ソルジャーアート・オンライン   作:織姫ミグル

65 / 76
第3章

 

 

「ヤバイよお兄ちゃん! 金色の方、物理耐性高すぎる」

 

 

キリトの左側で、リーファが早口で囁いた。

 

頷いてわかったという意思を伝えたものの、何かを言う前に、その『金色の方』が途轍もなく巨大なバトルアックスを高々と振りかざした。

 

 

「衝撃波攻撃来ます! 二秒前!」

 

グオォォォォオッ!!

 

 

その後、ダンジョンの奥へと侵入した一行は、バトルアックスを持つ巨大な金色の雄牛と激闘を繰り広げていた。

 

もはや一種のチートとも言えるユイのサポート機能を今回ばかりはとキリトが解禁を許し、そのサポートに導かれるままに各々は動いていた

 

 

「二! 一! ゼローッ!!」

 

グオォォォォオッ!!

 

「ッ!!」

 

 

ガッキィン! と。

 

クラウドの持つアポカリプスと金色の雄牛の持つバトルアックスが鍔に近い箇所で激突し、押し合いになる。

 

 

「·······ッ!!」

 

「ナイスだクラウド! 今のうちに、シノンッ!!」

 

「わかってる!!」

 

 

キリトも自分の得物を抜いて走り出す。

 

シノンはいまだにクラウドと拮抗状態にいる金色の雄牛の後頭部に狙いを定め、弓の弦を離して矢を放つ。鋭い矢尻が、空気を引き裂き狙い通りの場所に命中する。

 

 

ゴアァァァァァアッ!?

 

 

命中した瞬間、『ミノタウロス』型の大型邪神である金色の雄牛はその場で膝をついて横に回転し始めた。攻撃されたことで、仲間の存在を確信したのだろう。ただそれがどこにいるのかまではまだわからない。

 

そのために、バトルアックスを無造作に振り回している。

 

クラウドはその動きを見切り、振り回されるバトルアックスを避けて懐へと潜り込む。金色の雄牛の外殻は非常識なほど硬い。定石(セオリー)としてはクラウドのように懐に潜り込むことだが、大きな大剣は小回りが利かず、せっかく内側に潜り込んでもその最大の長所である長さと重さが災いして硬い頭や足に引っ掛かることもある。

 

それでも、クラウドはそのあたりの使い手とは一味違った。走り込むと同時に大剣を水平に構え、接近の勢いと体重を乗せきり突きをねじ込む。

 

 

「ハアァァァァアッ!!」

 

 

気合いを込めた声と共に、左足に乗せていた重心を右足に移し、その右足で地面を踏みしめて立ち上がる勢いと共にアポカリプスを振り上げた。

 

そして斬り上げた切っ先を横に薙ぎ払い、一旦間合いを広げる。

 

大上段からの斬撃は使わずとも立ち回れるのだ。いつもよく使っていたバスターソードとは形が異なることもあって心配していた。ただ、それは完全に杞憂だった。アポカリプスを、クラウドはまるで自分の体の一部のように自由自在に使いこなしている。

 

これが、本物の大剣使いなのだ。

 

金色の雄牛は視界を回復させると、側にいたクラウド目掛けてバトルアックスを振り下ろす。

 

 

「今だシノン!!」

 

「ええ!!」

 

 

クラウドの呼び声に応えるシノンは左目を瞑り、右目を見開いて頭部に狙いを定めると、連続的に矢を放った。

 

本当は懐が狙い所ではあるが、ただクラウドがああも接近していては狙いを変更せざるを得ない。

 

 

「キリト!! スイッチ!!」

 

「ああ!!」

 

 

クラウドは大胆にも金色の雄牛の懐になど見向きもせず、キリトと入れ替わるように後方へと退がる。

 

クラウドの呼び掛けに応じたキリトは頷き、大きく息を吸うと、地面を蹴って走り出す。

 

 

「はぁぁぁぁあッ!!」

 

 

雄叫びと共に、片手剣を振るった。

 

それもただ一撃したわけではない。足を軸にし、体ごと回転させ、その勢いでもって連続で片手剣を斬り付けたのだ。

 

他の武器と比べて重さも長さも平均的な片手剣使いのキリトは、連続して攻撃することが得意である。

 

 

「まだまだぁッ!!」

 

 

