舞い戻った理不尽ウマ娘は、元教え子達への対応に頭を悩ませる?   作:レイ1020

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ベールの初レースになります。


彼女の実力は・・・・・・?


初対決!オルフ対ベール

 

 

視点 三人称

 

 

数時間後、夜になり少し肌寒くなり始めた頃、ナイターの付いた学園内のグラウンドには約束通り、ベールとオルフの姿があった。今日の午前中にとはいえ、一度レースを終えたオルフには疲れが溜まっているかと思われたが、本人曰く、『十分な休みと飯を摂ったから回復した』との事らしいので、それについては問題なさそうだった。

 

 

「2人とも、くれぐれも無理はしないように。特に、オルフェーヴル。キミは既にレースを一戦こなしている身である以上、怪我をしないように注意するように」

 

 

 

「わ、分かったっす・・・・・・」

 

 

 

ちなみに、この場には2人の目付け役としてルドルフもいた。流石に、夜に12歳の子供2人がグラウンドを使うと言うのは、学園側としても心配だったようで、仕方なくベールの教育係であるルドルフが見守ることとなったのだ。ベールはともかくとして、オルフは自分の憧れの存在でもある皇帝(ルドルフ)が目の前にいる事実に、若干足がすくんでいた。・・・・・・正確には、今から自分が走ろうとしている相手もまた、彼女が憧れを持つデスペルフォースなのだが、それを彼女が知るはずもない。

 

 

 

「おい、ベール・・・・・・。お前、シンボリルドルフさんとどんな関係が・・・・・・っ?」

 

 

 

「・・・・・・」

 

 

 

オルフが、ベールにこの状況の説明を求めてきたが、ベールはそれに答える事をせず、ただ1人・・・・・・胸に手を当て、静かに瞑目していた。

 

 

 

「(久しぶりのレース。期間で言えば12年のブランクがある・・・・・・。今の私にどれだけの走りが出来るかはわからない。・・・・・・だけど、このレースはオルフにとって良い経験にしたい、変え難いとても濃密で重要な経験に・・・・・・だからこそ、私は全力で走る!今持てる力・・・・・・全てを出し切って・・・・・・!)」

 

 

 

「おい、ベー・・・・・・っ(す、すげぇ・・・・・・なんて集中力だ・・・・・・)」

 

 

 

「・・・・・・」

 

 

 

こちらから話しかけても、ピクリとも反応を示さないその異常なるベールの集中力に、オルフは萎縮し、ルドルフは沈黙を貫く。これは、彼女がデスペルフォースであった頃と同じで、レース前になると彼女はこうして1人孤独に瞑目をして集中力を高め、レース内での作戦や、ペース配分、勝利へのビジョンを頭の中で整理をしているのだ。なので、今の彼女に何を言っても彼女から返されるのは、沈黙だけなのだ。

 

 

 

「・・・・・・・・・・・・ふぅ、やろうか、オルフ。ルドルフさん、開始の合図をお願いします」

 

 

 

「分かった。2人とも、スタート位置に立ってくれ」

 

 

 

ルドルフに指示された通りに、スタートラインに立った2人は、同時に態勢に入る・・・・・・。何とも、このグラウンドに入ってから普段とはどこか違う様子のベールに、オルフは内心で戸惑いを見せていたが、今はレースに集中するべく、体を強張らせていた。

 

 

 

「では、始める。・・・・・・よーい・・・・・・スタート!!」

 

 

 

声の合図と共に、2人はスタートダッシュを切った・・・・・・オルフにとって初めてのルームメイトとのレース。そして、このレースを持って、自分にとって謎だと思っているベールの強さ・・・・・・恐ろしさを分からされることとなるのだった。

 

 

 

 

 

ちなみに、この時のベールには、教え子のルドルフが目の前にいるから正体を隠すだとか、実力を抑えるだとか・・・・・・そんな考えは頭の中からすっ飛んでいた。

 

 

 

 

 

 

 

––––––––––––––––––––––––––––––––––

 

 

 

 

 

「しっ!スタートダッシュは・・・・・・オレの勝ちだ!」

 

 

 

スタートダッシュで先に抜け出したのはオルフ。持ち前の抜群のスピードでベールを一気に突き放しにかかる。

 

 

 

