バナージ・リンクスの受難【完結】   作:PureFighter00

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(きた)るべき世界と読む。H.G.ウェルズ作品より題名拝借。


The Shape of Things to Come

【ヤジマ商事会議室】

 永野の持ち込んだシェルタイプのモバイルノートに繋がれた超単焦点プロジェクタから光が投影される。簡単に画像のキャリブレーションを済ませて動画フォルダを開き、素材集の中の一つのフォルダを見せる。

「このご時世です。合成を疑われるでしょうからプロジェクトの概要説明動画よりこちらの方が宜しいかと」

 無造作にファイルを幾つか再生して行く。

 

【お台場】

 お台場ガンダムを映し、その前を歩くスコンブ、フェリクス、桃の3人

「スコンブが女子高生だったとは……」

「桃さんもダイバーは男塾してるのにリアルはナヨってますなー」

「ボイスチェンジャーやめてよ、スゲェ違和感ある」

「ミヤコちゃんだから都昆布でスコンブか……」

「よし今日も頑張るぞ(棒)」

「……ぷっ」

 笑い出す3人。笑うなボケーと永野の声。

 

「……何ですか、これ?」

「まぁまぁ」

 

【お台場ガンダムベース傍GBNスペース】

 スコンブ、フェリクス、桃の3名が時間差で順にシートに着き一斉にVRゴーグルを装着。ガンプラをセットしてダイブ。

「チーっす、陸さん」

「今日何やりますー?」

「新作持って来ましたー」

 

「ガンプラをスキャンして何したんですか?」

「これを別角度で撮影したのがこれです」

 

【GBN内ログインロビー】

 舐めるように近未来的なデザインのロビー全景を撮影後、歩いてこちらに向かってくるダイバー姿のスコンブ(細マッチョオールバック。いわゆるラノベの軽装戦士っぽいスタイル)、フェリクス(如何にもメイスが似合いそうな重戦士スタイル)、桃(下駄履き学ラン、上半身はTシャツ無しのチョーランで、いわゆる男塾スタイル)を写す。

「チーっす、陸さん」

「今日何やりますー?」

「新作持って来ましたー」

 

「……ぼっ……没入型VR? こんなリアルな?」

「まだ驚くのは早いですなぁ」

 

【フォース「Voltex Blasters」ネスト・ネオファリア】

「これ見てー!」

 フェリクスが虚空に手をかざすとデータ入力用ホログラムキーボードやホロ・スクリーンが展開。ぺっぺっぺーと選択すると先程お台場でリアルなフェリクスがセットしたガンプラがフォースネストのMSハンガーに呼び出される。

 

【挿絵表示】

 

「おー!」

「フェリクスらしい! パジムか!」

「オレンジ微妙にムラになってるねー……筆塗りかー」

「テスト機だし、核融合エンジンの冷却間に合わなくて焼けた風味ー。渦さんレシピパクってスタイル直したー」

「そんな機体でテストしてえーんか(笑)」

「今日これで行きまーす」

 

「がっ……ガンプラが巨大化した?!」

「VRですからな。スキャンデータ144倍に引き伸ばしたら実機サイズですがな。その分粗が目立つので塗装や仕上げは頑張らないといけませんなぁ」

「144倍であの精度? いやモデルではなくスキャナーですが、あれ程?!」

「こちらのガンプラバトルシステムの2倍程度ですよ。技術的にはさほど難しい物ではないはずです。システムリリースから結構経ってますし、逆に今は一部高精度スキャナーの解像度をシステムに合わせて下げてますからね」

「何なんですか! どう見てもあれはお台場だし、彼ら普通に日本人の中高生じゃないですか! あんなシステム見たことが無い! こんなものが実在したら……」

「部長、落ち着いて。ゆっくり一つづつ考えていきましょう。確かに見た事ないシステムですね。あんな没入型VRは今「この世界」にはありません。だが写っている……普通に考えればCGや合成です。ハリウッドならこれぐらい朝飯前でしょう……実際「あちらの方」向けに編集したデータがあるんですが……」

 

[内部資料]

[外部流出禁止!]

[協力 Voltex Blasters]

 

タイトルが浮かび上がる。

[The Shape of Things to Come

beyond the GBN ]

 

 

「砲撃陣地形成を急げ!」

 ガキョンガキョンと集まるフルアーマージムが整列して砲を構える。

「いっけぇ!」

 ジャイアントガトリングを構えたフルアーマージムに乗る桃が周囲を薙ぎ払うとNPDリーオーが多数爆散する。

 

[ネットでの戦いが今!]

