転生したらウマ娘になっていた   作:ヴァン.

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スぺのダービー前

スペシャルウィークの皐月賞が終わった翌日。

六月一二日。スピカはトレーニングで町内マラソンをしていた。

ビルに囲まれる街の中、スピカは休憩のため付近にいた公園で休んでいた。

「なあなあ、あそこにあるたい焼き販売車でたい焼きでも食おうぜ?もちろんトレーナーの奢りで」

「たい焼き!?ボク食べたーい!!」

「じゃあアタシも!!」

「オレも!!」

「じゃあ私も頂こうかしら。……スぺちゃんは?」

「………………………………………………(無言でお腹を押さえる)」

「……ったくしょうがねえな。奢ってやるよ」

沖野からも承諾を得たことでスピカの面々は販売車へと向かった。

「オレはウィンナーマヨ!」

「はぁ?何言ってるの?白あんでしょ!」

「ボクはね、カスタード!」

「私はこしあんで。スペちゃんは?」

「…………私はいらないです」

その声を聞いた沖野以外が一斉に凍りついた。普段食役旺盛なスぺが食べ物を拒むという自体がイレギュラーなのだ。

「どうしたんだよスペ、ケチトレーナーが奢ってくれるのは滅多にないぜ」

「ケチって……」

「…………実は」

要約すると、皐月賞の前日一〇日に勝負服のお披露目で来着ていたスカートのファスナーが壊れてしまい、思うような走りが出来なくて三着なのが納得いかないらしい。

その原因が、

「体重が増えた?」

「はい。そのせいで腰回りが太くなってファスナーが……」

「なんだそんなことか。どんな悩みかと思えばアスリートらしい悩みだなそれ」

「そんな事じゃないです!」

「知ってたし大した事じゃないと思ったから言わなかったけどさ。お前、一〇キロ増えたんだろ!?」

「っ!!!???」

スぺの表情が一気に赤くなっていく、どうやら当たったらしい。昨日のレース後から作り笑顔で心配かけないようにしていたみたいだし、今朝も何か脱衣所から悲鳴が聞こえたと思ったら、原因は『体重』だったらしい。

「ななななななんで分かったんですか!?」

「なにって、見りゃ分かるだろ」

「分かりませんよ普通!!」

沖野を除いたメンバーが一斉に頷く。

沖野は若干へこみそうになり、みんなは『私達は常識人枠です』と胸を張って(一部張る胸がない)語るが、そもそもスピカ自体が常識枠では無いことに全員気づいてないという。

「まあ、なんだ。体重が増えるって事は筋肉量もついている証だ。だから別に気にせず沢山食べてもいいんだけどな」

「でも……」

「納得いかない、か」

スぺは浮かない表情のまま頷く。

「まっ、体重を減らして筋肉量を増やすのは分かるが、その手のパターンは上手くいくほうが難しい。……だが、この脚があれば__」

沖野の言葉が途切れる。何故なら流れに任せてスぺの脚を触ろうとした沖野をゴルシ、ウオッカ、スカーレット、テイオーが思い切り蹴とばしたからだ。

「なーにみすぼらしいこと言いながらエロいことしてんだ!!」

「全く油断も隙もありゃしないわね!!……そんなことよりもスぺ先輩、アタシダイエットに付き合います!!」

「オレもっす!!」

「みんな……!ありがとう!」

「スピカみんなで『スペちゃんダイエット作戦』だね!こういうの楽しい!」

「そういえばシークレットってなんだったの?」

「うんうん、ボク気になってたんだ。一口ちょうだい」

「ん、」

テイオーはゴルシのたい焼きを一口食べる。

「……!?」

そして、思いっきり叫び出した。

「かりゃぴィィィィィィィいいいいいいいいいいいいいいいいいい!?」

悶え苦しむテイオーを見てウオッカとスカーレットの顔が引き攣る。

「え、何だよ……」

「ゴルシ……アンタ一体に何食べてたの……!?」

「からし」

そういいながら、ゴルシは涼しそう顔でまた食べた。

 

____________________________

 

 

 

翌日。

(くっそー。なんでボクが行かなきゃならないんだー?)