「(短距離はオレの得意分野!だから、同年代のお前にだけは負けるわけにはいかねぇんだ!)」

 

 

 

先の中距離とは違い、思いっきり自分のレース運びの出来ているオルフ。レースが進みにつれて、徐々に調子もペースも上がり始め、彼女自身かなり高揚していた。

 

 

 

 

 

 

「(へっ!半分を切った!このまま一気にゴールへ・・・・・・)っ!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・・・・勝利をこの手に。・・・・・・邪魔する者は・・・・・・淘汰するべし」

 

 

 

 

 

 

 

背後から聞こえた、その野太く低い声に、オルフの背中に悪寒が走る。ふと、ゆっくりと後ろを振り返ってみると・・・・・・。

 

 

 

「・・・・・・っっ!!!?」

 

 

 

そこには、先程までかなり差を付けて突き放していたと思っていたベールの姿があった。彼女独特の”超低姿勢フォーム”で徐々に自分との距離を詰めてくるその時の彼女の表情は、まるで凍てつく北極の氷の如く、冷たい表情へと変わっていた。また、”ハイライトの消えた”その茶色の双眼に睨まれた事で、軽くビビってしまいペースを乱してしまう。・・・・・・いつも明るく、気さくで優しいベールが・・・・・・こんな表情を見せた事すらないベールが、こうも変貌を遂げた事実にオルフはかなり動揺していた。

 

 

 

 

「オルフェーヴル。その強さ、気迫には敬意を表する。なら私は・・・・・・全力でそれに応えるのみ 」

 

 

 

「お、お前・・・・・・一体?」

 

 

 

オルフが何か言いかける前に、ベールはその隙を突いて一気に前に躍り出る。その瞬間、ベールは一つ呼吸を整え、身体中の血の巡りを加速させ、神経を研ぎ澄ませる。そして・・・・・・彼女は()()()

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『覆されし常識』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ウマ娘にとって極地とも呼べる場所・・・・・・領域(ゾーン)。選ばれたウマ娘しか入る事を許されない神聖なる場所。・・・・・・本来であれば、偶発的に発動する物であり、レースによってはこの場所へと至れない場合もあるのだが、ベールは・・・・・・デスペルフォースはそんなジンクスを無視して領域(ゾーン)へと入る事を可能としている。

 

 

 

 

「私は負けない。例え、どんな事があろうとも 」

 

 

 

「くっ!オレだって負けねぇっ!」

 

 

 

「やはり面白い。・・・・・・だが、今回は私の勝ちだ」

 

 

 

 

なんとか追い縋るオルフに対し、それを嘲笑うかのようにさらにスパートを掛けるベール。これにはオルフも対応する事が出来ず、一気に差を広げられてしまう。デスペルフォースの現役時代、この状態となった彼女に敵うウマ娘は誰1人としていなかった。ただでさえ強いデスペルフォースが領域(ゾーン)へと入るのだから当然と言えば当然なのだが、そのあまりの強さに絶望し、心を折られたウマ娘もごまんといたそうだ。

 

 

 

それを知るベールは、このレースであえて本気で走る事にし、オルフが絶望をしながらも崩れない精神と心を持ち合わせているかを確認したかったのだ。崩れるのであればそれまで、持ち直せるのであれば優秀・・・・・・そのような風にベールは割り切っていた。

 

 

 

 

そして、レースは滞りなく終わり、最終的にはオルフはベールに15バ身の大差を付けられ惨敗・・・・・・という結果になった。レースを終えたと言うのに、涼しい顔をして佇んでいるベールに対して、オルフはひどく疲れた様子で肩で息をしながらその思わぬ結果に驚愕していた。

 

 

 

「ふぅ・・・・・・」

 

 

 

「はぁ・・・・・・はぁ・・・・・・ま、まじか・・・・・・よ?ベール・・・・・・お前一体・・・・・・?」

 

 

 

今まで短距離で同年代に負けた事がなかったオルフにして言えば、初めて経験する事であり、尚且つこうしてあからさまに惨敗を喫しているのだから、こう言った反応になるのもわかると言うものだ。とはいえ、今回は相手が悪すぎた。転生した身とは言え、実力も経験も何枚も上であるベールを、まだ発展途上の経験の浅いオルフが負かすことなど現状では不可能だったのだから。

