舞い戻った理不尽ウマ娘は、元教え子達への対応に頭を悩ませる? 作:レイ1020
視点 サイレントベール
「サイレントベールさん、少しいいですか?」
入学式を終え、これからお世話になる教室に案内された私達新入生は、担当の先生との軽い挨拶と自己紹介を終えると、直ちにその場で解散となった。授業や実技が本格的に始まるのは明日からとの事らしいから、今日くらいは早めに休ませようと言う学園側からの配慮だろう。ちなみに、私以外でトレーナー志望だという新入生は誰もいなかった。まぁ、わかっていた事だけど仲間がいないと言うのはどこか寂しさを覚える・・・・・・新入生の何人かとは既に話して仲良くなってたりはするけど・・・・・・その子達もみんなレーサーの道を歩むみたいだし。
そんな中、私は担任の先生に呼び出されていた。同じクラスになり、一緒に帰ろうと誘っていたオルフには先に帰って貰い、私は先生の元へと向かった。
「先生?何か?」
「はい、あなたは他の皆さんとは違って、トレーナーとしてこの学園に来た。・・・・・・それは間違いありませんね?」
「・・・・・・?はい、そうですが?」
「トレーナー試験も無事に突破しているあなたであるなら、特に心配はいらないでしょうが、あなたもまだこの学園のことをよく知らず、トレーナーとしての経験も浅い新入生であることに変わりはありません。ですので、しばらくの間はあなたに”教育係”を付けたいと思っています」
「教育係?・・・・・・初めて聞きましたが?」
「私も、つい先程知らされたばかりですので、詳しい事は分かりませんが、これは理事長命令との事ですので、あなたに教育係がつくことは決定と思ってください」
・・・・・・んな勝手な。こっちは前世でもそれなりにトレーナーをやっていた身なんだけど?・・・・・・心の中でそう愚痴をこぼす私だったが、そんな事学園側が知るはずもないし、むしろ学園側も良かれと思って私に教育係を付けてくれたのだと思えたので、それ以上は何も言うことはしなかった。
「分かりました。それで・・・・・・その教育係と言うのは?」
「・・・・・・驚くと思いますよ?何と、あなたの教育係は・・・・・・"シンボリルドルフ"さんです。あなたと同じ、ウマ娘でありながらトレーナーをこなす人で、言うなれば、あなたが目指すべき人・・・・・・とも言えますね。・・・・・・どうですか?驚きましたか?」
「・・・・・・」
先生の問いかけには、何も答えることはしなかった・・・・・・いや、答えられなかったと言えばいいのかな?だって、いきなり私のこれからお世話になる教育係の人が元教え子のルドルフだって知ればそうなる。ルドルフに会える口実が出来たから嬉しいと言えば嬉しいのだけど、かつての教え子だった娘に、今度は私が教えを乞う事になったのだから・・・・・・人生って何が起こるかわかった物ではないね。
「・・・・・・?どうかしましたか?」
「い、いえ、何でもないです。そうなんですね!憧れのシンボリルドルフさんにお世話になれるだなんて、嬉しい限りですよ!」
「ふふ、よかったです。良ければ、この後挨拶に行ってみてはどうですか?今の時間であればトレーナー室にいると思うので。場所はわかりますか?」
「そうですね、行ってみます。場所は既に調べて知ってますので、大丈夫です」
送って貰うのは流石に先生に申し訳なく思った私は、一人で行くという旨を先生に伝え、荷物を持って教室を後にし、トレーナー室へと足を運んだ。
ルドルフの待つ、トレーナー室へと・・・・・・。
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「失礼します」
トレーナー室に着いた私は、ノックを入れてから中へと入る。このトレーナー室には現在このトレセン学園に所属するトレーナーが作業を行う部屋であり、トレーナーの数は今や100を超えるほどにいると言われている。基本的にトレーナーは、ウマ娘とトレーニングをする時や、試合を観戦しに行く時以外はこの部屋で作業をすることが多いとされている・・・・・・生徒である私は例外で、授業等も受けなくては行けないから、このトレーナー室にいることはそんなに多くはないかも知れないんだけどね?
