舞い戻った理不尽ウマ娘は、元教え子達への対応に頭を悩ませる? 作:レイ1020
視点 サイレントベール
『ねぇ・・・・・・?楽しい?そうやって毎度のように、凡人の私達をボロボロに負かして・・・・・・』
『・・・・・・』
『・・・・・・センターになって観客の歓声も独り占め・・・・・・勝利の快感を味わうのも独り占め・・・・・・それの何が楽しいって言うのよ?私達の夢を毎回毎回阻んでおきながら、自分だけいい気持ちになって・・・・・・」
『・・・・・・悔しいなら、その力をバネにして私に勝って見せてよ。今のあなたがそう言った所で、”負け犬の遠吠え”にしか聞こえないよ?』
『何なの、嫌味?・・・・・・はっ、あんたは何も分かってない・・・・・・。自分がどれだけの存在かを・・・・・・どれだけ化け物なのかを・・・・・・』
『・・・・・・何が言いたいの?』
『あんたみたいな化け物と張り合えるウマ娘なんて・・・・・・いる訳無いって言ってんの。凡人がどんだけ努力をしようと、真なる天才には結局押しつぶされる運命にあるんだから・・・・・・』
『っ!・・・・・・』
「・・・・・・嫌な夢見た。はぁ〜・・・・・・起きよっと」
日がまだ昇らぬ午前4時。不快な夢を見た為に目が覚めてしまった私は、軽く伸びをしつつ身体を起こした。
「独り占め・・・・・・か。別に私はそんなつもりでレースを走ってた訳じゃなかったのに・・・・・・」
一つため息を吐いた私は、パジャマからジャージに着替えると、隣で寝ているオルフを起こさないよう、静かに部屋の外に出た。寮から出てグラウンドまで来ると、軽くストレッチと体操をした後、身体を起こす為にランニングを開始した。
「レースに出て、一生懸命に走って・・・・・・勝利する。・・・・・・それが私にとって何よりの快感であって、楽しみだった。・・・・・・だけど、そうやって私が一生懸命に走って勝っても、ウイニングライブで精一杯踊っても、褒めてくれる人や応援してくれる人はトレーナーを除いて殆どいなかった・・・・・・」
ランニングをしている最中も、先ほど見た夢の事が忘れられず、心の中でずっと考え込んでいた。前世の私は、自分で言うのも何だけどかなり強かったと思ってる。実際、レースでは一度も負けた事はなかったし、ライブでのセンターも譲った試しはなかった。だが、私がレースで勝とうと、ウイニングライブでセンターに立とうと、私に浴びせられるのは・・・・・・。
・・・・・・引っ込めっ!!
・・・・・・テメェなんざお呼びじゃねぇんだよっ!!
・・・・・・毎度毎度勝ちやがってっ!たまには他に譲ったらどうなんだっ!!
・・・・・・ウマ娘達の夢を潰す極悪ウマ娘っ!さっさと引退しろっ!!
・・・・・・お前のセンターのライブなんざもう見飽きたんだよっ!!
容赦無いブーイングと罵声だった。引退レースとなったあの有馬記念でさえ、9冠の達成を祝うでもなく、これまでの功労を労うでもなく、結局は同じくブーイングを浴びせられ、終いには物を投げ付けられたりした。・・・・・・無敗で3冠を達成した頃は、お客さんもウマ娘達も物凄く”褒めてくれた”って言うのに、この掌返しは当時非常に驚いたものだった。
実を言うと、私が引退したのはこれが嫌だったのもある。本当は、もうちょっとレースを走りたいって気持ちもあったんだけど、走ったところで私にはデメリットしか無いし、何より私には既にレースに対する魅力が無くなりつつあったので、引退を決めることにしたんだ。当然と言えば当然だろう。誰が好き好んで、”出れば確実に罵声を浴びせられる場”に出たいと思うだろう?魅力を持てと言うのが無理な話だ。
「・・・・・・まぁ、所詮そんな物だよね。ヒトもウマ娘も、自分が思う通りの結果にならないとすぐに本性を表す・・・・・・悪い言い方をすれば”自己中”・・・・・・ってとこか。今にして思えば、私ってバカだったのかな?せっかく夢だったウマ娘の世界に来たって言うのに、わざわざ嫌われる道に走って・・・・・・」
勿論、私だって嫌われようと思ってレースに出ていた訳ではない。むしろ、もっとみんなに好かれようと、みんなから注目されようと思ってレースに出て勝利を重ねていた。無論、その為の努力だって惜しんだつもりは無かった。だが、その行動とは裏腹に、まるで『悪役』のようにみんなから嫌われてしまったのだから、今までの私のしてきた事が、どうにもアホらしく感じてしまうのだ。
そう思うと、ルナを始めとしたあの教え子達は、本当に良い子であり、変わっている子だった。同世代どころか、トレセン学園のウマ娘達にも嫌われている私に、何の躊躇もなく付き従ってきてくれたのだから。・・・・・・当時の私にとって、彼女達は唯一の心の拠り所とも言ってよかった。
「・・・・・・とは言っても、結局その教え子達も置いてけぼりにしちゃったんだし、その子達に嫌われちゃっても不思議じゃないかもね。ルナはそんな様子なさそうだったけど・・・・・・」
ランニングを終え立ち止まった私は、軽く肩で息を整える。ルナは昔のように接してくれたが、他の教え子達が見なそうであると言う保証はない。・・・・・・だからこそ、私はその子達に正体を明かしたく無かったんだ。その子達にまで、嫌われてしまっている可能性があると言う事実に・・・・・・”恐怖心”を抱いているのだから。
「ルナの時のようにならないよう、今度他の教え子たちに会ったら、私も注意しないと・・・・・・さもないと・・・・・・」
「・・・・・・あれ?こんな朝早くからグラウンド使ってるなんて、相当練習熱心なんだねー?」
「・・・・・・は?」
時刻は朝の5時半。こんな時間に起きている人物などかなり限りがある。だと言うのに、こうしてグラウンドにいる私に話しかけにきている人物がいた事実に、私は少し呆気に取られていた。
声からして、オルフでは無い・・・・・・だとするなら誰だ?
不思議に思い、声のした方へ視線を動かしてみると・・・・・・
そこにいたのは・・・・・・
「っ!えっ・・・・・・(嘘っ!もしかして・・・・・・)」
「ん?どうかした?アタシの顔に何かついてる?」
癖のある長い茶色の髪の毛。服越しだが、それでもなおわかる引き締められた立派な体つき。朝靄がかかる中で一段とキラキラ輝くエメラルドグリーンの双眼。”あの頃”の面影をどこか残しつつも、しっかりとした成長を遂げた私の教え子・・・・・・自由気ままなウマ娘とまで称された今世では、伝説の”3冠ウマ娘”として讃えられている。
その名を・・・・・・
「(
前世では、私の教え子でもあった・・・・・・”ミスターシービー”と言う。
ミスターシービーと再会を果たします。
次回以降で、二人の絡みを見せますので是非お楽しみに!