ソルジャーアート・オンライン   作:織姫ミグル

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第14章

 

 

問一、ライトニングとはどういったプレイヤーですか?

 

 

『そうですね、美人だけど無口なところが可憐で美しい所だと思いますね』

 

『なんというか、空気に同化? するって言うか、うまく言えませんが、ただのプレイヤーではないことだけは確かです』

 

 

問二、ライトニングというプレイヤーについてどう思いますか?

 

 

『最っ高に美人だと思いますよ! あんな美人なプレイヤーはGGOでは中々見ません!!』

 

『いいですよね! あの整った顔立ち、背筋、それに加えて筋肉。骨太のおなごってやつでしょうけど、そんなこと忘れさせてくれるくらいに美人です!!』

 

 

問三、ライトニングの戦闘スタイルを見てどう思いましたか?

 

 

『正直、チートかなとも思ったよ。だって銃と剣に変形する武器なんて、自分が知る限りでは彼女しか持ってませんもん。でもそんなこと気にしないくらいに彼女の戦闘は素晴らしかったです!!』

 

『あの武器は今後のアップデートで追加されるのかな? デュアルウェポンってプレイヤー達から言われているみたいですけど、もしそうなら自分も使ってみたいですね!!』

 

 

問四、ライトニングに対して言いたいことは?

 

 

『俺と付き合ってくれライトニングゥゥゥウ!!』

 

『もし今度会ったら告るつもりですはい!!』

 

 

問五、今後ライトニングに期待することは?

 

 

『第四回BoBに出るんだったら、その時もまた優勝してほしいですねぇ』

 

『彼女? 彼女はもう自分達より強い、それは認めます。けど絶対、ぜっっったい、いつか自分が最初にライトニングに勝ちたいです。彼女は自分の目標ですッ!!』

 

 

 

<><><><><>

 

 

 

『いかがでしたか? “ライトニング”さん? 皆さんはもうライトニングさんに夢中ですよ!?』

 

『·······』

 

『大人気ですねライトニングさん! 現在もSNSのトレンドの世界一位から十位を軽く独占してますよ』

 

『·······』

 

『ラ、ライトニングさ~ん?』

 

『えっとあの、私が彼女の代わりに答えますので、ご質問があれば私にどうぞ!!』

 

『あ、はい。わかりました。では“クレハ”さん。彼女とはいつどこで出会って知り合ったんですか?』

 

『はい! かr·······彼女と出会った切っ掛けは────』

 

 

そう言って語るのはピンク色のサイドテールをしたクレハだ。司会進行役の、テクノホップな衣装に全身を包んだ少女が甘い声でクレハに質問する。

 

ネット放送局『MMOストリーム』で現在生中継されているのは『最強者決定バトルロイヤル大会《第三回バレット・オブ・バレッツ》、優勝者インタビュー』というコーナーである。

 

現実世界でもテレビやパソコンで配信動画を観ることができるが、無数のVRMMOワールド内でも宿屋や酒場などで常時放送されており、ゲームをプレイするプレイヤー達であればやはり仮想空間で視聴することを好んでいる。

 

それに、今回のはさらに特別なコーナーだ、観る人も多いだろう。

 

実際、アルヴヘイム・オンラインにある新生アインクラッドの第二十二層のとあるホームでは、不思議なエメラルド色のワインを満たしたグラス片手に、その生中継を見ている者達がいた。

 

その中で、真っ黒な装備を着込んだキリトは苦笑を浮かべながらその中継を見ていた。

 

 

「なんかさっきからこの人全然喋ってなくない?」

 

 

と言ってきたのはリズベット。彼女もキリトと同じワインを片手に首を傾げている。

 

 

「たしかに、さっきからクレハさんっていうプレイヤーさんが代わりに話してるし、この人もしかしてシャイなのかな?」

 

「だとしてもいくらなんでも口を開かなすぎじゃない? 優勝者のインタビューなのに、これじゃなんだか気まずい番組にしかならないじゃない」

 

 

シリカとリーファがノーコメントを貫いているライトニングに対して何か文句を言っているが、()()()()()()()()()

 

 

「何言ってんだ!! 無口なところがいいんじゃねぇか!! 謎めいたお姉さん·······俺的にはアリだと思うぜッ!!」

 

「クライン·······お前は本当に女のことになると相変わらずだな」

 

 

そんなクラインに呆れるエギル。

 

