舞い戻った理不尽ウマ娘は、元教え子達への対応に頭を悩ませる? 作:レイ1020
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「はっ・・・・・・はっ・・・・・・はっ・・・・・・ふぅ〜・・・・・・」
ランニングを開始してから”二時間”近く経ち、そろそろ休憩を挟もうと私はゆっくりと足を止め一息ついた。
「毎度思うけど、やっぱりこの体・・・・・・前世と比べてかなり疲れやすいかも・・・・・・。いや、前世のあの体自体がおかしかったんだとも思うけどさ・・・・・・」
私が前世の記憶を取り戻したのが、ちょうど一年前・・・・・・つまり、9歳の時なんだけど、その時からずっと日課としていたランニングをこうして続けていた。記憶を取り戻す前の私は、特にランニングなどして居なかった事もあって、両親からは不思議がられたけど、それ以降は特に何も言及してくる事はなかった。前世の時は、これよりもさらに早いペースで、尚且つ時間も倍以上走って居たものだったんだけど、今ではそれをやる事は不可能となっていた。いや、10歳の段階でそれが出来たらそれこそ可笑しい話なんだけどね?それに、デスペルフォースの時の体は生まれつき怪我をしにくい体質だったし、スタミナだって最初から桁違いにあったんだもの。
「はぁ・・・・・・後2年で小学校を卒業しちゃうし、進路どうしよう・・・・・・トレセン学園に行ってまた、一からレーサーとして頑張る?それともトレーナーでもしようかな?・・・・・・うーん」
これは両親から聞いた話だけど、今の私がいる世界は、私が死んで”10年後”の未来。私が達成した『現役無敗で9冠』は今や語り継がれる伝説の記録と称されているらしく、現在のウマ娘達は、その記録を夢見て、レースに勤しんでいるらしい。だが、この記録に並ぶ者、または記録を越すようなウマ娘はこの10年で一人も出て居ないそうだ。
私が指導をした『リブラ』のメンバーも例外ではなく、メンバー全員が3冠達成、リーダーであるルドルフは、私に迫る7冠を達成するまでに至ったらしいが、それでも私の記録を抜くことは出来ずに現役を退いた。今では中央トレセン学園でトレーナー兼教師をしているらしく、その手腕は確かなものであると巷でも噂になってるのだとか。他のメンバーも同様に。
「お父さんからも、お母さんからも『私の好きな様にしなさい』って言われてるし・・・・・・またレースに出て勝利を重ねるって言うのもいいけど、それはもう前世で十分出来たし、私としてはもうレースは良いかな?・・・・・・となると、やっぱりトレーナーかな?前世では中途半端な形で終わっちゃったし・・・・・・」
前世での私を評価するなら、レーサーとしての私は100点満点。トレーナーとしての私なら10点ぐらいだろう。だって、教え子をまともに指導も出来ずに勝利させてあげる事も・・・・・・トレーナーとしての実績も積む前に死んじゃったんだし。だからこそ、今世ではトレーナーとして私は頑張って行きたいんだ。今世こそは、自分で自分に100点満点が出せるような成果を出したいから!
「うん。私の目指すべき道は決まった。だとするなら・・・・・・今からでもしっかり勉強しておかないとね!元トレーナーだったウマ娘が不合格だなんてカッコ悪いし!」
そんな訳で、この日を境に私はトレーナーの勉強をし始めた。幸いな事に、お父さんが元トレーナーだった事もあって、勉強を教えて貰えたので私はメキメキと知識を頭に植え付けることが出来た。まぁ、前世で学んだ事も数多くあって余裕でしょ?って思う人もいるかもだけど、流石に10年間も勉強してないとなるといくつかは忘れて居たりするので、案外余裕で無かったりもするんだよね。
とは言え、余裕がない状況などこれまで何度も経験してきてる私としては、特にそれに対して嫌悪感を示すでもなく、ただ黙々と勉学に励むだけだった。
そして、勉強を開始してから2年後の春・・・・・・私は無事に前世同様にトレーナー試験に合格し、晴れて中央トレセン学園にトレーナー兼生徒として入学する事に決まった。ウマ娘でありながらトレーナーを目指して入学する者など皆無だった事もあって、私は入学が決まった後で一度、トレセン学園に赴き理事長と面談を行う羽目となった。会った理事長は、私が在学中だった頃の理事長では無くなっていて、どこか子供っぽさが外見から伝わってくる特徴的な理事長さんだったけど、私は特に気にする事もなくサクッと面談を終わらせてきた。・・・・・・あまり長引かせると疲れるし。
面談では理事長から多くのことを質問され、特に多かったのはレースの事についてだった。やはり、ウマ娘がトレーナーになると言うのは本当に珍しいらしく、どうしても気になったのだろう。ウマ娘と言うのは年頃を筆頭に”走りたい”と言う衝動が、一気に加速するらしく、まず第一にレースに出て自分の実力を試したいと思うのが普通だ。実際、前世の私も(一応、今世の私もそれなりのそういった気持ちはあったけど)そんな気持ちが溢れ出て”異常なペース”でレースに出ていたし。
