適当に準備を済ませたテイオーは指定されたカラオケ、といってもいつも来ているカラオケ屋にきていた。
「まさかこのタイミングでくるとは思わなかったなー。でもスピカは何気にちょっと気になってたからこの機会に色々と見ておこうかな」
テイオーは適当なソファーにバックを置くと、部屋を出てドリンクバーで適当なメロンソーダーをグラスに注ぎ、片手で持って部屋に戻る。
「さーて、どれ歌おうかな~」
いつぞやの世界では声が独特と言われ自分の声はどのジャンルが上手いのか分からなかったが、今のトウカイテイオーとしての声は女子だし、何歌っても似合うというありがたい声で少し自信がついたのはまた別のお話である。
「『願いのカタチ』……『ユメヲカケル』……『EMPRESS GAME』……。うーん、色々あるけど、最初は『Make_debut!』かな。歌いやすいし」
テイオーは端末を操作して歌を選び、歌いだした。
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あれから数曲歌い、だいぶ喉も慣れてきたので『恋はダービー』を歌っていた時だった。
「「「「て、テイオー!?」」」」
驚きと共に歌ってる最中に入ってきたのは、スピカだった。テイオーはみんなが入ってきたことを確認すると、パフォーマンとしてあの『テイオーステップ』を披露した。
「おー、あれが噂のテイオーステップか!」
「す、凄いです……!」
点数は九八点とほぼ完璧な点数を叩き出したのだが、本人は特に気にした様子もなく。
「遅いよみんなー!」
「なんでテイオーがいるんだよ」
「俺が呼んだ」
「トレーナーが、テイオーと知り合ってた……!?」
「オイオイなんかの冗談か!?明日は槍でも降るんじゃねぇの!?」
「マズイわね…………明日は一日寮に篭ってないと……!!」
「お前らからして俺は一体どんな目で見られてんだよ……。まぁいいや」
「いいのですか……?」
「歌とダンスの先生だ。見ただろ今の。それに[[rb:テイオー > こいつ]]が関わってくれれば何かいい刺激になるかと思ってな」
「テイオーが先生?」
「いえーい」
「こいつの走りは誰もが真似する事の出来ない特別な走りでな、それに惚れてスカウトしてるんだけど一向にチーム決めないんだよ……。でも、先生役なら引き受けてくれたんだ」
「みんなのウイニングライブ、動画で見させてもらったよ。大丈夫、ボクがみっちりスパルタで教えてあげるからね!」
「お、お手柔らかにお願いします……」
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ライブの練習は夕方まであった。みっちりしごかれた四人はかなりくたくた気味だったが、少しずつダンスに慣れていき、前まで出来なかったものもちょっとずつだが出来るようになっていっている。
そんなこんなで、レッスンの終わった夕方の帰路の途中だった。
「今日はありがとな」
「気にしないで」
「テイオーさんに教われば、ライブで恥をかかなくて済みそうです」
「ボクはみんなが困ってるから教えただけだよ。そこまで気にする必要は無いさ」
「でもお世話になったからな」
「そうね」
「そうだ!テイオーさんはあれからまだチーム入れてないのですか?」
「うん、まだ決めれてないんだ」
「一応何度も誘ってんだが一向に入ってくれなんだよ」
「うちにきたら可愛がってやるぜ!」
「うーん考えとくよ」
「テイオーみたい才能あるウマ娘こそ、うちでのびのびとやって欲しんだけどな。まぁ、こいつにも考えはあるから無理強いは出来ないけどな」
沖野は飴を咥えながら、
「さて勝つ準備も出来たし、スペシャルウィーク、クラシック三冠狙うぞ!」
「え、ええええええええええええええええええ!?」
クラシック三冠とは、人生で一度きりしか走れない特別なレースのことだ。
皐月賞。日本ダービー。菊花賞。それぞれに特徴を持ち、実力を持った猛者達が集うレースだ。一つのレースを勝つだけでもかなりの激戦を要されるが、勝てば実力が証明される舞台でもある。
その一番の目玉なのは『東京優駿 日本ダービー』である。
頂点を目指すウマ娘達の、栄光のレースだ。
「今年のクラシックに挑戦出来るのはお前だけだ。それに今の調子でこの流れなら当然だ。日本一になるんだろ?ならクラシック三冠は日本一になる近道だ!!」
「で、でも……」
スぺは少し迷った表情が浮かぶ。
「スペちゃん。挑戦出来るのならやってみるのもいいわよ」
「スズカさん……」
他のメンバーも、笑顔だった。
「オレ手伝いますよ!」
「私も手伝います!」
「しょーがねぇからアタシも手伝ってやんよ!」
そこまで言われたら仕方ない。
「私なります。クラシック三冠に!!」
「よし、その意気だ!そのためにはまずは前哨戦として、弥生賞に出てもらう!」
「はい!」
「…………………………………………」
「……あら?テイオーどうかしたの?」
「うん?いや、なんでもないよ」
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あのレッスンから数日が経った。トウカイテイオーはこの日とあるチームを見るために中山レース場に訪れていた。
