「か、会長、もしかして……遂にスマホ買ったんですか?」
「ふふ……まぁな」
「頑固一徹……何と言っても『不要だ』『周りに合わせる必要はない』と買わないの一点張りだった会長が……ようこそ、文明社会に……!」
「人を原始人みたいに言うんじゃない。見ろ、ラインだって入れてるぞ!」
「わ~!じゃあ交換しましょう~!」
高校生活におけるスマホの重要性は今更語るまでもない!
遊びの約束や雑談をケータイで行い、どんな口調で送るか一つでドギマギし、返信が中々来ないことに一喜一憂。一説によると、告白すらメールで済ませることもあるとか……
そう!この無駄な半年間はラインをやっていなかったのが原因!IDの交換は現代式恋愛のチケットなのである!!
「(さぁ、いつでもIDを訊いてくるがいい、四宮!!)」
「……」
白銀のIDを登録する藤原。紅茶を飲む四宮。
「……」
白銀のIDを登録できてうれしい藤原。紅茶を飲む四宮。
(何故聞いて来ない!!この俺の個人情報だぞ!!一体どれほどの価値があると思っているんだ!!)
(会長……私から訊いて来るのを待っているのでしょうが全くの無駄です)
異性に連絡先を訊く!その行為には多少の必死さや下心が読み取れ、特別な『意味』が生まれてしまう!!
―――――『LOVE』と。
素人が何でもない時に異性とアドレス交換しようものなら『好き認定』!!もはや告白も同然の行為!!『好き認定』情報はラインのグループなどで瞬く間にクラスの常識と化す!!
恋愛関係に於いて「好きになった方が負け」は絶対のルール!!すなわち、好意を認めることは『敗北』を意味する!!プライドが高い両者に於いてそれは絶対にあってはならない事!!
(四宮!貴様から訊きに来い!)
(異性の私に会長から恥ずかしながりながらも訊きに来る事に『意味』があるのではないですか。私からは絶対に訊いたりしません)
争い!それは世界の必定!
勝者と敗者!殺るか殺られるか!(連絡先を)訊くか訊かれるか!人間の優劣はそこで決まると言っても過言ではない!!
(なんて無駄なことをしているんだこいつら)
しかし、この考えを看破している人間も当然ながら存在する。庶務の天野だ。彼からすれば「いざという時のために生徒会で連絡先を交換しよう」と言えば良いだけの話だ。実際、今日の朝に白銀から「生徒会とかで使うから交換しよう」とID交換したばかりである。
「あれ!会長このプロフィール画像って……?」
「あぁ、俺が子供の頃の写真だ」
天野も確認するが『蛇に絡まれれて泣いている白銀(子供)』というかわいい写真が映っていた。天野は素早く保存した。
「だがこれはちょっと恥ずかしいな。3分後に変えよう」
このようなバカな事をしているお仕置きのために。
(そんな。どうすれば!)ピロン♪
かぐやの携帯に天野からのメールが届く。
(これは……会長の写真!流石お兄ちゃんね!!)
昔の癖で「お兄ちゃん」呼びする程に嬉しがるかぐや。何時までも訊きに来ないことに焦る白銀。
「これは流石に酷いから、お兄ちゃんとしてお前の写真は四宮に送ったぞ」
(嘘だろ!裏切るのか天野!?)
(これで会長には打つ手はないはず。やっぱりお兄ちゃんは頼りになるわね)
お兄ちゃんとしてかぐやを庇う天野。親友の裏切りに驚愕する白銀。勝利を悟ったかぐや。
(どうする、あの写真を使っても天野がいる限り四宮に送信された終わりだ。もはや打つ手がない!)