ほとんど一口も口を開くことがないライトニングは、まるで人形のようにしてそこに座っている。これではクレハが腹話術でライトニングの心境を語っているみたいだ。

 

どこかつまらない番組になりそうな雰囲気が出ている。

 

よって司会進行役の少女はなんとしてでもライトニングに口を開いてもらうように努力している。

 

 

『ライトニングさん、ライトニングさんが持っているその剣にも銃にもなる《デュアルウェポン》という装備品は一体どこで手に入れたんですか?』

 

『えッ!?』

 

『·······』

 

 

クレハには答えられない質問を敢えてする司会進行役の少女。こればっかりはクレハは何も答えられない

 

すると、ライトニングというプレイヤーははぁとため息をついてようやくその固い口を開く。

 

 

『·······初期装備だ·······』

 

「あ、喋った!! ようやく喋ったよあのお姉さん!! 綺麗な声だねぇ~!!」

 

 

ユウキは初めて聞いたライトニングのその美声に感激するが、ライトニングは無表情のままなので声と顔が合ってない気がする。

 

 

『あ! ようやく答えてくれましたねライトニングさん!! 初期からの装備ということは何かの特典とかだったりしますか?』

 

『·······ノーコメントだ·······』

 

『あ、そうですか·······』

 

 

一言で会話を区切るライトニングに、視聴者達は凄い不満を持っている。確かに美人だが、ここまで口を開かないとつまらなすぎる。

 

視聴率はめちゃくちゃ高いこの番組で放送事故なんてことになったらマズイ。

 

司会進行役はなんとしてでもライトニングに長い台詞を喋ってもらうように頑張っている。

 

 

「·······ハハハッ」

 

 

その様子を見ていたキリトは半笑いしながら中継を観る。アスナはそんなキリトにこう聞いてきた。

 

 

「ねぇキリト君」

 

「なんだアスナ」

 

「キリト君は、あのライトニングさんっていう人と会話したんだよね? どんな人だったの?」

 

 

その質問に、全員の視線がキリトに集中する。

 

そしてキリトは困惑する。

 

だって知っているのだ。

 

キリトは、ライトニングが一体どういう人なのかを知っているのだ。

 

しかし、話してはならない。

 

絶対に口外してはいけない。そう第六感が告げている。何せ、何故だかわからないが画面上の向こうにいるライトニングでさえカメラ目線でキリトのことを見ているからだ。

 

多分、ライトニングも第六感で感じたのだろう。危機が迫っている、と。

 

そんなライトニングにスクリーンはズームインし、司会進行役もどうしたのか聞いてくる。

 

 

『? どうかしましたかライトニングさん? 急にカメラなんて見つめて』

 

『いえ、ちょっと·······悪寒がしたもので』

 

 

眼光を鋭くしてカメラを見つめているライトニング。

 

その目を見たキリトは、あの時の出来事を思い返す。

 

 

『それ以上喋ると頬に穴が空くぞ』

 

『·········え?』

 

『アスナ達に喋るのもダメだ、喋ったが最後お前に明日はないと思った方がいい』

 

『あ、はい··········』

 

 

あの時の会話を思い出したキリトは苦笑しながら誤魔化すようにアスナ達に教える。

 

 

「ちょっと·······コミュ障な人だったかな。俺が話しかけても、あんまり反応しなかったし」

 

「へぇ~、そうなんだ」

 

「ま、でしょうね。生中継でこれだもの。現実世界でも恐らくコミュ障なんでしょうね」

 

 

リズベットがそう言うが、ほとんど当たっている。

 

だって、ライトニングの正体は『クラウド』なのだ。

 

キリトと同じように、レアアバターで《ガンゲイル・オンライン》に降り立ち、変声チョーカーでさらに女性に近付けた。

 

何故変声チョーカーをつけているのかと言えば、それは隣に座っているクレハが面白半分でつけさせたからだ。

 

もう周囲のプレイヤー·······いや、全世界のプレイヤー達が『ライトニングは女性だ』と認識してしまっているため、クラウドは後に引けなくなったのだ。

 

今回の出演だって勿論断ろうとしたが、優勝者に拒否権などなく、ほぼ強制的に生中継に参加させられた。

 

そんな展開にまでなってしまったのはクレハが原因のため、クラウドはクレハを掴まえて一緒に出てほしいと懇願した。

 

クレハは嫌だ! と断ったがクラウドのその鋭い眼光に恐れをなし、首を縦に振るしかなかった。『断ったら斬る』と、目が語ってきていて脅されたからだ。

 