「ん?あれ、キミは確か・・・・・・?」
「本日から、トレーナーとしてこのトレセン学園に参りました、サイレントベールと申します。私の教育係であるシンボリルドルフさんはいますか?」
入って、近くにいた一人の男性のトレーナーさんに軽く自己紹介をし、ルドルフの所在を確認する。
「ルドルフ?・・・・・・あぁ、キミがそうだったんだね。ちょっと待っててくれ・・・・・・おーい!ルドルフ〜?お客さんが来てるぞ?」
「そうか、すぐに行く」
トレーナーさんが奥に向かって大きく呼ぶと、一人のトレーナーもとい、ウマ娘が席を立ち、こちらへと近づいてきた。
・・・・・・その人物は。
「初めまして、だね?今日からキミの教育係を任される事となった、シンボリルドルフだ。よろしく頼む、サイレントベール」
見間違うはずもない。昔見た姿よりも、遥かに背が伸びて、大人びていて・・・・・・威厳高くなっているが、紛れもなく私の教え子だったルドルフだった。芦毛の長い髪も昔と変わらないし、特徴的な焦茶色の前髪も三日月のような白いメッシュも変わっていなかった。
「・・・・・・は、はい。よろしく・・・・・・お願いします」
「ふふ、そんなに緊張しなくてもいい。もっとリラックスするんだ」
懐かしい教え子に再会して嬉しかったのか、それとも教え子の変わり様に驚いたからなのか、どこか拙い挨拶になってしまった私。それを緊張していると取った様子のルドルフは、リラックスする様私に言い聞かせてくる。ルドルフからこんな言葉をかけて貰う日が来ようとは・・・・・・。
「はぁ・・・・・・ふぅ・・・・・・。うん、少し落ち着きました。ありがとうございました、ルドルフさん」
「ルドルフ?」
・・・・・・気持ちが昂っていたせいか、思わず昔のようにルドルフと呼んでしまった・・・・・・。幸い、”さん付け”は出来たけど、いきなり初対面のウマ娘がそんな呼び方をして来れば生意気と撮られる可能性も・・・・・・と、とりあえず謝っておこう!
「っ!す、すいません。いきなりそんな呼び方して・・・・・・生意気でしたよね・・・・・・」
「いや、そんな事は無いよ。私をそう呼ぶ人は数多くいるし、私の事は好きに呼んでくれて構わない。これから一緒にいる事も多くなる事だしね?」
「そ、そうですか?じゃあ・・・・・・今後はルドルフさんと呼ばせて貰って良いですか?」
「もちろん構わないよ。それなら、キミのことはベールと呼ぶ事にするよ。いいかい?」
「はい!」
関係性が大分変わってしまった・・・・・・と言うか、立場が逆転してしまった私達だったけど、意外にも簡単に打ち解けることが出来、内心でほっとした私だった。そりゃそうか。いくら大人になったとはいえ、ルドルフである事は変わらないんだし、あの時と同じように接すれば打ち解けるのも容易いから。
ちなみに、私の正体がデスペルフォースだと言うことは、隠しておくつもりでいる。バレると色々と面倒な事になりそうだし、今の私はデスペルフォースではなく、サイレントベールという一人のウマ娘として生きているので、前世のことを引き合いに出されたく無かったんだ。だから、バレる可能性のある教え子達の前では、なるべく別人を装う様にしようと考えていた。・・・・・・まぁ、姿も形も変わってしまっているので、別人だと言うことは間違い無いんだけど。
「そうだ、この後時間あるかい?少し場所を変えてキミと話してみたい事があるんだけど?」
「話したい事?・・・・・・はい、特に予定はないですけど?」
「なら決まりだね。ちょっと、私に着いてきてくれ」
まだ行くとも言っていないのに、さっさと何処かへと私を案内しようとするルドルフに、内心でため息を吐く。とは言え、断る理由も特に無かったので、黙って着いていく事にした。・・・・・・こういう、強引な所は昔となんら変わってないなぁ〜・・・・・・。
ベールは基本的に誰にも正体は明かさない予定です。・・・・・・勘付かれない限りは。
ルドルフとの時間は次回も続きますのでお楽しみに!
【デスペルフォース 豆知識④】
公式戦だけでなく、模擬戦と言った非公式のレースでも一度も負けた事が無い。