バナージ・リンクスの受難【完結】 作:PureFighter00
【撮影交渉中】
「そこをなんとかー。撮らせてくださいよー」
「絶対ダメだね。君ら絶対ガンプラバトル悪者にするだろうが」
「弊社的にも許可できません。お客様のプライバシーというものがある」
「モザイク掛けますから!」
「顔にかけてもガンプラ映したら誰か分かるんでさぁ」
「弊社IPなので」
かつてのバンダ○ならガンダム作品のスポンサードにより特定のTV局へは圧力をかける事が出来たのだが、バンダイチャネルやYouTubeによる配信形式を選択した事で影響力は低下している。バ○スピの蔵前もこの辺りで苦慮している。最も、トヨ○の社長が決断した様に「金出してても難癖付けて文句を言う」のだから、トヨタ○ムズなどオウンメディアに移行するのも無理はない。
「入って撮影したら警察呼ぶからな。不法侵入だぞ」
「外では好きにやらせてもらいますよ!」
「地回りに精々気を付けな」
「参ったな、悪目立ちしちまった……」
「デンドロビウムを出して来るとは……」
「あんたらも冗談でオモチャ作るなや」
「アレはガチです。冗談では無くガチで作りました! 嗚呼、折角残業までしたのにあの騒ぎで桃李さんは逃すし……踏んだり蹴ったりだ」
「静香ちゃんに何やらせるつもりだったんだ?」
「あの機体、ウチで出しませんかと。素組でしょ? あれ」
「アレを作ったのは静香ちゃんじゃねーぞ、いや組み立てたのは彼女だろうが……」
「どういう事です?」
基本構想は永野玄一がまだ一介のガンプラファイターだった時代まで遡る。丁度ガンプラの作り込みするより素組で出来の良いキットを使ってバトルをするのが流行り始めた時代だ。
「伯父様がファイターだったのか……」
「ジムを使うと一騎当千、ジムクレイジーとか名乗ってたな。奴は元々アマチュアモデラーでガンプラ粘流って流派の創設者よ。で、モデラーではなくビルダーばかりになる未来を憂いてた」
「あー、暗黒期を知ってるのか?」
「何だそれ?」
「ウチの一部の人間がですね、ガンプラ改造とか『出来が悪い』ってのを言わせなかったことがあるんですよ。それで改造とか改修が下火になった時期があるんです」
筆者注
一応「一説によると」と注意しておく。
「出来悪いもんの批判潰しても出来が良くなるわきゃ無いだろうに」
「言いたかないですけどね、意外と分かんないもんなんですよ、一般消費者って。周りのみんなが褒めたら自分で何か感じても引っ込めちゃうんです」
「まぁええわ。それで奴が考えたショック療法ってのが、ビルダー向けに完璧なガンプラバトル専用機体を作って皆が同じ機体使う様になったら……って発想でな……」
店長がゴソゴソと背後を漁る。
「その規格の最初のモデルがこれよ。一台貰ったわ、パシケファロ・ソード」
「え? なんでお持ちに?」
「予備パーツ別で20機分ぐらい作ったらしい」
「20機分?! これ普通のキット……じゃない!」
「パーツ番号振ってないだろ。量産普及用はジムに似たデザインにするそうだ」
「ジム(びっくり)」
「ジム(諦) 劇中では知らんがガンプラバトルではジムが高性能量産機としてガンダムやジオングボコる世界にするんだと」
「キ○ガイですか」
「GM Crazyだからな。逆にそうなればジムに負けたくないと奮起するモデラーが出るんじゃないかって言ってた」
「大多数の人はジムを使い、限られたモデラーがジムを越える高性能機をワンオフで作って戦果をあげる、か……」
「ガンダムっぽいだろ? 少なくとも今のガンダムだらけの世界より」
「でもそうしたらどうしてソードなんて異物を? これ確かウケ無かった奴ですよねぇ?」
「そらぁ分からん。当人に聞いてみたらいい。あいつカスタム高性能機好きじゃなかった筈なんだが……」
「すいませーん。社長ちょっと……撮影禁止すっごい不評っス……」
先のデンドロビウム破壊動画の拡散が再燃する危険を避けるため、店内撮影禁止の張り紙を出したのだがファイター達からは大不評だった。可能な限りフィールドだけ撮影して人の顔は映さない、対戦者の同意なく動画をアップしないなどの不文律を守っていれば、これまではプレイ動画の撮影は自由だった。友人達と連れ立って来て互いにプレイの撮影をしたり、中には撮影がめちゃくちゃ上手い常連や動画編集に長けた常連もいる。それは彼らの誇らしい戦績であったし、時には愛機との別れの画像にもなる……
ガンプラバトルでの敗者の挙動はまちまちだ。ファイター傾向が強いものは墓を建てる。一度破損した機体は破損箇所の強度が落ちて壊れやすくなってしまうからだ。最近は流し込み系接着剤の発達もあり強度はかなり回復する様にはなったが、やはり破損前と同じにはならない。破損箇所を修復できても多くの場合それはファイト用の機体では無く棚やガラスケースの中で展示専用機になるのだ。彼が力強く動き出す日はもう、ない。
破損箇所が少なければパーツを請求したりキットを買い直して修復する事もある。ただ、一度負けた以上何らかの改修が追加される事が多く、全く同じ機体を組み上げるファイターは少ない。パシケファロの様に破損前提で復旧に注力した機体はほぼ無いと言って良い。
件のデンドロビウムも修理を試みれば……と思ったファイターは多いだろうが、あのサイズの巨大ガンプラはやはり荷重の掛かる箇所から破損し、そこを接着修理しても強度不足で「保たない」もしディスプレイに足る強度を確保できたとしても強力な加速をして旋回したらそれだけで破損してしまう……デンドロビウムはプラスチックだけで作るモデルの範疇を超えてしまっている。だから躯体補強用の鉄板が同梱されたのだ。
ガンプラ自体が元々バトルさせる様に製品化されたものではない。ミニ四駆やラジコンの様に「動かして遊ぶ」玩具は衝撃に対応出来る構造や素材を用いるが、その様な素材はプラモデルとしての加工切削性が悪くなる。タミヤから見れば動かしぶつけ合うオモチャにPSの軸を用いるなど狂気の沙汰に見えるだろう。タミヤならボディはポリカーボネート(弾性が大きく破損し難い)フレームは最低でもABS、軸は金属素材を用いる。容易に破損させない為だ。
しかし……破損し難くなればガンプラバトルでは決着がつき難くなってしまう。相手の行動不能が勝利条件になっている以上避けられない事態だ。ガンプラバトルでは非破壊モードが実装されているが、このモードだと泥試合になりやすい……目に見える決着が出ないからだ。
考えれば考えるほど「ガンプラバトル専用機」の開発は不可避で、レギュレーションを厳格化したミニ四駆の様な世界に移行せざるを得ない。だが、それは本当に「たった一つの冴えたやり方」なのだろうか……元錦糸町のガンプラバトルファイターである蔵前は悩んでいる。
仕方ない、エピソード挿入するザマス……偶にはプロット見直しておかないと大惨事が起きるダスなぁ……