舞い戻った理不尽ウマ娘は、元教え子達への対応に頭を悩ませる?   作:レイ1020

14 / 18
今回でこの話は終わりです。


そろそろ日常に戻りたいので。


嫌われた過去

視点 ルドルフ

 

 

 

「だから優しいって言ったんだ。あんな『悪者で悪役』でウマ娘だけで無く・・・・・・ヒトからも()()()()()()を慕ってくれて・・・・・・」

 

 

 

そのように口にするスペルさんは・・・・・・どこか寂しそうに、遠い目をしながら夜空の星々を眺めていた。

 

 

 

「き、嫌われ者って・・・・・・そんな事は・・・・・・っ」

 

 

 

「良いって。事実だったんだし。それに、別に私は誰に嫌われようが構わなかったし、『嫌われたから何だ?』って開き直ってたから全然気に留めてなかったよ?」

 

 

 

何かフォローをしようとする私だったが、結局何も思いつかず逆にフォローをされてしまう情けなさに、下唇を噛んだ。

 

 

 

 

 

前世でのこの人・・・・・・つまり、デスペルフォースは、当時のウマ娘界の常識を覆すほどの、無類の強さを誇ったウマ娘だった。レースにおいては、月に”何度”も出場するのは当たり前。それも、短距離・マイル・中距離・長距離といった全てのレース(G1・G2・G3・オープン問わず)に果敢にもチャレンジしていき、勝利を積み重ねていった。トレーニングにおいても、他のウマ娘達の”数十倍”の量をこなし、その後でレースに出場をした事もあったそうだ。だと言うのに身体を故障する事も全くと言って良いほど無く、当時のあの人は『規格外』・・・・・・そう呼ばれていた。

 

 

 

だが、そのあまりの『規格外』故に、ウマ娘のファン達の反感を買う羽目となってしまい、スペルさんはそのファン達から度々批判をされるようになっていった。ウマ娘は、走る事を目標とし、レースに勝つために努力をする。・・・・・・それは当たり前の事であり、スペルさんもただそれをずっとやり続けていただけだったので、批判をされる筋合いなど無いと言って良いはずだ。スペルさんは、先ほども話したように月に数度もレースに参加し、それらすべてに勝利しトロフィーを持ち帰っている。しかも、スペルさんには苦手な距離のレースや苦手なバ場が一切ないと言って良かったので、出れるレースの幅もかなり広かった。だからこそ、ジュニア期からシニア期にかけて、100個のレースに出場し、全てに勝利出来たと言って良いのだが・・・・・・あの人はそれ故に嫌われた。

 

 

 

考えても見てほしい。その年における大半のレースの勝利を、たった一人のウマ娘にかっさられた・・・・・・となった時、それを見守る観客はどう感じるだろう?

 

端的に言えば・・・・・・『つまらない』『面白くない』・・・・・・こう言った声が飛び交う。当然といえば、当然だろう。レースの醍醐味といえば、ウマ娘同士の意地のぶつかり合いと終盤でのデットヒートと、それが元で生まれる感動的なドラマだ。そして、そのレースの後のウイニングライブと言うのがまさに格別と言ったところだ。その筈が、毎度のように『同じウマ娘が他のウマ娘達を大差で下している姿』を見たところで、面白さのカケラもない事は誰にでもわかるし、ただただ『結果の分かった冷めたレース』を観客達が見たいと思う筈もない。だからこそ、それの根本的な原因を作っているスペルさんに徐々に批判が行くようになり、一躍あの人は『嫌われ者のウマ娘』として名を馳せることとなった。

 

 

また、スペルさんが負かしてきたウマ娘達には、当然彼女達のファンもいる筈なので、スペルさんが彼女達を何度も負かす度にスペルさんへのヘイトは溜まっていき、最終的にはレース中は勿論のこと、その後のウイニングライブですら罵声やブーイングが飛び交うほどにまで、彼女は嫌われることとなってしまう。ひどい時には、トレセン学園に、『脅迫状』まで送られてくる事さえあったのだから、この人の嫌われ具合がどれほどのものかは想像できるだろう。それこそ、同じように『悪役』と称されていたライスシャワーとは比べ物にならないくらいには・・・・・・。

 

 

 

「同族のウマ娘達に嫌われるのは何と無く分かっていたけどね?私は・・・・・・いろんなウマ娘達とレースに出て、その多くを蹴落として来たんだし。恨まれたって何も文句は言えない」

 

 

 

「そう・・・・・・ですね」

 

 

 

スペルさんは、ニンゲンには勿論の事、当時この人と同じ時代を生きたウマ娘達からも相当に嫌われていた。この人の教え子だった私たちは例外として、その他のウマ娘たちでこの人に良い感情を持っている人は殆どいなく、スペルさんの事について口を開けば常に、妬みや恨み節、罵詈雑言・・・・・・と言った言葉が飛び交う。その殆どが、スペルさんにレースに負けた事に対する当てつけのようなもので、聞いた当初の私ですら、正直聞くに耐えなかったと思うほどだった。

 

 

 

