【第一部完】ダンジョンで捕食者たちと獲物を求めるのは間違っているだろうか   作:れいが

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 アイアム・ガネーシャの出入口からアーディが出てきたタイミングで

 ティオネが声を掛けてきた。

 簡潔に挨拶を済ませると、すぐに本題を投げかけた。

 それにアーディは数秒絶句して、驚愕しながら声を上げた。

 

 「え!?ティオナまだ戻って来てないの!?」 

 「そうなのよ。アイズは先に戻って来たのに...

  あの子ったら、ホントどこまで潜ってるのかしら...」

 「も、もう6日は経ってるんだよね?捜索は...しないの?」

 

 ここで時系列を説明すると、ティオナが門下生となってキングコングとの

 特訓を始めてから5日が経ち、アイズと同じ日付でダンジョンに残ると

 言った日から加算して6日も経ってしまっているのだ。

 ティオネも流石に心配になり、昨日から方々を歩き回りティオナを

 見ていないか知人や最近ダンジョンへ潜った冒険者に聞き込みを

 始めていたのだ。 

 しかし、一向に手掛かりが見つからないと判断してアーディの元へ

 来たのだ。

 ティオネはアーディの問いかけに、ため息をつきながら答えた。

 

 「したいんだけど、もうじきまた遠征が始るから無闇に動けないの。

  だから...アーディ。もしよかったら、今日付き合ってもらえないかしら?

  もし今日がダメだったら、ギルドに捜索依頼を出す事にするわ」

 

 そう頼み込まれてアーディは承諾し、急いでホームを走り自室へと

 急いだ。

 愛剣を腰に引っ提げ、ガネーシャに捜索をする事を伝えて承認して

 もらうとティオネの元へ戻ってくる。

 そして、バベルへと急いだ。

  

 ――――――――――――――――――――――――――――――――

 「あぁ、愛おしい...」

 

 第六区画にある巨大なホーム。その屋上でアポロンが天を仰いでいた。

 両腕を広げ、高揚とした表情で何かを求めるように呟いてもいた。

 

 「どれだけ美しい美男女であっても、花であっても宝石であっても...

  あぁ、その美しさにはこの世の美しい全ての物で勝るものはない」

 

 高揚とした顔から今度は涎を垂らして間抜け面を晒す。

 それにヒュアキントスは顔色1つ変えずにいたが、その背後に居る

 他の団員達は嫌悪感以外に感じられない面持ちとなって自分達の主神を

 不快そうに思っているようだった。

 

 「ヒュアキントス、どう思う?」

 「はっ。どう、と仰いますと?」

 「先程言ったこの世の美しい全ての物より、美しい物を手に入れたい。

  しかし...それは手が届かない所にあるとすれば、どうすればいいか。

  お前ならどう思う?」

 「アポロン様が望むのであれば、私達が手に入れ貴方に捧げてみせましょう。

  例え死に直面する事があっても...貴方のためなら命すら惜しくもありません」

 「そうか。実に嬉しい言葉だ、ヒュアキントス」

 

 ふざけんな、と背後の団員達は聞こえない程度に鼻で笑う。

 しかし、アポロンもヒュアキントスも本気で言っていると思い、

 問いかけた。

 

 「質問ですが、その美しいものとは何でしょうか?」

 「もの、ではないな。私が言っている美しいとは美貌の事。

  つまり、私は愛でたい女神を手に入れたいのだよ」

 「...その女神のお名前は?」

 「我々神々の偉大な先達と言われる女神、ネフテュス。

  その星空の様に輝かしい銀の髪、その褐色の肌は実に頬摺りしたくなり、色取り取りな瞳は全てを吸い込む様な魅力を持ち、目の下のタトゥーは可愛らしさを引き立て...」

  

 などとネフテュスを賞賛するアポロンは口を閉じる事を知らない。

 時折、一息ついて口を潤すとまた魅力を語り始める。

 そんな言葉をヒュアキントス以外の団員達は、いい加減勘弁してくれと

 いったような態度を露わにする。

 

 「(...これは時間の問題かな。アイツにも伝えておいて...

   ネフテュス様にも知らせないと...)」

  

 ―――――――――――――――――――――――――――――――― 

 一方その頃、同じ第六区画にある南西のメインストリートの

 アモールの広場でベンチに座っているパルゥムの少女が居た。

 リリルカだ。随分と気合の入った服装をしている。

 パージした袖によって肩を露出するノースリーブのワンピースに

 胸の下には黄色いリボンを結んでいた。

 水玉模様のスカートに重ねてフリルを配ったスカートを着用しており、

 可愛らしさがより強調されている。

 髪型も下ろしておらず、後ろ髪を片方に結っている。

 いつも履いている古びた靴も、綺麗な買ったばかりの茶色い革靴を

 履いて地面の小石を軽く蹴って、待ち焦がれている様子が窺えた。

 すると、リリルカの方へ走って来る人影を見つけると、リリルカは

 立ち上がって皺を無くすためにスカートを払う。

 

 「よっ。待たせちまってたか?」

 「あ、い、いえ。リリも少し前に来た所なので...」 

 「そっか、ならよかったよ。

  ...その服、似合ってるな。お前にピッタリだぞ」

 「あ、ありがとうございます...ルアン様」

 