とまぁ、そういう経緯があってクラウドはライトニングとして番組に出ている。

 

仲間達に気付かれてないのはもはや奇跡に近い。それくらい、ライトニングはクラウドだとバレてない。

 

そんなライトニングに、クラインはメロメロだった。

 

 

「はぁ~美しいお姉さん。俺と付き合ってくれねぇかなぁ」

 

「アンタじゃ無理だと思うわよクライン」

 

「なんだとぅ!? 可能性はゼロじゃねぇだろがよぉ!!」

 

「「「いや、ないと思います」」」

 

 

リズベットにシリカとリーファにまで言われてしまったクラインはガーンッ!! と落ち込み、その場で硬直した。

 

それを見ていたキリトは苦笑いする。

 

 

(クライン·······お前はそのままのクラインでいてくれよ)

 

 

と、心の中で静かに願った。

正体を知ったら、多分、絶対、めちゃくちゃ落ち込む。そんなクラインを哀れに思ったのか、キリトは肩をポンポンと優しく叩いた。

 

そして尚も続く番組で、司会進行役の子がこんなことを聞いてきた。

 

 

『それでそれでぶっちゃけ聞きますが、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()?』

 

 

その時全メンバー、及びライトニングも顔が固まる。

 

 

『えっ!? ライトニング、誰かと付き合ってるの!?』

 

『·······』

 

『だってこれだけ美人なんですよ!? 彼氏の一人くらいいるんじゃないですか!?』

 

『·······』

 

 

その質問に、ライトニングは石のように固まってしまった。クレハも、これは答えられない。

 

その質問にライトニングは冷たく、強く、こう言った。

 

 

『ない、以上だ』

 

 

そう言ってポリゴンの椅子から立つライトニング。

 

これ以上は質問に答えられないと判断したのだろう。

 

もはや放送事故に等しい出来事に司会進行役も大慌てだ。

 

 

『ああ! 待ってッ!? 待ってくださいッ!! まだ番組の途中、番組の途中なんですからッ!?』

 

 

司会進行役は止めるが、ライトニングは左手をスライドさせるとログアウトボタンを容赦なく押す。

 

直後、

 

その姿はふっと消失し、ポリゴンの椅子だけが残された。司会が大慌てで言った。

 

 

『か、回線が切断されてしまったようですね。すぐ復帰すると思いますので、皆さんチャンネルはどうかそのまま────』

 

 

と、司会が言う前にスクリーンには『しばらくお待ちください』という文字が表記がされる。

 

その様子を見ていたキリト達は唖然としながら見ていた。

 

 

 

<><><><><>

 

 

 

とある日。

 

配達の仕事が来なかったクラウドは久々にALOにログインしていた。

 

そして新生アインクラッドで、GGOでの出来事を少しでも忘れるために無限とも言える量のモンスター達を狩っていた。

 

ガンゲイル・オンラインで女性プレイヤーだと勘違いされてストレスが貯まっていた彼は大剣を振るい、モンスター達をポリゴン化していく。

 

そんなクラウドに後ろから一言、

 

 

「随分、荒れてるなぁ」

 

 

その声の主を聞いたクラウドは、鋭い眼光でキリトを見つめてきた。

 

 

「·······キリトか」

 

「久々にこっちにログインしたな、クラウド」

 

「·······喋ってないだろうな?」

 

「ないよ、本当に·······っていうか、あんな放送事故起こしておいてよく平気な顔できるな」

 

「あれはあくまでも俺じゃない、()()()()()()()()()()()()

 

「ハハッ、そうだったな」

 

 

そう言ってクラウドの隣に座るキリト。クラウドは一休みするかのようにアイアンブレードを地面に突き刺し、胡坐をかく。

 

そしてクラウドは何の用なのか訊ねる。

 

 

「それで、何の用なんだ?」

 

「用事がなきゃ話しちゃいけないのか?」

 

「·······」

 

「冗談だって、ただ単に『報告』をしたくて話しかけに来たんだ」

 

 

報告? と首を傾げているクラウドにキリトは続ける。

 

 

「まず死銃のことだけど、クラウドは複数人いるって言ってたけど、ほとんど当たってた」

 

「·······そうか」

 

「正確には三人いたわけなんだが、そのうちの一人“新川昌一”っていう奴がリーダー役だった。そしてその弟、“新川恭二”、そいつが現実世界で人殺しをしていた」

 

「·······」

 

