舞い戻った理不尽ウマ娘は、元教え子達への対応に頭を悩ませる? 作:レイ1020
「ここが寮です。寮の中では寮長が代わりに詳しい説明をして下さいますので、分からない事があれば、その方に聞いてみて下さいね?」
「はい。ありがとうございます」
たづなさんに寮へと案内され、その場でたづなさんと別れた私は、改めて久方ぶりに見る寮を観察してみる。
「うん、昔私がいた頃と何にも変わってないや。なんか、改めて見ると・・・・・・どこか落ち着くなぁ」
前世の時と比べて、多少外観は綺麗になっていたが、それ以外は対して変わっていなかった事もあって、私はどこか安堵感を覚えていた。そんなどこかふわふわした気分になった私は、早速寮の中へと入る事にした。
「ん?あぁ、やっと来たようだね。待っていたよ、ポニーちゃん」
「・・・・・・はい?」
入って早々、ずいぶんとキザったらしい言葉をかけられた私は、首を傾げつつ、声を掛けてきた目の前の一人のウマ娘を見る。・・・・・・うん?
「(あれ?この人・・・・・・何処かで?)」
「・・・・・・?どうしたんだい?私の顔に何かついているのか?」
「い、いえ・・・・・・なんでも無いです・・・・・・よ?」
語尾がおかしくなり、恥ずかしくなった私だが、どうにも違和感を覚える。目の前にいるこの人が、どうにも初対面の人だとは思えなかったんだ。だとすると、前世で会った誰かしらだとすぐに推測出来たが・・・・・・今の所は、誰だったか思い出すには至っていなかった。第一、私の知っているウマ娘でこんなイケメンでキザな人なんて居なかったし・・・・・・本当に誰だろう?
「そうか。なら良いが・・・・・・あ、申し遅れたね。私は”フジキセキ”。今は、体育教師をしているが、ここの寮長を務めてもいる者だ。今日から宜しく、ポニーちゃん」
「・・・・・・・・・・・・えっ?」
目の前の人の正体が分かり、かなり唖然とする私だった。何でかと言うと・・・・・・このフジキセキ・・・・・・キセキちゃんとは前世でそれなりに交流があり、当時は私のチームに所属していて、トレーニングなどを見てあげる事もあった仲だったんだ。その頃のキセキちゃんは、今のように短髪ではなく、”髪を長く伸ばしていた”し、性格だってかなり”内気な性格”だった事もあって、言ってしまうと結構、目を離せないような娘だったんだ。それが、今やこんなに成長して性格までこんなに変わってしまうだなんて・・・・・・嬉しいような、悲しいような・・・・・・。まぁ兎に角として、ここまで変わって仕舞えばそりゃ分からないわけだ。
「さっきから大丈夫かい?もしかして具合でも悪い?」
「い、いえ、大丈夫ですキセ・・・・・・フジキセキ先生。少し疲れてるだけですので」
「そうか。ならば、今日は早めに休むと良い。明日は早いからね・・・・・・それにしても、キミは本当にトレーナーをするためにここに来たのかい?ウマ娘でありながら?」
「そうですが・・・・・・何か?」
私の顔をジロジロと見ながらそう口にするキセキちゃんに、少しだけだが不快感が募る。
「いや、ウマ娘でもトレーナーにはなれるが、そんな人は滅多に居ないからね。いるとするなら、ルドルフか・・・・・・”あの人”ぐらいだろうね」
「あの人?」
「あぁ。・・・・・・キミは、その昔『現役無敗で9冠』を達成し、その引退後はトレーナーとしての生を全うしたウマ娘がいると言う事を知っているかい?」
「あ、はい。『デスペルフォース』・・・・・・その当時、ウマ娘ではおよそ不可能であろう前人未到の異次元級の記録を打ちたてた、ウマ娘界のスーパースターですよね?現役無敗で前線を退いた後は、トレセン学園にてトレーナーとして様々なウマ娘の勝利に貢献してきたと言われている”伝説のウマ娘”・・・・・・」
キセキちゃんに対して、なぜか自分の事を丁寧に解説している私。・・・・・・余談だけど、今言った情報は教科書に載っていた事をそのまま言っただけだ。今の世界では、前世の私の事は伝説のウマ娘と称されているらしく、どんなウマ娘関連の本にも必ずと言って良いほど、私の事が載っているらしい。・・・・・・正直言って、その事実を知った当初は物凄く恥ずかしかった・・・・・・。
「そうだ。私の言ったあの人と言うのは、その人のことさ。実は、私もスペルさんには色々と教えを乞うていたうちの一人だったんだ」
「そうなんですね。では、かなり戦績の方も・・・・・・」
「三冠・・・・・・とまでは行かなかったが、G1レースでも数多くの勝利を手にしていたぐらいには強かったと自負してるぞ?・・・・・・たらればになってしまうが、もう少しスペルさんの指導を受けていれば、もっと私の実力は上がったのかも知れないがな・・・・・・」
キセキちゃんは、少し悲しそうに呟いていた。トレーニングを見ていた私からすれば、確かにキセキちゃんには他の人には無い才能があり、鍛え方次第では化けるとその当時の私は確信していた。だからこそ、キセキちゃんにあったトレーニング、ストレッチ、食事などを徹底的に分析し、トレーナーとして彼女をフォローしていたんだ。それを勝手に、私が投げ出してしまったことにより、彼女は伸び悩んでしまい・・・・・・今のような結論に至ったと言う事なのだろう。
「(”あんな事”がなければ、今も私は『デスペルフォース』として生きていられた筈だった・・・・・・。考えないようにしていたけど、やっぱり簡単に割り切れる事はでき無さそうだ・・・・・・)」
正直・・・・・・キセキちゃん・・・・・・いや、私が担当したウマ娘達には顔向けが出来ない。どんな理由があろうと、パートナーである彼女達を残し、私は勝手に目の前から消えた最低なトレーナーだ。彼女達とは、果たさなくてはいけない大事な約束もあったと言うのに・・・・・・。まぁ、それは機会があるのであれば謝っておくとしよう。・・・・・・あればだけど。
「すまない。少々暗い話をしてしまったね。兎に角だ、ウマ娘がトレーナーをやってはいけないと言う決まりなんてものは無いから、キミも頑張れ」
「はい。ありがとうございました」
その後、キセキちゃんに寮部屋に案内され、私は用意されていたベッドに腰掛ける。部屋内には誰も居なかったが、寮は基本的に二人で部屋をシェアする形だ。多分、この後に誰かしら来る事は確定だろう。
「明日も早いって言ってたし、もう、寝ようかな」
今日はもうやる事がない私は、カバンの中から寝巻きを取り出し着替えるとそのままベッドに横になった。相部屋となるウマ娘とは明日にでも挨拶はしよう。
何故、主人公が亡くなったのかについてはまだ明かしません。ですが、いずれは必ず明かしますので、その時が来るまで楽しみにお待ちください。
【デスペルフォース豆知識 その① 】
全盛期のレースでの最高速度は、”100k/m”を超えた模様。