そう高らかに宣言したキリトはアイテムストレージから今装備している片手剣とはまた別の片手剣をオブジェクト化し左手で強く握ると、雄々しく二本の剣を構えた。

 

 

「クラウド! 俺は左足を、お前は右足を頼むぜ!!」

 

「わかったッ!!」

 

 

バトルアックスを杖代わりにして起き上がろうとしている金色の雄牛に向かって同時に駆け出した二人は交差するように、それぞれ片足を斬った。

 

足を連続的に攻撃された金色の雄牛はアキレス腱を斬られて体勢を崩し、前へと倒れ込んだ。

 

 

「今だ! 全員で狩り取れッ!!」

 

「「「「「「「おおーッ!!」」」」」」」

 

 

キリトの絶叫に合わせ、アスナを除く全員の武器が色とりどりのライトエフェクトを眩く迸らせた。

 

 

 

<><><><><>

 

 

 

「ちょっとキリト! さっきの『アレ』は一体なに!? ALOに二刀流スキルは存在しないんじゃなかったの!?」

 

 

その後、クラウド一行は金色の雄牛を全員でタコ殴りにして秒殺していた。そして雄牛を倒し落ち着いた直後に、ユウキがキリトに詰め寄りながらそう聞いた。

 

 

「えっと·······言わなきゃダメ、か?」

 

「もちろんだよッ!!」

 

「·······『システム外スキル』だよ、『スキルコネクト』」

 

「ス、スキルコネクト·······?」

 

 

目を輝かせながら近付いてきたユウキに負けたキリトはあっさりと白状したが、その名前を聞いてもイマイチ理解出来ずにアスナが首を傾げた。

 

 

「ああ。ALOにはまだ二刀流や神聖剣みたいなユニークスキルは実装されなかったからな」

 

「で、でもお兄ちゃんさっき両手で·······」

 

「アレは二刀流じゃないよスグ。片手剣ソードスキルを左右交互に発動させただけなんだ。ディレイなしで繋げられるのはいいとこ三、四回が現状の限界だけどな」

 

「て、てゆうかクラウド、アンタ知ってたクチよね? さっきもまるで分かってたみたいにキリトのフォロー入ってたし·······」

 

「·······」

 

 

キリトの発想に驚く面々の中で、唯一特に何も驚く素振りを見せず平然とキリトの話を聞いていたクラウドをリズベットが問いただした。

 

 

「俺はずっとキリトの練習に付き合ってたからな。キリトのソードスキルをもう数えきれないほど剣で受け止めて·······思い返すのも嫌なほど練習に付き合わされたな。練習台の報酬も貰った」

 

「まぁ、今のはたまたま上手くいったけど、本当は一回目から二回目に繋げられる確率自体が五分五分だ。感覚的には脳みその右脳と左脳で別々のこと考えながらやってる感じだからな」

 

「うっわぁ。でもそれ剣道で例えるなら不正軽量竹刀の百倍ひどいアドバンテージだよね」

 

「例えがマニアックすぎて逆にわからないよリーファ·······」

 

 

ユウキがリーファのその例えを聞いて頭を混乱させている。

 

 

「ま、ともあれのんびり話してる暇はないぞ。ユイ、確かこのダンジョンは四層構造だったな」

 

「はい! 現在私達がいるのが第二層で、続く三層の広さは二層の七割程度で、最終層はほとんどボス部屋しかありません」

 

「ま、ダンジョン自体が逆ピラミッドだもんね。下っていけば狭くなっていくのは当然っちゃ当然だよね」

 

 

現状をこと細かにナビゲーションしてくれたユイの話を聞いたユウキは納得したようにマクアフィテルを自分の腰に据えた鞘へと納めた。

 

 

「リーファ、残り時間は?」

 

「えーっと·······今のペースのままだと一時間はあっても二時間はなさそう」

 

 

キリトに残り時間を聞かれたリーファは胸に下げたメダリオンへと視線を落とし、黒く染まった部分を不安そうに見つめてそう答えた。

 

 

「そうか·······ますますゆっくりはしていられないな。ユイ、次の層の地図データにアクセスして俺たちのナビを頼む。普段ならズルはしないけど今回ばかりは解禁だ」

 

「了解しましたパパ! ギミックの攻略もお任せ下さい!」

 

「頼りにしてるよ、ユイちゃん」

 