テイオーは午前の部の休み時間、ある人物に会うために違うクラスに向かっていた。テイオーとしてはあまり乗り気ではなく、そもそも入れなきゃいけない理由が見つからない。

『おいスカーレット。オマエ今日日直だろうが!!黒板位消せよ!!』

『アタシは一番になる努力がしたいの!というわけでウオッカ、アンタに任せるわ!』

『っざけんな!?オマエが当番なんだから……ってあんにゃろう!!逃げやがった!!』

聞き覚えのある声を聞きながらテイオーはある人物のクラスに辿りつく。

(あーいたいた)

テイオーはその人物の席の前にある知らない人に席に座りながら、

「久しぶりだねマックイーン。単刀直入だけどボク達のチームに入ってよ」

「いきなりのご挨拶ですわね。というか貴方、私を貴方のチームに入るという意味がお分かりで?」

「ボクだって誘いたくて誘ってる訳じゃないんだ。でも誘わないとゴルシが『マックイーン誘わないとお前バイルドライバーな』って言われたから仕方なくなんだけど」

「ご、ゴールドシップ……!?」

「ん?知り合いなの?」

「知り合いも何も、何故かここのところよく付き纏われてですね……。どうも気に入られたみたいですの……」

「ふーん?まあいいや。とにかくボク達のチームに入ってよ。ボクはまだ死にたくないから」

「……せめて見学させてくださいまし。話はそれからですわ」

「ほっ……」

「代わりにスイーツを奢ってもらいますから」

「ボクの金銭事情が危うくなった!?」

というやりとりを数時間前に行い、スぺのダイエット作戦とマックイーンスイーツ満腹作戦(なおテイオーの懐は一気に寂しくなった)を終えたテイオーは、マックイーンを連れて学園外で行っている神社の階段でトレーニングしていた。

「くっそーお嬢様の癖にあんなにバカスカ食べちゃってさ……。おけげでボクの今月のお小遣いがパーになったじゃん……」

「私これでも大のスイーツ好きですの。普段はプロポーションを整えるために食べませんが、今日はチートデイなので問題ないのですわ……。って、貴方は黙ってくださいまし!!」

「……自分から言っといて誰に文句を言ってるのさ?」

「お気になさらずに。……ところで、テイオー達のトレーナーさんがお見えになりませんが」

「……あれ、そういやどこに__」

『流石はメジロ家のご令嬢!品性のあるこのトモの作りはまさしくふげっ!?』

いきなりマックイーンの背後に現れたと思ったら、テイオーもやられたことのある脚のコンディションチェックと言う名の痴漢をしているのは、まさしくスピカのトレーナーである沖野だった。

「あーあ、またやって蹴っ飛ばされてるよ」

「ななななにをするんですの!?」

「いや、綺麗な太ももを見てつい」

「つい、じゃありませんわよ!?」

「うーん、今のマックイーンの性格だとスピカは似合わないのかな?」

「当たり前ですわ!私はここに入らないことに__」

『でかしたぞテイオー!!』

大きな声でマックイーンの声を打ち消したのは、同じスピカのメンバーであるゴールドシップだった。

「あれ、ゴルシなに持ってるの?」

「なにって、契約書。ということでマックイーン、早速この書類にサインを頼むぜ!!」

「はぁ!?私ここに入る気はないのですが」

「え……?」

面食らった様子でゴルシは一瞬固まり、そして、

「う、ウエーン。ウエーン。ウエーン」

ウソ泣きしだした。

(わっかりやすいウソ泣きだなおい!?)

心の中で思わず昔の自分の口調でツッコミを入れてしまうテイオーだが、

「な、泣かないでくださいまし!別に絶対とは言ってませんわ絶対とは!だから泣かないでくださいまし!?」

「ウエーン。ウエーン。ウエーン」

「………………………………………………」

テイオーはさっさと神社に置いてきたジャージに着替えてスぺには内緒で頼まれたものでも探そうと思った。

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