バナージ・リンクスの受難【完結】   作:PureFighter00

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さて、長文行くで!


出演依頼

【ジオン工業 会議室】

「お断りですよ、莫迦莫迦しい」

「そこを何とか! もうギレンさんしか頼れんのです!」

 

 かれこれもう30分も押し問答が続いている。ギレンの対面にいるのはヤジマ商事のガンプラバトル部署(企画営業部)部長だ。話の要点としてはガンプラバトル叩き報道の絡みで「実際にゲームメーカー呼んで話を聞こう」と言う物があり、その叩かれ役として呼ばれた部長が代役としてギレンの登板をお願いしていると、そんな話だ。

 ギレンとしては迷惑極まりない話である。突然納期ずらせだの「ゲーム機のキッティング」やってるだけのジオ工にメディア対策させるだの「頭大丈夫か?」と言う話である。ガンプラバトルが世界的に流行っているとは言え、ヤジマ商事との取引金額は年間で5%程度しかない。リスクヘッジの多角的経営の一環で手を出したが……失敗だったなと今後悔の真っ最中。

「御社にもいらっしゃるでしょう? ものづくりの現場なんですから熱いパッション抱えてる人間はいる筈ですよ、何で結婚式の宴会部長如きに社運を……」

「お恥ずかしい話ですが、成果主義……」

「あ、もう結構です。そこは分かりました」

 IQ240は伊達では無い。成果主義だけで顛末は分かる。F士通パターンだろう。アメリカの真似して皆ハマる奴だ。KPIやら持ち込んで慣れぬ人事考査をした結果、皆KPIに出ない仕事を嫌がり協調性が失われてドボン。その癖考査サイドは旧来の「全員野球」をやりたがり、散々プロジェクトを手伝ったのに「考査対象では無い」と裏切られる。結果、フォローや取りまとめの上手い人間は排除され、手柄を上手く取りに行く者だけが社に残る……

 合わないのである。

 日本の会社という組織の運営に心底噛み合わないやり方なのだ。やるなら徹底的にアメリカ式にして管理職総入れ替えした上で「再構築」……つまり本義的なrestructuringしなければならない話を形だけ真似したなと。アメリカ留学時にインターンとして国際有名企業に出入りしたこともあるギレンは随分昔から気付いていたが、案外大手でもこの問題点に気付かない。溺れる者は藁をも掴むの格言通り、低迷し混乱した企業は碌でも無い事に手を出す。令和のこの世でまだM資金詐欺があると言うのがその証左だ(本当。スパムでガチに来る)

 

 つまり、私は藁か……敢えて言おう、藁であると!

 

 可笑しくなってきた。なんでこんなボンクラ助けなければいかんのだ。愚民は滅びれば良いでは無いか!(選民思想)

 

 部長はすがる様な眼でこちらを窺っている。悲痛な顔だ。その薄くて安い頭を上手く下げれば事も上手く行くだろうにな。頭の中身どころか人体器官としての頭も使えぬと来た!

 

「……で、それに伴う我が社のメリットは有るのですかな?」

 

 何故言葉に詰まるのか。まさか本当に何も考えずに頭だけ下げに来たのか? ドズルやガルマですらそれ考えるぞ?

「へ……弊社との取引や八島ホールディングスの……」

「セシリアくーん! 木馬組のブライト氏の奥方に電話かけてもらえるかー!」

「はい。承知しました」

 

(? ブライト……? 誰だそれ?)

 

 ブライト夫妻とはカイやアムロの結婚式で親交を温めているこの世界のギレンであった……

「いやー、ご無沙汰して申し訳ありませんなぁ! いや何、今私の眼前で八島ホールディングスの名前出した者がおりまして……」

 ミライ・ノア。旧姓ヤシマ。八島ホールディングス社長の娘であった……この世界のギレンの手はかなり長い。この件がきっかけで後に名も無き部長は降格される事になる。

「な……何を……」

 ギレンの不可解な行動に部長の顔が曇る。ギレンは選民思想の持ち主とされる事が多いが、実際には無能……それも自分が無能であると気付きもしない無能を嫌悪しているだけである。1stの段階でシャリア・ブルやララァなどのニュータイプを手にしながら「そんなもんで世界が変わるなら苦労せんわ!」とかなり先まで予見していた先見性は作中人物随一と言えるだろう。

 貴様のハラは読めている。この藁を代役として自分は傍観。上手くいけば自分の手柄と吹聴し、しくじれば下請けの会社が悪いと逃げを打つつもりだろう? 後でもう一つダメ押しをするが、お前の運命などたった今断ち切ってくれたわ! さて……糠喜びさせてやろう……

 

「仕方がありませんな、どうやら私が出るしか無さそうだ……これは貸しですよ、部長。貴方へではなくヤジマ商事への、ね」

 分かり易く念押しする。第一秘書セシリアは心得た面持ちで会議内容を打ち込む。

「で、パネリストや司会はどなたかな? 想定問答を考えねばならん……あ、聞いていらっしゃらないでしょうから企画持ってきたディレクターの名前か名刺を彼女に」

 「どうせ無能な君のことだから」という嘲りの視線に気付かず、部長は安い頭をぺこぺこと下げている。

 

「今時サヨクのアジ演説でもあるまいに……」

 この男、案外激情家であったりする。このカスのせいで恐らく多くの社員が泣いているのだろうな、と。あくまで他社の社員であるが、左翼運動にも片足を突っ込まざるを得なかったギレンは義憤を感じている。手の届く範囲から……せめてそこまでは何とかしたい。

 

 

 ふと外を見れば入道雲が立ち上がっていた。夏の訪れも近い。




近々ギレンのキレ演説が来るヨ!
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