「恋愛相談?」
「そうだ。『秀知院学園のキューピット』と名高い天野なら良いアドバイスをくれるかと思ってな」
生徒会室での恋愛相談、これ自体は先日と同じである。違う点は1つ。
「まさか白銀から相談されるとはな」
生徒会長である白銀であることである。
何故このようなことになったかと言えば先日の相談に関係する。
(四宮が俺に告白してこない理由は知るためにも第三者からの言葉が聞きたい。何より四宮に告白されたことのある天野からヒントでも得られれば良いのだが……)
「そうだな……」
白銀の悩みを聞きながら考える素振りを見せる天野。
(おそらく先日の恋愛相談が原因だと思うが……どっちだ?恋愛相談のための情報収集か本当に四宮に告白させるための相談か……後者だな)
「よしっ!分かったぞ!」
そして何か思いついたように声を上げた。
「それでどんなアドバイスなんだ?俺としては是非とも役に立つ助言を頼みたいのだが……」
「まぁ、焦るな。まずは前提として聞くがお前らは付き合ってはいないんだよな?」
「ああ。残念だがまだ付き合っていない」
(いきなり過ぎないか!?)
「そうか。ではどんな状況なんだ?」
「どんな状況とは?」
「例えば2人きりでいる時の雰囲気とか、距離感とかだな」
「なるほど。確かにそれは重要な情報かもしれないな」
白銀は納得したように深くうなずく。
(やはり恋愛経験豊富なだけあって頼りになるな)
「同級生だ」
「そうか。クラスメイトではなく、同学年の女子か。接点は?」
「……よく放課後に一緒にいる」
嘘ではない。生徒会活動で一緒に(藤原・天野・石上も含む)いる。モンスター童貞の見栄によりこのような表現になった。
(四宮のことだな。普通その状況でここまで進展しないことも珍しいぞ)
「それでそいつこと、どう思っているんだ?」
「……可愛いと思う」
「可愛いい女の子なんだな。他は?」
「……頭が良いし、運動神経も良い。大体何でもできるし、優しいと思う」
「容姿端麗で文武両道、性格も良いと。完璧超人じゃないか」
「遅くなったわね。もう皆揃ってるかしら」
生徒会室で恋愛相談がされている頃、かぐやは部活を終えて生徒会に向かっていた。
そして生徒会室に着いた時、その恋愛相談を聞いてしまった。
(会長の恋愛相談!?誰!?誰のこと!?)
かぐやの事である。
(しかも可愛くて優しくて完璧な女子だと褒めちぎっている。一体誰!!?)
かぐや本人である。
(私じゃないってことは分かるけど……それじゃあ一体誰が!?)
「しかしそんな女子なら、他に付き合っている人が居てもおかしくないだろ。告白されることもあるだろうし、そんな子なら告白して彼氏ができても当然だと思うが」
(振ったお前が言うのか)
「いや、それはないはずだ」
「どうして言い切れるんだ?」
「……秘密だ」
「ふーん。まぁ別に言わなくても構わないさ。それよりも大事なことがあるからな」
天野にとってはこの程度の質問など日常茶飯事なのでスルーする癖がついているのだ。
「それより大事なこと?」
「ああ。お前はその女のことを好きなんだよな?」
「……好きだ」
白銀は少し間を空けてから答えた。
(恥ずかしいなこれ!!!!)
(嘘!?)
