敗北して始末されたクレハは壁際の、ボックス席付近に転送されて、そのまま座って項垂れていた。対戦相手であったヴィンセントは暗い壁際で眠りにつくように腕を組んで壁に寄りかかり余裕そうにしている。
「······ッ!!」
ギリッと奥歯を噛み締めているクレハは、ニュービーなんかに負けたと言う事実が受け止められない。しかも、最後のあの励ましの言葉。強者の言葉はクレハの心を抉らせた。
このゲームをやって何週間も経つのに、初心者に負けてしまった。それが悔しくて悔しくて堪らない。
彼女は悔し涙を流しながらも、天井のマルチ戦闘モニタの方へ視線を向けて、他のプレイヤー達の戦い方を見る。
いくつものフィールドの中には、砂漠やジャングル、あるいは廃墟で拳銃やマシンガン、あるいは物陰からライフルをぶっぱなすプレイヤー達がアクション映画さながらの迫力を見せつけている。
その中で、だ。
クラウドもといライトニングという名前に改名された女装青年は、二回戦、三回戦、そして四回戦まで勝ち上がっていた。
剣にも銃にも変わる変形ウェポンで、クラウドはまるで、
瞳孔が縦に伸び、まさに荒ぶる神のような鬼神の如くプレイヤーを次々と倒していっていた。
「········ッ!!」
クレハはそんな戦い方をするクラウドの姿を見て目を開くことしかでぎずにいた。このまま行けば、クラウドとヴィンセントが決勝で戦うことになる。
一度戦ったことがあるからわかる。ヴィンセントは銃を扱いなれている。しかしクラウドは全対戦を見ても剣ぐらいしか使ってない。たまに銃を使ったのを見たことはあったが、明らかに扱いなれていなかった。
決勝に進出した二人は一体どんな戦いを見せてくれるのか、クレハは先程の悔しさを忘れてモニタに注目しまくっていた。
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最後の対戦。しかしヴィンセントは緊張してないのか両目を瞑りつつ静かに次の戦場へと転送されるのを待った。
ヘクスパネルに表示されているのは、どういうわけか『ライトニング』となっていた。転送された先では生ぬるい風がヴィンセントの肌を撫でていく。
鼻腔には強い潮の臭いに寄せては返さず、さざ波の音がコンクリの岸壁に当たり砕けていく。
そして
桟橋の突端には、二匹の修羅が立っている。
「······まさか、お前と戦うことになるとはな」
「ああ、俺も驚いてるよヴィンセント」
そして眼光が交わった時、二人の更なる戦いが繰り広げらことになる。
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クラウドは正面を睨み据える。目の前には仲間がいた。戦わなきゃいけない敵がいた。
静かに目を閉じると銃を取り出し、銃口をクラウドに向ける。ヴィンセントが歩みでると、クラウドが先に仕掛けた。
薙ぎ払うように腕振るう。
「ハァァァアッ!!」
ブレイバー。
剣に気を集中させて大きく跳躍したのち、降りぎわに上段から敵を斬る。
青白いフィールドが扇状の形を描き、恐ろしい勢いでヴィンセントに殺到する。
「ふっ」
ヴィンセントは真顔だった。
真顔のままガキンという炸裂音を響かせ、拳銃を真横に盾のようにして斬撃を防いだ。
「ハッ!!」
パァンとヴィンセントは拳銃を別方向に放ち、その推進力により加速されたヴィンセントの爆速の迫り来るクラウドの頬に当たりそうになる。
冷静に避けたクラウドはデュアルウェポンを変形させながら後ろに一回転しながら回避し、ヴィンセントに銃口が向けられたことを感じ取って銃弾を放った。
ヴィンセントは膝をついて避けると、そのままの勢いでクラウドへと迫っていく。クラウドとヴィンセントは至近距離から拳銃でお互いを撃とうとせめぎ合う。
まるで格闘技のようにクラウドとヴィンセントの手が交差する。近接拳銃戦は、射撃線を避け、あるいは相手の腕を自らの腕で弾いての戦いだ。
バンッ!!
ババンッ!!
と放たれる銃弾はお互いの大柄な体を捕らえられずに壁に、床に、打ち込まれていく。
「やるなクラウド」
「そっちもな」
ちょっとした会話を終わらせると、二人はすぐに距離を取る。
クラウドはデュアルウェポンを剣に変換させてから片手に持ったまま舞うように一回転。数十メートルの距離をゼロにする踏み込みと斬撃が神速で振るわせられたことを除けばソルジャーにしか出せないデタラメな攻撃だ。
打ち合わされる剣戟音。驚愕の表情を浮かべたのはクラウドの方だった。
思わず驚いた。当たり判定と言うものがある。刃に当たればそれはダメージが高い。だが刀身などはダメージが少ない。刃が無いところはダメが少ないと言う設定だろう。
(だからって、まさかそんな)
ヴィンセントは膝と肘を無理矢理使い、刀身をはさみ防いだ。
真剣白刃どり、この土壇場、HPゲージが残りわずかな時に彼は躊躇いもなく選んだ防御。それでもレッドにHPは減るがゼロではないし、時間はまだある。
全員が開いた口が塞がらない中、クラウドは硬直した。
そしてその時初めて、彼の指は迷わず引き金を引く。
「ふっ」
パァン!!
と乾いた音が響いた。
だが、クラウドのHPは減らなかった。頬を掠っただけで、ヴィンセントはそれ以上行動を起こさなかった。
銃をホルスターにいれ、彼はこう語りかける。
「仲間を撃つ趣味はない」
「!」
気持ちと整理が落ち着かず、何度も瞬きをしているクラウドに向かってこう話す。
「私の目的はセフィロスと宝条の残骸探しだ。いつまでもこんなゲームに付き合ってられない。そうだろう、クラウド」
「······」
「だから戦いはここまでだ。また明日の本大会で会おうクラウド」
そして後ろを振り向きリザインと叫ぶと、試合終了の合図が鳴った。
クラウドとヴィンセント。
これにより、彼らは本選への切符を手に入れたことになる。