トウカイテイオー
その名を聞いて一一年が経つ。
転生した世界について、ある程度は把握出来ていた。
まず、ウマ娘とゆうのは、どうも別世界からやってきたということ。例えるなら、俺自身が別世界からやってきたみたいな感じだ。
あくまで推測だが、俺みたいに死んで転生した可能性が高い。
だとしたら、俺がいた世界でも、死んだ奴らがこの世界にやってきたかもしれない
………………………過去に亡くなった悪友という名の親友も、もしかしたら。
仮にも今は女の子なので、出来るだけ女の子っぽくならないといけない。長年染み付いた癖は苦労したが、今ではすっかり慣れっこだ。
前世では、我ながら変なステップをしていた。
つま先立ちで軽く独特なリズムでやるステップだ。
これをクラスのみんなに披露すると凄く人気で、後にテイオーステップと呼ばれるようになった。
自分の呼び方も変えなくちゃいけなかった。何故なら前世は俺呼びだったからこそ、今の姿では似合わない。
色んな呼び方を試した結果、ボク、というのが一番しっくりきた。
さて、ウマ娘といえば走りが命。つまり、レースというのがこの世界ではスポーツの一つだ。
そんな彼、いや彼女、トウカイテイオーは東京レース場に脚を運んでいた。
『三コーナーから四コーナーに向かうところ、シンボリルドルフは今先頭から7.8番手でありますがいまだ動きはありません、四コーナーを回った!最後の直線後方も一気にやってきた!!』
レース経験なんてあんまりないのに、直感とはいえ何となくだけどわかる。
「いいペース、ボクならそろそろ仕掛けるかな」
『シンボリルドルフ外を回った!!残り200m!!外からルドルフ!外からルドルフ!外からシンボリルドルフがくる!!ルドルフがぐんぐんその差を詰めていく!!ルドルフ、並ぶことなく抜き去っていく!!』
「うわあ……!!」
『シンボリルドルフ今ゴールイン!!見事一一人のウマ娘を従え六連勝!無敗の二冠を制しましたぁ!!』
テイオーが歓喜の声を上げる。テイオーはある人に憧れて東京レース場に脚を運んでいた。それが、シンボリルドルフというウマ娘だ。
圧倒的な走りはまさに皇帝。シンボリルドルフというウマ娘には『絶対』があると言われている。そんな彼女の走りにテイオーは憧れた。
もう一つの理由としては、何処か懐かしく、運命的な何かを感じること位だろうか。
「挨拶してこなきゃ!」
そんなテイオーは、記者会見のしている部屋へと訪れていた。
「あの!!」
「ん?君は」
「ボク、シンボリルドルフさんのように強くてかっこいいウマ娘になります!!」
「!」
その声に、周りの記者達は笑う。しかし、ルドルフとその隣にいるウマ娘は微笑みながら、
「君、ルドルフちゃんみたいになるのは大変だよ」
「?」
「才能と努力、運。これらの三つが備わっていないとルドルフちゃんみたいにはなれないんだぞ」
「マルゼン。まだ小さい子には分からないと思うよ」
「そうかしら?」
「全く……。それで君、私のようになるならまずは中央トレセン学園に入学しなきゃならないぞ」
「トレセンがくえん……」
「それでも君は私に追いつきたいかい?」
ルドルフの問いに、テイオーは即答で、
「はい!!」
「ふふ、良い返事だ」
「あらら、ルドルフちゃん嬉しそうね」
「勿論だ、こうして私を目標にして走ってくれる者がいるからな。さて、君の名前を教えてくれるかい?」
「と、トウカイテイオーです!!」
「ふふ。いい名前だ、覚えておこう」
ルドルフの手がそっとテイオーの頭を撫でる。まるで親に撫でられるかのような感じがした。
この日を起点に、トウカイテイオーの人生が本当の意味で幕を開ける。