それが、私には一切感じられなかったことに違和感と言うか、不思議さを抱いたのかも知れないが誰になんと思われようと、私はこの道を歩んでいくと決めた以上、私はもう迷うなんてことは無かった。その気持ちを理事長にはしっかりと伝え、私は故郷へと帰った。
新学期に向けて、色々と準備をするために・・・・・・。
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「ふぅ・・・・・・改めて思ったけど、秋田から東京は遠い・・・・・・。トレセン学園が全寮制で良かったよ・・・・・・」
それから数ヶ月後、小学校を卒業し、トレセン学園の入学手続きも無事に済ませた私は、単身中央トレセン学園のある東京まで来ていた・・・・・・
「さて、入学前に来た人は寮に入れるって話だったし・・・・・・場所は知ってるけど、それだと変に思われるから誰かに案内してもらいたいけど・・・・・・」
慣れ親しみ、寮など数えきれない程に行ってたトレセン学園だが、今の私は新入生。ここは新入生らしい振る舞いをするのが正しい選択だろう。と言うわけで、私は案内をしてくれそうな人を探して、少し校内を歩き回っていた。
「あら?・・・・・・あなたは・・・・・・サイレントベールさん?」
「・・・・・・へ?あ、あぁ・・・・・・確か、たづなさんでしたよね?改めて、本日からお世話になります、サイレントベールと申します。どうかよろしくお願いします」
ぶらぶらと歩き回っていた私に声をかけて来たのは、現理事長の秘書であるたづなさんだった。この人とは、理事長と面談をした際に既に顔を合わせており、面識があった。無論、この人にも私がトレーナーになると言うことは伝えているが、当然の如く驚かれた。
「はい、よろしくお願いします。・・・・・・それにしても、随分と遅いご到着ですね?ご両親からの連絡ですと、こちらに到着するのはお昼辺りだと伺っていましたが?」
「あ、はい。実は、ここまでは走って来たんです、早朝出で。交通機関を使えばその時間帯に着いたのですけど、学費とかの都合上・・・・・・余計な出費は避けたかったので・・・・・・待たせちゃって、申し訳ないです・・・・・・」
「・・・・・・」
・・・・・・なんか、たづなさんが目を見開きながら私のことを凝視してくる。うん、なんと無く言いたいことは分かるよ?出費を防ぐためとは言え、秋田から東京までランニングしてくる輩なんて誰が想像できるだろう?マラソン選手でさえ泣きたくなる様な距離を、こんな唯の一介のウマ娘が走って来たのだと証言するのだから、当然信じられない・・・・・・と驚くのも無理ないと言うものだ。
「えっと・・・・・・あの〜・・・・・・聞き間違いでしょうか?今、走ってきたと?秋田からここまで?」
「あ、あはは・・・・・・はい、信じられないかもですけど、本当なんですよ・・・・・・」
「そ、そうですか・・・・・・わかりました(嘘を言っている様には見えない。ここから秋田までは軽く見積もっても”600km”は離れているのに、この娘は走って来たと言うのかしら?トレーナー志望だと言っていたけど、これなら普通にレースに出た方が・・・・・・)」
物凄く何か言いたそうな顔つきになったたづなさんだったけど、結局その後は特に何も言う事なく私を寮内に案内してくれた。
私の新たなる学園生活は・・・・・・ここから幕を開ける。
こんな訳で、主人公も中央トレセン学園に入学することとなります。あくまでもレースに参加する事はなく、トレーナーとしての入学となりますが。
ちなみに、主人公は何やら勘違いしてますが、前世でのチート並みの身体能力や体質、経験値などは今世にも受け継がれています。転生直後は体がまだしっかりと出来上がっておらず、その余りある力に疲労を募らせたり軽い怪我をしたらしいですが、入学直前には特になんの問題も無く以前と同じ様に走れる様になってたりします。
ここで、主人公が趣味で行ってる、前世からやっていた普段のトレーニングメニューを教えちゃいたいと思います。
・ランニング3時間 2セット(朝・昼)
・山道(坂道)ダッシュ(100m)100本 3セット
・筋力トレーニング(腹筋・背筋・腕立て伏せ・ウエイトなど) その日次第
流れとしては、まず朝にランニングを行い、昼にまたランニングを行う。そして、夜には近くにある山か、どこでも良いので”急な坂”に行き、ダッシュと筋トレを行うと言った感じです。ちなみに、前世ではランニングをもう1セット、山道ダッシュをもう2セット追加して走ってました。
・・・・・・もう一度言いますが、このメニューは彼女がただの趣味で行ってるだけで、決してレースの為に行ってる訳ではありません。それで持って、この合間にトレーナーの勉強もしているはずですので、もはや”体力バカ”とでも呼んでもいいかも知れませんね。
こんなトレーニングを積んでいるのであれば秋田から東京まで走って行くなど造作もない事でしょう。ですが、距離を”600km”と仮定し、到着に要した時間を”10時間”と仮定しますと、多少休憩を挟んでいるとは言え、彼女は常に
たづなさんが言いたい事も理解できます・・・・・・。