・・・・・・お門違いも良いとこだ。そもそもの話、この世界は勝負の世界。勝者は肯定され、敗者は否定される残酷な世界である。スペルさんに負けてそんなくだらない事をほざく暇があるならば、鍛錬を積み、スペルさんに勝って見返してみろ・・・・・・と当時はそんな風に怒っていた。まぁ、その殆どがスペルさんとのレースで心をへし折られたウマ娘たちだったが。

 

 

 

だが、今にして思えばそう口にしていたウマ娘達の気持ちも何と無くだが分かっていた。どんなに努力をしても、絶対に到達できない極地・・・・・・選ばれしものしか到達出来ないその聖域に常に立つスペルさんに、凡人であるウマ娘・・・・・・今の私達を含めたウマ娘達が敵うはずなど無いのだから。私はもしかしたら運が良かったのかもしれない。もしも、この人と模擬戦では無く、同じ公式レース場に立ち、共に鎬を削っていたとするなら、私もあのウマ娘たちと同様・・・・・・心をへし折られていた可能性があったはず・・・・・・。それだけの強さを、この人は持っていた。

 

 

 

「致し方ないと思います。毎度毎度のように後続のウマ娘達とあんな大差をつけて勝てば、それなりに悪い感情を持つ者は必然的に現れますし。実際、私の周りにもそう言った輩はいましたし、罵詈雑言を浴びせてきた事も頻繁にありましたよ?・・・・・・貴方ほどではありませんが」

 

 

 

「・・・・・・うん、とりあえず、その人達は後でとっちめる。ルナの悪口言うなんてそんなの私は許せないし、それ相応の罰を受けて貰おう」

 

 

 

「ま、待ってくださいっ!私は別に気にしてませんので深く考えなくて良いですから!それに、今はそう言った事は収まっていますので、今スペルさんが何かした所で捕まるだけですよ?」

 

 

 

「・・・・・・それなら良いけど。もし、何かあったらすぐに教えてよ?私にできる事なら何でもするから」

 

 

 

不服そうな表情を見せたスペルさんだったが、納得したのか軽く一息ついてから持ってきていた水を少し口に含んだ。その様子を見た私は、小さく口元を緩めていた。

 

 

 

「(やはり、何も変わっていない。少し抜けているところはあるものの、その雰囲気、温もり、私たちに対する優しさ・・・・・・そして、レースとなると人が変わったように豹変する様・・・・・・それらすべてが、当時と比べても全くと言って良いほど変わっていませんね、貴方は・・・・・・)」

 

 

 

 

「・・・・・・?どうしたの?私の顔見たりして」

 

 

 

「いえ、いつものスペルさんだな・・・・・・って、ちょっと安心してしまいまして」

 

 

 

「私は私だよ。どんなに月日が経とうと、私が変わることなんてないし、今後も変わるつもりは無いよ?」

 

 

 

「それを聞けてさらに安心しました。貴方には、今後もそのままでいて欲しかったので。私が・・・・・・いえ、私たちが惚れたデスペルフォースのままで・・・・・・」

 

 

 

 

性格というのは、月日を経れば変わる輩も数多くいる。私の知り合いでもそうなったウマ娘はいたし・・・・・・今後もおそらくは出る事だろう。この人も、そうなっていてもおかしく無いほどにあの時から月日が過ぎていた。だが、それでもこの人は変わらず、私たちの好きだったスペルさんでいてくれると約束してくれた。・・・・・・これほど嬉しい事はここ最近はあまりなかったな。

 

 

 

「勿論だよ。・・・・・・あ、そうだ。ルナにちょっと言っておきたい事があるんだけど?」

 

 

 

「・・・・・・?なんですか?」

 

 

 

「私と二人でいる時は、そんな感じで話しても良いけど、普段の学園生活の時・・・・・・つまり、他の周りの人がいる時とかは私の事を、サイレントベールとして接して欲しいんだ。流石に、キミがこんな小さなウマ娘に敬語で話している姿を見られると不自然に思われちゃうでしょ?」

 

 

 

「それは・・・・・・構いませんが、今後も貴方は正体をバラすつもりはないと?」

 

 

 

「そうかな。今世はサイレントベールとして生きたいし、元々ルナにだって正体をバラすつもりは無かったんだから、勘付かれない限りは正体は秘密にしておくと思う。・・・・・・そこはルナも協力してよ?もう私の正体を知っちゃったんだから」

 

 

 

「分かってますよ。ふふ・・・・・・」

 

 

 

正直、少し残念に思ってしまった私だったが、スペルさんの選択である以上、従わざるを得ない。・・・・・・とは言え、今回の機会のように、この人がデスペルフォースだと勘づける機会が今後もある筈なので、その際に他の教え子達に勘付かれてこの人があわあわするのもまた、面白いのかもしれない。それを楽しみに待ちつつ、私は日々精進していく事としよう・・・・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

今度こそ貴方を認めさせ・・・・・・今度こそ貴方を超える・・・・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それを夢見て。




ベールの掘り下げは一旦ここまでで次回から普段の生活に戻りますが、まだまだ掘り下げられていない所も数多くあるので、今後の話中に出せたら良いかなって思っています。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。