「そして今回、クラウド達が相手にした死銃は兄の方の昌一だったらしい。そいつは総合病院のオーナーの院長の長男で、幼い頃から病気がちで、中学校を卒業する頃まで入院退院を繰り返していたらしい。高校入学も一年遅れて·······そのせいで父親は早々に昌一を自分の後継ぎとするのを諦めて、三つ下の弟である恭二にその役目を与えたようだ。恭二には小学校の頃から家庭教師を付け、また自ら勉強を教えたりする一方で、昌一のことはほとんど顧みなかった。兄である昌一は期待されていないことで追い詰められ、弟は期待されることでまた追い詰められたのかもしれない·······って、“菊丘”っていう総務省総合通信基盤局に所属している人に聞いたんだ」

 

「菊丘?」

 

「まあ、俺の依頼人だと思ってくれ。で、話を戻すけど、そういう境遇でも二人の仲は良かったらしい。昌一は、高校を中退してからは精神の慰撫をネットワークの中、ことにMMORPGに求め、その趣味はすぐに弟にも伝播した。そして、兄である昌一は《ソードアート・オンライン》の虜囚となり、二年の間、昏睡状態だったんだが、生還してからは奴は恭二にとってはある種の英雄的な存在になったらしい。人殺しの英雄として、な」

 

「愚かだな」

 

「ああ、俺もそう思うよ。で、二人は逮捕され今は少年院に入っているらしい」

 

「そうか」

 

 

クラウドは黙々とその話を聞いていたが、別世界のことであるため、聞いてもなにもできない。しかし、それに気付いてくれたヴィンセントとクラウドの功績は大きい。

 

よって、キリトはこう言い出した。

 

 

「だからさっき言った菊丘っていう人がヴィンセントとライトニングにも報酬を与えたいって言ってきてるんだけど·······」

 

「興味ないね」

 

「だよな」

 

「そもそも住む世界が違う。GGOでリアルマネーにできるのはキリト達の世界だけの話だ。俺達の世界ではそれはできない。そもそもアミュスフィアはまだ三台しかないんだからな」

 

 

クラウドはそう言うと、キリトにこう質問した。

 

 

「キリト」

 

「ん?」

 

「その新川、新川昌一っていう奴は他に何か話さなかったか?」

 

「他? たとえば?」

 

「·······『銀髪の剣士』について、とか·······」

 

 

クラウドはセフィロスの捜索を今も続けている。

 

それで少しでも情報が欲しいため、ソードアート・オンラインに参加していた新川昌一が『ラフィン・コフィン』にいたのなら、セフィロスに襲われたはずだ。

 

最大レッドギルドである『ラフィン・コフィン』が壊滅したのにはセフィロスが関わっているからだ。

 

よって、キリトにセフィロスのことについて聞いてみたが、彼は首を横に振る。

 

 

「残念ながらそのことについては何も言わなかった。昔、『ラフィン・コフィン』のギルドに所属していたって所までは聞いてる。ギルドに所属していた頃は、“赤眼のザザ”っていう通り名だったらしい」

 

「·······そうか」

 

 

通り名なんぞどうでもいいが、セフィロスについて何も話さなかったのを聞いて俯くクラウド。

 

成果は得られなかった、とでも思っているんだろう。

 

そんなクラウドにキリトは、

 

 

「けど、ありがとな、クラウド」

 

「ん?」

 

「俺、クラウドとヴィンセントがいなかったらアイツが怖くて立ち向かえてなかったかもしれない」

 

「俺達はなにもしてない、ただ戦っただけだ」

 

「それでも、過去と向き合わなきゃいけない時に側にいてくれたから俺は今こうしてクラウドと話せている。だから感謝してるんだぜクラウド」

 

「·······」

 

 

クラウドはそのキリトの言葉に鼻で笑うと、立ち上がって地面に突き刺していたアイアンブレードを引き抜き、隣にいるキリトにこう提案する。

 

 

「ちょっと最近ストレスが貯まっててな、久々に大暴れしたくてログインしたんだ·······なぁ、キリト」

 

「?」

 

「一狩り、付き合ってくれないか」

 

 

そう言うとキリトは口角を上げ、背中に背負っている剣を引き抜くと、

 

 

「ああいいぜ! 蹴散らしてやろう」

 

 

二人は自分達の得物を持って駆け出していく。

 

まるで楽しそうに、

 

面白そうに、

 

こうして、一つの事件が終わりを告げたのだった。

 

 

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