続きは明日投稿します。
早坂愛はモテる。
アイルランド人の血が濃く出た金髪碧眼に白い肌。藤原姉妹や子安つばめに比べ貧相な胸部ではあるが、いわゆるモデル体型と言われるプロポーションは他の女子から嫉妬される程である。秀知院にはお嬢様と呼ばれる女子が多いためギャルを演じている早坂の様な女子は珍しく、容姿や軽そうな性格も相まってモテる方ではある。軽そうな性格(演技)からか告白こそされたことはないが、秀知院の女子人気ランキングがあれば生徒会女子組や難題女子達と並ぶ程である。
「ここですか……」
その早坂でも告白された経験がないため緊張する。それも天野家次期当主である天野秀一からの呼び出しとなれば震える。
彼はは朝霞の主人であるかぐやの告白を大勢の前で振り、その後の女子も振り続けてきた男である。その男から呼び出されると知れば緊張どころではない。3回ほど周りに人がいないか探し、隠しカメラの存在も探していた。その上で扉の前で開けることを躊躇していた。
「(流石にそろそろ開けないと…)だ、大丈夫。私から告白したわけじゃないからダメージはない」
早坂もかつて天野に恋したことがあった。告白しようとしたことも何度かあったが、主人であるかぐやの思い人と知り諦めた過去があった。自身が行っている裏切りの償いのために全てを諦めて尽くしてきた。
「(彼と付き合えたなら、そのことを一体どれだけ想像してきたことか……)」
カラカラと控えめに扉を引くと教室内には手紙の送り主、天野秀一が立っていた。
「呼び出して済まないな」
そう言いながら天野は早坂を真っすぐ見ながら微笑んだ。
「天野く~ん。話ってなーに?」
キャハ☆という擬音が聞こえてきそうなテンションで早坂は話を切り出した。
「その演技は必要ない。四宮との付き合いは長いからな。お前の正体を知った上で呼んでいる」
その瞬間、早坂の顔は本来の顔……に近い顔に変わる。
早坂としても天野家の人間に『四宮かぐやの近侍』としての早坂愛がバレてもおかしくない。むしろ、かぐやが自分で話したこともあるのだ。ギャルの演技は早坂自身の緊張を解すためであった。
「それで、何故私はここに呼ばれたのでしょうか」
「おいおい、呼ばれる理由に心当たりくらいあるだろ?」
「(いや、ありますけど。呼び出された側に言わせますか!?)」
早坂からすればいきなり初恋の人に呼び出され、緊張した状態で「今から告白するくらい分かるだろ?」と言われたのだ。割とロマンチストである早坂からすればエモさが足りないと言うし、さっさと告白をして欲しかった。
「(大体!こっちは必死で心を落ち着かせて、告白の返事も噛まないで言えるようにしているんですよ!?)い、いや、まぁ~。それくらい、わ、分かりますけど……」
「こういう話をするのは初めてだから緊張してしまってな」
「(そうですよね?緊張するのが普通ですよね?私はおかしくないですよね??)まぁ、緊張するのは分かりますから…早く言ってください」
「そうか、軽く世間話をした後に言うつもりだったが……単刀直入に言おう」
「(く、来る!!)は、はい!」
「早坂愛、ずっと前から君を見ていた。ここ最近、君のことを考えなかった日はなかった」
「っ!」
「俺と付き合ってくれないか?」
「(これ……夢ですか?)」
あまりに都合の良い展開に思わず頬をつねる。だが痛みを感じる。これは現実なのだ。
「えっと、つまり……。この人は私のことを好きと言ってくれたんですか……?」
「ああ。もちろん好きだよ。友人としてではなく異性としてだ」
「あ、ありがとうございます!!」
早坂にとってこれ以上嬉しい言葉はない。しかも相手は初恋の人である。
「でも……なんで?私なんか……全然可愛げないし……」
「そんなことはない。早坂はとても魅力的だよ」
「(ひゃうぅ!?)そ、そうですかね……」
「ああ。それに俺は外見だけでなく、内面も好ましいと思っている」
「な、内面も?」
「そうだ。早坂はいつも明るく元気に振る舞っている。それは君の努力の結果だろう?」
「(努力……)はい、その通りです……」
「そんな早坂が頑張っている姿を見ると応援したくなる。君は頑張り屋さんなんだな」
「天野さん……」//
早坂の心に天野の言葉が染み渡る。これまで誰にも褒められたことのない自分を彼は認めてくれた。その事実だけで胸が熱くなった。
同時に、早坂の中で疑問が生まれる。何故彼は自分を認めてくれるのか、と。