「あのな、白銀。これはひどすぎる。男として見損なったぞ」
「そうです。酷いですよ会長……」シクシク
困惑しながらも、とりあえず「お兄ちゃんの後ろで泣いている妹」状態に移行したかぐや。乗っておけば自分の利になると考えた打算だった。
「四宮のガラケーじゃライン出来ないのに、四宮の前でラインの話ばかりして仲間外れにするとはどういうつもりだ」
「「出来ないの!?」」
「あぁ!そうでした!かぐやさん、ごめんなさい!!」
「千花は悪気はなかった様だが……白銀は別だ。生徒会長が、1人の男が先導して女子を仲間外れにして楽しいのか?女の涙でも見たかったのか?」
「うっ……」
そう。天野は「ラインが出来ない人の前でラインの話をして仲間外れにする」という行為に軽く怒りを覚えた。このような行為を見逃すほど『秀知院のお兄ちゃん』は腐っていない。それは白銀も分かっており、そんな天野だからこそ入学直後から友人となったのだ。
かつての白銀も『外部生』という理由だけでハブられた経験があるのでどれほど酷いことをしていたか考えさせられた。人と違うだけで仲間外れにされることには罪悪感がある。
「ちなみにこのガラケーは幼少期に親から直接渡されて今まで修理しながら使っていた思い出の品だ。金があるから買い替えるなんて事は出来ないからな」
(ヤベェ、それを言うところだった)
「まぁ、メールや電話ならできるだろうし交換しろ。異論反論は認めん」
「はい……」
その後、天野からの説教により大人しく連絡先を交換することになった白銀。それを見たかぐやは罪悪感に苛まれた。
「という様なことがあったんですよ」
「息子よ、それは引くぞ」
「おにぃ、最低!」
(何時まで続くんだ、これ)
生徒会の活動が終わってなお説教は続く。
白銀家にて天野の話を聞いた父親と妹からは非難の嵐だった。
「大体、おにぃも入学してすぐの頃は仲間外れにされて辛かったんでしょ?その時に助けてくれたのが秀にぃで、そこから他の友達も出来たんでしょ?その時に『ラインやってないんだ~』とか言われても庇ってくれたって言ってたじゃん。それなのに……」
「いや、本当に気付かなくて……四宮には悪いと思っていて……」
「悪気がないは当然として、ちゃんと償いをしろよ」
「償い?まぁ、謝罪は当然するが」
「それならよかった。じゃあ、謝罪のためにデートにでも誘えよ」
「デートに誘う!?それは無理だぞ!!」
自身からデートに誘う=告白と考えている白銀からすれば不可能と言える。精神的・金銭的・時間的にも不可能だろう。
「安心しろ。お前のバイト先は天野グループの関連企業だから上から圧力をかけてやる。金は俺からのバイトで十分あるだろ?後はお前が誘うだけだ」
必要なら金も貸すとも言う天野に絶句する白銀。それもそのはず、白銀のバイトは天野により管理されている。
かつて四宮家に奪われた父親の工場を取り戻すべく勉学に励んでいる白銀だが、そのことを知った天野から「天野グループ次期総帥の下で学ばせてやる」との言葉によってバイトで天野の仕事の手伝いをしているのだ。その他に社会勉強も兼ねて様々なバイト(天野グループ関係)をしているので雇用関係にあると言っていい。
「という訳で業務命令だ。かぐやにお詫びのデートでも誘え。連絡先は知ってるだろ」
「いや、でもデートなんてどうやればいいか分からないし……」
「仕方ない。この前圭ちゃんと行ったデートスケジュールでも参考にすればいいだろ。今教えるから待ってろ」
「ちょっと待て。その話が先だ」
「おにぃ、いい加減にデートに誘いなよ。デート計画ならこっちで立ててるから、その間に日時だけでも話しておいて」
もはやかぐやへの謝罪より妹と親友のデートが気になってしまう白銀。圭から「私の目の前で送れ」と凄まれ、父親のワクワク顔に苛立ち、かぐやへのお詫びデートを誘う。
「……再来週の土曜日に決まった」
「早っ!でもこれなら準備出来るね」
「そうだな。適当にカフェで飯食って小物でも買ってやると良い。それが嫌ならレストランでも予約してやるが」
「息子よ、お土産よろしく」
「なんでこうも簡単に決まるんだ!?それと親父!息子のデートに土産を期待するなよ!」
「土産話に決まっているだろ。また家族会議の時に聞くからな」
「ったく、それより圭ちゃんとデートとはどういうことだ?」
「普通に飯食って服買いに行っただけだ」
「そうだよ。変な想像しないで」
妹と親友のデートが気になるが普通の内容だったことに驚く。
「じゃあ、何時から二人は付き合っているんだ?」
「ま、まだだけど//」
「付き合ってないぞ」
「はっ?」
付き合ってないのにデートに行くことに対する驚き。圭の頬を赤らめた表情。父親の全てを知っている表情などを見て、思わず声が出てしまった。
「去年の夏から月1~2くらいで出かけてるだけだ。お父さんにも許可貰ってるし」
「お義父さん!?」
「俺のマンションにも来たことあるし今更だろ」
「家に行っただと!?俺は聞いてないぞ!」
「パパもついて行ったし問題ない。お前の考えているような事はしてないからな」
「親父!?何があったらそこまでできるんだよ!」
「お父さんには仕事の関係で話してるし、圭ちゃんだって年頃の女の子だぞ?友達と話を合わせるために服やら小物やらを揃えないと大変なことになるからな」
秀知院に通う生徒はそれなりの金持ちであることが多い。そのため、友人の持っている物くらいなら簡単にそろえることができる。つまり、秀知院で流行っている物を手に入れることは出来て当然なのだ。その中で一人だけ持っていないだけで話について行けず、結果的に仲間外れになることはある。いくら白銀が頑張っても一般の秀知院の生徒と同レベルの生活を圭に送らせることは不可能なのだ。
