舞い戻った理不尽ウマ娘は、元教え子達への対応に頭を悩ませる? 作:レイ1020
「おいおい・・・・・・ウマ娘がトレーナーになるとか・・・・・・。今時物好きだな、お前って」
寮内のシャワーで汗を流した私達は、部屋に戻り制服へと着替えていた。朝食を食べる時の服装に特に決まりは無いものの、またジャージを着て制服に着替え直すというのは面倒だと言う事もあって、私達は真新しい制服に袖を通すことにしたんだ。
「なんで?あのデスペルフォースさんだって、シンボリルドルフさんだってウマ娘ながらにトレーナーやってるじゃん。そう言うのに憧れるウマ娘っていないの?私だって、その二人に憧れてトレーナー志望してるし」
「いや、あんな化け物みたいな人達と比べるなよ。確かにあの二人に憧れるウマ娘は数多くいるだろうが、それだけだ。憧れは持っても、目指したいなんて思う奴は誰一人としていやしないぜ?オレだって、レーサーとしてなら、その二人の持つ記録を抜きたいとは思ってるが、流石にトレーナーにまでなろうなんて思ってはしないしな」
「そう言うものかな?」
未だに、オルフは私がトレーナーを志望していると言う事実を受け入れられていないらしい。と言うか、ウマ娘がトレーナーを目指すなどと発言すれば、こんな反応になるのは当たり前なんだとか。現状だが、ウマ娘でありながらトレーナーをして、成功したのは振り返ってみても、前世の私であるデスペルフォースやルドルフしか居ないのだから当然といえば当然の話。オルフの話だと、これまでに私達を真似てトレーナーに挑戦するウマ娘もいたらしいけど、どれも長続きせず、特に目立った実績も残せぬまま辞めた・・・・・・と言うのがほとんどだったらしい。まぁ、前世でも似た様なこと言われたし、今更気にしないけど。
ちなみに、私がトレーナー志望をする理由はさっきも言ったように、ルドルフや前世の私に憧れてと言う設定にしてる。これが一番、納得されやすいと判断した為だ。
「そうだぜ?・・・・・・オレとしては、お前はレーサーとしてレースに出た方がいい線いくと思うが?あのスタミナは、きっといい武器になると思うぜ?」
「私はもう、トレーナーとして頑張るって決めてるんだ。それを曲げるつもりは無いよ?・・・・・・っと、そろそろ時間だね。朝食行こ?オルフ」
「・・・・・・ああ。もったいねぇなぁ〜・・・・・・」
話している間に朝食の時間になった様で、私達は制服に乱れがないことを確認すると、食堂へと向かい、朝食を摂った。ランニングをして汗を流した事もあってか、かなりお腹を空かせていた私達は、存分に朝食を堪能しご満悦になるのだった・・・・・・。
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視点 三人称
「失礼します」
新入生の入学式が終わり、新入生達の、これから始まるであろう学園生活に歓喜する声が校舎内に響き渡っている中、一人のウマ娘が理事長室へと招集をかけられていた。
「ルドルフか。急に呼び出してしまって、すまなかったな」
「いえ、チームのトレーニング内容の調整にも区切りがつきましたので、息抜きには丁度よかったです」
ルドルフと呼ばれたウマ娘は、薄く笑みを浮かべながら軽く会釈をした。彼女こそ、先の時代のレースにて『無敗で7冠』を達成すると言う脅威的な記録を残し現役を退き、学園を卒業した現在は、ウマ娘でありながらトレーナーとしてチーム『リギル』を率いる『皇帝』・・・・・・シンボリルドルフだ。生徒時代には生徒会長を務めていた実績もあり、彼女を慕うウマ娘は数多くおり、特に現在高等部3年生のトウカイテイオーは群を抜いて彼女に懐いている。
「それで理事長?本日はどういった要件で?」
「ああ。ちょっとこの書類を目に通して見てくれ」
「この書類?・・・・・・ふむ、なるほど。『サイレントベール』・・・・・・ウマ娘ながらに、トレーナー志望でこの学園に入った新入生か・・・・・・」