「はい! 大船に乗ったつもりでお任せ下さいママ!」

 

「よーっし! じゃあみんなHPとMP回復したら次の層はサクサクっと攻略しちまおうぜ!」

 

「「「「「おおぉぉぉおッ!!」」」」」

 

「·······オー」

 

「クラウド声が小さい!! ほら、もっと元気よく!!」

 

 

ユウキに促されて強制的にまた一人だけで『おー』と叫ばされた。

 

それからクラウド一行は難なく第三層のフロアボスを討伐し、二十分足らずで第三層を踏破した。

 

そして、第三層からダンジョン内最終層の第四層へと続いていく階段を全員で駆け下り始めたの矢先。

 

 

「んっ? なんだありゃ?」

 

 

その時。

偶然パーティの一番先頭を走っていたクラインが前方にある何かに気がついた。

 

狭い一本道の壁の一部分に妙なスペースが出来ていた。目を凝らしてよく見てみるとそれは鋭いツララで隔てられた氷の檻だった。

 

 

「檻? 中に誰か·······ッ!?」

 

 

クラインが恐る恐る氷の檻の中を覗くと、現実ではあり得ないほどに整ったら顔立ちの、白い肌に金茶色の長い髪をしたスタイル抜群の絶世の美女が囚われていた。

 

その美貌にクラインは己の目を疑うほどに仰天したが、手足を鎖で繋がれた美女は大きく見開かれたクラインの目を真っ直ぐに見つめて綺麗に澄んだ声で言った

 

 

「お願い·······私を、ここから出して」

 

「えっ? あ、おう! 任せと────」

 

「ちょっと待てクライン」

 

 

任せとけと言おうとしているクラインに、クラウドが腕を組みながら近付いてきて、美女を睨みながらこう言った。

 

 

「·······恐らくこれは罠だ」

 

「は? 罠?」

 

「ああ、確実に罠だ」

 

「いやでも、もしかしたら─────ッ!!」

 

「アンタねぇ、お人好しにも程が過ぎるわよ。こんなの第一に疑ってかかるべきシチュエーションでしょうが」

 

 

美女の懇願にあっさりと応じたクラインの右肩をクラウドが掴み、待ったをかけ、クラインの危機管理のなさをリズベットが咎めた。

 

その様子を見たキリトはユイに、この人物は何者なのか調べて貰うことにした。

 

 

「ユイ、どうだ? こいつに何か変わったところはあるか?」

 

「はい、パパ。拝見してみたところ、この人はNPCです。ですが、普通のNPCとは変わっている点が二つあります。この方はカーディナルの備える『自動応答言語化モジュール』に接続しています」

 

「自動応答が·······つまり一定の会話しか、固定された会話しかできないNPCじゃなくてAIってこと?」

 

「そうですシノンさん。それともう一点。この人にはHPゲージがあります」

 

「HPゲージがあるってことは·······戦闘になるかもしれないってことだよな」

 

 

そう聞いたユウキ達は檻に閉じ込められてる美女を見つめて、声を揃えてこう言った。

 

 

「罠だよ」

 

「罠ですね」

 

「罠だと思います」

 

「きゅる!」

 

 

ユイの説明を聞いたキリトの推測にユウキ、アスナ、シリカの順で口々に心中を吐露した。最後のピナの鳴き声も罠だと思うことに賛成しているように聞こえた。

 

 

「お、お前らなぁ·······いや俺も罠なんじゃねえかとは思うけどそんな話も聞かずに頭ごなしに否定するってのも──────ッ!!」

 

「例えそうだとしても、俺達にはその話を聞く時間はない。今は寄り道してる暇なんてない、一秒でも早くスリュムの所に辿りつかないと何もかも手遅れになるかもしれない」

 

「い、いやそりゃそうかもしんねぇけどさ·······」

 

「クライン、なにかこのNPCから感じることがあるのか?」

 

 

クラウドに釘を刺されるように言われてもなお引き下がろうとしないクラインに疑問を抱いたキリトが不思議そうにクラインに訊ねた。

 

するとクラインはぶつぶつと呟きだした。

 

 

「·······罠、だよな。罠だ、解ってる────でも、罠でもよ。罠だと解っていてもよ」

 

 

ガバッ、と顔を上げたクラインの目許に、薄く滲むものがあったのは気のせいではない。

 

 

