学校ではもうほとんど文化祭1色になっていたが俺は騒がしさをBGMに空を見上げている
空には飛行機雲が浮かんでいて長く伸びていく飛行機雲の横をさらにもう1つ飛行機雲が流れていく
俺はその様子をカメラに収める
「そういえばひこうき雲って曲があったな」
俺はイヤホンをしひこうき雲を聴き始めた
大切な友との別れを歌った曲ではあるものの空に憧れて空をかけていくという歌詞は俺にとってかなり印象深い歌詞だった
歌詞の通り命が飛行機だとしたらとても儚いものだろう
俺は曲を聴きながら感傷に浸る
「俺にはこんな悲しくて暖かい空は描けないだろうな」
そう呟いて空を見ていると紗夜さんが俺を呼びに来た
「黒崎君!またこんなところでサボって!」
「俺の役目は記録係だし、クラスの出し物は写真展だよね?なら問題無くない?」
「配置や写真選びにはあなたの手も必要なんです!」
「俺、そういうの得意じゃないんだけどね」
俺の返答に溜息をつきながら紗夜さんは言った
「あなたくらいですよ、文化祭準備に消極的なのは」
「バタバタするよりゆっくり空を見ていたいだけなんだ
いろんなアーティストが空を歌っているけど、俺の空はまだ小さすぎる
俺は果てしない空を音楽という物語で描きたい」
「あなたの空はそこまで小さく無いと思いますが」
「まだまだ全然だよ!俺の空はまだ近過ぎる」
「よく分かりませんが今はどんな空を描きたいんですか?」
「そうだな〜ちょっと悲しくて暖かい空かな」
「曇りや雨空から太陽が出て暖かくなるようなそんな感じでしょうか?」
「例えとしては間違ってないけど、空と人との繋がりって言うかが感じられるとなお良いんだよね」
「考え方が独特なのでわかりかねますね」
「まぁ、俺自身もこれだって言える答えは持ってないからまだなんともね」
俺はそう言ってから日の出の写真を渡す
「話に付き合ってくれたお礼」
「今日のは日の出の写真ですか、素敵ですね」
「そのうちRoseliaの写真も撮ってあげるよ、人を写すのは苦手だけどね」
そうして俺達は教室に戻り準備を手伝った
放課後
帰ろうとしていたタイミングで香澄と会った
「暁人先輩!」
「やぁ、香澄とそっちの子は?」
「はじめまして、山吹沙綾です」
「君が沙綾ちゃんか、香澄から聞いてるよ、一緒にバンドやろうって誘われてるんだよね」
「まぁ、そうなんですけど…私はもう…バンドは…」
香澄たちと話した通りの子だと思った、そして心にかなり厚い雲がかかっていると感じた
「君は空を見上げたことはある?」
「え?そりゃまぁありますけど」
「見上げて何かを感じたりは?」
「特にありません」
「じゃあ印象的な空は?例えば幼い頃見た夕焼けとか」
「そうですね…春の日差しの中で皆で笑ってる時に見た空が印象的でした」
俺はその答えを聞いて少し考え桜の花びらと雲が流れる瞬間の写真を取り出し渡す
「これが君が見た空に近いかも」
「貰っていいんですか?」
「もちろん!君にあげる」
「私もまえに貰ったんだ!先輩の写真って目を閉じてもその景色がずっと残ってるんだ!私なんて毎日貰った写真を見てるもん!」
「そうなんだ、確かに綺麗な写真だよね、私もこの写真を見てると不思議と気分が落ち着くよ」
俺は沙綾の表情を見てまだ心の空は曇ったままだと感じた
「君はまだ曇り空から抜け出せてないみたいだね」
「え?」
「こっちの話、曇り空から土砂降りの雨が降ってるみたいだなって」
「香澄、どういう事?」
「さぁ〜先輩の考え方ってかなり独特だから」
「香澄には言われたくないな〜」
「先輩ひど〜い!」
そうして俺達は笑いあった。
それから時間が経ち迎えた文化祭当日
俺は校舎内の喧騒を避けて屋上にいる
紗夜さんは風紀委員として校舎内の見回りがあるため今回は
教室に連れ戻される事も無いだろう
そう思いつつ雲が少し多く漂う空を見上げていた
しばらく空を見上げていると屋上の扉が開き香澄がやってきた
「香澄!」
「先輩!お願いがあるんです!」
「ちょっと待って!」
俺は給水タンクのある1段上のスペースから降りて話を聞く
「それで、どうしたの?」
「沙綾を迎えてに行ってくれませんか?」
「俺が?」
「先輩なら、沙綾の空を晴れにする事が出来るんじゃないかなって」
「詳しく聞かせて」
俺は事情を聞かせてもらった
沙綾の母親が倒れてそれに付き添う形で沙綾も着いて行ったらしくもしかしたらこのまま沙綾が心の底から色んなことを楽しめなくなるんじゃないかと香澄は心配だと言っていた
「わかった、行ってくるよ!香澄達のLIVEに必ず間に合わせる!」
「お願いします!私達はクラスの出し物とか頑張ります!」
「その様子を伝えてあげて」
「わかりました」
俺は屋上を後にし全速力で階段を駆け下りた後自転車を飛ばし沙綾の所へ急ぐ
そして病院へ着くと院内と庭の辺りを探しようやく沙綾を見つけた
沙綾は電話で誰かと話している様子だったがあえて声をかける事にした
「沙綾」
「黒崎先輩…どうしてここに?」
「君を迎えに来たって言ったら?」
「帰ってください!私はもう良いんです」
「良くは無いかな、だって君を待ってる人達がいるんだもん」
「私だけ楽しむなんて出来ません!だって…だって…私がいなかったら誰がお母さんを気にかけるの?家族の心配をすることの何がいけないの!?」
俺にはその言葉が悲痛な叫びにしか聞こえなかった
俺は迷った末に声をかける
「家族の心配をする事はいけない事じゃないさ、でも、
