バナージ・リンクスの受難【完結】   作:PureFighter00

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後半に昭和歌謡の知識が要求されますのでYouTubeで適宜検索ください。


足立区島根 土曜朝8時

「ねぇパパ、バナージがね……」

 その語り掛けにドズルは慌てて新聞を折りたたみ、ミネバを見る。

「ば……バナージがどうした? 落ち着いて話してみなさいミネバ。怒らないから!」

「何で貴方が怒る話になるの? 落ち着いて」

「いや、あの、ね。金曜日にまた池袋行って、ガンプラバトルしたの、バナージが。そうしたらね……一緒に作ったザク男(MSD ザクII)じゃなくて……バナージが作ったユニコーン使ったの……私、嫌われちゃったのかなぁ……」

「どうしてそう思ったの?」

「だって、ザク男はユニコーンとか壊すのが嫌だから一緒にバトル用に作ったのよ? ……要らなくなっちゃったのかなぁって……」

「ミネバそれは

「いい事、聞きなさいミネバ!」

 島根の魔女、ゼナの声が急変した。思わずドズルも声を(つぐ)む。

「あなただってバナージとデートする時上下シルクのお揃い付けるわよね? 帰って来て下着まで変えて出かけるでしょ?」

「いや待て、それはどういう事だゼナ!」

「お父さんはちょっと黙ってて! これはいい事なの! そんな事が無いからって油断して綿パン履いてたらハマーンみたいにチャンスを逃すわ! そうはならない、だけどちゃんと有事に備えて準備する……これが正しい恋愛よ!」

「え? いや? そうなのか? そんなもんなのか?」

「……なんかそれは判る……」

「いい子ねミネバ。後で草加の丸井でルージュ買ったげる。ただ、まだナチュラルメイクにしておきなさい」

「えーっ! いやまだ……」

「貴方だって初デートの時新品の革靴ピッカピカにして履いて来てくれたじゃない?! 真剣なんだなって私あれでキュンと来たわよ! 真剣に物事に当たるなら、それに合わせたフォーマルがあるの!」

「……それが、ザク男じゃなかったのね……」

「安心しなさい、ミネバ。あの子は貴方を決して軽く見てる訳じゃないわ。必ず彼はそのユニコーンより立派にザク男を仕上げる……でも今彼が出せるのがユニコーンだったのよ」

「そういう事なら判るな。男としては勝負に際して命を預けるに足る武器を使うもんだ。間に合わせや使い捨てではない、自分が信頼できるツールだ。本気というのは外見に出る……真剣勝負、負けられない戦いだったのだな……」

 真剣さはそこに出る。真摯であるという事はある種「尽くす事」だ。出し惜しみや代替品ではなくその時出せるベストを出す。その意味では秘蔵のレースをあしらったシルクや、自分が手がけた最高のガンプラを出す……形は違えど同じ事。そういう話ならドズルにも理解はできる……出来たら自衛隊の様に備えるだけでイザという時が来なければ……と、土曜日朝8時から涙腺が緩むドズルであった。

 

【同時刻、ギレン邸】

「ギレンですが……あーあーあー、ヤジマの高田さん! どうされました今日は土曜日ですよ? 労働基準法は最低限の取り決めで……は? システムのバージョンアップしたいからバトル筐体の納入を遅らせたい? もうライン動いてるんで……え? 法規制? 何でまた?!」

 

【同日午後、ドズル邸キッチン】

 クッキーを焼きましょうという提案で、ミネバとゼナは生地を練っている。ドズルはギレンに呼び出されてギレン邸に向かった。

「そう言えばねー、ゲームセンターに凄い女の人居たわー。(コネ混ぜ) ハマーンにバトルで勝っちゃうんだけど、なんか凄いハマーンに嫉妬してるのー(コネ混ぜ)」

「どうせまたシャアさんと惚気てたんでしょー? そういうとこ甘いのよねー。妻としての威厳って言うかなぁ(計りで何か計量中)」

「何があったんだろ……あんなに荒れて」

「Hey Siri! Sugar ウエディングベル 検索」

「ピピン……こちらが見つかりました」

 

 知らない人はYouTubeで探してみよう!

 

「……うっわー……キッツー……(ドン引き)」

「いいミネバ? 結婚って貴方の一番好きな人に貴方が一番好かれないと出来ないのよ。これは悲しい負け犬(ルーザー)の歌……」

「特に2番辛くない? なんでこの男の人わざわざ元カノ呼んだのかしら?」

「吹っ切って貰うためよ(迫真)」

「え?」

「キチンと負けた、終わったと思わないとこうなるわ……Hey Siri! 都はるみ 北の宿から 検索!」

 

 やはり知らない人は探して聞いてみよう!

 

「……何で北の宿なの?」

「南に行ったらカップル見るからよ。失恋旅行は北。秋田とかね。北海道やスキー場はダメ。荒れる日本海や寒さに耐える渡鳥を見て涙するの」

「なんで寒さを堪えてるの? お宿なんだし暖房……」

「悲しみに浸っているからよ」

「……な、なんで着てもらえないセーターを……(ガクブル)」

「勝負ついたのに、まだワンチャンあると思っているのよ……先のウエディングベルの男はかなり根性悪そうだけど、元カノがこうならない様に敢えてああしたのかもね……」

 

 その女、『都はるみ』ね……島根の魔女の千里眼はこの様に見る。しかし……傷心旅行でゲーセン? 妙ね……




なお、一度ウチの老母が北国に一人旅しに行ったら自殺志望者と勘違いされて宿の女将にそらーまー親身にされたと言う笑えない話が……ただ観光に行っただけなんだが。
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