この話はタバコを推奨するモノではありません。また、20歳未満の喫煙は法律によって禁じられています。
「それで四宮とのデートはどうだったんだ?」
「いや、デートと言うか…普通に喫茶店で昼食を食べて、キーホルダーを買っただけだぞ?」
それをするためにどれだけ苦労したことか、天野は内心で毒づいていた。ちなみに、このデートの事を知った某近侍は「私の負担が減った」と喜び、久々のゆっくりとした休日を過ごした。
「そういえば秀さんはどうだったんですか?水族館行くとか言ってませんでしたか?」
「あぁ、四条とかと行ってカップルが誕生したな」
「「えっ!?」」
「いや、お前らも話は聞いてただろ…四条と翼が付き合ったんだよ」
「そ、それでも驚きますよ。だって、大物カップルの誕生ですよね?」
「えっ、あの2人ってそうなの?」
「知らないのか?四条は四宮家の分家だが、実際には敵対関係。事実上、日本の巨大財閥は四宮・天野・四条で、四条眞妃はその長女だ。翼は四宮家お抱えにして、世界の名医10選に選ばれた田沼正造の孫だぞ」
「ほ、本当に凄いな……しかし、四条はそんなに凄かったのか」
「事実上、四宮先輩に匹敵する人ですからね。この学校には本物の王子や警視総監の息子、ヤクザの娘とかいますけど、それ以上にヤバい人種ですから」
「あの二人に匹敵する天才は国内じゃまず居ないな。それを超える化け物ならいるけど」
「それって誰だ?あの二人以上となると天野くらいしか想像つかないが…」
「四宮家と天野家のトップ、要は俺と四宮の父親だな。あの化け物達は本物だからな。俺も勝てる気がしない」
「いや、下手な国家元首以上の権力者の名前が出てきても……」
本日の生徒会は比較的余裕のある状態だったため、生徒会男子組で週末の話をしていた。白銀と四宮のデートに、国内でもニュースになっておかしくない程の大物カップルの誕生。後者については秀知院のトレンドになっているほどだった。
「あ~僕も彼女欲しいっスわ」
「お前だって彼女くらいできるだろ。秀知院生徒会のメンバーだぞ」
「僕の中学時代知って言ってます?」
「言ってます」
「まぁ、これから挽回するしかないだろ」
「僕に10年以上の鍛錬をしろと?」
「”卍解”じゃなくて”挽回”だ。お前は死神じゃないだろ」
「面倒だから資格とか取ったり、社会貢献でもするか?多少は性格も直るだろ」
「い、いや~僕はゲームでもしている方が……」
「水着の美少女とビーチで遊ぶ予定があるが、来るか?」
「行きます!!!」
白銀は天野へ化け物を見る様な視線を送る。ちなみに天野は嘘を言っていない。夏に海岸のゴミ拾いに参加する予定であり、そこには四宮も来る。白銀へのアピールで水着を着ることは確定しているので、美少女と言える四宮と遊ぶことは可能だろう。
「さて優が社会貢献に興味を持ったところで、後はどうするか」
「簿記とかFPでも取らせればいいか?」
「そうだな。手軽だし、その辺でいいか」
「誕生日頃に免許取らせて、それまでは茶道でコミュ障を直そう」
石上の社会復帰が相談されている中、話は生徒会のことへ変わっていく。
「そういえば、フランス校との交流会どうする?」
「えっ、何それ」
「いや、この時期にはフランスの姉妹校との交流会があるだろ。秀知院の金の動きで分かることだし」
「し、知らないんだが……マジなの?」
「マジだ。……今のうちに準備するか?俺も手伝いにくくなるし」
「そういえば、そろそろ特別授業の時期でしたっけ?」
「元々、秀知院には茶道や武道の家元の人間が多いからな。そいつらが人に教える練習や生徒は家元から教えて貰えるってことでそこそこ人気なんだよな」
「秀知院大学の単位も出るんだろ。そりゃ参加者も多いよな」
「参加すれば半年で2単位、3年やれば12単位ですからね。大体遊んでいるだけで取れるなら誰でも参加しますよ」
「主催側は倍の単位だから最大24単位、これも秀知院の囲い込み作戦だな」
特別授業。生徒の自主性を尊重するという名目で行われる茶番である。参加することで”大学の単位を出す”と言って内部進学者を多く輩出させ、それぞれの家元に媚びを売る秀知院の汚い戦略である。しかし主催側の生徒は師範代やそれに近い生徒であり、それが無料で行うため秀知院だからこそ出来るとんでもないイベントでもある。
「先輩は武道ですか?」
「俺は茶道だよ。お前らも知ってるだろが」
「でも、天野は裏百家の上級だろ?あれって師範代とかの生徒が主催するんじゃないのか?」
「仕方ないだろ。今年は三百家で裏百家以外の2つは師範代クラスがやるんだ。そこで裏百家の講座をやらないと上がうるさいからな」
「そういえば、ここ数年は三百家以外の流派はやってないらしいですね」
