バナージ・リンクスの受難【完結】 作:PureFighter00
この世界では西新井警察署の西側、アリオ西新井の東側にその異様な建物が巨立している。1stガンダム本編ではそれ以前の悪の組織拠点の意匠を引きずり、かなりアグレッシヴに前衛芸術じみた「ズム・シティ」である。
その高層役員会議室に2人の男女が座していた。ジオン工業代表取締役ギレンと、その妹で総務部部長キシリアその人であった。
ビルドファイターズ時空の風に当てられ穏健化した事、ミネバの誕生と前後しておじいちゃんムーブに専念したくてさっさとデギンが代表権無し会長に退いた事などもあり、原作世界よりも彼らの仲は良い。ある一点を除いて……
「ミネバの様子はどうなっている?」
「順調と言いますか、まだるっこしいというか……足立の民の自覚に欠ける牛歩ですなぁ、兄上」
お兄ちゃんは「お前が言うか」と、思っている。
牛歩、牛歩と言ったか。ミネバが牛ならお前はカタツムリかナメクジか。お前今年いくつになった? 幾つの縁談破談にした? マでも誰でもいいから早よくっつけ。えー加減にせーよお前、ミネバに抜かれたらヒラに下げるぞマジで!
と内心怒りを通り越して呆れているのだが、顔には出さない。もうそれを言ったら戦争しか無いのだ。
妹も大体ギレンの内心は理解している。17の小娘すら彼氏捕まえてるのにお前と来たらなんだ!と思っていやがるな、と。お前んとこだって子無しじゃねーか!
と、内心怒りを抱いているのだが、それを口にするとマジでビンタされる事は理解している。兄上は妻を愚妻だ平凡だと腐すのだが、あれは昭和の男の嗜みであり実はベタ惚れ。給湯室情報網で今も仲良く買い物をしているとの目撃情報を掴んでいる。タネ無し
ガルマのところだけはバンバン子供が産まれている。確か次の子で4男だった筈。イセリナは偉大だ。ザビ家の血脈はガルマの双肩にかかっていると言っても過言では無い。
ドズルは武人仕草が好きな性格通り、一番槍を付けた。
我々は、どうか。
初夏の日差しが会議室にも差し込む。良い日だ。幸せな時が流れる本当にいい日だ。緩やかでも進展するミネバ達が羨ましい。よりにもよって幹部2人が揃いも揃ってこの点に於いては後塵を拝していた。頭は良い、個人単体で見ればギレンは超級、キシリアだって人並外れた才覚だ。父デギンはこう漏らす「会社の経営不味かった時でも5人育てたぞ?」
子供なんてほっときゃ勝手に出てくるだろう? これが昭和一桁生まれ、戦中派の実力かと今になって父が恐ろしく見えて来た。ギレンは父を一時期耄碌したと馬鹿にした。キシリアも頼りないとコケにした。しかし蓋を開けてみればこのザマだ。人間の価値というのは才能だけでは無いのだなと。
天は二物を与えぬという。あれは誓って本当だった。
2人は社員に子が生まれると、かなり厚めの祝い金を出す。社員子女様に七五三の貸衣装も整えた。私学に進む時には奨学金も出す。全ては2人の引け目に由来するものだった。どう見ても悪人面としか形容できぬ容姿を持つ2人だが、意外と社員ウケは良い。
もうすぐミネバ18の夏が来る。JTBの旅行券でも贈るか。
ギレン直系が居ないのはどーもね(本人は子が出来たらIQ600の本郷猛超えを狙っていた節がある)
サスロは1人別の道を行き、テレビ東京のディレクターまで昇進したが、サリンテロの時に若い命を散らしたである。