その書類の内容に、ルドルフはなんとも言えない表情になる。ウマ娘がトレーナーになると言うことは、珍しい事ではあるができない事ではない。実際、彼女も十分と言っていいほどにトレーナー業に取り組めているし、彼女の師とも呼べるデスペルフォースも同様に問題無くこなせていた事例もある。だが、二人も始めはレーサーとしてこの学園に入学し、レースにて数多くの成績を残し、レースでの経験を得てからトレーナーに転身した身であるので、まだ何も経験のない最近まで小学生だったウマ娘がいきなりトレーナーとして入学してくるのは、今回のこの『サイレントベール』を除いていなかった事もあって、どうしてもこんな表情になってしまうのだ。
「史上最年少で、トレーナー試験に合格したこのサイレントベール・・・・・・理事長は、面談をしたとの事ですが、どんな娘だったのですか?」
「未知!そのサイレントベールは、見かけはそんじょそこらのウマ娘と大差無い普通の学生だった。だが、奴にはどうにも掴みきれぬ所があってな?ウマ娘だと言うのに、レースや走ることに対する意欲がまるで感じられんかったし、面談中も終始気怠そうにしていて、やる気というも感じられなかったのだ。だと言うのに自分のやるべき事、目指すべき道をしっかりと把握しその道に向けてのプランも既に浮かんでいる様に見えた。・・・・・・あれでまだ12歳だと言うのだから、驚きだな」
理事長・・・・・・秋川やよい理事長は、当時初めてサイレントベールと会った時の事を思い出しながらゆっくりと説明をしていた。見かけが幼い事もあって誤解されがちな理事長だが、そのウマ娘を見る目や実績、威厳は確かであることはルドルフも知っているのでそれに異議を唱えると言うことはしなかった。
「・・・・・・へぇ?その様子を見るに、かなり肝が据わってますね、そのサイレントベールとやらは」
「だが、私が驚いたのはそれだけでは無い。昨日、たづなから聞いた話なんだが・・・・・・奴は、故郷である秋田からこのトレセン学園まで、どうやらランニングして来たらしいんだ。余分な交通費を浮かす為に」
「・・・・・・はい?」
それを聞いたルドルフは、皇帝らしからぬ、間抜けな返事を返したルドルフだが、それを気にする事もなく理事長へと詰め寄った。
「えっと・・・・・・うん?秋田から走って?・・・・・・秋田からここまでは600kmは離れている様な?」
「信じられないだろうが、事実だそうだ。実際、予定していた到着時間よりもだいぶ遅れて着いたらしいし、着いた当初はかなり汗ばんでいた様子だったらしいからな」
「あの・・・・・・彼女はトレーナーなんですよね?なのに何で、そんなおかしな距離をランニングして・・・・・・?」
「不明!だからこそ、奴は掴めぬと言っている」
ルドルフも理事長も、深く深く困惑を究めていた。ルドルフですら、おかしいと言う距離をサイレントベールは走って来たと言うのだから、こうなるのは当然である。現役の時であるなら走れない事もないと思ったルドルフだったが、だからと言ってそんな何百kmも走りたいと思う筈もないので、余計にサイレントベールの考えていることが理解できずにいた。
「確かに、理事長の仰る通り、かなり癖のありそうな生徒ですね。しかし・・・・・・理事長がそこまで言うなんて珍しいですね?」
「そうだな。あそこまで、相手の心内を読むことが出来なかったのは、”スペル”以来だったな」
「あ、あはは・・・・・・確かに、スペルさんって色々と変わってましたし、かなり破天荒でしたから・・・・・・あの人の心を読むこと自体、不可能に近い気がしますよ?まぁ、だから私は一度もあの人に勝てなかったのかも知れないですけど」
苦笑いを浮かべながらそうぼやくルドルフ。サイレントベールもデスペルフォースも見た目が違うだけで中身は同じであるので、二人のその考えは間違っていないが、変わり者と評されている二人の事を思うと、何とも言えなくなってしまう。
「なんだ?まだ、その事を気にしていたのか?もう、スペルはいないんだぞ?」
