バナージ・リンクスの受難【完結】 作:PureFighter00
桃李は作戦成功の意味で使ってるが。
【池袋北口ラブホテル内】
一時の激情の後(R-15相当表現)、桃李と紀伊は備え付けのバスローブを着て互いの事を話し合っていた。紀伊が作って居た没入型VRガンプラバトルシステムGBNが無事完成した事、エルドラから来た電磁データ異星人がそこにアクセスして来てエルダイバーなるバグ発生源になったこと、それをサルベージして現実世界のフィギュアにダウンロード、動くフィギュアとして過ごしている事……
最初こそふんふんと聞いていた紀伊だが、途中から首を傾げる仕草が増えて来た。うん、エルドリアンには会ったしエルドリアンをGBNに招ける様にはした……不完全なシステム残して勝手に?元の世界に戻ってしまってすまんなと。そこまでは分かる。紀伊もその想定で動いていた。だがその先は開発者の自分も予期せぬ話だ。それを現実世界のフィギュアにダウンロードしたらフィギュアが動いた? なんじゃそれ! 激しくGBNの現状を見てみたいし、エルドリアンをどうこうする話を計画した人々にも会ってみたい。一言「馬鹿なんじゃ無いの?」と声を掛けてガッチリ握手をしたい。
更に……と桃李がGBNとGPDの連携や官民一体プロジェクトの話を始めようとした所で紀伊は話を遮った。
「正直に言うと、今すぐにでも行きたい。そんな面白い事になってるなら僕も自分の目で確かめたい……が、幾つか問題があるんだ」
先ずは戸籍や身分証明の問題。所謂異世界転移なのだから転移先では世界中に自分の身を証立てるデータが無い。設定ガバガバのナーロッパならいざ知らず、制度的には現代日本とほぼ同じこちらやあちらでは、長く住めば住むほどこの点が問題になる。銀行口座も作れなければ家も借りる事が出来ない。勿論桃李が望む結婚もだ。紀伊は彼方の世界で携帯電話すら所持出来なかった。
次に、実は今この世界のガンプラバトルシステムの改修をしろと言う話が出ている。アホほど電話が来て無視を決め込んでいるが、最終的にGBNとほぼ同じものを作る事が出来、(バグはともかく)GBNの様に盛り上がるならば……やはり自分が手掛けたサービスだから救ってやりたい。多分地獄の様な案件だし電話でのテンパり具合から地獄を見るだろう……でも、僕が最終的に目指したGBNが桃李達の手で完成してるなら、プログラムのマイナーチェンジでGPDやGBNを移植できないだろうか? それが出来たらプラモデルが壊れる壊れないの話はカタが付く……
「え? 紀伊さん今ガンプラバトルシステムに関わって無いの?」
「GPDとGBNの基礎開発してた半年間、僕はこの世界の勤務先を半年無断欠勤してるんだよね……」
「無断欠勤半年……」
流石に無理であろう。ブラック勤務が常態化した今この世界では、社員が失踪しても「バックれやがったな」で済まされ警察に失踪しただの警察に捜査を依頼するだのの手続きは取らない。探すとしても家族の方だろうが、半年程度では別居してたら気付かない可能性が高い。現代社会でバックれたと見做されている人間の何割かは、実際異世界転移しているのかもしれない……多分チート無しでゴブリンやオークになぶり殺されているのであろう。
「……多分、開発側も今回の話でシステムのフレームから組み直す話になってお手上げなんだと思う。クビにされた僕にまで鬼電かける程だから本当に「できる奴」が居ないんだろうね……」
「それ、どれくらい掛かりそう?」
「多分プランニングすら出来てないと思う。何をどうするかって要件定義はほぼ僕一人でまとめたから……プログラム自体は彼方で書いた僕のコード使わせて貰えるなら割と早く終わると思うけど、そこに上が納得するかどうか……」
到着した出前にしては豪華なレバニラ定食とチャーハンを2人は仲良くシェアしながら食べた。食べながら桃李はこの世界のガンプラバトルシステムの事をちょっとだけ考えてみた。GBNとは違うけど、GBNとはまた別の魅力を持った紀伊の
渦さんこと永野玄一は何やら面倒ごとを押し付けられる予感に身震いした。危険察知は生物が過酷な世界で生き残る為に発達させて来た重要な感覚である……こう言う時の勘は当たるのだ! 悔しい程に!
尚、読者も紀伊も忘れているのだが……リパークに停めて10分300円の費用を請求され続けた彼のバイクは紀伊の生活を破綻させるに足る駐車料金を積み上げている。今最も重大な危機に紀伊も桃李も気付かずにいた。紀伊の危険察知能力は残念な事に、低い。
この時点で駐車料金は7000円超えている。