【第一部完】ダンジョンで捕食者たちと獲物を求めるのは間違っているだろうか 作:れいが
ギャ ロ オ オ オ ォ オッ !
2体の髑髏のような頭部をしたモンスターが飛び掛かってきて、
キングコングは両手で鷲掴みにし握り潰した。
推定100M越える身長に対して、モンスターは全長は凡そ
10M弱なので到底敵うはずもない。
魔石諸共粉砕されたモンスターは、手の中で灰となって消滅する。
隙を突いて腕に噛みついた個体は強引に引き剥がすと、別の個体
目掛けて投げ飛ばし衝突させた。
背後から襲い掛かってくるモンスターも先程と同様に振るい下ろした
足で踏み潰し、その程度か、とでも言うように吠えた。
ヴ オ ォ オ オ オ オ オ オ オ オ オ オ オ オ オッ!!
「っ!ティオナさん!今の内に!」
「う、うんっ...!」
キングコングの圧倒的な強さにティオナは呆然と見ていたが、
ハッとレイの呼び掛けで我に返り退避する事にした。
急いでレイに両腕を掴んでもらいながら飛翔し、上昇していくと
リドとグロスも付近へ接近してきた。
「あー、危なかったな~」
「奴ラモ敵ウ筈ガナイトイウノニ、呆レタモノダナ」
「あのモンスターって何なの?」
「あーあー...俺っちは髑髏の亡者って呼んでる。
別の名前ならスカルクローラーってとこか」
「え?いつそんな名前ガ...」
「今、思イツタンダロウ。俺モ今知ッタゾ」
そんなやり取りをしている最中、何かが飛んで来て慌てて
回避する。
それは引き千切られたスカルクローラーの頭部だった。
先程より増えたスカル・クローラーと一騎当千の状態で戦う
キングコングにティオナは視線を向けた。
飛び掛かる直前に両腕を振るい下ろして地震を起こす程の威力で
拳を地面に叩き付け一網打尽にスカル・クローラーを押し潰す。
器用に足の指でスカルクローラーを掴むと首を挟んでいる第1趾と
第2趾でへし折った。
残る1体をキングコングは大きく振りかぶると73階層の端である
壁にまで投げ飛ばし、そのスカルクローラーは壁に衝突した衝撃で
全身から緑色の血を噴き出して絶命し、水面へ落下していった。
ズズゥンッ! ズズゥンッ!
「...えぇ~...」
ギュ ロ ロ ロ ロ ォッ !
その時、キングコングの背後から現われたスカルクローラーと
思わしきモンスターにティオナは顔を引き攣られた。
思わしき、というのは、その個体は明らかに先程までキングコングに
囲っていた個体が小さく思える程、キングコングに負けないくらい
巨大だからであり、一目では同じ種類とは思えなかったからだ。
「アイツはスカルクローラーの中で1番長生きしてきた奴で...
スカルデビルっていうんだ」
「スカルデビル...」
小さな個体であるスカルクローラーとは違い、キングコングとの
距離を空けつつスカルデビルと呼称されるモンスターは襲い掛かる
瞬間を狙っていた。
長く生きているという事はより知能が高く、どういった攻撃手段を
すればいいのかわかっている様だ。
一歩、キングコングが歩み寄った瞬間、目にも止らぬ俊敏さで
スカルデビルは噛み付こうとして来たので、腕を咄嗟に突き出して
防御する。
頭部を拳打してから、振り払うと着地した瞬時にスカルデビルは
再び噛み付いてくる。
今度は隙を狙い、首に噛み付いた。
体を捻らせ、弱体させようとするもキングコングが首部分を
殴打した事で怯み、動きが止った。
キングコングは上顎と下顎を掴み、口を開かせて外すと
顎をそのまま引き裂こうとする。
メキメキメキィッ...! ベキッ! バキッ!
バキャアッ!!
スカルデビルは足でキングコングの両腕を掴んで抵抗する。
しかし、抵抗虚しく下顎が曲がってはらなない方へ曲がり顎が
裂かれた。
悲鳴に似た叫びを上げながらスカルデビルは掴んでいた両腕を
離してしまい、キングコングが自由に動ける様になってしまう。
ド ガ ァ ァ ア ア アッ!