「わかってます。ですけど、やっぱり気にしますよ。憧れでもあり、ライバルだとも思っていた人に、突然勝ち逃げをかまされてしまったんですから」
『皇帝』と称され、現役時代も公式戦無敗で7冠を達成した事から、
何せ、その最強という名は、あくまでも今現在に存在しているウマ娘の中で通ってる名であり、一昔前までは別のウマ娘がその名を背負っていたからだ。それが、デスペルフォースであり、彼女はルドルフ以上の記録である『現役無敗で9冠』を達成した伝説のウマ娘だ。ルドルフは彼女が存命だった時期にレースで何度か勝負を挑んだことがあったが、勝てた事はただの一つもなかった。別に、ルドルフが弱いという事はない。当時新入生ながらに『トレセン学園の過去一の天才』と謳われ、同学年だけでなく、その一つや二つ上のウマ娘にも・・・・・・言うなれば高等部のウマ娘にも模擬戦とは言え、勝利を収める程には強く、メイクデビュー戦も大差で”1着”を取るほどだった。言ってしまうと、その時のルドルフはノリに乗っていて、勢いそのままにデスペルフォースに勝負を挑んだらしいが、まるでデスペルフォースは、
見事に鼻っ柱を折られたルドルフは反骨精神を燃やし、それからも勝つために対策を練っては幾度もなく勝負を挑み続けていたが、対策を練ってもデスペルフォースには直ぐに看破されてしまい、対応をされてしまうのでどんなに対策をしても勝つのは無理だった。数にして、およそ”50”をこなしたらしいが、毎回毎回勝負を挑むルドルフもそうだが、その勝負を何度も受けてくれるデスペルフォースもよく怪我をしなかったと言っていいだろう。
「スペルの事は残念だったが、もうキミは大人になったんだ。過去の事は引きずらず、今のことに全力を注ぐべきだ。それはわかっているな?」
「・・・・・・はい、申し訳ありませんでした」
「よし!で、今回キミを呼んだのは理由があってな?・・・・・・サイレントベールを先輩ウマ娘としてサポートしてやって欲しい」
先程の砕けた口調から一変してしっかりとした口調へと変化した事もあり、ルドルフは少し背筋を伸ばした。
「サポート?」
「肯定!彼女のトレーナー業を空いてる時間にでもいいからサポートしてやって欲しい。流石に中等部1年の娘に全てのトレーナー業が捌けるとは思えないからな。任せてもいいか?」
「分かりました。私もその娘にはかなり”期待”しているので、私も影ながらしっかりとサポートして行”きたい”と思います!・・・・・・きたいだけに」
「困惑!・・・・・・相変わらず、お前のダジャレはつまらないな」
こういう訳もあり、ルドルフは新入生の中でも異色のトレーナーとして入学してきたサイレントベールをサポートする役目を命じられたが、彼女がサポートするのは、かつて自分が教えを乞うていて、自分にレースの知識や作戦、ダンス・・・・・・トレーニング方法や食事管理についてまでを徹底的に叩き込んでくれた恩師である、デスペルフォースだった人物だという事を彼女は知る由もなかった。
ベールは秋川理事長の事を知らないですが、実は理事長と会ったのは秋川理事長が理事長になる前であり、しかも会ったのも数回程度でしたので、ベールが覚えていないのも無理ないかも知れません。話の展開次第では思い出すかも知れませんが、今のところその予定はないです。
さて、ルドルフがベールのサポート役として彼女と接する事となりましたが、初めて会った時のベールの反応がどうなんるのかめちゃくちゃ楽しみです!
本文にて、デスペルフォースがルドルフと模擬戦を50戦やったとありましたが、彼女は他のウマ娘とも模擬戦をたくさんやってます。そのことについても今後触れていけたらと思っています。
ちなみに、時系列は多少の誤差はあるかと思いますが、了承して頂けるとありがたいです。
【デスペルフォース 豆知識③】
彼女の走力にシューズが追いつかず、よくシューズを壊していた。その数は”何10”にも上る。