 

 

 

「オルフ、ありがとう。久しぶりに楽しかったよ。やっぱりレースはいいね!」

 

 

 

「っ?お、おう・・・・・・。そうだな・・・・・・ってそうじゃ無くて!お前、あんな実力隠し持ってたのかよっ!?」

 

 

 

先程の凍りついた様な表情を見せていたベールでは無く、いつもの柔らかい笑みを浮かべるベールに戻っていた事に内心で唖然としていたオルフだったが、直ぐに正気を取り戻し、ベールに問い詰める。

 

 

 

「それ相応のトレーニングはしてたから。・・・・・・とは言え、自分でも思ってたよりも力が出せた事にはちょっと驚いたけどね?」

 

 

 

「・・・・・・そんな実力持っていながら、トレーナーとしてここに来るだなんて・・・・・・ほんと変わってるよな、お前って」

 

 

 

「変わり者で結構。自覚あるし」

 

 

 

こう言ってはなんだが、ベールは本当に変わっていると言える。これだけの実力を持ち合わせているのであれば、レーサーとして生きれば大成を成せるとは誰しもが思うことだ。それに、ウマ娘は走る事を本能としている種族であり、ある意味では走ることはウマ娘にとっては何より大事なことであって、仕事でもあったりもする。それを、彼女は放棄し、トレーナーを志望していると言うのだから、変わっていると言われても何も不思議なことではないだろう。

 

 

・・・・・・まぁ、前世ではレーサーとして十分すぎる実績を残した彼女だからこそ、今世では新たなる道としてトレーナーとしての生を全うしようと決意したからなのだが、外野はそれを知る由もないので、ただの変なウマ娘として捉えられてしまうのは何とも言い難いが。

 

 

 

「さて、ルドルフさん。良ければタイムを・・・・・・」

 

 

 

ベールはタイムを測ってくれていたであろうルドルフに声をかけ、お互いのタイムを聞こうとした。だが、当のルドルフはというと・・・・・・。

 

 

 

「・・・・・・」

 

 

 

ストップウォッチを測る態勢のまま硬直し、その大きな瞳を煌めかせながらベールを凝視していた。・・・・・・まるで、この世のものとは思えない物を見ているかのように・・・・・・。

 

 

 

 

 

 

「・・・・・・サイレントベール。キミは一体・・・・・・・・・・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

()()()?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ルドルフさん?何言って・・・・・・・・・・・・あっ」

 

 

 

この時、ベールは改めて自覚する。自分が何をしでかしたのかを・・・・・・。前世での教え子であったルドルフの目の前で、姿が違うとはいえ、前世の時のデスペルフォースと同じレース運びをしてしまったというとんでもない過ち・・・・・・。デスペルフォースと何度にも渡ってレースで対決してきたルドルフにしてみれば、今して見せたベールの走りはまさにルドルフの目指したデスペルフォースのそれであり、驚愕すると言うのもわかる話である。

 

 

 

「(レースに集中しすぎて、そんな大事なことを忘れるなんて・・・・・・私の大バカっ!!)」

 

 

 

レースの事となると、集中力が高まりすぎて、他のことに対する配慮が欠けてしまう。・・・・・・前世のデスペルフォースの長所でもあり、逆に短所でもあった所だ。それをものの見事に継承して、この場でそれを爆発させたことに対して、激しく自分を罵り頭をポカポカと殴り出すベール。

 

 

 

 

 

 

「・・・・・・ふっ」

 

 

 

 

その様子を見たルドルフは、少しだが・・・・・・口角を吊り上げていた。




ベールは変な所がバカなのでこう言った場面が今後もあると思われますので、大目に見てください。レース中の彼女の変貌は別に人格が変わってる訳ではありませんので、勘違いしないでください。レース中になると彼女はあんな状態になる・・・・・・と言うことだけは覚えてもらえると嬉しいです。

次回は、ルドルフの視点に移ります。彼女の目にベールがどう映ったのかを書くつもりです。





【覆されし常識】

デスペルフォースの固有スキル。サイレントベールはこのスキルを継承して転生した為、同じ様に使える。

レース中盤から終盤にかけて前の方にいると驚異的な威圧と気迫を見せ、速度をすごく上げる。
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