「茶道の流派は500種類以上ある。他の流派の関係者がいないここ数年が異常なんだよ」
「その中でも裏百家は茶道人口の半数と言われているからな。毎年やらないと文句がくるし、天野のおかげで今年もなんとかなりそうだ」
この秀知院で茶道部はかなりの力がある。全盛期は兼部を含めると生徒数の半分が所属していており、今でも50~60人が所属している。その中でも流派ごとに派閥があり、その流派でも本家分家争いがある。例年は裏百家が主流なのだが、今年は表百家・武者小路百家の本家や分家の子供がいる。しかし裏百家の人間はいない。そのためその2つの流派に人が流れている状態だ。現状はそれぞれの流派が派閥争いをしており、天野が裏百家の代表として仲裁をしている。
―――白銀もこの裏百家派閥に強制的に所属している。
「大体、上級程度の人間が講師をするなんて前代未聞だぞ!?俺、趣味でやってるだけだからな?お菓子食べてお茶飲んでいるだけなのに……」
「それでも凄いと思いますよ。高校生で上級なんて普通はいませんよ」
「三百家全部で上級クラスの四宮や四条がいるぞ。俺は裏百家だけだからな」
一般家庭出身の白銀と石上は秀知院の異常さに改めて驚く。
「そういえば四宮と千花はいつ来るって?」
「もう少しじゃないか?部活終わらせてから来るらしいし」
「流石にやることないと暇だな~。お前らはこの後の予定あるか?」
「無いっスよ。今は好きなゲームの発売前でやることもないですし」
「俺もバイトないし、勉強もするくらいだしな」
「それじゃあ飯でも作って食べるか?俺の家なら広いし誰もいないからな」
そんな会話をしながら放課後の予定を決めていく3人。秀知院学園高等部生徒会の彼らも高校生であり、放課後に友人と遊んだりお泊りしたりもする。
特別授業やフランス校との交流会が始まると忙しいため、その前に遊ぼうと計画を立てる中、生徒会女子組が到着した。
「すみません、遅れまし……う、嘘、でしょ……」
「どうしたんですか?かぐ……た、タバコ!?」
非行。それも学生だからこそできる事の1つであろう。
現在の白銀・石上・天野の3人は生徒会室でタバコを
「どうした2人共。いいから座れよ」
「今お茶出しますね。コーヒーでいいですか?」
男子が普通に過ごしている中、女子達は恐怖を抱いていた。
混院生でありながら生徒会長を務め、入学してから常に学力試験で学年1位を維持している白銀御行。
四大財閥天野家の後継者であり、生徒達からはお兄ちゃんとして慕われる天野秀一。
中学時代に暴力事件を起こし、現在でも職員会議にて対策会議が行われている石上優。
この3人が生徒会室で喫煙をしている姿を見せられた藤原とかぐやは裏切られた気持ちだった。
「かぐやさん!どうすればいいんですか!?」
「知りませんよ……会長も、お兄ちゃんも……何で……?」
「きっと何か事情があるはずですよ。大丈夫です。きっと改心させられますよ」
「なぁ、あいつらどうしたんだ?」
「部活帰りで疲れてるとかですかね?」
「もしかして、俺らが何もせずにお菓子を食べてたのが嫌だったとか?」
そう、男子達が食べていたのは『ココアシガレット』という駄菓子の一種であった。正確には『ココアシガレット』と似た勉強用のラムネである。天野が「これ食べると集中できていいぞ」と渡したことがきっかけで2人共食べていた。味が良く、集中力が増し、疲れが取れるという学生の強い味方である。
―――もっとも、石上は「ゲーム中に使えるな」と考えていたが。
そのような中で生まれた「女子もお菓子食べたいのかな?」という考えは、食べていた物が別の物なら普通の事だっただろう。しかし、今回はタバコによく似たお菓子であり、女子達にその知識がない状態である。
「なあ、お前らも
「「
女子達からすればタバコを奨められただけでなく、「食べるか?」と言われ驚愕を禁じえなかった。タバコの有毒性は最早いう必要がないほどであり、それを食べるなど正気の沙汰ではない。女子達から男子達への好感度が下がった。
男子達からすればお菓子を勧めたら食い気味に拒否され悲しくなった。勉強用のお菓子の為、普通のお菓子より味は落ちるが十分美味しい。自身が気に入った物を拒否されたことで男子達から女子達への好感度が下がった。
「おいおい、勘違いしないでくれよ。これは勉強用だぜ?ほら、集中できるし疲れが取れて効率が上がるんだよ」
「そ、そうなんですか?かぐやさん……」
「いえ、違法薬物を摂取するとそうなると聞いたことがあります」
「そ、それじゃあ!あれはタバコなんかじゃなくて!!」
ここでようやく両者は勘違いに気づいた。
男子達は食べていたお菓子をタバコと勘違いされていたと。女子達はタバコではなく違法薬物を使っていたのだと。