しかし、天野からの支援によりそれなりの生活レベルとなり、友人と遊ぶ時にも余裕を持って過ごせるようになった。この恩恵は白銀も受けている。ユ〇クロや〇Uの様なファストファッションを受け取っており、記念日には外食や旅行に連れて行って貰っていた。何なら部活にも(幽霊部員だが)所属している。その他、白銀の知らない所でも支援を受けているため真相を知れば卒倒するだろう。
「今までだって支援してたし、今更だろ?大体、お前だって俺の紹介でバイトしてるし」
「それは……本当に有り難いが、ここまでしてもらうのは流石に」
「俺が勝手にしてることだし気にするな。それよりデートの服装考えて、その後は勉強な」
「そうだぞ。今更気にする必要はないだろ。そもそも去年から家庭教師みたいなことしてもらってる訳だし」
そう、天野が白銀家に来る理由の8割が白銀兄弟の勉強を見る為だった。
去年の中間試験で成績上位者へ啖呵を切った白銀だが、天野から教えられた情報により失神しかけたのだ。秀知院の試験はとても難しい。その最大の理由は社会科と英語の範囲の広さ、そして一貫校ならではの授業スピード。元々貴族などの子供を育てる学校だけあり、秀知院の生徒はエスカレーター式で小学校から大学まで秀知院で過ごすことが多い。そうなると受験では使われない部分まで試験で出されることがある。中等部時代に高1の範囲ならある程度履修済みの生徒もいる(天野の様に高3までの範囲を全て終わらせている生徒はいないが)。そのような理由もあり、受験をするだけなら学校の試験はあまり役に立たないことも多いのだ。
例えば、英語の試験では名作小説から問題が作られることも多く、生徒の読書量や臨機応変さも採点基準となる。「次の文を訳せ」という問題なら、原文に準じた雑で簡潔な口語訳でなければ減点対象となる。そして対象となる本は図書室にある数万冊の中から選ばれ、そのヒントを教師が教えることはない。近年では、原作が日本語の小説を英文にしてから「次の文を和訳しろ」という問題も増えている。訳した答えが「ただの人間には興味ありません。この中に宇宙人、未来人、異世界人、超能力者がいたら、あたしのところに来なさい。以上」となった時は白銀すら正気を失ったほどだ。原作を知らなければ完答出来なかっただろう。
その他の科目もマニアックな問題が多く出題されており「将来の国の頂点に立つ人間なら知っていて当然」という方針で問題が作られるため下手な大学入試よりも難しい。他校の教師なら7~8割、秀知院の教師でも9割取れれば自慢できる程であり、そもそも授業で教えていない事も試験で出るという理不尽さがある。その試験で満点回答を出す事は天野すら困難であり、だからこそ白銀の異常さが際立っていた。
その白銀の勉強方法も異常としか言えない。元々、天野やかぐやの隣に立てる様になる為に必死で勉強をしている白銀は同じ部屋で過ごす圭のことを蔑ろにしていた。ただ夜中も勉強しているだけなら「高校生は大変だな」と遅くまで勉強する兄を応援して、圭は夜食の一つでも作っていたかもしれない。しかし、白銀の勉強法は正気の沙汰ではない。白銀の勉強法は部屋中に自身を追い込む言葉を書いた紙を貼り、毎日10時間以上の勉強―――教科書や参考書の朗読することであった。部屋を埋め尽くさんばかりの自作の
当時の圭に頼れる人はいなかった。そこで兄の唯一の友人であり『秀知院のお兄ちゃん』と呼ばれていた天野に助けを求めたのだ。事情を説明された天野が白銀の部屋に着いた時、天野から支援の提案と家庭教師として勉強を見る事を提案された。兄を、息子を助けるために白銀家はその提案を了承した。白銀本人は「友達にそんな真似させられない」と断ったが家族からの説得でしぶしぶ了承したのだ。
以来、白銀家では週1ペースで天野による勉強会が行われ、試験前には白銀を天野の所有するマンションに隔離するという習慣が出来ていた。
「成績が下がったら学校に通えなくなるんだから死ぬ気でやれよ。俺だって忙しいからな」
「秀一君、本当にありがとう」
「秀にぃの支援がなければ、私は今でもあの特級呪物と朗読に精神をやられ、おにぃはまともに遊ぶ時間も確保できなかったんだよ。もう諦めようよ」
「いや、流石におかしいからな!?よく考えれば同級生に養われている様なものだろ」
「本当に養っていたら俺のマンションに引っ越しさせてるわ」
この「親友に養われるのはおかしい」問題はいつものことなので誰も取り合わない。こうして白銀家の平和は守られている。
「早坂!会長からデートのお誘いが来たわ!」
「マジですか」
「どの服がいいかしら」
本日の勝敗 かぐやの大勝利
圭ちゃんと白銀パパが「天野による支援」を受け入れた理由は「やはり気に入らないか。もっと良いものを持って来よう」と言ってグレードが上がり続け、交渉により「天野からの最低レベルの支援」で合意したからです。
例:タワマン一棟のプレゼント、元白銀家工場の買戻し、白銀パパの就職先斡旋など。
今作では白銀の目的を知り協力してくれる人間がいる為、すでに四宮家と戦う準備をしています。白銀は茶道部の幽霊部員という設定です。そちらの話はまた後日出します。
当然ですが、秀知院の試験については作者による勝手な設定です。
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