ソルジャーアート・オンライン   作:織姫ミグル

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第1章

 

 

解析結果を説明させていただきます。

 

つい最近、想定以上の反応をミッドガルネットワークから検知。解析の結果、仮想空間に未知の空間が発生した模様。神羅の独自の解析機器でも踏み込むことが不可能な領域であるため、これ以上の解析結果は出ません。これにより、極めて危険なものであると判断します。未知の障害はミッドガル全体にどのような影響が出るか現段階では不明。危険度の高い障害であるが故に全てのシステムがやられてしまう可能性が生じます。調査のために、二年前に設計した携帯型のVRバトルシミュレータにて誰かを仮想空間にて調査に向かわせることを推奨。

 

なお、極めて危険な調査になる可能性を考慮し、精神力が極めて高いものを向かわせることを推奨。

 

なお、この障害が第三者によるものなのかは判明しておりません。

 

なお、こちらが候補に挙げるのは一名のみ。

 

未知の障害がなんなのかわからない以上、ダイブしたものの精神がやられる可能性は否定できません。

 

いざという時に備え、長期プロジェクトとして登録し、そして交戦準備を怠らないようお願いいたします。

 

 

 

<><><><><>

 

 

 

「クラウドさん!!」

 

「?」

 

 

少年の姿は大きく変わらない。

 

だが、会うのは久しぶりだ。

 

名前はチャドリーという。金と茶色が混じったような、色の強い金髪。白い肌の奥には、脈ではなく電極線の青色が浮いていた。全体的に華奢な印象で、見た目は若い。眼鏡をかけ、白衣を着て、独特な口調で子供らしさを感じさせない喋り方が特徴的だった。

 

今、その少年が二年ぶりに、自称ソルジャー様の前に現れた。

 

 

「お久しぶりですクラウドさん!」

 

「チャドリー?」

 

 

左右非対称の服装に、腰にあるあらゆる武器。

そして明らかに目立つ金髪のチョコボ頭··········ではなくツンツン頭をした青年。

 

クラウド・ストライフの前に、9歳くらいの少年の姿をした懐かしい奴が現れた。

 

そんなクラウドの前に現れたチャドリーはにっこりとしながら話しかけてくる。

 

 

「あれから随分と日が経ちますが、お変わりないようで何よりです」

 

「···············ああ、お前も変わってないな」

 

「皮肉を検知。ですが僕は前に説明した通りサイボーグですので仕方がありません」

 

「で、俺に何の用だ?」

 

「クラウドさんから少々不満げな感情を検知。僕がこうして現れたことに不可解さがあると見受けられます」

 

 

当たり前だ。

 

今の今まで神羅とミッドガルが崩壊してからというもの、行方がわからなくなっていた存在が、何故よりにもよって向こうから顔を出す?

 

クラウドはいくつかの可能性を考え、その中から一番合理的なものを選んだ。

 

 

「···············ルーファウスか?」

 

「さすがはクラウドさんです! 自ら依頼主を当てるとは話が早いです!」

 

 

チャドリーは首を縦に振った。

明確な意思表示をしているくせに、その動きがプログラムされているものなのか、それとも本当にあのマッドサイエンティストが作成したAIなのか全く掴めない。

 

 

「························」

 

 

クラウドはわずかに黙り、自分が口にした可能性をなかったことにしたかった。

 

しかし。

 

その代理人がそうだと言ってしまっている。だが、だとしても何の用なのだろうか。何故このタイミングであいつが残したものが現れるのだろうか。

 

 

「あなたにしか頼めないからです」

 

「··················何も言っていないぞ」

 

「顔色ひとつで何を考えているのか、僕には簡単に解析できます。僕に嘘といったものは通用しないので、よく取り調べに呼ばれたりすることもあります」

 

「························」

 

「話を戻します。あなたに一定の価値を認め············何でも屋としてのクラウドさんに依頼をお願いしにやって来ました」

 

 

チャドリーはそう言った。

まるでクラウドの裏仕事を始めから知っているかのような気軽さで。

 

 

「俺は今デリバリーサービスという宅配の仕事しかやっていないぞ。依頼を頼むなら他のやつのとこに行け」

 

「しかし、これはクラウドさんにしか頼めません··················かつて、『英雄』と呼ばれた彼を唯一打ち負かしたあなたにしか」

 

 

まともでない。

しかし何かを隠しているような素振りもない。

 

他のやつのとこに行かなかったのは、クラウド以外には価値を見出せなかったからか。それとも、いまの発言の中にある機密ワードが関わっているというのか。

 

 

「························」

 

