バナージ・リンクスの受難【完結】 作:PureFighter00
【第三戦】
「な、なんで僕が!」
「何でって、他にガンプラ持って来ている奴が居ないからだが」
永野はサラッとバナージに無茶振りをするなどした。桃李とパシケファロでも悪くは無いが、紀伊といちゃついているのを邪魔するのは忍び無い。
「今からビック行って買って組む訳にもいくまい、ジオン工業としてガンダムは許し難いが、仕方なかろう」
こういう状況でサラッと他人を自陣に引き込む人間というのは実在する。時に人生はその様な人の手引きでハードモードに分岐するから気を付けよう。バナージはあっさりジオン工業側の人間にされてしまった。
「マフィアの用心棒なんてランカー崩れでしょ? 大丈夫行けるよバナージ!」
マフィア側はほんの少し反応した。お嬢ちゃんちょっとそれはおじさんたちを舐めすぎだぞと。渡世稼業の人間にそれを言っちゃーお仕舞いよ。こちらも面子で食ってるんでな……とマフィアはかなりやる気を出したが、ミネバに彼氏を窮地に押し込んだ自覚はない。運命の女神はこの様にして勇者を死地に送り込む。
主人公体質、とでもするべきか……大変しんどい生き方だが、世の中には普通にしているだけで厄介事に次から次へと打ち当たる難儀な生き物がいる。バナージ・リンクスも成績優秀なアナハイム高専の平凡な学生であった。バイト先は足立区平野の交差点近くのヤマダ電機だ。公団住宅住まいの貧困とまでは行かないが、裕福ではない家の出だ。
しかし、彼はその類稀な星の並びの下に生まれ、運命的な出会いを得た。運命という名の歯車が噛み合った瞬間から道は既にそこにある。無論道を行かぬという選択肢もあるのだが、体質的にその選択は無かった。困難に遭って尚その道を行くからこそ主人公体質であり、その生き方が彼を鍛えた。生来の特質やら神の恩寵ではなく、主人公というのは魂の在り方だ。故に彼は顔を上げて彼の道を行く。
「バナージ・リンクス。フルプラフスキーフレームのユニコーンガンダムで行く!」
「面白い、GM Crazyが言うところの高性能量産機という奴だな」
「違う、僕のユニコーンは他の誰でもない僕自身だ!」
「天は人の上に人を造らず、人の下に人を造らずってな。この現代社会において、所詮人は皆平等に量産機よ……」
マフィアの男は腰を落として仁義口上を唱え始める。
「手前、粗忽者ゆえ、前後間違いましたる節は、まっぴらご容赦願います。向かいましたるお兄いさんには、初のお目見えと心得ます。
手前、生国は日本。日光 筑波 東北関東は吹き降ろし。野州は宇都宮で御座います。稼業、縁持ちまして身の片親と発しますは、野州宇都宮に住まいを構えますガンプラマフィア戸塚一家5代目を継承致します戸塚司に従います。若い者で御座います。姓は風天、名は権蔵。稼業、昨今の駆出し者で御座います。以後、万事万端お願いなんして、ざっくばらんに一手御指南をお頼申します」
一瞬の静寂。
「……完璧にヤクザじゃねーか」
「お控えしなくて良かったかね?」
「恫喝のつもりなのかもしれないが……若い子に通じないぞ、それ……」
紀伊も桃李もバナージもミネバもきょとんとしている。男はつらいよが年初に映画館で放映されなくなって久しい今、仁義の口上など聞く機会はほぼ無いのだ。彼らにとって、突然ペラペラと身の上語る変なおじさんにしか見えないのは仕方が無かった。
しかし……
「お、和柄か!」
「紋身
機体は見事な和柄を配したGM/GMであった。肩の左右には手書きの風神雷神、左足には昇り竜。盾は十字の意匠を廃して唐獅子牡丹! 各所の傷が歴戦の強者感を出している。
「お兄いさんに恨みはござんせんが、これも渡世の義理でござんす……木枯らし紋GM! 切らせて頂きやす!」
バナージのユニコーンとGM/GMはゆっくり歩を進め、さりげなく行き違う。そして互いにすれ違った瞬間に振り返ってビームサーベル抜刀からの上段切り付け! 鍔迫り合いの体になる。
「お若いのに分かってらっしゃる……」
バナージは極度の緊張で額に汗をかいている。この男、強い! ついつい釣られて剣戟になってしまったが、ユニコーンとしてはビームマグナムの射撃戦の方が有利だ。だが、何故かそれをさせない雰囲気があった。
GM/GMが力負けして一歩下がるとユニコーンが押し込み、一歩足を踏み込んだ所でGM/GMが体軸をずらして送り足払い! その僅かな体勢の崩れを狙ってGM/GMのビームサーベルがユニコーンを襲うが、NT-Dじみた急加速でゴロゴロと転がりながら無様に回避!
