ソルジャーアート・オンライン   作:織姫ミグル

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第19章

 

 

世界を変える時はいつもとてつもない『破壊』が巻き起こる。

 

それは決して目で見ることは出来ず、しかし世界を揺るがす事象。

 

世界中で記事になるほどの出来事が起きる時、人々はようやく世界が変わろうとしているということに気付き始める。つまりそこで人々は初めて対策を練ろうと動き始める。しかし、世界はもう変化しようとしている。段階的にはもはや手遅れなところまで進んでいることが多い。それで今更何かを練ったところで、すでに起きている事象を止めることは極めて難しい。

 

例えば、白亜紀には巨大隕石が地球上全ての生命活動を押しつぶすようにして、強引に一つの時代を終わらせていた。

 

今それがこの時代でも起きた場合、果たして人間はそれを止められるのだろうか。

 

結果誰がどう生き残るにせよ、世界は全く異なる神秘のフォーマットが支配していたことだろう。

 

セフィロスの場合、それは『偽の真実』を知った時。

 

全てあの時セフィロスが間違った情報を自分の中で勝手に自己解決してしまったせいで、全てが変わった。

 

始まった、もしくは終わったと表現しても良いかもしれない。

 

善人であった頃の『英雄セフィロス』はその時死んだ。代わりに生まれたのが『怪物セフィロス』だ。目の前にある情報を自分の脳内で整理していった結果、今までの思考を『破壊』させて掴み取ったのは、化物か、怪物か、天使か。

 

全てに滅びを送ることを誓った彼を止めることは出来ない。改心など不可能。彼は万人が平等に扱えない力を誇示し、世界の象徴とも言える場所から更なる場所へと踏み入れようとしている。

 

人間が決して踏み入れることができない、神の領域。

 

その場所を、彼は作られた世界で為そうとしている。

 

 

「ハハッ」

 

 

嗤いが漏れたその瞬間、二つの爆風が吹き荒れた。

 

 

「「ハァァァァアアアアアアアアッ!!」」

 

 

キリトにアスナ。共にトップの座にいるプレイヤーがイレギュラー目掛けて再び突っ込んで行くが、間に挟まれたセフィロスが怯むことはない。

 

むしろ、待ち構えるように彼らを迎い入れる。

 

二人の剣に明確な殺意が込められている。それを察知できないほど、セフィロスは馬鹿ではない。絶対に即死していなければおかしいはずなのに、むしろ片翼の天使の方がこの場を主導している。世界の常識は全てあいつの手の内。あいつが望めば世界をいくらでも作り変えられる。

 

この理不尽で意味不明な状況を楽しむようにして、長い銀髪をたなびかせて踊るように剣を振るう。

 

 

「フン」

 

 

馬鹿馬鹿しい、そう言うように鼻で笑って二人の攻撃を見切る。

 

二人が狙うのは胴体。

 

腹と腰の上半身と下半身を繋ぐ境界線部分。前と後ろの双方を両断するように銀の刃が閃いたが、声高に嗤うセフィロスはそれすらも遇らう。

 

なんの変哲もない動作。ただ前と後ろを素早く振り向いて長い剣を振って弾き返しただけ。

 

 

「「ッ!!」」

 

 

だが、意外にも二人はその行動を見ても驚かなかった。

 

理由は単純で、予想できていたからだ。

 

弾かれるなんて想定内。だからこそ、次の一手もすでに考えていた。弾かれた二人はそのまま身を任せるように吹き飛ばされ、背後に視線を送る。

 

と、二人の間から一つの影が飛び出していく。

 

 

「ハァァアアアッ!!!」

 

「········ふふっ」

 

 

クラウドの肉体が、超音速の爆音と化した。

 

キリト達を弾き飛ばした直後に、クラウドが入れ替わるようにセフィロスの前へと飛び込んで行く。

 

 

「········来い、クラウド」

 

 

奴は待ち望むようにクラウドを受け入れる。

 

しかしただでは終わらない。

 

音速で前へと躍り出たクラウドの一撃により足場は崩壊。細かくなった足場は空中に散らばっていく。だがすでにセフィロスの姿はそこにはない。

 

次々天から降り注ぐ瓦礫の残骸へと飛び乗っていくセフィロスは、まるでクラウドを誘うように逃げていく。そう、逃げているのではない。追ってこさせるように仕向けているのだ。

