バナージ・リンクスの受難【完結】 作:PureFighter00
暇な人は読み直して誤字報告をお願いしたい。
「……まぁ、皆さんとりあえずガンプラが壊れない事にお喜びの様ですが……」
ごく僅かなメンバーしか注目しない中、桃李がパシケファロをバナージが促されてユニコーンのプラモ実物を出撃させる。
「従来方式でガンプラバトルをしてもですね……」
「聞きゃしないかー(棒)」
「バナージ君、ビームマグナム最大出力でパシケファロ撃って」
「え、でも……」
「ギレン氏のツッコミなければやらなくて済んだんだけどねー、バッチ来なさい!」
パシケファロでクイクイ手招きをしてユニコーンがマグナムを構える。ようやくステージに注目が集まる中、マグナムがパシケファロを捉えて右肩を容赦なく粉砕!
「……えー、従来方式ですとこの様にガンプラ本体が破損しますね。こうなると補修が必要になる訳ですが……」
「降参しまーす」
「と、バトルが終了しますと」
リザルトが表示される。表面破損率や機体の評価値、バトルリザルトに続き、トーリ:ダイバーコイン残高800の文字列。
[今回ダメージ修復に6パーツ 600pが必要です。パーツ出力しますか?]
「迷わずYes!」
GBNで報奨パーツ出力に用いている機能だ。今回は破損パーツの出力に利用する。先ほどまでガンプラを構成していた微細粉末が何度かジュースサーバーじみた機械の下部にあるアクリルケース内に充満すると、そこには銀色に輝く金属製インゴットが現れる。
[プラネッツコーティング開始。出力150…160…170…]
[予熱開始]
[射出します。近寄らないで下さい]
パシュンと軽いプラスチック射出音。
[充填完了。冷却を開始します]
[プラネッツコーティング出力解除 200…190…180…]
[冷却形態に変形します]
インゴットめいた型にフィン状の凸凹が形成されて更に冷却が進む。
[…120…110…100。温度30度。解除します]
微細粉末が落下して多色成形されたランナーが姿を表すと、ゆっくり落下した。
「これがもう一つの目玉ですな。実機破損の際にはポイントと交換で破損パーツの出力をその場で行えるシステムです。プラネッツ・インジェクションとでもいいましょうか」
参加者の返事やリアクションが無い。ただの屍だろうか?
「えー、あのー……ガンプラのパーツ請求も代替出来ますが……」
「あ、あの……なんならキット丸ごと生産販売も……」
紀伊と桃李が慌てて言葉を継ぐ。確かに主催側としてはノーリアクションは大変困る。
「皆、呆気に取られているだけだ。で、このプラネッツ・インジェクションだが、もちろんこれはゲームシステム無しで動作するのだよな? 我が社で販売したいが技術開示や共同開発は可能かな? またこんな話で申し訳ないが、ナンボだ?」
「いや、販売は……」
「しなきゃゲームごと買って分解されるぞ。君たちまで本システムがガンプラバトルにだけ要求される発明だと思い込んでいる訳ではあるまいな?」
ギレンが出力されたランナーを手に取り確認する。
「やはりそうか。ドズルが見た奇妙なインジェクションとはこのシステムの出力か。このシステムは以前から稼働していたね……つまり今回のシステムより……いや、このシステムはどこかで動作していたもののコピーだな?」
「どうしてその様に?」
「諸君がプラスチックの射出成形のプロの様には思えない。恐らくは原型となる機械はその道のプロにより調整されているだろう。例えばこの機械に……これはポリスチレンか、アクリルやポリエチレンの射出用プリセットはあるのかな?」
「正直に申し上げます。ありません」
「ただ、開発は私たちが……正確には私が原案を出し、型の強度を射出成形可能なまでに高める部分は静香が考案しています。射出成形の基礎部分には確かに他者のノウハウがありますね」
「既に協業しているのだな……その会社は応用を考えていないのかね?」
「……私も呆れましてね、ケツを蹴り上げ始めた所です」
遂に永野が降参した。確かにこの装置を紀伊と桃李が独力で開発したとは言い難い。射出部は「あちらの世界のバンダイが国内某社と共同開発した」システムだ。
「正直で宜しい。我々もこのプロジェクトに関係したいのだ。諸君からは明確な『明日に向けて歩く意志』を感じている……」
「あのっ……これって耐熱限界どれぐらいですか?」
「……金属成形に転用できないかと言う話だな」
興奮を隠しきれないバナージが口を開く。ギレンはそれを嬉しそうに眺めてフォローする。
「この粉体の資料を貰えるかな、なんなら買い取るが」
「これから世界展開考えている商材です。サンプルは差し上げますが……プラフスキー粒子や兎も角プラネッツコーティングシステムはこの世界には……」
「大体予想はしているが、性質としてプラフスキー粒子と逆、押す力ではなく引く力かな。これは一対になる力なのでは無いかね?」
「「何故それを?!」」
「君たちだけが未来を歩いている訳では無いと言う事だ」
薄暗い店内で見せるギレンの微笑みは相変わらず悪役面なのだが、バナージや紀伊には些か子供っぽい声音を感じた。同好の士と話し合った経験があれば解るだろう、あの互いに同じものを知っているという実感や連帯感だ。既存のモノを凄いと感じるだけではなく、そこから更に凄いを積み上げて行こうとする力。
「その先を歩く」力である。
それは原理原則的にはガンプラの改造と大して変わらない。それに物足りなさや不足を感じて手を加える……その行為は言ってしまえば工場や開発の現場で言う「カイゼン」に似ている。何故今ガンプラの改造の仕方が分からない子供が増えているかと言えば、心の中に「物足りなさや不足」を感じていないからだ。或いはその「抽象」という顔の無い怪物に「具象」という名付けを行えないから作業の方向性が掴めない。
究極的にはこの「具象化」という行為の中の一部を、世間一般では創作と呼ぶ。