「銃をお使いになってもよござんすよ……ヤッパ振り回すのはお得意で無い様で……」
GM/GMは腰だめにビームサーベルを構えて突進! 銃を使えと促しながら、銃を抜く間を与えない。辛くもGM/GMのビームサーベルを避けるも、そこから嵐の様な連撃が始まる。
喧嘩のやり方だ。
喧嘩において重要なのは相手を飲む事である。迫力を出して相手の怯えを引き出すと手が出なくなるのだ。あとは効こうが効くまいがひたすら力の限りに滅多打ちにする。この「相手を飲む」所に要諦があり、ガン付けからのチョーパン(頭突き)や不意打ち等でイニシアチブを取る。飲まれた相手は萎縮してしまい身体が緊張で動かなくなり、回避できる攻撃まで防御姿勢で受け止める手を選んでしまう。喧嘩は先手必勝とはこういう事だ。例え相手が流血しようがフラフラになろうが「抵抗する気が起きなくなるまで殴り続ける」
初撃を食らっても決して怯まない、逆に次のこちらの一撃で相手を飲みに行く……ボクシングなら何ラウンドか経過してこの状況になるのだが、喧嘩慣れしていないと……剥き出し生身の害意に慣れていないと喧嘩開始数秒でこの様になる。素人の喧嘩は正にこの「相手を飲む」部分にあり、喧嘩巧者は場数を踏んでこの部分に長けている。つまり気合いと根性だ。先にどちらかが尽きた方が敗者になる。
ただ、風天にも読み違いがあった。如何にも芯の弱そうなバナージの芯が異常に強い事、そして本作のバナージ・リンクスは足立の民……
喧嘩には慣れているのである。
ユニコーンが無造作に右腕でGM/GMのビームサーベルを受ける。外装が融解してフレームに至るが、そこから光が溢れ出す。フィールドに希薄ではあるが存在するプラフスキー粒子がユニコーンの体内に蓄積され、今まさに解放されつつある。全身のサイコフレーム扱いのクリアレッドのプラスチックがその光を外部へ導く。
「プラフスキーフレームを、舐めるなァ!」
バナージ・リンクスの咆哮にユニコーンが応える。アクリルフレームと軟質透明プラ棒がプラフスキー粒子を全身に循環させ、それはあたかも小周天の様にユニコーンガンダムの内部を巡り、粒子加速器の様に速度を上げて行く。
「な……何だそりゃあ……」
「これが、俺のユニコーンだぁっ!」
ユニコーンはランドセルのスラスターを全開にしてGM/GMに肉薄! 雰囲気に飲まれたGM/GMはなす術なく頭部を鷲掴みにされ、そのまま無造作に地面に叩きつけられる。すかさず胸部にストンピング! 強度的には一番硬い筈のGM/GM胸部がストンピングの度に小さなクラックを生み出して行く。
このままでは不味いとGM/GMはユニコーンの足を捉えるが、今度は捉えた足ごと背中を地面に打ちつけられる羽目になった。(GM/GMは構造上、コクピットブロックを囲むパーツを破壊されると両腕が肩基部から外れてしまう)
なんとか隙を見てユニコーンを転がしたマフィアは手練れであったが、彼の優位性はあっという間に失われている。
「おやりになる……」
「ウォォォオ!」
「しかし……っ!」
最終回近いからヒキで次話に繋げる週ジャン展開をするである。