「それでもオリャぁ·······どうしても、ここでこの人を置いていけねぇんだよ! たとえ·······たとえそれでクエストが失敗して·······アルンが崩壊しちまっても、それでもここで助けるのが、それが、俺の生き様────武士道ってヤツなんだよぉッ!!」

 

 

そして勢いよく振り向き、仲間に背を向け、左腰にぶら下がっている愛刀を握った。そして次の瞬間には居合い系ソードスキル『ツジカゼ』が炸裂し、ツララの檻を横一線に薙いだ。

 

 

 

<><><><><>

 

 

 

「ありがとうございます、妖精の剣士様」

 

「立てるかい? 怪我ァねぇか?」

 

「「「「「「「「·······」」」」」」」」

 

 

膝をついて右手を差し出す刀使いはもう完全に自分の世界に入り込んでいる。確かに、ゲームというものはストーリーに没入するものだ。

 

しかし、

 

なんと言うかこれは。

 

 

「大丈夫かい? このダンジョン大分広いけど、出口まで一人で行けるかいお姉さん?」

 

「·······」

 

 

檻を破壊し、自分を救ってくれたことに金髪の美女は礼を言ってクラインに笑顔を向けた。そしてクラインは、膝をついて女性に視線を合わせてそう訊ねた。

 

しかし美女は首を横に振り、

 

 

「いえ、お気遣いは大変助かりますが·······私はこの城から逃げるわけにはいかないのです。巨人の王スリュムに盗まれた、一族の宝を取り戻さなければならないのです」

 

「一族の宝? エクスキャリバーのこと?」

 

 

二人の会話ごしに話を聞いたリズベットがそう聞くと、美女はそっと目を閉じて静かに首を横に振った。

 

 

「いえ、あの聖剣は元より私たち一族の物ではありません。しかし、私たち一族の宝もあの聖剣に勝らずとも劣らない至高の宝なのです。あの宝を取り返さずして戻ることは出来ません。どうか、私を皆様と一緒にスリュムの部屋まで連れて行っていただけませんか?」

 

「お·······う·······むぅ·······」

 

 

こればっかりは反応に困るのか、武士道を貫き通す男も即答できず、苦しげに首を傾げた。

 

するとクラウドが前に出て容赦なく言った。

 

 

「断る、自分一人で行け」

 

「なっ!? おいクラウド!?」

 

「俺達には時間がないんだ。早くしないとアルンの街が崩壊する。それなのに一々NPCの言うことを聞いていたらどんどん手遅れになる」

 

「そ、そうかもしれねぇけどよ·······」

 

「·······なんか、キナくさい展開だよねキリト君·······」

 

「だなぁ。クラウドが断るのも納得だ」

 

 

アスナとキリトは耳打ちでそんな呟きを漏らしていたが、待ったをかける暇もなくパーティーリーダーであるキリトの元にNPCのパーティー加入を認めるかどうかを訪ねるウインドウが表示された。

 

 

[NPCからの加入申請を承認します。よろしいですか?]

 

「·······」

 

「もちろんNoだ─────」

 

「おっしゃ、引き受けたぜ姉さん!! 袖すり合うも一蓮托生、一緒にスリュムのヤローをブッチめようぜ!!」

 

 

クラウドがNoのボタンを押せと言おうとした瞬間、クラインがそんなクラウドを押し退け、キリトにYesの項目を押すように促してくる。

 

キリトはそんなクラインに呆れたような目付きでため息をつくと、

 

 

「はあ、わかったよ·······[Yes]っと」

 

 

キリトが間髪なくYesボタンを押すと、パーティーのHPゲージの一番下に新たに加入したNPCのHPとMP、そして名前が表示された。

 

 

「“Freyja”·······フレイヤさん?」

 

 

パーティーに表示されたNPCの名前を読み上げるなり、リーファはその名前をもう一度復唱して首を傾げた。

 

 

「どうかしたのリーファ? この人の名前になにか気になるところでもあるの?」

 

「ああ、シノンさん。いえ気になるってほどじゃ·······ただ、どこかで聞いたことがあるような、ないような·······」

 

 

う~んと唸り声を上げて悩むリーファだったが、キリトが声をかけてきて思考を中断させる。

 

 

「それよりもスグ、残り時間は?」

 

「え·······あっ! えっと!? ·······や、ヤバイよお兄ちゃん!! もう九割近くが黒く染まってるッ!!」

 

