【第一部完】ダンジョンで捕食者たちと獲物を求めるのは間違っているだろうか   作:れいが

116 / 156
>∟ ⊦''>∟ ⊦,、、,< flyenwdshypu

 その頃、地上元い豊饒の女主人ではリューがシル達と掃除に勤しんで

 いた。

 

 「...あれ?」

 「ニャ?ルノア、どうかしたのかニャ?」

 「そういえば今日でリューがこの店で働き始めて、丁度3年経ったんだって思い出して」

 「もうそんなに経ってたなんて気付かなかったニャ!」

 「べ、別に気にする事ではないと思うのですが...」

 

 リューはルノアの発言を聞いてから、気まずそうな雰囲気を

 漂わせていた。

 しかし、それ余所に可笑しそうに笑っていたシルが話し始める。 

 

 「3年前の今日、ミア母さんを怒らせちゃったのが原因で働き始めたんだよね」

 「い、言わなくていいですよ、シル...」

 「そうそう。言われなくても覚えているから大丈夫ニャ」

 「なっ、ア、アーニャ...!」

 「リューの投げた奴が窓を突き破ってカウンターから椅子とか何まで壊して、それで逆鱗に触れたニャ」

 「ク、クロエ...」

 「どこに投げたらいいのか、ちょっとは考えるべきだったわね」

 「ふぐぅ...!ル、ルノア、貴女まで...!」

 

 リューはモップに縋りながらその場に崩れた。

 投げた人物は大犯罪を犯した極悪人でも賞金首でもない、単なる

 盗人であり、投げ飛ばさずともその場に押さえ付けていれば抵抗も

 させず捕まえる事が出来、こうして強制的に働かされる事もなかった

 はずであり、本人としては余程の後悔があるのだろう。

 尚、その際の弁償代が5000万ヴァリスだという事は流石に誰も

 口にしなかった。

 

 「まぁでも5000万なんてミャーの1億と比べたら安いもんニャ」

 「そうニャ。だからリューは一攫千金すればチャンスがあるニャ!」

 「そんな簡単に言わないでください...

  それと、クロエ?貴女はキチンと反省しているのですよね?

  もしもまだ私達を狙っているのでしたら...

  ...その時は容赦しませんよ」

 「...しているし、狙ってもないわよ。

  あの頃は廃業覚悟で必死になってたんだから、仕方ないでしょう」

 「ちょっ、クロエいきなり真面目になるのは怖いニャ!?」

 

 事の始まりは5年前の暗黒期が終結した頃、ブルーノ商会からクロエは

 暗殺の依頼を受けた。

 アストレア・ファミリアの眷族及び主神を全員殺せという依頼だ。

 クロエ1人では当然無謀だと思われる依頼であったが、クロエが

 供述した通り、暗殺稼業から足を洗うために依頼を受けた。

 星屑の庭に侵入し、最初にアストレアを狙った。

 主神を殺せば眷族はステイタスが消滅し、常人に戻してしまえば

 楽に始末出来ると考えていたからだ。

 自室に忍び込んで就寝しているアストレアに近付き、様々な毒が

 塗られたナイフであるバイオレッタで突き刺そうとする。

 しかし、その直前アストレアが目を覚まし、クロエと目が合った。

 予想外な事に焦るクロエは早く刺し殺そうとするも、今までに見た事も

 ない、その澄み切った空色の瞳に惹かれて心臓毎体が動かなくなった

 かの様な感覚に陥る。

 それにより体の力が抜け、思わず手にしていたバイオレッタを落して

 しまった。

 完璧に企てていた計画が崩れ去り、自暴自棄になりかけているクロエは

 自分を見つめるアストレアから逃げようと部屋の壁際まで退いた。

 そんなクロエに起き上がったアストレアはゆっくりとクロエとの距離を

 開けつつ、微笑み掛け対話を始めた。

 しばらく黙ったままのクロエだったが観念して、目的や自身の素性を

 全て吐き出した。

 それから素早くバイオレッタを掴み取り、自分の喉元に当て自害しよう

 とするも、その手にアストレアの柔らかな手が添えられて阻止される。

 クロエはその際、アストレアの手を振り払おうとしたが全く動け

 なかったそうだ。

 自分の命を大切にしなさい、と諭されアストレアの温かな抱擁で

 クロエは静かに泣いた。

 とにかく泣き続け、アストレアから離れまいと強く強く抱きしめた。

 その後、アリーゼ以外の眷族からは死刑宣告を受けたのはもちろんの事

 数々の命を奪った償いやアストレアの服を汚したりカウンセリングと

 いう名目でクロエに1億ヴァリスという金額が課せられたのだ。

 その際、アストレアとは真面目に働いて利潤を得るという条件を 

 付けた。

 なので、クロエの大好きな賭博で稼ぐという手は使えなくなったため

 アリーゼの紹介を経て豊饒の女主人で働き始めたのだ。

 尚、依頼主のブルーノ商会は摘発され、クロエが失敗した場合に

 雇われていた悪徳冒険者も御用となっている。

 

 「アストレア様はミャーの恩人ニャ。だから...

