バナージ・リンクスの受難【完結】 作:PureFighter00
バナージはその日、NASのセットアップの為に島根(バイト先の平野の隣町だ)のミネバの家へ向かっていた。もう既に昇華型プリンターやサブモニターなど、数々の高額商品お買い上げによりミネバの家はヤマダ電機テックランド足立店的に特別待遇が必要な顧客となっており、店長以下店員一同、必要ならバナージもお売りしますよ状態になっている。
無論ゼナは心得た物で、ウチの娘がバナージを気に入った様で、今日は我が家でセットアップ後直帰でいいかしら?などと店に申し入れている。昇華型プリンターもう一台欲しいかもの誘い水の後のこの申し出に、店長はバナージが後4〜5人居たらなぁなどと無理な事を考えたりなどした。ヤマダのポイント残高は僅か数ヶ月で既に20万を突破している。
そして運命の時は来た。待ちきれなくてバナージを迎えに行ったミネバが自然と手を握る。既にジオン工業給湯室諜報部隊は指を絡めて手を繋ぐ2人を目撃しているし、ゼナも彼を正式な彼氏と認識している。ただ2人を除いて公認カップルであり、その1人がミネバ自身、もう1人が足立の狂えるビグ・ザムことドズル・ザビ部長その人である。
ミネバはその事に、娘が男を家に連れて来るという行為、その重要性に気付いて居ない。だって彼は店員さんだし。彼女にとってパパは優しい大男。世人にはどう見てもフランケンシュタインの怪物か悪役レスラーにしか見えぬのであるが、ミネバにとっては厳しくも優しい自慢のパパだった。その内心を知れば肝心のパパは専用ザクを駆り連邦の白い悪魔でも討ち滅ぼすだろう。パパは実際強いのだ。
問題は、そのパパがミネバと仲良く歩いて来るバナージをどうするかである。ゼナは彼を観察した結果、キチンと店員として来訪し、ミネバは彼の仕事を熱い視線で見て……となる予定であった。
ところが事態は急変する。風呂を出たドズルは何故か肩からトゲが生えた浴衣に着替え、夕刊を取りに門まで出てきてしまったのである。丁度(間の悪い事に)バナージがそれに気付いて手を離し、すいませんお邪魔いたします、ヤマ……まで口にした所でNT-Dが突如発動したかの如く、彼の身体は急加速した。
別に、ドズルは怒りを露わにした訳ではない。手を繋いでた事を目は認識したが、意識は認識していなかった。本当に本当に、愛しのミネバにハエやハチでも
事前にセットアップを済ませたNASは木っ端微塵。気を利かせて店長が持たせた雷おこしは宙を舞い、意外に頑丈なバナージは一瞬気を失うだけで済んだ。スレッガーであれば戦死であろう。我に返ったドズルが聞いたのは「お父さんのバカ! 大っ嫌い!」という死刑宣告にも似た音響だった。違うんだ、父さんそんな気無かったんだ……ブラックホールに落ちて行く幻想を見ながら膝から崩れ落ちる旦那を見て、ゼナはちょっと失敗したなぁと天を仰ぐ。
後に打ち解け合い、男同士で東京湾にイカの夜釣りに出かけるまでになる2人のファーストコンタクトはこの様にして始まった。バナージは知らない、まだこの後に地獄が待ち受ける事になろうとは。
ゼナ案では一緒に食卓囲みつつ、彼が帰った後に「ミネバが彼に恋してる」という事実を告げ、段階的に慣らす予定だった。計画が破綻しても島根の魔女は動じない。大きく事が動いたならば、大きく計画を修正すれば良い……魔女は微笑みを絶やさない。