キングコングは崖にスカルデビルの頭部を叩き付け、力無く
崩れ落ちる様を見ながら背を向けて離れると、足元に生えていた1本の
巨木を引き抜く。
尚、キングコングの足と同じ長さの巨木である。
樹皮から伸びている枝を、抜刀するかの様に巨木の根元から手で
剥がし落して構えた。
ギュ ロ ロ ロ ロ ォ オッ!!
ヴ オ ォ オ オ オ オ オ オ オ オ オ オ オ オ オッ!!
戦意を喪失させずスカルデビルはキングコングへ向かっていく。
キングコングも同時に向かって行きながら、間合いを詰めると
巨木を振りかぶり下から上へ勢いよく振るった。
頭部が跳ね上がり、スカルデビルは舌を揺らしながら倒れ込んだ。
立ち上がろうとするも、すぐに倒れて瀕死の状態になっているようで
あった。
キングコングは巨木の先端を折って、棘状にするとスカルデビルへ
近づいて行く。
顔を上げようとしたスカルデビルの頭部を足で押さえ付け、
巨木を両手で掴むと頭上へ高く掲げ、棘状の先端を胴体へ突き刺す。
顔を地面に押さえ付けられたまま、スカルデビルは断末魔を上げて
徐々に発声が弱まり絶命する。
ヴ オ ォ オ オ オ オ オ オ オ オ オ オ オ オ オッ!!
ドゴッ! ドゴッ! ドゴッ! ドゴッ! ドゴッ! ドゴッ!
勝利した事を告げる様に雄叫びを上げ、ドラミングを始める。
耳を劈くが如く73階層全体に響き渡り、ティオナは思わず
耳を塞ぎたくなった。
しかし、その勇姿を目に焼き付け、その雄叫びを耳に残したいと
塞ぐ事はしなかった。
スカルクローラーが居なくなった場所にティオナ達は再び着地した。
すると、気配に気付いたキングコングが歩み寄ってくる。
ティオナはその巨体に圧巻して、呆然としていた。
「キングコング様~!助けてくれてありがとな~!
この人間がティオナっちだ~!」
フゥーーーッ...
鼻を鳴らし、キングコングは見下ろしながらティオナを見据えた。
ティオナは慌てて頭を下げ、お辞儀をする。
「は、初めまして!ティオナ・ヒリュテ、です!
えっと...す、すごく、強いん、です、ね、ぇ...」
何故、最後の語尾が弱くなったのは、キングコングが屈んで顔を
至近距離まで近付けてきていたからだ。
その瞳は、まるで燃え上がる太陽の様に闘争心を秘めていた。
再び鼻を鳴らし、ドスンとその場に胡座を掻いて座ると人差し指のみを
立ててゆっくりと左右に振るう。
それを見てティオナは何をしているんだろう、と首を傾げるもそれが
手話であると理解した。
「コノ方ハ俺達トハ違イ、喋ル事ハ出来ナイ。
ダカラ、コウシテ仕草デ会話ヲ成リ立タセテクレル」
「捕食者さんと同じ様な感じだと思ってくださイ」
「あぁ...うん。確かにそう思った。
えっと...何か用なの、って聞いてるのかな?」
「ああ、そうだぜ。
一応、何の用で来たのかは話したけど、内容まではまだなんだ」
「そっか。こっちの言葉は通じるのかな?」
「大丈夫でス。受け答えは問題ありませんのデ」
それなら、とティオナは一歩近付き、キングコングに答えた。
「あたしをリド達と同じ様に鍛えてほしいの!
絶対に負けたくない相手に勝ちたいから...
お願いします!」
ティオナはもう一度お辞儀をして、キングコングに懇願した。
キングコングは顔を顰めたままティオナを見つめ続けた。
やがて、立ち上がったかと思うと大きく息を吸い込んだ。
ヴ オ ォ オ オ オ オ オ オ オ オ オ オ オ オ オッ!!
ドゴッ! ドゴッ! ドゴッ!
雄叫びを上げてドラミングをするキングコングにティオナは
憤慨しながら拒否していると思って、思わず座り込んでしまう。
しかし、キングコングは小指を立てて顎を軽く突ついた。
それがどういった意味なのか、リド達に問いかけようとするが
先に意味を教えてくれた。
「よかったなティオナっち!いいってさ!」
「え?あ、い、いいよって意味だったんだ...」
安堵するティオナは尻部分を手で汚れを払いながら立ち上がる。
そうしてキングコングを師としての特訓が始るのだった。