【第一部完】ダンジョンで捕食者たちと獲物を求めるのは間違っているだろうか   作:れいが

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 「ーーーーーーッ!!」

 

 マザー・シップ内で声にならない悲鳴を上げている男が居た。

 セクメト・ファミリアに所属する暗殺者で生け捕りにされた

 男だ。

 熱してある刃で胸部から腹部に掛け、斬り付けられている最中で

 肢体は失っており、断面が焼かれた痕によって止血されている。

 目の前に立つ山羊を思わせるヘルメットを被った捕食者は、

 一度武器を引き、背後で眺めているネフテュスに次はどうするか、と

 言っている様に振り返った。

 ネフテュスの瞳は白くなっており、正しく見下しながら欠伸をついて

 問いかけた。

 

 「セクメトもイヴィルスに加担しているのよね?

  他に神々の中で誰がイヴィルスに手を貸しているのか...

  教えてもらえないかしら?」

 

 その問いかけに暗殺者の男は頑なに口を割ろうとせず、頷きもしないで

 いる。

 マザー・シップへ連れ込んだ際に口内から歯に仕込んでいた毒などは

 全て排除しており、仕込んでいた歯だけでなく全ての歯を抜き取られて

 しまっているので喋るのは困難であると思われる。

 なので、頷くしか手段はないのだ。

 

 「...そう、それならいいわ。ゴート、起こして」

 

 頷かないとわかるや否や、ゴートと呼ばれる捕食者に命令して暗殺者を

 起こさせる。

 ネフテュスも立ち上がると隣に立った捕食者から何かを受け取った。

 掌サイズのケースでそれを開け、中から粘液を分泌させている小さな

 物体を手に取り、暗殺者の男に見せつける。

 

 「これは遠い国からのお土産よ。こうして起動させると...ほら。

  虫みたいに動いてるでしょう?これを貴方の口の中に入れるわね」

 

 虫の様な機械はネフテュスの掌の上で蛇が鎌首を上げる様に、体の

 上部を上げると頭部に生えている2本の触手を6つに分裂させる。

 今まで死んだ様に無反応だった暗殺者の男は唐突に暴れ始め、焦りを

 見せた。

 恐怖心か、或いは何をしようとしているのか察したからなのかは

 わからない。

 ゴートに口をこじ開けさせられるとネフテュスの掌から虫の様な機械は

 飛び跳ねて口内へ侵入していった。

 瞼を固定されている目を更に広げ、暗殺者の男は悶絶する。

 虫の様な機械は喉を下ってから中咽頭へ潜り込み、鼻咽頭へ登ると

 頭部の触手を目の裏側に位置する蝶形骨の蝶形骨洞へ捩じ込んでいく。

 ナノ単位にまで細くした触手は浸食する様に入り込んで、蝶形骨洞の

 上部の骨をも貫通し、脳へ到達する。

 白目を剥いて暗殺者の男が気絶する寸前で虫の様な機械が口から

 飛び出し、ネフテュスは掴んだ。

 

 「はい、お疲れ様」

 

 ベキッ

 

 触手の一本を折ると、別の捕食者が差し出した装置のケーブルを

 折れた触手の根元に接続した。

 すると、装置から光が投射されて映像が浮かび上がった。

 虚ろな目になっていた暗殺者の男はそれを見て、正気を取り戻したかの

 様に息を呑んだ。

 何故なら、自身の過去の出来事が鮮明に映し出されているからだ。

 

 「ん~...とりあえず、1週間前の記憶を見てみましょうか」

 

 そう言うと装置を捕食者が操作した事で別の映像が映し出される。

 その映像にはハッキリと暗殺者の男と同じ眷族、そして主神である

 セクメトの姿が映っていた。

 横には欠伸をしているタナトスやローブとケープを身に纏った

 妖術師の様な不気味な姿をした人物が居て、更にその人物と同じ色の

 外套を身に纏った人物も隣に立っている

 

 「...音声も再生して」

 

 カカカカカカ...

 

 『...でー?エニュオ~。マジでネフテュスパイセンが来てるの?』

 『...この目で見たからには、間違いない。

  クソ...ようやく求めてきた狂乱の宴を見られると思っていたのに。

  極上の葡萄酒にも勝る、狂い叫ぶ子供の悲鳴を聞けるはずが...!』

 『まぁまぁ、そうカリカリしないでさ。

  ...イシュタルのおかげでアレもようやく育ったから、もう少しの辛抱だ』

 『...ネフテュスの眷族の強さを知らないだろ。

  それも使い物にならないはずだ』

 『えー?やってみなくちゃわからないでしょー』

 

 タナトスの発言を最後に音声も映像も途切れた。

 映像を巻き戻させてネフテュスは妖術師の様な人物を見据える。

 白かった色の瞳はいつの間にか、赤く染まっており怒りを見染み出して

 いるようだった。

 

 「...フーン...そう...はぁ...まったく...」

 

 ネフテュスは虫の様な機械からケーブルを引き抜き、折った触手を

 元通りにする。

 電源を切り、ケースに入れ直すとその場に居る捕食者達と暗殺者の男に

 背を向けて上を向いたまま目を瞑った。

 

 「...楽にしてあげなさい」

 

 ザシュッ!

 

 刃で胸部を貫かれ、数秒呼吸をしてから暗殺者の男は息絶えた。

 

 「女の子を傷付けた代償よ。来世にも転生させてあげないんだから」

  

 ――――――――――――――――――――――――――――――――

 ベーレト・バビリにあるレナの自室のドア越しから軋む音が数十回

 鳴り響いた後、静かになる。

 

 「はふぅ...えへへ...やっぱりすごいね...」

 

 昼間にもなっていない時間帯にも関わらず、朝一からレナと捕食者は

 お互いを求め合っていたようだ。

 レナに至っては生命の危機を感じた時、生物は子孫を残そうと性欲が

 増すと言われるその現象によるものかもれない。

 

 「ねね、もう一回しよ?ん...」

 

 ドンッ! ドンッ!

 

 「んー?」

 

 ドアが叩かれるとその向こう側からいつまでやってんだ!などの

 不満な声が聞こえてくるが、レナは気にせず抱きつくのだった。

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