[衝撃の進化を遂げる!]

 

[ラボ映像]

「GPDリンク完了。EL砂散布!」

 噴き出した粉体が不自然に集まり出し人型を形成する。先のフルアーマージムだ。爆破破損を逆回しした様に微細粉塵が集まり1/144スケールのガンプラとなり、銀一色だったモデルに色が付く。

「行くぞ陸さん!」

「来い! 海!」

 戦いを始める2機のガンプラ。カットが変わりGBN上での戦闘シーン。2機はGBNとGPDで同じ戦闘をしている。GBNで海さんが陸さんの肩アーマーを破壊するとGPD上の機体も破損する。そしてバトル終了後にGPDシステムの脇にある超小型射出成形機が唸り出す。

[破損箇所 4 バトルランクCの為補修パーツを8つまで出力できます]

 Allを選択。射出成形機が多色成形で4つのパーツを一つのランナーに配置して出力した。

 

「…………」

「これだと『こちらの方には』CG合成に見えてしまいますなぁ。だからメイキングというか画像素材お見せしたんですが、本来これを見る方々にはそんな配慮は不要なんです」

「あちら、こちらと仰っていらっしゃいますが……」

「そう、お気付きですよね。ここでは無い別の日本があり、そこではこんなシステムが実在して居て更に進化をしようとしている……まだNDA抵触する部分はお見せしてないのですが、これだけで部長さんならお気付きの筈だ……

 こんなものが当たり前に実在してサービス提供している世界がある」

「信じられません……まるでマンガだ」

「そしてそのシステムは『あちらの世界』に迷い込んだ紀伊が構築したものであり、その更なる飛躍に紀伊が必要だと申し上げたら? 彼の半年の失踪……それは『あちらの世界』に迷い込んでいた期間だとしたら? マンガですよねぇ」

「こ……これがNDAに抵触しないとしたら、我々はこれを真似したり出来ると? いや、そもそも今の段階ではこんなマンガを信じる奴は居ないか……」

「アルゼンチンの次はパプアニューギニアですかねぇ? 誰も信じないでしょうな」

「この先に紀伊が必要なプロジェクトがあると、官民巻き込んだ……」

「マンガですな。マンガの世界は如何ですか?

……一応あちらの世界ではネットワーク対応型がメインで、実機を動かす方は下火になってます。NDAに当たるのはこちらの下火になったゲーム筐体の活用です」

 

 パチリとプロジェクターの電気を落とす。

「さぁ、質問です。まだ技術的に確約は出来ませんが、あのネットワーク対応VRシステムを最終目標とし、5ヶ年計画ぐらいで現行のガンプラバトルシステムの更新をして行くというのは如何ですか? モノは既にあるのでインフラさえ整えば展開自体は容易です。5年はむしろインフラ整備期間ですなぁ。それに伴い様々な新商品や新技術が必要になりますが、ヤジマ商事だけではなく八島グループ全体でこれを進めていく事は可能ですか?」

「し……市場規模は……」

「軽く4桁億円サイズでしょうね。ゲーム単体ではなく周辺技術含めたら軽くこれぐらいは行く。ゲーム単体でも単年純利益20億円規模ですよ。あちら確か1ドル80円台まで戻してた筈です。ゲームだけではありませんが、日本経済起爆のトリガーにはなってましたな。

……部長、どうです? 来るべき未来はご希望に沿えますか?」

「私に判断しろと?(滝汗)」

「決済はどこになるか存じませんが、それを上層部に伝えて計画を推進するのは貴方になるでしょう……嫌なら結構」

「いや、待ってくれ! ちょっと、ちょっとだけ!」

「3日で行けますか?」

「分かった。善処する。これを信じさせるデータを作らにゃならん!」

「ではこちらを」

 USBメモリを机に置いて部長に微笑む。

「手癖の悪い奴がちょっと仕込みをしてますが、先の動画素材の内公開できる範囲のものが入ってます。最初に差し込んだPC以外に差し込んだりデータコピーすると、ちょっと面倒な事になるらしいので宜しく。あちらには良い腕したハッカーがおりまして……信じるも信じないもご自由ですが、その道に於いては紀伊よりも上手かと存じます」

「一体どんな……」

「私も聞いておりませんが、奴なら感染したPC全部が踊り出してリオのカーニバル状態になるかもしれません。私なら言い付けを守ります」

 

 永野は柔和に微笑みかけた。




ブレイクデカール作る様な奴のウィルス入りはご勘弁やで。
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