 

 

「ッ!!」

 

 

クラウドは、さらに上へ。

 

爆速で空中へと飛んだクラウドはまだ空中にあるブロックの真裏、下面へとコウモリのように張り付く。

 

銀の厄災の脳天目がけて、刃の閃光が落ちていく。

 

 

「················っ」

 

 

わずかに息を呑む音があった。

 

だが先ほどまでとは違い、次々に瓦礫が流動している中ではわずかな硬直すら許されない。だからセフィロスは下手に受け止めるのではなく身をひねってかわし、別の足場へと飛び移っていく。

 

結局クラウドの剣は瓦礫を崩壊させるだけで終わった。であれば、次の一手に出ればいい。追いかけるようにクラウドも別の足場へと飛び移る。

 

二人の体は互いに見つめ合うように真横に張り付く。そして眼光が交差した瞬間、二人は攻め合うように剣を振るう。一撃を与えれば二人の肉体は別の足場へと吹き飛ばされ、そしてまた二人は攻撃すべく互いに向かい合っていく。

 

変則的な空中戦が続く。

 

自分の攻撃が相手に届くかどうかなど、クラウドは気にも留めていないだろう。

 

そもそも、会話すること自体無駄である。

 

 

「お前に私は倒せない」

 

「っ!!」

 

「人の身程度の力で私の世界を掌握して圧倒しようなどと考えるのが、そもそもの間違いだ。この世界を抜け出したければ、最低でも世界を滅ぼす程度に己を鍛え上げてから挑むべきだったな」

 

 

その言葉を真剣に聞いてやるほど、クラウドには余裕がない。

 

戯言、挑発。

 

そんなものに惑わされるほど、こちらは追い詰められていない。クラウドはそれを証明するように、バスターソードに光を宿らせて再び迫る。

 

ガキンッ!! という重たい金属の噛み合う音がした。

 

互いの剣をぶつけさせて、力比べをしようとしている。だがしかし、力では圧倒的にセフィロスの方が上だった。

 

 

「ほう········」

 

「ぐっ!!」

 

「まだまだ楽しめそうだな········どこまでやれるか試してからお前を倒してしまうのもいいかもしれないな」

 

「黙れッ!!」

 

 

いい加減その口を黙らせてやる!!

 

そう言うようにクラウドは瞬間的に筋力を底上げし、セフィロスの力を上回ったところで吹き飛ばすことに成功した。

 

 

「キリト!!」

 

「ああ!!」

 

 

待機していたキリトが空中へと跳んでいく。

 

二つの剣の威力を合わせた二刀流の力を持ってすれば相手の肉体を砕くことが可能。吹き飛ばされたセフィロスが体制を整えるために別の足場に着地した直後、キリトはその隙を逃さないように一撃を入れる。まだ足場として機能していた瓦礫は容赦無く根元から突き崩され、セフィロスもまた上手く避けたようだが足運びを変更せざるを得なくなる。

 

一旦セフィロスは安定した足場へと、ふわりと浮遊しながら着地する。着地し、嘲笑うようにキリトを睥睨してくる。

 

 

「くそっ!!」

 

 

せっかく作ってくれたチャンスを無駄にしてしまった。

 

だが予想はできていた。あの規格外のイレギュラーならばこの程度の攻撃なんて通らなくて当然だと。悔しい気持ちはあるが、そんなことを考える暇があるならば次の作戦を考えろ、そう思うようにキリトは気持ちを切り替える。

 

 

「············ふ」

 

 

またかすかに嗤いが漏れる音が聞こえた。

 

今度は正確に、キリトに対して。

 

 

「身の程を知れ」

 

 

直後の出来事だった。

 

ゴオッ!! と。

 

()()()()()()()()()()()()

 

 

「「「!?」」」

 

 

三人は何が起こったのか、明確にはその原因を突き止めることは出来なかった。

 

しかし、視界に飛び込んできた情報だけで今起きていることを理解するのには十分だった。

 

今もなお空間に漂う瓦礫は空高く打ち上げられ、ありとあらゆる建物が現実の常識から切り離され、この空間の頭上で容赦なく炸裂する。

 

いわゆる、重力の崩壊。

 

元からこの空間に重力という概念があったのかは定かではないが、今まで漂っていた物質は全て上へと運ばれていっていた。

 