確かに彼はモテる。かぐやへの告白を断った後も多くの女子から告白された。しかしその全てを断ってきたのだ。
なのに何故自分なのか。その理由が分からず早坂は問う。
「でも、どうして私を選んだのですか?」
「そうだな。理由は色々とあるが、まず
お前、
「…………えっ?」
「凄いよな。10年間裏切り続け、それを悟らせなかった」
「ま、待って」
「流石は四宮黄光直属のスパイだ。尊敬するよ。
どうやって生きてきたらそんな事を続けられるんだ?」
この時、早坂は気づいた。気づいてしまった。
これは愛の告白ではない。いうなれば『処刑』だ。
「俺は”愛”が好きだ。そもそも天野家は”愛の一族”。天野家ほど深い一族はこの国に存在しない」
天野家=愛の一族、これは事実だろう。天野の父は愛する女性のために国家の心臓たる四宮家を敵に回し、愛する家族のために敵である四宮家を滅ぼそうとしている。天野家による四宮家滅亡は空想ではない、このままでは10年以内には確実に起こる確定事項と言える状況だ。
天野秀一も愛する家族のために、敵である四宮家に攻撃を仕掛けている。
「その天野家の人間からすれば理解できないよ。
大切な姉妹同然に育った存在を裏切り、利用し、心を弄ぶ。それも身勝手な悪意、”四宮かぐやをコントロールするため””四宮かぐやを政略結婚の駒にするため”そんなことのためにかぐやを裏切ってきた。
教えてくれよ。どんな風に育ったらそんな愉快なことが思いつくんだ?」
「ちがっ!違う!!」
「まぁ、それについてはどうでもいい。それが四宮家の方針なら部外者である俺が文句を言う事じゃないからな」
早坂はようやく理解した。目の前にいる男は、自分が知る優しい少年ではないことに。
この場には誰もいない。早坂と彼しかいない。だからこそ彼は本性を出したのだと。
「安心しろ。四宮に言うつもりはない。特に四宮かぐやには、な」
「……つまり、その見返りに付き合え、ということですか?」
「半分正解だ。恋愛的な意味ではなく、ビジネスとして付き合ってもらうことになるがな」
「ビジネス?あの天野秀一のビジネスですか?…それは四宮家への攻撃のことでしょうか」
天野秀一のビジネスは四宮家への攻撃を意味している。他にも行っているが、規模で言えば四宮家への攻撃が主だろう。
「明日から施行される法律は知っているな」
「確か『特権階級の男性の重婚を認める』とかでしたか」
「正確には『年収1億円以上の男性の重婚を認める』だがな。色狂いの金持ちが堂々と女を囲うための法律だな」
「それで、それと私達が付き合う理由が分からないのですが」
「簡単だ。俺も年収1億超えているんだよ。そのせいで見合いのバーゲンセールだ」
「あぁー」
早坂は天野の言いたいことが何となく分かった。要するに「我が家の娘で好きな者がいれば是非婚約を!」という話があり得ないほど来ていると。他にも何人かで合同お見合い(男は天野だけ)が開催されるのだ。
「そこで恋人がいると分かれば諦める奴らも出るだろ。話を持ってきている連中の多くが四宮グループの人間だし」
「そこで四宮グループ幹部の娘である私と付き合ったことにすれば、四宮グループからのお誘いはなくなると」
「正確には四宮黄光からの命令で来ている話は減少する。ついでに俺のタイプが典型的なギャル系と知れば諦める令嬢が殆どのはずだ」
「な、なるほど……」
確かに、上級階級の令嬢はかぐやの様に(表面的には)清楚系が多く、ギャルに擬態している早坂とは真逆の存在だ。そんな彼女と付き合っていると言えば、自分の娘との交際を諦める者もいるかもしれない。
「(いや、それならそれでギャルになろうとする女子もいるし、上はそういう女子を見繕うんじゃ……?)」
「ん?何か言ったか?」
「い、いえ!!何も言ってませんよ!?」
「そうか。まぁ、という訳だ。俺に付き合ってもらうぞ」
こうして早坂の初恋は最悪の形で終わった。
本日の勝敗 早坂の敗北(初恋が最悪の形で終わり、脅迫されて偽装交際をさせられたため)
「この後俺の家に来い。詳しい説明と条件のすり合わせをする」
―――――――――――――――
「早坂、戻ったの?」
「はい、かぐや様。お待たせして申し訳ありません」
「それでどうでした?」
「天野さんと恋人になりました」
「ファッ!?」
「それと、今日は天野さんの家に泊まるので失礼しますね」
「ファッ!!?」
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