四宮家の宿敵   作:大紫蝶

2 / 15
 今回からかぐや様を書かせていただきます。
 亀更新ですがよろしくお願いします。


本編
生徒会と映画館


 私立秀知院学園!かつて貴族や士族を教育する機関として創立された由緒正しい名門である!

 

 貴族制が廃止された今でなお、富豪名家に生まれ将来国を背負うであろう人材が多く就学している。

 

 そんな彼らを率い纏め上げる者が凡人であるなど許される筈もない!!

 

 "生徒会副会長"四宮かぐや。容姿端麗、学業優秀、運動神経抜群!完璧な三拍子揃った人物。日本4大財閥の1つであり、総資産200兆円を誇る巨大財閥"四宮グループ"本家本流総帥・四宮雁庵の長女として生を受けた、正真正銘の令嬢である。その血筋の優秀さを語るが如く芸事・音楽・武芸でも華々しい功績を残した正真正銘の『天才』。

 

 "生徒会会長"白銀御行。質実剛健、聡明英知、学園模試は入学以来不動の1位!全国でも頂点を競い天才たちと互角以上に渡り合う猛者である!多才なかぐやとは対照的に勉学一本で畏怖と尊敬を集め、その模範的な振舞と()()()()()()()()()により生徒会長へと抜擢される。

 

「いつ見てもお似合いな二人ですわ」

「ええ、神聖さすら感じてしまいます」

 

「もしかしてお付き合いなされてるのかしら?」

「どなたか訊いてくださいな…」

「そんな!近づくことすら烏滸がましいというのに」

「できる筈が御座いません…」

「なら、あの方に頼んでみるのはどうでしょうか?」

「確かに、あの方なら!」

 


 

「なんだか、噂されているみたいですね。私達が交際しているとか…」

「そういうお年頃なのだろう。聞き流せばいい」

「ふふ…そういう物ですか。私はそういった事柄に疎くって…」

 

 生徒会室では噂の2人が噂についての話をしていた。2人共、噂程度では心を乱していないように見える。

 

「(ふん、俺と四宮が付き合っているだと?くだらん色恋話に花を咲かせおって、愚かな連中だ)」

「(全く、下世話な愚民共。この私を誰だと思っているの?国の心臓たる四宮家の人間よ?どうすれば私と平民が付き合うなんて発想に至る?)」

 

 そう、この2人は噂のような良い性格をしていない。少なくとも学友を『愚民』『愚か』などと言う人間が良い人間ではないだろう。

 

(だが、まぁ…四宮がどうしても付き合ってくれって言うなら考えてやらん事もないがな……!)

(まぁ、会長にギリのギリギリ可能性が有るのは確かだけど)

 

(まぁ確実に向こうは俺に気があるだろうし、時間の問題か…)

(向こうが跪き身も心も故郷すら捧げると言うなら、この私に見合う男に鍛え上げて上げなくもないけれど…)

 

(くく…さっさとその完璧なお嬢様の仮面を崩し、赤面しながら俺に哀願してくるがいい)

 

(まぁ、この私に恋い焦がれない男なんて居ない訳だし?時間の問題かしら?)

 

 などとやっているうちに―――半年が過ぎた!

 

 その間、特に何もなかった!

 

 この何もない期間の間に2人の思考は『付き合ってやってもいい』から『如何に相手に告白させるか』という思考へシフトしていた!!

 

 そのため『恋愛頭脳戦』を繰り広げていた2人だが、その結果が良かったことはない。先日も映画館のチケットを使い、『如何に相手に誘わせるか』という頭脳戦を繰り広げていた。結果は両者敗北。最終的には後日のババ抜きで『1枚ずつチケットを貰う』で落ち着いた。

 

 

 

 そして今日はその映画鑑賞日。映画を見に来た白銀と(使用人を使った待ち伏せで偶然の遭遇を装った)四宮の2人が映画館で出会うことになった!