その出来事に三人は目を奪われていると、視線は自然と上へと向けられる。

 

そして、その先にあったものを見てさらに三人は驚愕する。

 

全てを呑み込む炎の渦。

 

引力に捕まった威力で一瞬で膨張、大気圏に突入した瞬間に着火、広範囲を炎と爆圧で埋め尽くすというとんでもないものが迫ってきていた。

 

核技術どころか世界すらも破壊する規模を持つ自然兵器。

 

夜の闇が吹き飛ぶ。

 

莫大な光と熱と音の洪水が小さな空間を埋め尽くす。

 

この世界が本物ならば、仮に事態を認識できていたとしても、把握はできなかっただろう。爆発によって爆発を食い潰す、すべての生命循環システムを破壊する、ろくでもない光景がひたすら広がる一撃。

 

隕石。

 

そのものが迫ってきていた。

 

 

「冗談じゃない···········」

 

 

吐き捨てるように、キリトは呟いた。

 

それはすぐに大きな声になった。

 

 

「冗談じゃないぞくそッ!! ゲームのシステムすら無視するなんて、ふざけてるにもほどがあるッ!!」

 

「なに、これ········一体どうなってるのッ!?」

 

 

キリトとアスナの二人は常識を越えた事態についていけなくなっている。当然といえば当然だが、ゲームの域を越えてる光景を見て二人はもう混乱どころではない。

 

 

「何なんだよ、あいつ何したんだ!?」

 

「··········見てわからないか?」

 

「「!?」」

 

「隕石を呼んだ。ただそれだけのことをしただけだ、あいつは」

 

 

クラウドは簡単なことのように言うが、キリト達は思わず絶句していた。

 

 

「そもそもこの世界はあいつの思惑通りだ。その中にいる時点で、俺達は不利な状況だ」

 

 

隕石を呼ぶ。言葉遊びなら簡単だが、それはつまり自然現象の理屈を覆すことを意味している。今更ながら、キリト達は改めて理解した。

 

今起きている現象の凄まじさにピンと来ないなら、『世界を終わらせる力』とでも思えばいい。例えば地球の地軸がわずか10度ズレただけで地球上の動植物の四分の一は絶滅するし、地球の自転を止めれば世界は滅亡する。

 

隕石なんてものが飛来すれば、地面はその圧倒的な威力で重力すらも隆起させ、地球表面の地殻が丸ごと吹き飛ばされて跡形もなく世界を呑み込むのだ。

 

それをやってみせたのが、今目の前にいる相手。

 

それはつまり。

 

この世界を支配しているセフィロスは、好きな時に好きな場所で、こうしたいと想い望んだだけで、この世界を壊すことができるということだ。

 

 

「なんだよ、それ············ゲームマスターである茅場のアバターを乗っ取っただけでそんなことまで可能なのか!?」

 

「無理だ、()()()()()()()

 

 

鋭利で冷たい刃のような声は、この世界の支配者の本人だ。

 

 

「この世界には、()()()()()()()()()()()()()()()()。それは怨念となってこの世界を巡り、やがてこの世界を侵食する。世界を憎むもの達の願い、それらを加護として利用すれば容易く世界を望む姿へと変えられる。死者達の願い·············『この世界を壊したい』というな」

 

「「「!?」」」

 

「楽しむべきはずだった者達は、理不尽によって命を落とした。その際に残った思念の多くは、『こんな所に来なければよかった』という願いがほとんどだった。『こんな世界に来たばっかりにこんな目に遭った。こんな世界はじめからなければよかった』という怨念は次第に願いとなった。願いは明確に形を成していき、やがてそれは正確になった。『このふざけた世界を壊したい』という死者達の願い。私はそれを利用しているだけだ」

 

 

そう、『神』という位置にいるアバターを取り込むことによって。

 

と、付け加えるようにセフィロスは言った。

 

正直、意味がわからない説明であった。何を言っているのかわからない。ゲームマスターを取り込んだことによって神になり、その概念を利用して人々の願いを叶えるなんて幼稚な説明をしているつもりなのかもしれないが、あまりにおかしな所が多すぎて理解ができない。

 

いや、そもそも理解ができないのが当たり前なのかもしれない。

 

考えてもみろ、あいつは現実で何をしでかした?

