「お」
「あ」
とある日の昼下がりのコンビニで、二人の魔法使いが邂逅した。
「メルロアさん…だよね?」
「そうです!ナナシさんでしたっけ?」
「うん。合ってるよ。」
「何してたんですか?」
「ちょっと欲しいものがあってね。メルロアさんは?」
「新作のスイーツを買いに来たんです。でも、なかなか見つからなくて。」
「…もしかして、コレのこと?」
そういうナナシの手には“パティシエのバナナカスタード餅大福(税込み220円)”があった。
「それですそれです!どこにありました?」
「あの棚に
そういってスイーツコーナーの一角を指さすナナシ。メルロアが目を輝かせてその指が示す先を見ると、そこには1か所、不自然な空白地帯があった。しばらくの沈黙の後、メルロアがナナシの方に顔を向け、ナナシはその動きに合わせて目をそらした。
「もしかして、それで最後…?」
口笛を吹いてごまかそうとするナナシ。しかしすぼめた口からは乾いた風しか出ない。
「ナナシさん。」
「あげないよ。」
「そこをなんとか。」
「ならないね。」
「仲間じゃないですか。」
「敵かもしれない。」
「女の子相手に恥はないんですか?」
「食えぬ恥より食える菓子だよ。」
「うまいこと言った気にならないでください!」
静かな、しかし激しい舌戦が繰り広げられる。このままでは勝ち目がないと見たのか、メルロアは攻め方を変えた。
「楽しみにしてたのになぁ…」
顔を俯けて暗い口調でメルロアが呟く。それを見たナナシの顔に浮かんだ一抹の動揺を、メルロアは見逃さなかった。
「辛かった任務の時にも、それがあるから頑張れたのにな…。」
「…ッ」
「でも、仕方ないですよね。早いもの勝ちですもんね。」
「ぁ…」
「わがまま言ってごめんなさい、ナナシさん。わたし、行きますね。」
そういってしょんぼりと立ち去ろうとする素振りを見せるメルロア。勝負は、決した。
「ごめんごめん。実は今あんまり甘いものの気分じゃないんだよね。メルロアさんはこれが食べたいんだっけ?譲るよ。」
そうまくし立てると、ナナシはメルロアの買い物かごに“パティシエのバナナカスタード餅大福(税込み220円)”を入れた。
「わぁ!良いんですか?ありがとうございます!」
「…ドウイタシマシテ。」
ひまわりのように笑うメルロアをナナシは恨めしそうに見る。そんな様子を気にかまうことなく、メルロアはぺこりと一礼してレジの方に小走りしていった。ナナシは小さなため息をついて、缶コーヒーを買うことに決めた。
「ありゃっしたー」
やる気のない店員の声を背中に受けて、ナナシは店を出た。オレンジに染まっていく空を見上げながら、缶コーヒーを一口飲む。そんなナナシに小さな影が近づく。
「ナナシさん!」
驚いて声のした方を見ると、そこにはメルロアがいた。
「帰ったんじゃなかったのかい?」
「ナナシさんにあげたいものがあって待ってたんです。ちょっと手を開いてください。」
言われるがままに手を開く。そこにメルロアが小さい何かを置いた。よく見るとそれは…
「チロルチョコです!」
「…ゑ?」
豆鉄砲を食らった鳩のようにナナシは目をぱちくりさせる。
「何で?」
「これで今日の件はチャラにしてくれないかなーって。」
「…あぁ。そういうこと。気にしなくてよかったのに。」
「こうでもしないと根に持ちそうなんですもん。」
「その一言が無ければ100点だったんだけどねぇ。」
わざとらしくため息をつく。
「…でも、ありがとう。」
「いえいえ。それじゃ、用も済んだのでわたし帰りますね。」
「うぃ。気を付けてね。生きてたらまた会おう。」
「はい!さよなら!」
そう言い残して駅の方に駆けていくメルロア。曲がり角がその姿を隠した後、ナナシはチロルチョコの包装を剥いで、口に放り込んだ。苦いコーヒーを飲んだ後の舌には、それがひどく甘く感じられた。
初投稿です。マジカルデスペアの二次創作が無かったので作りました。二次に限らない話ですが創作ってめちゃくちゃ難しいですね。みんな化け物か?原作の味を全く生かせてなくてめちゃくちゃ歯がゆいです。
原作の『マジカルデスペア』はRPGあつまーるとSteamで配信されている魔法少年少女デスゲームアドベンチャーです。美麗なイラストと秀逸なストーリーで魅了されること間違いなし!無料でプレイできるので気になった方はぜひプレイしてみてください。
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