沙綾の両親だって沙綾が笑っててくれないと嫌なんじゃない?青い空の下でさ楽しそうに笑っててくれなかったらそれはそれで沙綾の両親だって辛いと思うよ」
「私だけ楽しい思いなんて出来ません!」
「俺はそれでも、君に笑ってて欲しいな」
「どうして?どうして会ったばかりの先輩にそんな事がそういう風に思えるんですか?」
「君には悪いと思うけど、君の前のバンド仲間の子達と話したんだ」
沙綾の表情がハッとした表情になりすぐにまた雲がかかったような顔になった
「皆は……なんて?」
「私達は沙綾にまた心から笑って音楽をやって欲しいってさ
香澄達も沙綾を待ってるって」
「私は…また音楽がやりたいです!でも、やっぱりお母さんの事だって心配なんです」
「そこは皆と話すしかないんじゃない?もちろん両親ともね」
「私は香澄達と一緒に音楽をやりたいです!」
「なら、やればいいんじゃない?」
声の方を振り向くと沙綾のお母さんが立っていた
「途中からだけど、聞いていたわ、彼の言うとおりあなたが楽しい思いをしてくれなきゃ楽しくないわ、親として自分の子の楽しいと思う気持ちは応援してあげたいもの
行きなさい沙綾」
「行ってきます!先輩!自転車の後ろ乗せてください!」
「OK!行くよ!」
「あっ!ちょっと待って!黒崎君」
「俺ですか?」
「娘をよろしくね」
「俺だけじゃなくて皆があの子を1人にはしませんよ!」
そうして俺達は学校へと急いだ
そして学校に着くと沙綾は脇目も振らずに体育館へと走っていった
そして香澄達と合流し改めて香澄達Poppin’Partyの演奏が始まった
俺は入口前で演奏を聞いていると紗夜さんが隣にやってきた
「紗夜さん、いたんだね」
「貴方こそ、学校に来てないのかと思いましたよ」
「ちょっと後輩達を陽のあたる場所に連れ出してた」
「そうですか」
そうして文化祭LIVEが終わりを告げた
俺は体育館を後にすると香澄達がそろってやってきた
「先輩、ありがとうございます。沙綾を陽のあたる場所に連れ出してくれて」
「先輩がいなかったら私は立ち止まったままだったかもしれません」
「俺がいなくても香澄が君を連れ出してたと思うよ!」
「でも、先輩も一役買ってくれた訳ですし、あたしらからもお礼を言わせてください、ありがとうございます。」
「別にいいって!これからは陽のあたる場所で仲間と一緒にやっていきな」
「はい!」
そうして文化祭そのものも終わりを迎えた。
沙綾視点
文化祭が終わった夜何気なく先輩がくれた写真を見ていた時
スマホに通知が届いた、前に香澄が教えてくれたSKYだった
「今日の曲はどんなだろう」
私はイヤホンをして曲を聴いていく
『土砂降りの雨が降る海岸で泣いている女の子
その子の涙を覆い隠すように雨は止むことなく振り続ける
涙を流しきった時雨が止み空に虹が架かった
その虹を追うように走り出せばその先に仲間が待っていて
優しくその子を陽のあたる場所へと連れ出してくれて
自然とその子にも笑みが戻るのだった』
曲を聴き終わると私はまるで自分の事を歌われているようだと感じすぐに香澄に連絡し暁人先輩の連絡先を教えて貰い
本人に直接会う約束を取り付けた後その日は就寝した
次の日
学校は文化祭の振替休日で休みだけれど私は暁人先輩に会うため学校に来ていた。
「多分屋上だよね?」
そう言って屋上に向かった
屋上に着くと案の定屋上を囲むフェンスにもたれかかっている暁人先輩がいた
先輩は私に気付き声をかけてくれた
「やぁ、おはよう沙綾」
「おはようございます。それで、あの!先輩に聞きたい事があって」
「何?」
「先輩がSKYじゃないんですか?」
「違うよ、俺はSKYじゃない」
「嘘ですよね?だって先輩は隠してるつもりは無いでしょ?」「どうしてそう思うか聞いてもいい?」
「隠すつもりなら今回の曲をSKYにあげたりしてないと思いますし何より動画の最後に使われていた写真が私が貰ったのと似てました」
「なるほどね、ある程度確信があるわけだ」
先輩がそう言うとタイミングを見計らったように風が吹き
先輩の髪や着崩した制服が風になびく
私は先輩を見てなんて空が似合う人なんだろうと思った
それから少しして先輩が口を開く
「沙綾の指摘は正しいよ、俺はSKYだよ、今回の曲はSKYとして投稿するべきだと思ったからそうしたんだけど、まさかバレるとはね、知ってるのは沙綾だけ?」
「はい、ほかの皆は知りません」
「じゃあ、そのまま黙っててね秘密の共有者って事で」
「わかりました。」
「じゃあ内緒の約束」
俺はそう言って沙綾に1枚の写真を渡す
「夜桜と月の写真…」
「俺が初めて撮った写真だから、大切にしてね」
そう言って暁人先輩は帰って行った
私はそのまま見えなくなるまで先輩を見送る事しか出来なかった、内に芽生えた感情にまだ名を付けられないもどかしさを感じながら
ポピパ編完結です。主人公がSKYだと言うことをあえてバラしてみました。
次回からSPACE編に入ります話数は2か3話を予定していますのでそちらもお楽しみに
次回「空の果ての宇宙」
投稿頻度に着いてのアンケートです
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とりあえず現状維持で!
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最低でも月に2回くらいは投稿を!