悪友
かつての世界ではこんな話がある。
能力者が集いやすい東京都にある学園、通称学園都市と呼ばれる能力開発に集中するための機関がある。日本は科学に特化しており世界一の技術力を誇っているため、実質科学の世界と言ってもいい。そのため極稀に天然の能力者がいれば学園都市で能力を手に入れた者もいる。
そんなイレギュラーな都市の中で、
「というわけで岡やん、早速だが桃華の通う女養鍍学院に突撃するにゃあ!!」
「お前の妹ったって義理だろ?つかなんで俺がお前のシスコン属性に付き合わなきゃならねんだ!?なんならお前いつも一人で会いに行こうとするくせになんで今日に限って俺を誘うんだよ」
「なに、そんなの決まってるぜよ。岡やん、女養鍍学院ってどんなとこか知ってるかにゃ~?」
「あぁ?確かあれだろ、研修と実地指導や実地試験を兼ねて国際的に通用するあのメイド専門学校だろ?」
「ピンポンピンポーン!大当たりぜよ!そんな精鋭揃いの学院だがその分学院のセキュリティーも抜群なのは岡やんのバカな頭でも分かるはずぜよ」
「一言余計だテメェ」
「だけど岡やん、セキュリティーが抜群ってことはその分侵入も厳しいってことも分かるはずだよな?」
「あん?まあ、そうだな。それだけの名門校だとしたらよっぽどの運がなきゃ___」
ちょっと待て、と。岡田は呟く。
「……てめぇ、まさか俺の不幸を利用して全員の警備員を俺に向かわせてその間にこっそり侵入するつもりじゃ……!?」
「大正解だにゃーーーー!!」
「こんのクソ野郎がぁぁぁァァァああああああああああああああああああああ!!!!」
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AM07:30
「なんだか変な夢を見た気がした」
五月一〇日。
雀の泣き声と共に変な夢から目を覚ましたのはトウカイテイオーだった。といっても、元々はかつての世界で一度命を失い、このウマ娘という新たな世界に生まれ変わった新名に過ぎない。
そんな彼女のかつての名が、岡田唯斗。
とある高校で、今と変わらず
部活をしながらとんでもない事件に巻き込まれたり、死闘を繰り広げたりと、前世でも濃密なハードスケジュールをこなしながら生きていた。トラックに轢かれるまでは。
だがまあ、結果的になんか今では事件とはあまり巻き込まれくなって平和だなあとは思ってたりする。
「なにはともあれ早朝のマラソンでも行こうかな」
テイオーさっさと身支度をしてジャージに着替えて寮を飛び出す。外は僅かに明るい程度で辺りを街灯無しでも見える程度の視界は確保されている明るさだった。
そんな中途半端な明るさの中を走り続けて一〇分。テイオーは思わぬ人物と再会した。
「あれ、メジロマックイーン?」
「あらトウカイテイオー、お久しぶりですね」
二人は互いに並びながら走る。どうも行先は同じようで、学園に帰る途中みたいだ。
「貴女も早朝トレーニングですの?」
「勿論だよ。無敗の三冠を目指すならこれくらいしておかないとね」
「その努力、」
「うん!……あ、ねぇマックイーン、あそこではちみーの屋台が止まってるからそこで休憩しない?」
「はちみ……?なんですのそれ」
「はちみつで作ったドリンクだよ。甘さ抜群で__」
「甘さ抜群ですって!?今すぐ買いにいきますわよ!!」
「…………君って、こういう性格なのかな?」
テイオーはあえて深く考えずにいつもの屋台へと向かう。屋台のカウンターにはエプロンを着たいつものお姉さんが立っていた。
「いらっしゃいませ!ってテイオーさんだ!今日もいつものやつ?」
「うん!いつもの『はちみつ硬め濃いめ多め』で!」
「はーい!そちらの子は?」
「私もですか……?えーと……『柔め薄め少なめ』でお願いしますわ」
「かしこまりました!少々お待ちくださいね」
お姉さんが慣れた手つきで奥にあるドリンク機ではちみつを透明のプラスチック製カップに注いでいく。
「お待たせしました!いつもと『柔め薄め少なめ』です!ありがとうございました!」
二人はカップを貰うとお辞儀をして近くにあるベンチで腰を掛ける。
「んー!朝からこの甘さは反則な美味さだよ!」
「なかなかいけますわね。ところであの店員さんの様子だとテイオーは常連なのですか?」
「うん、確か入学して一週間後から通い始めるようになったかな」
「毎日、ですの……?」
「いやいや、あれでも結構破格なお値段だから高頻度には通えてないよ……はは」
「あれで一五〇〇円はまだ安い方ですわよ?」
その瞬間、テイオーに衝撃が走った!
