あるいは切り札
曇天の夜空と快晴の青空
「ふんふふふーん」
鼻歌を歌う白く長い髪を二つに分け纏めている少女。
どこにでもいそうな愛らしい少女はその様子とは裏腹に、その実とても普通とは言えない性質をその身に持ってその生を生きている。
「何やってんだウィンプ?」
その少女に話しかける
「何って絵を描いてるのよ」
少女は絵を描いていた。
「へぇ…俺にも見せろよ、何を描いてんだ?」
「…………なんだこれ?」
紙には細長くそして曲がりくねった生物が描かれていた。
「何ってみてわからないの?」
「あぁ…いや、わかるぞ蛇だよな?」
「?何いってるのよ、どこからどうみてもサミーちゃんじゃないのよ」
そこら辺の蛇ではないと言いたいのであろう少女。
しかしその絵はあまり上手だととは言えず
そして、その光景を1匹の白い蛇がその目で見つめていた。
─────────
その光景を思い出したのは何故だろうか、この身が誰の為にあるのかなんて生まれた時から理解している上、
主の力となる為に生まれ、主の為に生きる、それが
いや、いまはそんな
「ちょっ、サミーちゃんさん!? 何を……ちょっ、出せって!!」
───この身を賭してでもこの人間を守らなくてはならない。
この人間に付き従う人のような
この人間が死ぬと、あの石のような者も消えてしまうのだと。
「ていうかなんでここに………いや待て、ウィンプは? 口の中に俺しかいないってことはウィンプはどこかに置き去りということで…………」
「ああもうそういうことかよマジかよクソかよ!! 聞こえるかサイナ!! 想定外だ、ウィンプが離脱に失敗した!! インベントリア内の何使ってもいいからどっかに置いてきぼり食らってるウィンプも担いで離脱しろ!!!!」
───正解。
口の中で叫ぶ人間がワタシの望む「最善」に辿り着いた。
この身でできない事があるのなら他のものを頼れば良い、
私がいなくなれば主は悲しむだろう、だがその悲しみも生きなければ感じる事はできないのだ。
そう───今は少しでも長く口の中の人間を生き延びさせるために───!!
────────────
───目が、見えなくなった。
直後、何かに頭から激突した。
「うぉあっ!?」
もはやこの身は死に向かうのだろうと理解した。
だがおそらく主を助ける為の時間を稼ぐ事はできただろう。
「一体何が………って、」
ワタシの今の姿を見たからだろう驚愕させてしまった。
「くっ、待てサミーちゃん。回復アイテムならインベントリアの中に腐るほどある……!」
…助けようとしてくれているのだろうが、やはりもう生きられそうにない。
「…………」
この先ワタシがいなくなった後、誰が主を支え助けるのかといえば目の前のこの人間だろう。
今もワタシを助けようとしているこの人間ならば悪態をついたりこそすれども主の助けに…切り札となる筈だ。
「待て待て待てまだ死ぬな食いしばれサミーちゃん、焦げた肉の塊になった"傷だらけ"だって全回復したんだから両目が抉れてたって誤差だよ誤差……!」
───だから…
「よしサ───」
これからは
─────────
「なんていうか下手だな」
「どこが下手なのよ!」
「いやどこがって…おいサイナ、この絵どう思う?」
「評価:一見するとのたうち回った白ウナギか何かでしょうか?」
「白ウナギじゃないわよっ!
どこからどう見てもサミーちゃんでしょっ!」
「困惑:どうしてこうなるのでしょうか?」
「言ってやるな…」
「そんな目で見ないでよっ!」
シャンフロ5周年なので書きました