照れながらも正直に答える白銀。驚愕するかぐや。全てを知っている天野。
「ならば迷うことは何もない。好きという気持ちを伝えればいいだけだ」
「簡単に言ってくれるな。それができれば苦労しないのだが……」
「そうか?簡単なことだろ?相手のことを好きならそれをそのまま伝えればいいだけだ。そうじゃないと、他の男に取られるぞ」
「むっ……」
「もしそれでも言えないようなら俺が手伝ってやるよ。告白を成功に導くための方法を伝授しよう」
「本当か?」
「ああ。任せてくれ。お前は告白を成功させることだけを考えておけ。いいな?」
「分かった」
「……どういうことですか?」
「っ!」
いつの間にか生徒会室に入って来たかぐやだが、その目には光が無い。中等部時代、天野に全校生徒の前で告白し振られたという過去が蘇る。
(また、いなくなるの?わたしのまえから、また……)
振られてからのかぐやは散々だった。天野には「かぐや」から「四宮」と呼び方が変わり距離を置かれるようになり、『氷のかぐや姫』と呼ばれるようになった。元々少ない友人は龍珠桃くらいに減り、その彼女ともあまり関わらなくなった。中等部生徒会を辞めた後、四条眞妃や柏木渚が入って楽しそうに活動していた。精々、藤原千花という親友ができた事が救いだろう。
そんな状況で「自分の人生に幸せなどない。辛い日々を耐えるだけ」と考えていた時に出会ったのが白銀だった。
『次の中間試験で俺と勝負しろ』
『な、なんですか。いきなり……』
『怖いのか?四宮の令嬢が、一般人に負けるのが』
全校生徒の前で挑戦状を叩きつけた白銀に誰もが嘲笑した。かぐやの実力から考えれば勝敗など決まっていたから。外部生であるため掲示板に載ること(上位50位)は可能だろう。しかし、詳しく調べれば白銀が外部生の中でも落ちこぼれに該当する『補欠合格』である知り余計に嗤った。そんな男が中等部まで常に学園2位を維持していたかぐやに勝てる訳ないと。
ましてや白銀は天野や四条などの成績上位者達に同じことをした。天野を除く誰もが笑うか呆れた。「自分たちが負ける訳ない」「身の程知らずに躾をしてやる」と考えていた程だった。その時に生徒会に加入したことで調子に乗ったのだろう、と。
結果からいえば白銀は単独1位にはなれなかった。4大財閥の後継者である天野秀一と共に全教科満点という点数を叩き出した。3位のかぐやですら460点であり、簡単な試験だったという事はない。にもかかわらず全教科満点だった白銀の評価は『補欠合格の外部生』から『天野秀一に並ぶ天才』と変わった。
その時からかぐやは変わった。かつての思い人に、兄と慕う天野と『補欠』が並ぶことが我慢できなかったのだ。その後の試験では勝つつもりで全力を出しても負け続け、人格批判のために粗探しをしたが意味がなく……いつしか白銀のことばかり考えていた。白銀が生徒会長に当選してから副会長として生徒会活動を続けると良い所が見えてきた。いや、見ないようにしていた所を認めた。天野と並ぶほどに信頼できる人物であり、世の中にはこんな人もいると知った。
そんな白銀に好きな人がいるという事実、これには倒れそうになる。積極的に行動し告白したら振られた天野、積極的に行動し告白させようとして
(もういや、どうしてわたしばかり……こんな)
かぐやの目の前に広がるのは『ドッキリ大成功』と書かれた看板を持った天野と仰天している白銀。
「いやな、四宮が元気ないと白銀から相談されてな。ドッキリでもすれば元気になるかと思ったんだよ。それで『白銀が恋愛相談してたら』というドッキリを考えたんだが……どうやらやりすぎたようだな。ゴメン」
「そ、そうだったんですか。ですが、それなら別にこんなドッキリしなくても」
「別案は40-50mまで届く代わりに方が脱臼する『元気出してバズーカ』、部屋が吹き飛ぶ威力の『元気出して爆弾』だったんだが」
「このドッキリのおかげで元気になりましたからその『元気出して』シリーズは廃棄してください」
「その方がいいな」
(よかった。会長、好きな人がいないのね……違うわ!別に会長が誰が好きでも関係ないもの!!)