「い、いや……あれで安い……?お、お嬢様なんてやっぱり庶民の考えは理解できないか……」
「なにぶつくさ言ってますの?」
「な、なんでもないよ……ッ!!」
妙な歯ぎしりにマックイーンは小首を傾げる。小声で、どこいってもお嬢様はやはりお嬢様か、となにやらが聞こえるが。
「……やはり、貴方なら打ち明けても良いでしょう」
「……え?」
マックイーンは改まった様子で、
「テイオー、岡田唯斗って人をご存知でしょうか?」
「!!」
「その反応、やはりご存知なのですね」
「知ってるも何も……」
その岡田唯斗がトウカイテイオー自身なのだから。
テイオーは自分の呼吸すらも忘れていた。マックイーンはその様子を見ながら続ける。
「かつて私は義理の妹と交通事故で亡くなりました。今でもあの時を悔やんでます、私が死ねばあいつは絶対に悲しむに決まってる。だけどあの世界での自分は既に亡くなっているいます。今はメジロマックイーンとして新たな人生とともに歩んでますが、やはりあの時も捨てがたい人生を送ってたので悔やまれます……」
マックイーンは静かに拳を握り締める。しかしテイオーが認識している人物では、マックイーンが一体誰なのかが分からない。
「君は、一体誰……?」
テイオーは恐る恐る問う。その問いかけにマックイーンは静かに答える。
「私は
その答えに、テイオーの体が震えだす。
「……お前が、お前があの創谷涼真なのか!?」
「ええ、いかにもあの妹好きの男の__」
マックイーンの態度が崩れたかのように、
「創谷涼真さんとは俺のことぜよ!」
「ばっか野郎が!てめえ人様にさんざん心配させといてよくもノコノコと顔を出しやがったな!?」
「にゃーはっはっはっは!俺の予想通りやっぱりお前が岡やんだったか!いやーちょっとからかってみたり試してみたりしてみれば岡やんと同じ反応してくれたから、俺としちゃあラクチンに見つけられたから楽だったにゃ~」
まあ、と。
「特にアレが、テイオーは岡やんの転生先の器としての決定打になったんだが、まあ岡やんにもいずれ分かる話かにゃ」
「あん?アレってなんだよ」
「まあ今は気にすることはないぜよ!まあ岡やんはおっぱいがデカいお姉さんがタイプなのも?お姉さんに甘えたい人生を送りたいというのも?全部知ってるしー?」
「わーーやめろーーー!!俺の性癖をこんな公共の場でばらすんじゃねえ!!」
「にゃはは!」
テイオーこと岡田は笑顔のまま泣き叫び、マックイーンこと創谷は笑い転げる。
「岡やん」
マックイーンの声に、テイオーは顔を上げる。マックイーンはテイオーに手を差し出していた。
言葉なんていらなかった。
パン!、と。乾いた音が鳴り響く。
手を取ったテイオーはマックイーンに引っ張られる形で立ち上がる。
「久しぶりだな、岡やん」
「待たせんじゃねぇよ、涼真」
日が昇り二人はその光に輝くように映る。久しく会う悪友こと親友に互いは静かに喜んだ。
男らしく、静かに。そして熱く。
「……それはそうと今何時ですの?」
「え?」
突然口調がマックイーンになったことにより我に返る。そしてテイオーは顔だけ横に向く。たまたま近くには時計台があった。
「えーと……。げっ、もう八時二〇分!?」
「急ぎますわよテイオー!今から帰って支度してもギリギリですわよ!!」
「ちっくしょぉ!!やっぱり不幸だああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
AM08:20 終了