 

どうするか。

クラウドは僅かに眉を上げる。

 

するとチャドリーがこっちの都合なんて御構い無しに勝手に話し始める。

 

 

「今回の依頼内容は、調査です。つい最近ネット障害が起きているのをご存知ですか? 携帯が通じづらくなっているはずです。その原因を調査した結果、神羅が開発したネットワークに未知の仮想空間が発生したという事が判明しました」

 

「ネットに空間?」

 

「疑問を検知。確かに、意味不明な表現です。ですが言葉通り、ネットワークに穴が空いてしまっております。譬えると、前にマテリア開発の際にクラウドさんに協力していただいたVRバトルシミュレータ、あれみたいなものだと簡潔に説明します」

 

「··················ああ、あれか」

 

「あれに似た············いえ、あれとは比べ物にならないくらいの膨大なデータで構築された仮想空間が、ネットワークに紛れ込んでしまっているのです。故に、プログラムにバグが起き、障害が生じています」

 

「それで、俺にどうして欲しいんだ?」

 

「そこにVRバトルシミュレータのシステムを応用し、空間をつなげることで意識をその空間に転送させ、何が起きているのかの調査を依頼したいのです」

 

 

機械的な話し方でありながらも、洒落や冗談といった感じで言っているようには見えなかった。

 

 

「何故俺なんだ?」

 

「クラウドさんは、あの『英雄』を倒した実績があります。そして、貴方はこの星を救ったという救世主でもあります。その功績は大きいです。故に、貴方に白羽の矢が立ちました」

 

「································」

 

「何より、今回の依頼にはその『英雄』の残留物が関わっている可能性があります」

 

「あいつはもう死んだんだ。その証拠は?」

 

「その空間から、“彼”の意識と思われるものを検知致しました。神羅が所有するソルジャーのデータと一致したので、可能性は高いと思われます」

 

 

何とも荒唐無稽な話だったが、クラウドは笑い飛ばせなかった。

 

むしろ。

仮想空間をただ調査しろと言われた方が何倍もマシだった。

 

 

「とはいえ、まだ可能性の段階ですので正確かは判断しかねますが················どうでしょうか?」

 

 

チャドリーは言った。

 

 

「興味本位で貴方に近づいたわけではありません。何より、貴方を選んだのは社長でもありません、僕の独断で貴方に頼みに来ました。数々の候補の中から、貴方が適任だと思ったからです」

 

「!」

 

「真偽もまだわかっておりませんが、”彼”のデータがその空間から検出された以上見過ごすわけにはいきません。僕も引き続き解析を進めますが、僕一人では到底不可能です。どうかご協力をお願い致します」

 

 

その言葉に、クラウドは揺らいだ。

なんてご都合的な展開だ。説明不足な上に情報が全くない。そんな状況でわけもわからぬ空間に足を運べというのか。

 

はっきり言って話にならない。

 

しかし、読めない。

何かの歯車が取り除かれたせいで、普段の思考が一切回らない。“あいつ”の単語が出てから常に引っかかって思考が止められてしまう。そんな感じだった。

 

動かないクラウドに、チャドリーはさらに言う。

 

 

「そして、貴方に頼むのはもう一つの理由があります」

 

「?」

 

「今回の件で検知された空間には························大量の人間のデータを検出しました。その人たちの数は約一万人ほど。そのうちの何人かが急に消えてしまったんです。まるで命が燃え尽きたかのように」

 

 

自分たちの問題のくせにまるで、そいつらを救いたくないか? と言いたげだった。

 

 

「僕自身、イレギュラーな現象が発生するたびに、それをリカバリーするためにどんな場所でも赴く覚悟でいますが、今回は僕一人では不可能です。小さな亀裂は少しずつ広がり始めています。このままでは、僕たちが予想もしない事態が発生するかもしれません」

 

 

嫌な予感がする。

聞いてはいけない気がする。

 

しかし、チャドリーは続ける。

 

まるで、そうなること事態ありえないのに、

 

 

「あらゆる機械には『魔晄』が使用されていました。それはネットワークも例外ではありません。新しいネットワークを開発するまでは旧式を現在使用しておりますが···········正直僕自身もあり得ないと思っていますし、どう考えても納得がいきませんが、ネットワーク構築にも魔晄が使われており、それが原因でライフストリームに溶け込んだ“彼”の意識がそこに紛れ込んでしまったとしたら······················」

 

 

その単語でもう十分だった。

 

馬鹿馬鹿しいが危険因子によって全ての優先事項が塗り替えられ、クラウドの行動は決定した。

 

 

 

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