【第一部完】ダンジョンで捕食者たちと獲物を求めるのは間違っているだろうか   作:れいが

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 「ハァッ...!ハァッ...!」

 

 ほとんど身動きが取れない程の感覚が狭い竹林の中で、ティオナは

 呼吸を整えながら神経を研ぎ澄ませ、頭上から降り注ぐ刺突を必死に

 回避していた。

 

 ギ ギ ギ ギィィ...!

 

 襲撃してくるその正体はバンブー・スパイダーだ。

 体長7Mの巨大な蜘蛛型モンスターであり長い脚を竹に擬態させ、

 竹槍の様に脚を獲物に突き刺そうと襲い掛かって捕食する習性を持つ。

 周囲の竹と見分けがつかない程、擬態は完璧で頭上を見上げながら

 バンブー・スパイダーの動きを先読みしないと回避は間に合わない。

 

 ビチャッ! ビチャッ!

 

 「うわっ!?またこれ!?」

 

 ティオナの腕に付着してきたのは、バンブー・スパイダーの胴体の

 下部から垂れ下がってきた触手である。

 その触手は粘着性であり、付着すれば先端の吸盤が3つに分かれて

 1つ1つを剥がすとなると手間取ってしまい、引き寄せられた所を

 鋏角に斬り刻まれる危険が伴うのだ。

 ティオナはそうなる前に、直ぐさま付近にある竹の周りを一周し、

 触手を竹に巻き付けた。

 そうする事で触手に引き寄せられるのを防ぐようだ。

 

 ギチギチギチギチィッ...!

 ミシミシッ! ベキッ!

 

 触手に締め付けられる竹は軋み、徐々に罅割れていく。

 ティオナは竹が砕ける前にパレオを留めるベルトに挟ませていた

 石刃で触手を切り始めた。

 特訓で蹴り続けている岩の破片であり、触手を容易く切り取る事が

 出来た。

 ティオナはその場から離れ、真横の擬体している脚が浮いていくのを

 見逃さず、竹で例えるなら節間の中間部を斬り落とした。

 それにより、バンブー・スパイダーは体の重心がズレた事で蹌踉めく。

 奇声を上げながらバンブー・スパイダーは狙いを定め、8本ある内の

 前脚の1本を振り下ろしてきた。

 

 「おっと!」

 

 ドスンッ!

 

 ティオナは咄嗟に後方へ大の字になって倒れるように回避した。

 腰布の前垂れを突き破り、前脚は地面に深々と突き刺さって、引き

 抜かれるとまた振り下ろされてくる。

 地面に寝転んだ状態でティオナは体を捻らせて再び回避すると、

 目の前に落ちてきた脚を石刃で叩き斬る。

  

 「そりゃぁああっ!!」

 

 バキャアッ!

 

 竹で例えるなら節間の中央が切断され、バンブー・スパイダーは

 体の重心が崩れて蹌踉めく。

 立ち上がったティオナは、更に別方向から飛んで来た脚も斬り裂いて

 それを目印にすると一度頭上に上がって降りてきた所で、その脚に

 しがみついた。

 

 「よっ!っしょ!ほいっ!」

 

 そのまま節を掴みながら器用に脚を登っていき、脚が上がって

 振り下ろされるタイミングで落されないようにしがみつく。

 また登り始め、関節部をよじ登るとバンブー・スパイダーの背中に

 乗った。

 背中には擬体のためなのか笹の葉の様な体毛が生えており、それを

 掴みながら頭部の方へと這いずって近付いていく。

 そして、8つの目玉がある箇所まで辿り着くとと石刃を突き立て、

 勢いよく振り下ろす。

 

 ザシュッ!

 

 ギュ ギ ギ ギ ギ ギィイッ!

 

 「どっりゃああっ!

 

 目玉より少し上に刺さっている石刃の平らな根元を拳で叩き付け、

 より深く突き刺した。

 バンブー・スパイダーは動きを止め、8本の脚を崩し始めると

 周囲の竹をへし折りながら地面に倒れる。

 ティオナは倒れる直前に折れなかった竹に掴まって移動しており、

 手の力を緩め滑り降りながら着地した。

 バンブー・スパイダーに近付くと、まだ息があるようで呻き声を

 上げている。

 すると、ティオナはもう一度背中に乗って腹部に切れ込みを入れて

 いくと裂傷部から巨大な魔石が見えた。

 

 「これで...終わりだよっ...!」

  

 ガッ... メリィッ!