かぐやは安堵のため息をつく。それでも好きだと認めない姿は流石だ。
(よかった、四宮にはバレてないようだな)
白銀は自身の相談をドッキリとなってごまかすことが出来た。ここで「あら会長。私の事がそんなに好きなんですね」と言われればこの半年が無駄になる。それに自分の計画が台無しになるのは許容できない。
「そういえば、どうして四宮は元気がなかったんだ?俺からすれば白銀も元気なかったが」
「少し前に藤原さんから『夏休みに生徒会の皆で出かけたい』と言われまして……」
「海に行くか、山に行くかで喧嘩でもしたか?」
「まぁ、俺は海派で、四宮と藤原が山派だったんだ」
「凄い度胸だな白銀。女子2人相手に『海に行こう!』って、『2人の水着が見たい』と宣言するようなものじゃないか?まぁ思春期だしな~」
「ち、違うぞ!俺は元々山派だったが、四宮の意見から海派になったんだ!!」
流石に性欲に正直なバカと思われたくない白銀は必死に弁明をする。しかし、その必死さが逆に怪しく思えてしまう。
「そういうことにするか。でもそんなことで喧嘩するなんてな」
「問題は藤原さんの行きたい場所ですよ。……恐山に行きたいらしくて」
「そ、そうか。個人の自由だから何とも言えないが……俺から言っておくから心配するな」
生徒会の平穏はお兄ちゃんによって守られた。
「でもどこか行きたいよな。なんなら天野家の別荘かプライベートビーチでも用意するか?」
「え、いいのか?ってか、お前は奴休み忙しいんじゃ」
「今年は特にないな。精々知り合いからボランティアのゴミ拾いを頼まれたくらいか」
「「ボランティアのゴミ拾い?」」
「簡単に言えば、海岸に流れ着いたゴミ拾いだよ。定期的にやんないとすぐに貯まるし、不法投棄されやすくなるから」
「そういえばそんな問題があったな」
「ですが、態々天野さんが行かなくても誰かに行かせればよいのでは?」
かぐやの意見は当然のことである。4大財閥の跡取りが青春時代に行う事とは思えない。
「そこの海岸周辺は天野家関係の店が多いんだよ。頼んできた相手も父さんの恩人で、母さんの親友だから無下にも出来ないし」
「大変ですね」
「そうだ、お前らも来いよ」
「「えっ」」
「どうせ何人か呼ぶつもりだったし、ゴミ拾いの後は自由に遊べる。ゴミ拾いだって1時間程度だし。どうせ2人共暇だろ?」
「いや、バイトでも増やそうかとおもったんだが」
天野からの頼みだが受けるのは正直面倒だと考える白銀。家計の為にもバイトと勉強して、残りの時間で遊びに行きたいと考えていた。それでも、炎天下の中1時間も外でゴミ拾いというのはキツイ。ボランティア事態は素晴らしいと思うが、高校生の夏に行いたいとは思えない。
(そういえば、『流木拾い』という仕事があると以前聞きましたね。流石に一日で10万円は無理でも数万円は稼げるでしょう。向こうから誘われるという事は交通費や多少のお礼くらいあるでしょうし……)
「そうですね。送り迎えなどはあるのでしょうか?」
「家で車を出す。お礼として海の家で昼食をおごってくれるらしいぞ」
「会長、是非行きましょう。生徒会の人間として社会貢献は当然の事ですよ」
嘘である。この女、自身の利益しか考えていない。
『流木拾い』という仕事は上手くいけばそれなりに稼げる。個人で販売しようとすれば難しく、専門業者に売ると自分で販売するより値段が下がるなどの問題あるのだが、それでも稼ごうと思えばそれなりに稼げる。それに金になる流木を事前に仕込んでおけばいくらでも白銀に金を渡すことが出来る。白銀とて同級生からの資金援助は受けないが、この方法ならバレずに援助ができる。ボランティア中に偶然見つけた流木が高値で売れたとなれば正当な対価として受け取るだろう。
(家の者に用意させればいいだけですし、昼食が出るなら会長に美味しいものを食べさせてあげられる。お金だって山分けとなってもいい様に高めの物いくつか用意すればよいのだし手間もかからないわ)
「良いではありませんか。それに『流木拾い』なる仕事もあるようですし」
「そういうのもあったな。流石に1個10万を超えるような物はないだろうが、数百~数千円くらいの物を幾つか拾えば下手なバイトよりは割が良いだろ」
「マジで?そんなに稼げるの?」
(それだけ稼げれば、今年の圭ちゃんの誕生日祝いも出来るな)
「ゴミ拾いのついでに拾えば手間のかからんだろうし、遊ぶついでとしてはいいと思うけど」
「ならやろう」
「なら、後で詳しい日程を送るな。どうせ千花は旅行だろうし、優は引きこもってゲームだろ。他に数人集めるわ」
こうして早くも夏休みの予定が決まった白銀とかぐや。ここまでくれば灰色の夏休みにはならない。夏休み前に生徒会で出かける日を決めれば全てうまくいく。
(これで
以前の作戦であった水着で悩殺するという作戦、その最大の障害である藤原がいない状況でなら作戦も成功も間違いない。そう考えたかぐやからしても楽しみで仕方なかった。
補欠合格=落ちこぼれというのは作者の解釈です。少なくとも他の外部生に比べれば学力は下だということで『落ちこぼれ』と表現しました。原作では四条帝が転校したことで余りが出て、白銀が入学できたのかなと考えています。
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