「いよいよ時間がないな·······みんな、ダンジョンの構造からして、この階段を降りたらラスボスの部屋だ。多分相手はそのスリュムに間違いない。今までのボスより更に強いだろうけど、後はもう小細工なしでぶつかってみるしかない」

 

 

こくりと頷く仲間達の顔を見渡し、キリトは語気を強めて叫んだ。

 

 

「よしっ! それじゃみんな! ラストバトル、全開で飛ばしていこうぜ!」

 

「「「「「「「おおーッ!!」」」」」」」

 

「·······」

 

 

一人だけ納得のいっていないクラウドだけは手を上げて叫ばなかった。

 

しかし、やはりというかユウキが強引にクラウド腕を掴むと上に上げてクラウドの代わりに『おー!』と叫んだ。

 

 

 

<><><><><>

 

 

 

そしてクラウド一行が一分半ほど階段を全速力で駆け下りた先にいかにも重厚な鋼の扉がその姿を見せた。

 

その扉はパーティーの先頭のクラウドが手前五メートルほどに近づくと自動で動き出し、深淵に染まった大口を開くのと共に、大量の冷気を吐き出した。

 

ズゴゴゴゴゴゴゴンッ!!! と。

 

大扉は鳴り響き、クラウド達の肌を凍らせるように冷たい風が吹いてくる。

 

 

「うぅおぉっ!? 寒っ!?」

 

「どうやらここがボス部屋で間違いなさそうだな。アスナ、頼む」

 

「うん! Þeír fylla skína hugr hogg margr illt」

 

 

恋人であるが故の阿吽の呼吸でキリトの意図を掴み取ると、アスナは防御力上昇支援魔法を詠唱し、パーティー全員の防御力を上昇させた。

 

 

「Oss náða fjor regin, tynada vályndr jotunn」

 

 

すると今度はアスナの支援魔法に続くようにフレイヤがコンピュータ仕込みの滑らかな口調で呪文を詠唱した。

 

光のヴェールがパーティーの皆を包み込むと、それぞれのHPゲージがみるみると増えていった。

 

 

「これって·······HP上昇支援魔法?」

 

「MAXHPが増える魔法なんて·······初めてです!」

 

 

初めての魔法を目にし、驚いたキリト達一行は扉の奥へと恐る恐る侵入していった。

 

一向に晴れる気配を見せない闇の中を進む一行を最初に出迎えたのは、部屋を覆いつくさんばかりの金銀財宝の数々だった。

 

 

「·······総額何ユルドだろ」

 

「これを現実に持って帰って換金できたらなぁ·······ちなみにアイテムとして持って帰れんのかコレは?」

 

 

今回のパーティーの中で唯一商店を営むリズベットがそんなことを呟くと、クラインもそれに便乗するように財宝へと手を伸ばした。

 

するとその指先が財宝へと触れる寸前に部屋全体に重苦しい声が響き渡った。

 

 

『·······小虫が飛んでおる』

 

「「「「「「「「「ッ!?」」」」」」」」」

 

『ぶんぶん煩わしい羽音が聞こえるぞ。どれ、悪さをする前に、一つ捻り潰してくれようか』

 

 

ズシン!ズシン!ズシン! と、床が震える。

 

近づく振動に全員が得物を構え、戦闘態勢に入るが、その足音を響かせる者の正体を見て、全員が言葉を失った。

 

巨木のように太い足は、その一足で部屋全体を揺らし、その全長は見上げても何メートルに届くかなど皆目見当もつかないほどにバカでかい巨人だった。

 

 

『ふっ、ふっ·······アルヴヘイムの羽虫どもが、ウルズに唆されてこんなところまで潜り込んだか。どうだ、いと小さき者共よ。あの女の居所を教えれば、この部屋の黄金を持てるだけ呉れてやるぞ、ンンー?』

 

 

桁外れの偉躯や額の王冠、そして今の台詞からして、こいつこそが『霜の巨人の王スリュム』であるのは間違いなかった。

 

宝物で誘惑してくるラスボスに向かって、最初に言葉を発したのは、

 

 

「興味ないね」

 

 

アポカリプスを手にし、あっさりと一蹴するクラウドに皆が賛同するように武器を構える。

 

さあ、ラスボス戦の始まりだ。

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。