 

 魔石を取り除されたバンブー・スパイダーはドロップアイテムを残し、

 灰となって消滅する。

 背中に乗っていたためティオナは地面に落ち、尻餅をついた。

 痛そうに尻部を撫でながら立ち上がり、ドロップアイテムである背中に

 生えていた笹の葉の様な体毛を拾い集めるとパレオとベルトの隙間に

 挟み込んでから歩き始め竹林から出た。

 視線の先にはキングコングがレイと一緒に待っており、ティオナは

 近寄っていって両手で巨大な魔石を掲げる。

 

 「はい!今日の収穫だよ」

 「すごいですネ、ティオナさん。とても大きな魔石でス」

 「うん。多分、地上で売ったらすごい値段になるかもね」

 

 そう答えながらティオナはキングコングに魔石を差し出すと、

 キングコングは手を伸ばしたまま、もう片方の手を手の甲の上で

 垂直に上げる。

 レイ曰わくありがとう、という意味らしい。

 魔石を受け取り、キングコングは口内へ放り込んで咀嚼し飲み込んだ。

 100Mを越える体になっても尚、魔石を摂取し続けている事で

 更に強くなっていくようだ。

 

 「じゃあ、あたしはお腹空いたからご飯食べてくるね。

  レイも一緒に食べる?」

 「はイ。是非ご一緒させてくださイ」

 

 頷くレイに続いてキングコングも、胸に掌を当てながら下ろし

 わかった、と返事をする。

 返事をしたキングコングにティオナは頷き、レイを連れてどこかへ

 向かった。

   

 ――――――――――――――――――――――――――――――――

 そこは島を流れる巨大な河川の付近にある森で、そこに生えている

 樹木から生っている果実をティオナは収穫していた。

 果実は白くて丸く、何故か表面がベトベトと油の様に滑っている。

 ティオナは数十個程、採り終えると洞窟の中へ入っていく。

 以前からそこに入った事があるようで、焚き火の痕が残っており、

 その近くで枝を集め終えたレイが並べながら待っていた。

 

 「レイ見て見て!ほらー!」

 「わぁ!沢山採れたんですネ、すごいです!」

 「えへへ~。それほどでもないって~」

 

 レイに褒めてもらいティオナは上機嫌になりながら、細い枝や木片を

 交互に立てかけるように積んでいく。

 小さな山状にすると先程入手した、笹の葉の様な体毛を撒いて

 太い枝で囲うと火打ち石を打って火の粉を散らした。

 数回目で笹の葉の様な体毛に火の粉が引火し、一気に燃え上がった。

 囲っている太い枝が崩れ、その上にまた太い枝をくべていった。

 火が大きくなり始め、ティオナは白い果実を石刃で真っ二つに割ると

 果肉の断面は紅く瑞々しい艶やかな肉の様であった。

 この果実はミルーツと呼ばれる73階層のみでしか採れない貴重な

 ものなのだという。

 4等分に分厚く切ったミルーツに長い竹串を刺して、焚き火の近くに

 X字に立たせている木片の交差している間に引っ掛けて焼き始める。

 果実を焼くというのも些か変な行為かもしれないが、ミルーツは

 生で食べると何故か腹痛を起こしてしまうため、火で焼くと問題なく

 食べられるそうだ。

 ちなみに腹痛を起こしたのはリド、グロスだったとの事。

   

 ――――――――――――――――――――――――――――――――

 「ですガ、フィアも食べていたのに何故か平気だったんでス。

  種族の違いでしょうカ...?」

 「ん~...どうなんだろうね?

  もしかしたら、たまたま傷んでたのを食べちゃったからかもしれないよ?」

 「あァ、それも考えられますネ。

  リドとグロスはもう食べないと嫌いになってしまってますので、この機会に克服してあげてみましょうか」

 「うん。...何かレイはゼノスの皆のお母さんみたいだね」 

 「エ!?そ、それは違うかと...

  私達の生みの親はこのダンジョンであって」

 「例えだよ、例え。みたいって言ったじゃん。

  ...でも、皆の事を理解してるし優しく接してあげてるから、本当にお母さんだなってあたしは思ったよ」

 「そ、そうですカ...少し、照れちゃいますネ」

 

 レイは頬を赤らめて、両手で隠す様に押さえる。

 そんなレイの反応に可愛らしさを感じ、ティオナは微笑んでいると

 ミルーツの表面から油に似た汁が溢れ落ち始めてきたのに気付いた。

 

 ジュウウウゥゥ...

 

 「...んくっ」

 

 歴とした果実でありながら、焼き上がっていく音と見た目と香りは

 本物の肉の様でティオナは思わず涎が口内に溢れてきて、溜まらず

 飲み込んだ。

 しかし、まだ裏面を焼かなければならないので我慢するしかない。

 火傷しないよう気をつけてひっくり返し、早く焼けないかと

 待ち焦がれ始める。

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