐体(これは最大で4桁万円案件)以外はカネにならん程度の認識なんだが。
バナージも、バトルそのものよりアナ高専の学生的にシステムやプログラムの方に興味がある。プラフスキー粒子関係の制御系は開発主管がヤジマ系に移ってから開示が進みつつあるが、まだブラックボックスも多い。出来るなら破損を仮想的に扱い、参加コストを引き下げられないかと考えていたりする。
それは、バナージが思っているより割と早く実現することになる。
異世界からの技術流入があるんだなぁ。