 

宇宙からやって来た災厄、『ジェノバ』を自分の母だと勘違いした挙げ句、自分は選ばれし者で星を支配するに相応しい人間だと思い込んでメテオを発動させた。その後、倒されてもなお思念として蘇り、今度は星を船として宇宙を旅するなどと抜かしやがった。

 

そんなやつの思考をまともに理解しようなんて最初から無理な話だ。

 

一々付き合ってたらキリがない。

 

 

「私はただ望みを叶えているだけだ。この世界に散っていった者達の願いをな」

 

 

それでも天使は続ける。

 

もはやなんの弁明もせず、ただ己の一方的な話を聞かせるように右手を天上へと振りかざす。

 

ゾクンッ!! と心臓を貫くような悪寒。

 

頭上の隕石が、一際大きく赤く輝いた。

 

風は熱風へと変わり、音は破壊へと変化し、大気は世界を飲み込む。

 

セフィロスは己が作り上げた惨状を見渡す。世界を漂っていた建物は熱風の塊に舞い上げられ、列車もノーブレーキで辺り構わず激突して崩れていく。無数の鋼鉄がぶつかり合う景色の中、片翼の天使の嘲笑だけが仮想空間に吹き抜ける。

 

隕石の周りにはうっすらと、複雑な紋章を描くように様々な光の筋が走り回っている。

 

数式のような魔方陣。

 

難解な理論が絡む複雑な計算を組み立てる事ができる茅場の頭脳と史上最強のソルジャーの力、そして人々の願いを増幅させて生み出した究極魔法。

 

人間一人の力で出来た技ではない。

 

世界を動かすことが出来るアバターの権限を手にした代償を思う存分に使うセフィロスは、ついに笑いだした。鼻で笑うのではなく、口を歪めて。

 

 

「·········母さん」

 

 

セフィロスは落ちてくる隕石を抱くように両手を上げて頭上へと吼える。

 

周囲の闇の全てが赤く染まりつつある中でも、奴の信念は揺らがない。

 

摂氏一万度もの高熱の余波が、三人の皮膚に火傷のようなジリジリした痛みを植え付ける。

 

 

「ッ!!」

 

 

熱いはずなのに、クラウドの背筋に悪寒が走る。

 

一刻の猶予もない。

 

あれはもう、防ぐことのできる一撃ではない。そんなの馬鹿でもわかる事実だ。触れた瞬間に蒸発してしまうような高熱の塊など、もはやこんな電子で作られた体で対抗しようと考えること自体が馬鹿らしい。

 

クラウドは一度あいつに勝っているというのに、勝てるビジョンが見えてこなかった。

 

ソルジャー。

 

星を救った英雄。

 

たとえやめろという悲痛な叫びを奴にぶつけても、あの片翼の天使は一片も動じないだろう。なにせ、奴にとってはクラウドが苦しむことこそが最高の娯楽なんだから。

 

おそらくもう、あいつには理屈は通じない。あいつが実体を持った時点で、因果はいつからか狂ってしまったんだろう。

 

今のあいつには、『目的を果たす』というたった一つの命令文しか存在しない。

 

クラウドは犬歯を剥き出しにして頭上にいるセフィロスを睨み付ける。

 

もはやあの隕石を止めることなど不可能。まだ落とすまでには至っていないにしてもあの隕石自体を止めるのは物理的には無理だ。止められないなら、それを扱う術者を止めるしかない。仮想空間で使われた魔法は、いわばプログラムを組み立ててる途中の段階。あの魔法がまだ発動段階なら、術者を止めれば発動を妨害出来るはすだ。

 

だが、

 

 

「くそ·········ッ!」

 

 

それすらも不可能に近い。

 

一番簡単な打開策が目の前にあるというのに、それが難しいという事実に奥歯を噛み締める。

 

奴がそう簡単にくたばるはずがない。

 

強さは規格外。戦うだけでも一苦労。倒す前に魔法が発動してしまっては意味がない。

 

そんなクラウドを、セフィロスはまるで一つの高みから泥の中でもがく害虫を嘲笑うように言う。

 

 

「『ゲームオーバー』だな··········クラウド」

 

 

その視線に危機感はない。哀れみすらも感じられない。ゲームを楽しむのに、そのような感情は無用なのだから。

 

 

「··········」

 

