バナージ・リンクスの受難【完結】 作:PureFighter00
金曜夜というジャストタイミングで起きた「ガンプラバトルにデンドロビウムで参戦して爆破炎上」というニュースは[ガンプラバトルが世界的に大ヒットしている世界]で瞬く間に広まった。その最後の瞬間を捉えた画像は動画サイトにアップされ、瞬く間に数千……翌朝には万を超える再生回数を記録する。
先ず以って「デンドロビウムで高機動機の相手をする」というのが狂気である。実際にはガンベ北ブクロに持ち込まれた段階で「馬鹿な事は止めろ」と複数人から説得があった。問題のファイターは「これが俺のケジメだ」と言い、ファイターの内幾人かは肩を叩き「頑張れよ!」と声援を贈っている。
デンドロビウムが宙を浮いた瞬間には歓声と絶叫が交差した。対戦相手の桃李静香はガンプラに疎い為に「人気なのね」程度であったが、その他のファイターはこれが限定販売商品で入手そのものが困難であり、キット単価で税込3万超え、全塗装やデカールその他の費用や作業難易度、時間……費やした「失われるかもしれない」物の大きさを知っている。そして幾人かは……更に理解していた。デンドロやネオングは独り身ならまだしも、家人と暮らすビルダーには持て余す代物なのだ。何せ置き場がない。巨大過ぎる。
これが姫路城や木造帆船模型サンタ・マリア号であれば世間の理解もあったかも知れない。(ガンプラバトルが世界的に流行しているとは言え)巨大ガンプラを玄関の靴箱の上や居間のサイドボード上に飾るのは憚られた。エヴァンゲリオンが流行ったとしても、家族と同居してるのに綾波の等身大フィギュアを玄関に飾れば妻君や父親に苦言を呈されるのは明らかだろう。しかも0083だ。ガンプラやガンダムが大覇権コンテンツであるこの世界でも、0083は比較的マイナーな部類に入る。マーベルが人気でもウィンターソルジャーやホークアイの一般知名度が高くはないのと同じだ。
恐らくはその置き場と同居家族との問題で、彼はガンプラバトルにデンドロビウムを持ち出したのであろう。同様の問題に直面した事があるファイターはその意を汲んだ。どうせ手放すなら戦って果てる道を選ぶ……判るぞ、と。デンドロビウムに手を出す人間がデンドロビウムしか作って居ないという事はなく、事実彼の部屋にはガラスショーケース2つ分のガンプラが鎮座して居た。その部屋も物心ついた長女へ明け渡す日が近づいている。幸せ時空であるこの世界であるからこそ、ファイターは家族との幸せを選んだ。
当然ネットでは論争が起きた。デンドロ破壊するかと非難する声、デンドロ出すかと呆れる声……デンドロビウムじゃなくとも丹精込めたガンプラを皆ベットしているのだと言う反論……偶々デンドロビウムという分かりやすく極端な例が出たから議論が湧き上がる訳だが、同種の問題は過去にも起きている。ならば8歳児が誕生日に買って貰い父親と組み立てたSDガンダムは破壊したらいかんのかと。非破壊モードではない事を知りつつ機体を乗せた「幼い戦士」に手加減するのは愚弄ではないか?
まだ、キットであれば再生産されるから良いが、フルスクラッチならどうか? それが戦場に出された以上「我々は」なろうのチート勇者ではないのだから、自分のプラモデルを破壊される可能性は常にある……デンドロビウムの組み立てなどとは比較にならない作業工程を要するモデルは実在し得る。それをゲームに出すのは愚かな選択だろうか? 戦いは必ず勝てると決まったものでも、必ず負けるものと決まった物でもない。その不確実性にチャレンジするのがバトルではないのかと。
少々話が前後するが、その翌週金曜日の週刊文春にこのニュースの記事が出た。3万円が爆破炎上する遊びは健全か?という内容の末尾に……そも、ガンプラを簡単に破壊できる力が街中のゲームセンターにあるのは問題ではないかという指摘が出る。保護処置はあるものの、確かにそれは安全面で問題ではある。安全装置が故障して居た場合、容易にそれは人を傷付けるだろう……更にその後真相報道バンキシャ内で、ガンプラバトルフィールド内での攻撃が実際どの程度の破壊力になるかの検証が実施された。
結果、トイ・エアガンの規制値0.98Jを越えていた事が判明してしまう……
法規制されかねんよね、あれ。