バナージ・リンクスの受難【完結】   作:PureFighter00

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ガンベは特別休館です。


お披露目

【ガンベ北ブクロ 平日11時】

 ゲームセンターには珍しい、カチっとしたスーツ姿の人々が次々と店内に消えて行く。朝方まで降っていた雨も止み、アスファルトに残る水溜まりは夏を目前に控えた凶悪な陽光でギラギラと輝く。

 繁華街にも朝の清浄な空気が立ち込める時間がある。近傍のヌード劇場の黄色い看板さえ、夏の空の前では爽やかな風情を見せる。

 

 ガンプラバトルシステム関係者の内、ごく一部の関係者のみ招待された内覧会である。現状のシステムに僅かな改変を加えて実現できる「可能性」を見せるのだと言う。主催は紀伊岳大(たけひろ)と桃李静香。後援はVoltex Blastersとあるが、集まった招待客の中でこの文字列を知るのはただ1人。彼は無い眉を顰めながら「SF古参の生き残りか」と独りごちた。

 

 招待者間での名刺交換会場と化したガンプラバトルシステムの周りで、筐体製作を担当したジオン工業からの参加者だけが、筐体のあちこちを睨みつけている。彼らの目を引いたのは筐体から伸びたケーブルに接続された小箱である。複数のカラフルなプラスチックペレットが詰まったボトルが接続されていて、言い方は悪いがフリードリンクのサーバーの様に見える。

「社長、これは……」

「……これはあくまでオマケ、なのだろうな。目玉なら白布(はくふ)の一つもかけるだろう。相当意味不明なものが出て来るぞ……」

 

【内覧会開始】

「皆さまお足元の悪い中、本日はご足労ありがとうございます。司会の永野と申します。本日はガンプラバトルでこんなことも出来るというデモンストレーションをご覧頂き、今後のシステム開発にフィードバック頂ければと考えております……まぁ、先ずはバトルをご覧いただきましょう! チームジオ工の皆さんです!」

 ハマーンとバナージと桃李がガンプラを持って登場。ハマーンはキュベレイ、バナージはユニコーンデストロイモード、桃李はパシケファロだ。

「そして、対戦相手はフォースVoltex Blasters!」

 ビヨンとシステムがSEを鳴らすとフィールド上に投射型スクリーンが形成され、獣人型ダイバールックの陸海空のコクピット内映像が表示される。

「ハロー、世界!」

「おー映った映った」

「渦さーん、ガンプラ投射していいかー」

 会場から困惑の声が上がる。対戦を遠隔で行う……何故?

「諸君、ちょっと宜しいか」

「ギレンや……ギレンがおる!」

「でけぇ! 総帥やっぱでけぇ!」

 まぁ、生ギレン見たらこうもなる。

「遅延は少ない様だが、コンマ秒を争うゲームで通信対戦は現実的か? 更に……」

「ご指摘の部分は実物見た方が分かりやすいでしょうな。ガンプラ投射してくれー!」

「了解、行きますっ!」

 細かな粉体が噴き出し、爆発の逆回しの様に3体の人型へと形を変えて行く。やがてそれは三体のガンプラへと姿を整え、銀色だった機体は色を帯びていく。

「よし、ちょっと動いてみ?」

「うーす!」

 各メーカーがバトルシステムに押し寄せる。ガンプラを遠隔地からここに転送した? いや、何かで再構成した? いや、そうならば……

 

「なっ……ちょっと試させて貰って宜しいか?」

 言うが早いかギレンは傘で突如現れたガンプラをツンツンする。実態があり突くとガンプラと同じ様な反応がある。

「……えー、従来のプラフスキー粒子エフェクトに加えて、新開発の微細粉末と別粒子による……」

「ナンボだ」

「は?」

「このシステムに利用されている技術を提供して頂きたい。ナンボだ?」

「いや、単一技術ではありませんで……」

「ちょっとこの後別室でお話しさせて頂きたい」

 ギレンは空気を読んで引き下がったが、その最中も眼前で行われているデモでどんな奇跡が起きているのか考え続けていた。まだ確証は無いが「これはヤバい」と技術者の本能が告げている。

 

「ではバトルを……」

「いや待て、遠隔地からガンプラ転送できるのだから、当然我が社のチームのガンプラも転送できるのだよな?」

 ここで場内の人間が息を呑む。永野は苦笑しつつ……

「ギレンさん、デモの構成崩さんで下さい(苦笑) おい陸海空、茶番は無しになった。ガチやるぞ!」

「やっぱ頭いいんだなー」

 ベースに置いたバナージ達の機体がスキャンされ、一瞬データ再構築処理が実施されると、再び粉体が噴き出しガンプラを再構築する。

「これでガンプラ破損問題は解決出来ますなぁ」

「早速このシステムを組み込んで……」

 

「……そんな程度で済むか……」

 参加者が「これで世間からのバッシングに対応出来る」と喜ぶ中、ギレンとバナージだけはその先を見ている。この技術を転用したら……システムさえ有れば遠隔地に義体を送れる。それだけでも夢が広がり過ぎる。ガンプラバトルフィールドは通常台の上に展開されるが、これを下に向けたなら?

 

 多くの参加者は既にバトルなど見ていない。僅かな参加者はこのバトルが見せる更に先の世界を見た。人は同じものを見ているはずなのに、互いに違うものを見出すのだ!

「射撃配置完了、コンサートマスター起動!」

 フィールド上に3角形布陣をしたフルアーマジムがジオ工チームにVB側が十字砲火を加える。キュベレイとパシケファロが弾幕を縫う様に避け、ユニコーンが破損も恐れずアーマードジムに肉薄!

「やるね、だけど……」

「負けてやる訳には行かないんだなぁ!」

 負けたのは信号遅延では無いかと難癖付けられては敵わない。陸さんは銃を手放し八骸(はちがい)による肉弾戦に移行する。




まぁ、ジオ工側はこの後もっとびっくりするんだが。
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