 頬を染めるリリルカに自ら発言したのにも関わらずルアンも

 照れくさそうに頬を指で掻いていた。

 初々しい雰囲気を漂わせる2人に周囲に居る男女は微笑ましく

 見守っていた。

 何がどういう事なのかと説明すれば、恋人未満の恋仲なのである。

 遡る事、2日前の午後6時頃。

 帰路を歩いている最中、以前にリリルカが剣を盗んだ事のあるゲドと

 遭遇した。

 というのも、ゲドは以前の事を根に持っておりリリルカの事を

 その日から探し続けていたそうなのだ。

 既にヴェルフ達とは別れてしまっており、1人だけという事もあって

 絶体絶命の危機的状況となったのは言うまでもない。

 怒り心頭となっているゲドは古びた短剣を振り翳し、迫ってきた。

 武器などは没収されているので、拾った物なのだろ思われた。

 足が竦み、リリルカはその場から逃げられなくなっていた。

 その時、何者かに突き飛ばされるとゲドは気を失わされ、

 リリルカは助けられた。

 その助けた人物こそ、ルアンだったのだ。

 助けたリリルカをその後、引き連れて色々な相談をし紆余曲折あって

 お互い惹かれ合った。一目惚れである。

 そして、今回のデートはその時の感謝の気持ちを返すためにも

 する事となったのである。

 ちなみに、現在の服装も奮発して命、春姫と選んで購入した衣服だ。

 

 「そういやアイツ、ガネーシャ・ファミリアに突き出してやったよ。

  もう二度と牢屋からは出られないだろうな」

 「え...?...そ、そうなんですか...」

 「全く。女の子を傷付けようとするなんて屑も同然だよな」

 

 しかし、その言葉にリリルカは抱いていた罪悪感が深々と刺さった。

 確かに危害を加えようとしてきたとはいえ、それは自らの過ちでゲドが

 怒りに身を任せて犯してしまった事なのだと自覚があったからだ。

 こうして悠々と楽しんでいる自分に対し、リリルカは怒りと憎ましさを

 覚えて歯を食い縛る。

 すると、ルアンがどうかしたのかと問いかけてきた。

 これから楽しく話したり、食事をする予定が無くなってルアンを

 ガッカリさせてしまうと思ったリリルカだが、アストレアの言葉が

 過ぎった事で、今自分が言うべき思いをルアンに伝えようとする。

 

 「...あ、あの、ルアン様」

 「ん?」

 「実は...リリは...リリはその...」

 「...ゆっくりでいいから言いなよ。そこに座ってさ」

 「あ...はい...」

  

 ――――――――――――――――――――――――――――――――

 所変わって、アストレア・ファミリアのホームである星屑の庭の

 前にフィルヴィスとナァーザが立っていた。

 何故かと言うと、フィルヴィスはどうしても捕食者にまた会いたいと

 青の薬舗まで相談をしに来たため、見て見ぬふりは出来ないと思った

 ナァーザはネフテュスに連絡を入れた。

 その結果、ネフテュスが話し合う場所を設けるのでそこへ来てほしい

 という指示を出した。

 その場所が星屑の庭であった。

 

 「...聞き直すが、本当に女神ネフテュスと女神アストレアは...

  ど...同性愛、の恋人なのだな?」

 「私の主神様がそう言ってたから、ホントだと思う。

  神々の中では有名な話しみたいだし...」

 「はぁ...そうか...」

 

 と話しながら、出入口の扉をノックしようとする。

 しかし、先に扉が開かれてナァーザは咄嗟に手を引っ込めて後退した。

 フィルヴィスも若干慌てつつも、姿勢を正して扉を開けた人物を

 見る。

 

 「あ...フィルヴィス・シャリア...?」

 「リュー・リオン...以前は世話になったな。

  改めて礼を言わせてほしい」  

 「いえ、こちらこそ。そうでしたか、貴女が件の来訪者だったのですね。

  お話しは窺っていますので、どうぞ中へ」

 「失礼する」

 「お邪魔します」

 

 通路を進んで行き、レストスペースに辿り着いた。

 ソファに誰かが座っていると気付くと、視線をそちらへ移した。

 

 「ん...んぅ...」

 「んぁ...ん...んんっ!?」

 

 濃厚な接吻をしている最中のアストレアはネフテュスの背後に

 居る3人に気付き、目を見開く。

 首元から頭部が真っ赤に染まり、慌ててネフテュスの口内から

 舌を引き抜いた。

 

 「リュ、リュー。こ、これは違うの。

  ネフテュス様がちょっとだけって言ったのに貴女が2人を連れて戻るまで続けてたから」

 「あら?でも、離してくれなかったのはアストレアじゃないかしら?」

 

 図星を突かれたアストレアは更に顔を真っ赤にして口籠もる。

 ふとナァーザはリューとフィルヴィスが全く動かない事に気付き、

 2人の顔を覗き込んだ。

 

 「「...おぶっ!」」

 「うわ...」

 

 その途端、2人は同時に鼻血を噴き出して前方へ倒れるとナァーザは

 腰のポーチから鼻孔を詰められる物が無いか探し始めるのだった。

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