【第一部完】ダンジョンで捕食者たちと獲物を求めるのは間違っているだろうか   作:れいが

1 / 156
>∟ ⊦ K'hunt-de

 「フィンやアイズ達がもうすぐ戻ってくる!それまで何としても

  持ち堪えるぞ!」

 

 通路を覆い尽くす程の蟲が群れをなしてどこかのファミリアを

 襲っていた。

 エルフの女性が指示を出して、盾で蟲の進攻を止めようとしているのが

 見える。

 

 ビュパァ!

 ジュウゥゥ... ドロォ

 

 「うわっ!?」

 「溶けるぞ!捨てろっ!」

 

 蟲が液体を吐き出すと、盾が溶けていった。その盾を捨てて、別の

盾で再び防いでいる。

 だが、ジリ貧になるのは明白だ。盾を持つ者の背後にはあの液体で

傷付いた者達が大勢いる。

 

 「(詠唱をする時間を稼がなければ...!)」

 「矢を放て!」

 「で、ですがリヴェリア様!この一陣で最後です!」

 「構わん!放てぇっ!」

 

 バシュッ! バシュッ! バシュッ!

 ドスッ! ドスッ!

 

 数本の矢が数匹、蟲を殺すが意味を成していない。

 それをあのエルフの女性も気付いているようだった。

 

 「ダメです!詠唱する時間すら稼げません!」

 

 「足が、俺の足がぁ...!」

 「くそぉっ...!何も見えないっ...!」 

 

 「また来るぞ!盾をくれっ!もうないのか!?」

 「もうそれしかないっ!」

 

 「出血が止らない...ポーションお願いします!」

 「待ってろ、すぐに...!?嘘だろ、溶かされちまってる!」  

 「そんな...!?」

 

 「っ...!」

 

 エルフの女性の頬を一筋の汗が伝っている。

 焦りと、苛立ちを感じた。

 ...ここを通るためにも、あの蟲の群れは邪魔だ。それなら...

 全て、狩り尽くす

 

 ――――――――――――――――――――――――――――――――

 ヒュ ロ ロ ロロロ ロ ロッ...! 

 シュ ル ル ル ル ル ル ルッ!

 

 ドパァッ! ドパァンッ! ドパンッ!

 

 「なっ...!?」

 

 リヴェリアは突然の事に驚き目を見開いた。

 リヴェリアだけでなく他の団員達も何が起きたのかわからず、

 呆然としている。

 目の前まで迫ってきていたはずのヴィルガが、真っ二つに

 斬り裂かれたからだ。

 

 「な、何だ?アイズさんが...?それともティオナさんが」

 「いや、違う!あれだ!あれがモンスターを...!」

 

 初めは誰もがアイズかティオナが倒したのかと思われたが、全く違うと

 すぐに気付かされた。

 何故なら、円盤状の物体と6枚の鋭い刃が備わった物体が

 リヴェリア達の頭上を通過して、ヴィルガの群れへと向かっていくのが

 見えたからだ。

 2つの物体は、不規則な動きで通路内を飛翔しながらヴィルガを縦に、

 横にと斬り裂いていく。

 胴体や首を斬り裂かれたヴィルガは断面から血を噴き出すように

 腐食液を噴出して絶命する。

 

 「(何だあれは...!?いや、それ以前に何故溶けない!?)」

  

 ヴィルガを斬り付け、突き刺すなどの攻撃した際、それらの武器は

 全て腐食液により溶かされたのは把握していた。

 しかし、ヴィルガを今も尚、斬り裂いていく物体は全く溶ける様子が

 なかった。

 通路を埋め尽くしていたヴィルガの群れが瞬く間に死滅し、2つの

 物体はリヴェリア達の背後へ飛翔していった。

 リヴェリアは振り返ってみるが、2つの物体は既に見えず誰かが

 回収したようには見えなかった。

 

 フォシュンッ! フォシュンッ! フォシュンッ!

 

 ドシュシュシュシュシュシュシュシュシュッ!!

 

 しかし、誰かが攻撃をしているのは間違いなかった。

 青白い無数の光弾が丘の上から流星群のように発射され続け、

 残ったヴィルガを一掃していく。

 青白い光弾が命中するとヴィルガの体表を貫通して体内から爆発し、

 腐食液が撒き散らされ、周囲のヴィルガに降り注ぎ溶かされた。

 そして、最後の1匹が青白い光弾によって爆発四散する。 

 先程までの喧騒が嘘のように静寂が広がった。

 

 「...そこに誰か居るのか!?」

 

 リヴェリアは通路全体に響くほどの声で、後方にいる誰かに

 呼びかける。

 しかし、誰も答えはしなかった。その代わりに、リヴェリアが送った

 視線の先、丘の上で2つの黄色い光が複数見えた。

 いち早くリヴェリアはそれに気付き、そこへ向かおうとしたが、すぐに

 消えてしまった。

 リヴェリアは立ち止まり、立ち尽くすしかなかった。そこへアイズが

 困惑した様子で近寄ってくる。

 

 「リヴェリア...あのモンスターは、リヴェリア達が倒したの?」

 「...いや、違う、私達ではない...」

 「え?じゃあ...誰が...?」

 「わからない。...だが、見たんだ」

 「何を?」

 

 「眼だけが、光っていた...」


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。