その後、「これはチョコと同じお菓子の一種だから!」と弁明する男子と「チョコ?大麻の隠語!?」と男子を疑い続ける女子という状況が1時間続いた。その後、女子により職員室へ連れていかれた男子達は自身の無実を伝え、全ての誤解が解けた頃には辺りが暗くなっていた。
本日の勝敗 生徒会男子組の敗北
誤解を解いた生徒会男子組は白銀父・圭とも集まって天野のマンションで夕飯を食べていた。
「本当に大変だったね」
「全くだ!お菓子を食べていたら職員会議にかけられるとは、冤罪被害者の気持ちがよく分かった」
「おにぃはまだいいじゃん。秀にぃは後継者から外されてもおかしくないんだよ」
「石上君も大変だったね」
「ありがとうございます。でも、僕は問題ないですよ。先輩達なら地獄でしょうけど」
石上は中学時代に起こした暴力やストーカー行為(誤解とも言い切れない)によって孤立している。そこに薬物が入れば本物のヤバい奴になるだろう。
「けど、そんなにタバコに似てるの?その手のお菓子だって見ればお菓子だって分かるよね?」
「あれは女子二人がタバコもその手の菓子も良く知らないから起きた事故だ。そもそも火が付いていない時点で違和感がある」
「まぁ、タバコにはちょっと憧れますけど……」
「分かる」
「ドラマとか見ていると、かっこいいシーンでタバコは定番だよな」
「親友の墓参りでタバコを吸うシーンとか」
「腹をナイフで刺されて死ぬ前にタバコを吸うとか」
「死に際にタバコを吸って『美味い』って言うが、実はタバコに火が付いてないとか」
「ハードボイルドでタバコとバーボンが朝飯とか」
「「「敵の攻撃を受けて『タバコの火欲しかったところだ』とか」」」
「パパの含めて何言ってんの?」
「まぁ、かっこいいシーンの小道具でタバコがあるから」
「そのシーンの真似をしたいと思うと」
「結果、タバコが吸いたいと思う訳だ」
男4人がタバコについて語っている中、圭だけは理解できずにいた。普通に体に悪いと分かっている物を吸いたいという姿に恐怖すら覚える程だ。
「あれだ。小さい子が化粧に憧れる感じだ」
「なるほど。分かった」
「何でそれで分かるんですか?」
「小さい頃からメイクしていると大人になってからクレーターみたいな肌になったりするんだよ。子供の肌は大人より薄いから化粧の悪影響を受けやすいから」
「何でそこまで詳しいんですか?気持ち悪い」
「父さんから教えられたんだよ」
「普通母親からでは?」
「母さんより父さんの方が詳しいからな。母さんの美容は父さんによって守られている」
「ちなみに、圭ちゃんの美容は秀一君によって守られている」
「気持ち悪っ!」
「白銀との賭けに負けたから援助してんだよ」
1年生の時に行われた白銀と天野による勝負。この勝負に負けた天野は白銀家への援助をすることになっていた。その結果、圭に最適な化粧品を送ることにもなったのだ。
「でも、化粧は肌に悪いとか言ってませんでした?」
「俺も聞いたが、基礎化粧品の中には日焼け止めや洗顔料とかもあるらしくてな」
「正直、詳しい話を聞いたら価値観が変わったよ」
「私も悪いと思ったんですが、断ったらもっと高い物を送られてしまって……」
「大体、白銀が俺に勝負仕掛けてきたせいだからな」
「その、賭けって何だったんですか?」
「そういえば、詳しいことは知らないかも……」
「俺も聞いてないな」
現在でこそ仲が良い白銀と天野。しかし出自を考えれば話す事すら難しい立場である。その二人が賭けをするとは何があれば可能なのか気になって仕方ない。
「簡単に言えば俺の弱みを握った白銀に『バラされたくなければいう事を聞け』と言われただけだ」
「言い方!!ち、違う!そんな目で見るな!」
同級生を脅迫して援助させていたことに軽蔑の目を向ける3人。必死に言い訳をする白銀だったが誤解を解くのは難しい。
「まぁ、それで賭けをして俺が負けた訳だ。”生徒会長になるための協力”を賭けてな」
「あ、あの…それがどうなったら私達への援助になったのでしょうか?」
「俺が白銀を気に入ったからな。その男の行く末を見たくなっただけだ。だから気にしなくていいぞ」
白銀の誤解も一応解けた訳だが、全員が思う。”天野の弱み”とは何か。そして、それを白銀が知った理由を。
今回出てきた茶道の三百家は三千家を元に作者が考えたフィクションです。実在の人物や団体などとは関係ありません。また、特定の流派を推奨・否定する考えはありません。
本作で裏百家をメインにする理由は作者が裏千家をしているからです(許状は一応所持していますが、初級までなので詳しい話は出来ないと思います)。また、茶道について詳しい知識が無くても分かるようにします。
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