 

二人を後ろにし、前へと一歩出る。勇敢な行動に見えるが、実質それは無謀でしかない。

 

クラウドの体から、湧き出るように汗が噴き出ている。

 

天使との実力差はもはや人の手で埋められるようなものではない。手を伸ばしても届くかわからないその先に、奴は待ち構えている。

 

まさに、ラスボス。

 

勇敢な勇者の前に現れる最後の刺客。

 

 

「········クラウドさん」

 

 

と、アスナが静かにクラウドの名を呼んだ。クラウドはその声に振り返った、その時だった。

 

バチンッ!! と、唐突に右頬に鋭い痛みが走った。

 

外部からの攻撃。そうと気づいた時には、クラウドはわけのわかんない一撃を感じながら右頬を押さえていた。

 

アスナが左手で、自分の頬を叩いたのだと自覚する。

 

 

「???」

 

 

してるのに、出てくるのは疑問ばかり。

 

意味がわかっていないクラウドに、アスナは真剣な声色で言う。

 

 

「落ち着きましたか?」

 

「!」

 

「さっきから勝手に一人で抱えて、一人で勝手に葛藤しないでください。忘れたんですか、ボスは一人で挑むものじゃありません。チームで挑むんですッ!!」

 

「!?」

 

「少しは私達を頼ってください! 私達だってプレイヤーなんです! 私達だってクリアするために戦ってるんです!! あなた一人で攻略してるわけじゃないんですから、少しは私達も協力させてくださいッ!!」

 

 

唐突なアスナの力説にクラウドは思わず馬鹿みたいにポカンと口を開けた。

 

アスナの説得を受けてなお、理解が追い付いていないクラウドはしばらく自分が思考を働かせていることに自信が持てなかった。

 

 

「アスナの言う通りだぞクラウド」

 

「!?」

 

 

そんな空気に乗っかるように、キリトはクラウドの肩に手を置きながら簡単な調子で言う。

 

 

「俺達はプレイヤーだ。いくら第一層のボスをたった一人で倒したことがあるからって、一人で勝手に突っ込んで勝手に追い詰められてるんじゃ意味がないだろう。俺が言えた義理じゃないが、仲間に頼るっていう基本すら忘れたのか?」

 

「···········」

 

「あの時言っただろ、ボスはたった一人で倒すように設定されていない。お前にこういうことを言っても仕方ないと思うが、今回ばかりはボス戦には参加してもらうぜ。今までフロアボス攻略に参加しなかった分、きっちりと協力してもらうッ!」

 

 

参加させてもらうのではなく、参加しろという命令文。

 

二人は自分達の意見を告げると、クラウドよりも前へと出る。

 

二人の背中はそれ以上、なにも言わなかった。クラウドに自分達の意志を告げるのに、それ以上の言葉は必要なかった。

 

剣を構え、自分達も戦うという姿勢をクラウドに見せつける。

 

 

「············」

 

 

クラウドは、愚かだったのかもしれない。

 

個人のわがままで第三者を巻き込まないようにしていたのに。力の差がありすぎるが故に、まだ現実で本物の剣を持って化物に挑んだことのない少年少女達に無理を聞かせるのは気が引けたというのに。

 

 

「···········あれを止めるには、もうあいつを倒すしかない」

 

 

頼むしかない。

 

 

「時間もないし手強い相手だ。一気に方を付けなければすぐにゲームオーバーだ」

 

 

頼るしかない。

 

 

「俺一人じゃもう手に負えない·········だから」

 

 

親友から受け継いだバスターソードを拾い上げるように構え直し、絞り出すように、クラウドは口を動かす。

 

一点を見据える。

 

やるべきことは変わらない。いつだってそうしてきたはずだ。

 

異世界からの乱入者は化物を狩り続け、ゲームプレイヤー達はクリアを目指してきた。

 

だから、

 

 

「もう一度お前達の力を貸してくれ、決着をつけるぞ」

 

「ああ!!」

 

「はい!!」

 

 

ずっとその言葉を待っていた。

 

ようやく、たった一人で攻略したプレイヤーから洩れ出た言葉に、二人は思わず笑みを浮かべる。

 

協力を求めたクラウドの期待に応えるように、二人はもう一度、どこまでも強く固く。

 

剣をしっかりと握り直した。

 

 

 

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