『いけースぺ!!』
『そこだ!!上がれ!!』
『『いっけー!!』』
『残り二〇〇メートルを切った!!セイウンスカイは上がっている!ここでスペシャルウィークが並んだ!!スペシャルウィークがセイウンスカイと並ぶ!…………並ばない!躱した!坂を下りて直線に入ったスペシャルウィークがセイウンスカイとの差を離していく!スペシャルウィーク上がった!スペシャルウィーク、セイウンスカイと差を離してゴールイン!』
『いよっしゃー!!』
『いえーい!!』
『坂の時は焦った……』
『やっぱりあの末脚は天才だな。三冠ウマ娘、マジで夢じゃないぞ!……ってあれ?』
(ふーん)
テイオーは遠くからチームがスぺの勝利を称えるためにターフへと降りていた。
(良いなぁ……)
まるで家族のように勝利を喜び、惜しみなく応援するその光景は、まるで自分が見ていた理想だった。
もしスピカに入ったら、きっと楽しんだろう。
「うん、決めた。ボクは__!!」
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時は夕方。弥生賞から戻ってきたテイオーは、さっそくチームのことを報告しに生徒会室にやってきた。
「失礼します」
「む、テイオーか」
ルドルフは一旦書類作業を中断し、そばにきたテイオーに集中しだした。
「何か用かい?」
「うん。チームの事についてだよ」
チーム、という単語だけでルドルフの表情に真剣味が増した。
「もしかして、決まったのかい?」
「うん。この二か月間色々考えて考えて考えて、ボク、ようやく決めたよ」
テイオーは大きく息を吸って宣言する。
「ボク、スピカに入ることにしたよ」
「……そっか」
ルドルフの表情が緩む。その表情は安心感のある表情で、まるで過去に自分もそこに所属していたかのような、そんな感じの。
「なんとなくだけど、ボクはあそこだと楽しく練習できる気がするんだ。楽しそうだし、雰囲気も面白いし、なにより個人個人を尊重してくれるようにボクは感じたんだ」
ルドルフは椅子から立ち上がと、背後にある人一人分のサイズがある窓から夕暮れの差し込む景色を見ながら。
「テイオー、君はこの学園の中でも希少類の才能の持ち主だ。しかしその才能を持っていたとしても無敗の三冠というそこに辿りつく壁は一筋縄では越えられない。ならばこれからどうすべきかテイオーなら分かるだろ?」
「は、はい!」
「ふふ、テイオーのこれからに健闘を祈るよ」
「うん!ありがとうカイチョー!」
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日は沈み月の光が照らされるこの時間。テイオーはさっきスピカから連絡を受け、ダンスのお礼も兼ねてスぺの優勝パーティーに参加してくれないか?と招待を貰い、お言葉に甘えてパーティーに参加することにした。
会場はスピカの部室だった。
「スペシャルウィーク、弥生賞大勝利おめでとう!乾杯!」
「かんぱーい!」
みんなが一斉にグラスを合わせる。カンと簡素な音が鳴り響いた。
「ありがとうございます!」
「いいのトレーナー?ボクがきちゃって」
「お前には世話になったからな、これくらいのお礼はさせてくれ」
「そっか、じゃあ遠慮なく!」
テイオーは机に並べられたご馳走を受け皿に乗せていく。
「スペ、中山の最後の坂どうだったか?」
「キツかったですよ、でも走りきった時は嬉しかったです!」
「ウイニングライブ、可愛かったわ!」
「ありがとうございます!」
「おう!だいぶマシになっていたな!」
そう。ライブも少し恥ずかしくてぎこちなかったが、それでも最後まで歌って踊りきれたのだ。
「テイオーさんのおかげです!またダンス教えてください!」
「うん、いいよ」
テイオーはやけにあっさりと答えた。
「本当ですか!?」
「うん、だってボク____」
「___スピカに入る事にしたんだ」
一瞬、一緒だがさっきまで騒がしかった部室がテイオーの一言で一瞬にして静まった。
やがて、全員が驚きだした。沖野は口から盛大に人参ジュースを吹き出しては、
「えええええええええええええええええええええええぇぇぇぇぇ!?」
「お前も驚くのかよ!」
沖野ですら驚いた事に思わずゴルシがツッコミを入れる。実際、さっきの夕方に決めたばかりだしカイチョー以外の誰にも喋ってないから驚くのも無理はない。
「まぁ、トレーナーにも一言も言ってないからね。…………実はね、ダンスの練習をしていた時入ろうかなって考えてたんだ。凄くめちゃくちゃでおかしなチームだけど、凄く楽しそうにしていてさ。レースの時もそうだった、自分の事のように応援して、そして喜んでいて。そんなチームに、ボクはますます気に入っちゃってね、だからスピカに入る!!」
「………そっか」
沖野は静かに喜んだ。
「テイオーさんの夢は、『無敗の三冠ウマ娘』ですもんね!」
「うん!それがボクの夢、目標なんだ!」
「ふっ、デカい目標いいじゃねぇか」
「はい!とゆうわけでみんな、これからよろしくね!」
「よろしく!」
「よろしくね!」
「よろしくだ」
「よろしくね」
「よろしくお願いします!」