【第一部完】ダンジョンで捕食者たちと獲物を求めるのは間違っているだろうか 作:れいが
「本当に見かけてないのね?」
「だからそうだって言ってるだろ?
6日間もここに居たってなら一度くらいは見てるはずだしよ」
「じゃあ...どこで寝泊まりして、食べ物は何を食べてたのかな...」
リヴィラの街でティオナが滞在していないのかを調べていたが、
全く手掛かりが無いという結果にティオネは焦りを見せていた。
一方でアーディは行方不明になったと断定する他ない事に不安を
募らせる。
ボールスも2人の話を聞いて、真剣になりリヴィラの街の住人や
18階層へ辿り着いた冒険者を集めるとティオナを見かけた者が
居ないか若干脅し気味に問いかけた。
しかし、それでもティオナに関する情報は手に入らず、ティオネと
アーディは気落ちするしかなかった。
長時間探していたので、少し休息を取ろうと酒場へ入った。
「...死んだって事はあり得ないから、まさかとは思うけれど...
あの子、50階層まで潜ったんじゃ...」
「でも、それならアイズとリヴェリア様がすれ違うはずだし...
...正規ルートに居なくて、未開拓領域に入って行ったとか?」
アーディの間違っていない考察にティオネは少し考えてから、首を
振って否定する。
ファミリアの規定でもし見た事のないルートへ続く出入口を見つけた
場合は必ず1人では入らず、ホームへ戻って来て報告する事と言われて
いるからだ。
なので、落ちた場合は別として未開拓領域へ入ったとは考え難く
姉としての願望も含めてアーディの考察を否定したのだろう。
それからしばらくお互いに無言となり、ティオナがどこへ行ったのかと
いう話は途切れてしまった。
ただ居座るのは図々しいという事で、注文したフルーツジュースが
運ばれて来るとアーディは一啜りし、ため息をつく。
「...ティオナは...捕食者の事、どう思ってるのかな」
「...いきなりね。そんな事聞いてくるなんて、どうかしたの?」
「別に...気になっただけで...
私は捕食者の事を許せないって思う気持ちがあって、ティオナは...助けてもらったから親しくしようとしてるっていうのはわかるよ?
ただ、それ以上に接しようとしてる感じがして...」
ティオネはアーディの言葉に、どこか不安げそうな表情となり目を
伏せた。
それを見逃さず、アーディは何か思い当たる節があるのかとティオネに
問いかける。
「私達の習性がどんなのか知ってるわよね?
それを元に考えると...」
「...嘘でしょ?だって、あのティオナが...
異性に対して興味が無いってティオネがそう言ってたよね?」
「そう。だから、姉として不覚と思ってるのよ...
というか私自身、自覚があるから余計にそう思ってるわ...」
恋は盲目。それをティオネが自覚している。
フィンに惚れ込んだ事で以前の自分を捨て、変わろうと努力をして
きたと覚えがあるのだ。
そして、ティオナも強くなり、変わろうとしている。
自分がフィンに認めてもらおうとしているように、妹も捕食者に
認めてもらおうと頑張っているのだと。
それを聞いてアーディはテーブルに突っ伏すと、3回強く天板を
拳で叩いた。
「...よりにもよって...はぁー...
...そっか。気を遣わせちゃってたんだなぁ。
年上のお姉さんなのに気づいてあげられなかったなんて、情け無いよ...」
「いいえ、実姉である私の方が情け無いわ。
...それを踏まえてアーディは、捕食者の事を許せないかしら?
今後、顔を合わせる度に気まずくなるわよ」
ティオネの発言からして、色々と察するアーディ。
恋人になるという前提で今後も会う事になるのは必至であり、
顔を見合わせた際、気まずくなると理解したからだ。
しかし、そう簡単に割り切れる程の気持ちではないアーディは
どうするべきか考え始める。
考えに考え、閉店間際となってようやく答えた。
「...ティオナを泣かしたら、一生許さない事にしよっかな」
「あら、奇遇ね。私も同じ事考えてたわよ」
そうしてティオネとアーディは笑い合うと、酒場を後にした。
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「ったく、アイツからポーションか何か貰ってから別れるんだったな」
「今更言っても仕方ありません。大人しく宿泊先で休みましょう」
「あれ?リオン?」
「っ!?ア、アーディ...?それに...」
「ありぇりぇ~~~?あーりぃとてぃろねりゃらいのぉ~」
「...ア、アリーゼ?」
ティオネとアーディの視野に入ってきたのはアストレア・ファミリアの
主力である4人と、呂律が回っていないアリーゼを背負っている
フィルヴィスだった。
その中で2人を見たライラは顔を逸らして困ったと誰が見ても
わかる顔をしていた。
「うわぁ、最悪なタイミングで...」
「んへへぇ、めずりゃひいふみあわひぇりゃな~い?
ぃっく...ふひゃりでれーとしてたのぉ?」
「...一体どうしたのよ?」
「...天然の酒を見つけた際、自身の容量を考えず呑んでしまったんだ。
おかげでこの有様といった具合、に!?」
言葉を詰まらせるフィルヴィスにティオネとアーディ、残る3人は
首を傾げた。
何があったのかというと、アリーゼがフィルヴィスの胸を鷲掴みに
していたのだ。
「んぅ~...これはなかなか、リオンよりあるぅ...」
「...は、早く宿の部屋に放り込もう」
「そっ...そうしましょうか。ではお2人、これにて失礼します」
珍しく慌てそうになる輝夜にリューとライラは頷き、急ぎ足で宿へと
向かおうとした。
通り過ぎる際、ティオネはティオナの事について問いかける。
「ねぇ。うちのティオナ知らない?実は行方知れずになってて...」
「いえ、残念ながら見かけた覚えは...
捜索依頼を出していただけたら、是非協力させてください」
「そう...わかったわ。ありがとう」
はい、と返事をしたリューはそそくさと先に進んで行った輝夜達を
追いかける。
ティオネとアーディは5人を見送りながら、リヴィラの街の出入口へ
足を進めた。
「天然のお酒って、どこにあるんだろうね?」
「さぁ...湧き水みたく出てるのか、樹液みたいに木から出てきたんじゃないかしらね」
「あー、なるほど...」