 

「あら会長奇遇ですね」

「ああ四宮、奇遇だな」

「こう言う事ってあるものですね」

「この辺りの映画館と言えばここだからな。こんなこともあるだろう」

 

「貴方たちはもう引き上げて構わないわ」

 

 休日に出会った同級生と会話をしながら、四宮は使用人の撤収を指示していた。

 

「それにしても時間までピッタリとはな、待ち伏せでもしてたんじゃないのか?」

(はぁ―――???自意識過剰もいい所ですね。確かに似たようなことはしましたけど。アレは全然待ち伏せとかじゃないですから!あれはフィールドワーク的な観察とか生態調査とかの類で……)

「まさか、ご冗談を」

 

 こうして映画館に入った2人。2人の持つチケットは鑑賞券のため、受付で入場券に交換してもらう必要がある。通常なら「せっかくだし一緒に見るか」と入場券に交換する時に座席指定をしてドリンクなどを買う流れだろう。

 

 しかし!ここでまさかのハプニングが発生する。四宮は国内屈指の最富裕層の令嬢である。そのためチケットシステムなど知る由もない。受付に言えばそのまま白銀の隣の席で映画を見れると考えていたため、白銀とは違う受付へ進んでしまった。

 

 普通なら「おい、こっちだ」と声をかけ、同じ受付へ呼べば良いだけの話だろう。しかし、プライドの高い両者にとって2人は『同じ時間に同じ映画を見に来た関係』であり、ここで呼べば"不自然な必死さ"が出てしまう。どうにかして相手の隣の席を選択するために、互いの頭脳が―――

 

「あれ、2人共来てたのか?」

「「天野(さん)!」」

 

 "生徒会庶務"天野秀一。秀知院学園生徒会に所属し、四宮と同じ4大財閥"天野グループ"本家本流の長男。学園では『秀知院学園のお兄ちゃん』として皆から頼りにされている男。

 

 かつて、秀知院学園に純院と混院の間で溝があった。白銀も当時は馴染めずに居たのだが、天野の活躍により学園に馴染むことが出来た過去がある。次期生徒会長と呼ばれていた彼の推薦があったからこそ、白銀は生徒会長に就任できたこともあり、白銀にとっては恩人であり親友であった。なお、白銀は他にも天野に借りを作り続けているため頭が上がらない。

 

 そして、四宮にとっても関わりの深い人物でもある。何故なら彼の指揮の下、多くの四宮グループ傘下の企業が天野グループに奪われ、少なくないダメージを与えられた宿敵であった。下手をすれば関係修復のために四宮と天野の婚約話すら上がった程。自身の自由を奪われかけたこともあり、四宮にとって宿敵であり怨敵であった。なお、四宮は勉学などにおいて天野に勝った事がない。他にも個人的な因縁があるのだが…。

 

 そんな両者にとって真逆の存在が何故かこのタイミングで映画を見に来たと知って、2人は反対の考えを出した。

 

 白銀は『天野を使って四宮の隣の席を確保すること』。生徒会メンバー3人が集まったことで一緒のカウンターで席を指定する言い訳が出来る。

 

 四宮は『天野を排除して白銀の隣の席を確保すること』。プライベートで一緒に映画を見たと知られれば、一度流れた婚約話が再浮上しかねない。最悪、映画を見ないで帰る事も視野に入れなくてはならない。

 

「天野、一緒に映画見ようぜ!!」

「天野さん、お帰りはあちらですよ?」

「よし、3人で見るか。こっちに来いよ四宮」

 

 四宮の声を無視した天野は3人で映画を見ることを選択する。

 

「それじゃ、俺・白銀・四宮の順な。さっさとドリングとポップコーンでも買って席着こうぜ」

 

 この言葉に2人は喜びを隠せない。相手の隣の席を合法的に手に入れ、天野が軽く決めたことにより"不自然な必死さ"はない。寧ろ、意義を唱える方が不自然だろう。2人の思惑が考える暇もなく達成された。

 

(流石は天野だ!初めからこいつを連れてくれば良かった。そうすれば賭けをせずとも四宮の隣を手に入れられたのでは?)