  裏切ったりなんてしないのニャ」

 「...それを聞けてよかったです。

  ですが...私も勢いに任せていたとはいえ、やはり1億ヴァリスというのは...」

 「いいんだニャ。ニョルズ様にも言われたけど、ミャーのケジメとして1億を払いきってみせるニャ」

 「...では、もう野暮な事は言いません。

  お互い、奮励しましょう。クロエ」

 「もちろんニャ!」

 

 シルとアーニャは2人の懇親に心が温まったように思えていた。

 ルノアも笑みを浮かべている中、ふと背後に誰かが立つ気配を感じて

 振り返った。

 

 「ルノア。ちょっといい?」

 「...ええ。丁度拭き終わったとこだから」

 「ありがとう。そこで待ってるから」

 

 そう言い残して立ち去り、ルノアはモップをバケツに入れて 

 立て掛ける。

 それ気付いたアーニャはルノアに問いかける。

 

 「ニャ?ルノアどこ行くニャ?」

 「ちょっと知り合いと話しにね。すぐ戻るから、気にしないで」

 「ん~?...わかったニャ」

 

 最初は疑心を抱くも、ルノアが既に行ってしまったのでアーニャは

 見送りながらそう答えた。

 普段、真面目に働く彼女に対して疑う余地もなかったからなのも

 あるだろう。

 

 ――――――――――――――――――――――――――――――――

 「それで、何かあったの?」

 「変神にそろそろバレそうかもって伝えに来たの。

  多分、もうじき始まるデナトゥスでアイツが知ったら...」

 

 路地裏に入り、そう聞かされたルノアは外壁に凭れ掛かって

 腕を組む。

 しばらくして何か決心したのか、こう答えた。

 

 「そっか...まぁ、それを承知の上で出席するらしいし...

  何か指示があったら動くだけよ」

 「そうね...じゃあ、そういう事だから。お仕事頑張りなよ。  

  ...それから、プリンス様が会いたがってたよ」

 「えぇ...この間会った気がするんだけど...

  はぁー...まぁ、やぶさかではないしまた会いに行ってくるから」 

 「うん。そうしときなよ」

 

 ルノアが眉に拳を当ててから路地裏を出ると、豊饒の女主人へ戻って

 行った。

 

 「...随分と丸くなったもんだね。

  ま...ウチとしてはよかったって思っておこっか」

 

 ――――――――――――――――――――――――――――――――

 「大変申し訳ございませんでした」

 「...二度と盗みなんてするなよ」

 

 収容所の出入口前でルアンの隣に立っているリリルカは頭を深々と

 下げてゲドに謝罪していた。

 ゲドはそう言い残して踵を返し去って行った。

 2日前、ルアンに自身が犯した過ちを話して相談した結果、何と

 ルアンが保釈金を全額支払って出所させるという事になったのだ。

 最初こそリリルカも大反対していたが、ルアンはリリルカが正直に

 話してくれたからには、それに応えるべきだと言ってその日の予定を 

 変更し、収容所で仮釈放の手続きを行なった。

 保釈金は驚きの一括払いで、しかも小切手というリリルカが唖然とする

 支払い方法でゲドの釈放は受理が決定された。

 しかし、リリルカへの暴行は事実なため1日置いて、釈放される事と 

 なってその際、リリルカはゲドと面会をした。

 面会相手がリリルカだと気付くや否や、ゲドは憤慨して去ろうとするも

 ルアンが呼び止めた。

 ゲドは苛つきながらも面会に応じてくれたので、ルアンはリリルカが

 何故剣を盗んだのかを大いにソーマ・ファミリアのせいだと言った

 口ぶりで責任転嫁するように話した。

 ゲドは話を聞き続け、次第に落ち着きを取り戻すと顔を俯かせて

 最後まで聞いてくれた。

 そして、現在に至りリリルカはゲドに謝罪をした。

 

 「よかったな。これで1つ、償えたって訳だ」

 「...ルアン様、本当にありがとうございました。

  この恩は一生忘れません」

 「いいって事だよ。オイラ、これでも物持ちだからさ」

 

 悪怯える様な口調ではなく、自信ありげな正々堂々とした雰囲気で

 応えるルアンにリリルカは少し安堵した。

 ルアンの言う通り、1つ償いをした事も含めてだ。 

 

 「...あの、ルアン様。

  少しでもいいので、何かお詫びをさせてください。

  そうでないとリリは気が晴れないですから」

 「ん?んー...じゃあ、そうだなー。

  あ。今からこの間のデートの続きを最初っからやらないか?」

 「え?あ、は、はい。もちろん... 

  って、そんな事でいいんですか?」

 

 そう言ったリリルカにルアンはスッと頬に手を添え、顔をズイッと

 近付ける。

 リリルカは突然のルアンの行動に慌てふためいていた。

 

 「ル、ルアン様...?」

 「リリルカにとってはそんな事かもしれないけどさ。

  オイラにとっては大事な思い出にしたいんだ。

  その辺の事は...わかってくれると嬉しいな」

 「...は、はぃ」

 「んじゃ、行くとするか」

 

 ルアンはリリルカの手を取り、前へ進もうとする。

 屈託の無い笑顔に一度俯いてから顔を上げると、リリルカも

 笑顔を浮かべる。

 

 「はい!」




悪い事をしたらキチンと反省する事は大事です。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。