バナージ・リンクスの受難【完結】   作:PureFighter00

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 某所見て強化フレーム周りの話を少し変えた。


土曜日昼 練馬区江古田の外れ

【永野電気 工房】

「ヤバかったかな……」

「微妙(真顔)」

 いまさら二郎で桃李がデンドロビウム爆散事件を気にして来た。ぶっちゃけその話を聴いた時に永野玄一(渦さん)はフリーズした……いやまぁ相手がその気なら戦うしか無いが、ステイメン引き摺り出して倒すとか、なんかこう手心と言うか……でシグルイの牛股師範の顔をせざるを得なかった。

 

 ファイターとしては、手加減するべきでは無いだろう。高額キットだから攻撃できないなんて話になったらデンドロビウムやハミングバードやネオングがガンプラバトルに続々登場してウルトラファイトの世界になってしまうし、モデルの背後にある苦労だのコストだの思いだの気にしてたらガンプラバトルは出来ない。敵機体を破壊するゲームなのだから、破壊できない・されたく無い機体を出すべきでは無い。互いにかけがえの無い自分のガンプラ出すのが「基本的な」バトルの礼儀だろう。敢えてそれを踏んづけるパシケファロのコンセプトや設計しといて言うのもナンであるが。

 ただ、モデラーやビルダーとしてはやはり心が痛む。痛むから破壊し過ぎない様にと「配慮」をするのだが、これは実力差と言うか戦力差が無いと無理である。今の桃李にそれを望むのは高望みだろう。

 が、しかし……人が皆同じ様に考えるとは思えない。少なくとも桃李はネット上で決して少なく無い数のファイターから恨みを買っただろう。対策が必要だ。本格的に攻略が始まる前に手を打たねばならない。

 

 前々から考えていたプランを試すべきかもしれない。

 モノタロウで発注しておいたプラスチック板を作業机の上で小分けする。パシケファロのボディは基礎構造の上にボディラインを形成するインナーアーマーを接続し、さらに外部アーマーをマウントする形を取っている。装甲の平滑度をバトルシステムのスキャナーが検査して、その平滑度により装甲強化係数が出る仕組みを逆手に取った。外部アーマーは通常のガンプラと異なり内側ダボ穴が全く無い。つまりヒケがほぼ発生しないのである。これにより組み立てだけで全身磨いて歪みを取ったガンプラと同等の装甲強度が取れる。

 が、内部フレームの剛性はダボ穴などの存在により多少落ちるし、今後ZZのハイメガ並みの攻撃力でパシケファロの防御力を抜こうとするもの、近接攻撃や関節技を仕掛ける敵も出てくるだろう……

「……何してんの?」

「テストフレームを組む……エンプラ(エンジニアリング・プラスチック)使ってな」

 例えばエアコンの稼働部に仕込まれたギアであるとか、昔懐かしのチョロQのエンジンに用いられている素材だ。耐摩耗性や強度が高く、家電や車の機構部品や力の掛かる箇所に使われている。

 適度な大きさに切削した板をレーザーカッターにセットして切り出す。データはパシケファロ設計時に「2次強化プラン」として作成していたが、エルドリウム鏡砂式射出成形機にはエンプラ用データがなく……それにペレットが入手できなかったのだ。バンダ○ではなくタカ○だったらチョロQエンジンで利用していたからノウハウもあったのだろうが……勿論その様な生産上のノウハウがバンダイに流れている訳はない。本当に細かい部分に社外秘ノウハウは存在する。

 

「さてと……イケるかな?」

 ハンダゴテをセットして切り出したパーツを前に深呼吸。以前プラモのランナーをコテで溶かして整形する変態テクの使い手を見かけた事はあるが、プラスチックを溶着するのは永野玄一(渦さん)も初めてだ。エンプラは一般的に化学物質に対して安定で、それ故にシンナー等による融着が出来ない。通常プラより高い融解温度(250度くらい?)で溶接するしかないのだ。有害ガスを予期して塗装ブースで作業開始。端をチョン付けしてエンプラ破片をコテに乗せつつ融着させる。ハンダ付けや溶接と要領自体は変わらない。とりあえず今回は見てくれ別にして関節が動くだけでいい。特にパシケファロの背骨や腹回りは通常のPS素材による微細パーツ組み合わせなので剛性が足りず、腹筋その他のインナーマッスルに相当する3本の軟質プラスチック製丸棒の「しなやかさ」で衝撃吸収する構造になっている。これが枷になり(まだ誰も気付いていないのだが!) 背骨に当たる背中が弱点なのだ。今は誰も気付かなくとも、修理を衆目に晒して内部構造を見せた以上、いずれ誰かが気付くだろう。敬愛するヤマトの真田さんのように「こんなこともあろうかと」を怠ってはならない。技術関係者が一度は言いたいセリフの筆頭だ。

 

 ヘッドマウント拡大鏡(3.5倍)と老眼鏡を外して汗を拭き、USBマイクロファイバースコープで接合部の状態をモニターに映し出す。今は老眼が進んでも目視確認し易い環境が整っていて助かる。

 ノギスを取り出し外寸確認。膝から脛のフレームで僅かに厚みが……歪んだか(0.1mm以下、多分0.03ぐらい) やはりサボらずバイス(万力)固定するべきだったな。無駄に性能が良いガンプラバトルシステムの目は0.001mmぐらいまでは見分けてしまう。誰だスキャン精度をここまで上げたやつぁ!




 実は最初期案では背骨フレームの中に低粘度スライムみたいの入れて椎間板を模する予定だった。あと腹部のポリカーボネート複合装甲化。単純な骨格強化案になってもーた。(調べた内容が勿体ないので)

あと、永野電気には3Dプリンタは無い。あれフィラメントタイプは剥離し易いし、耐震しないと揺れで出力歪むんや……
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