(流石は天野さん!今まで生かしておいて正解だったわ!最初から彼が居れば生徒会の親睦を深めるとして策を考えなくとも成功していたわね)

 

 白銀はさらなる信頼を、四宮は手のひらを返して、天野を賞賛していた。初めから天野がいれば「生徒会メンバーの親睦を深めるため」という建前で映画を見れただろうし、四宮家の使用人は待ち伏せの為にストーカー行為をせずに済んだだろう。

 

 こうして3人は仲良く映画を見ることに成功した。隣の席に好きな異性がいるが、同時に知り合いがいるため必要以上に緊張しなくて良かったことも成功の要因と言える。

 

 映画が終わった以上3人は解散することになる。あくまで『同じ時間に同じ映画を見に来た関係』であるため必然と言える。しかし、天野はさらなる幸福を与える!

 

「それじゃ、あそこのカフェにでも行くか!」

「か、カフェですか?」

「当然だろ?同じ映画を一緒に見たんだし、感想でも語ろうぜ。コーヒーくらい奢るからさ」

 

 本来なら存在しなかった第2のイベント!仮に2人が相手をカフェに誘おうとすれば無意味高度な頭脳戦を行うことになる。ちなみに、四宮は以前カフェデートに誘わせるため策を練ったが後輩に潰されたことがあった。

 

 四宮にとってはリベンジであり、もう実現しないと思っていたカフェデートの実現。建前もあり、自分から誘った訳でないため了承するだけで得られるボーナスステージであった。

 

 対する白銀にとってもまたとないチャンスだった。異性と2人っきりでカフェに誘うということは「私は貴方に好意があります」と宣言するようなもの。しかしそこに第3者がいれば話は変わる。先程の続きとして『生徒会の親睦を深めるため』と言えば生徒会長としての発言として処理される。しかも天野からの提案であり、ドケチな白銀に「奢り」と言えば断る理由を探す方が難しい。

 

 先程から自分に都合の良い展開が続くことで疑いもせずに提案に乗る。

―――今の状況が続けば2人は典型的な詐欺にでも引っかかるかもしれない。

 


-四宮邸-

 

「それで如何でしたか?」

「最高よ!計画通り会長の隣で映画見て、その後カフェにも行ったんだから!」

「カフェ?」

 

 早坂は驚いた。映画を一緒に見るために同じ生徒会メンバーである藤原宅にチケットをねじ込み、生徒会で自分たちに渡すように仕組んだかぐやが。ババ抜きに心理戦を持ち込み、強制的に白銀から誘うように計画していたかぐやが。当日の同じ時間に映画を見るために使用人にストーカー行為を強制したかぐやが。「会長とカフェに行った」と言ったのだ。本来、その行動力があれば既に2人は付き合っていることだろう。その異常さが早坂に疑問を抱かせた。

 

「そうですか、かぐや様から誘ったのですか?」

「そんなわけないでしょ。何故私から誘わないとならないの」

(ここまでは想定通り。そもそも私にも言ってなかったから当然だけど)

「では、白銀会長から誘われたのですか?」

「…そうよ」

「そうですか。では誰から誘われたのですか?」

「か、会長からと言ったでしょ!?」

「そういうのいいので、誰からですか?」

「……天野さんから」

「ということは映画を3人で見た帰りに誘われたのですね」

「見てたの!!?」

 

 早坂の想定ではチケットシステムを知らないかぐやによって隣の席を確保することは出来ないと考えていた。白銀が強引にかぐやを誘導しない限り、今回2人が隣の席になることはまずないと思い、どう慰めるかと考えていた。

 

 しかし天野秀一がいたのなら合点がいく。『秀知院学園のキューピット』と呼ばれ、彼の周りでは多くのカップルが誕生したという。その彼が関わったのなら上手くいったのも納得出来る。問題があるとすれば

 

「少し綿密に計画を立てただけでカフェデートまでしたのだから、これは会長から告白してくるのも時間の問題ね!!!」

 

 自身の計画によって、カフェに誘われたと勘違いして余計奥手になったことだ。

 

(私にもいい人を紹介してくれないでしょうか)

 

 早坂は四宮家の敵(キューピット)に救いを求めた。

感想受付の設定、どちらが良いと思いますか?

  • ログインユーザーからのみ受け付ける
  • 非ログインユーザーからも受け付ける
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。