【第一部完】ダンジョンで捕食者たちと獲物を求めるのは間違っているだろうか   作:れいが

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 早朝、黄昏の館にある団長室にてロキを含めた幹部会議が開かれていた。

 会議の内容は今後の予定を中心としているので深刻な問題について

 話し合うつもりはないのか、張り詰めた空気は漂っていない。

 だが、幹部として話し合う以上、ロキを除いて3人は真剣な面持ちと

 なっていた。

 

 「んじゃ、改めて今後の予定の整理をしよか。

  6日後にアイズたんがレベル6にランクアップしたのを公表して...

  その2日後、今日から1週間後に皆は遠征出発。

  遠征してから3日後にデナトゥスが開催されるっちゅう感じやな。

  ...この1週間の間にティオナが戻って来るかどうかやけどなぁ」

 

 予定表を見つめながら、机の上に座っているロキは胡座を掻くと

 自身の膝の上に肘をつく。

 ティオナがダンジョンへ残ってから1週間と2日が経つも、未だに

 戻って来る気配は一向に感じられなかったからだ。

 しかし、2日前にロキがアリーゼ達からある情報を得た事でティオナの 

 安否は確認されている。

 

 「2日前にリヴィラの街で見かけたと報告してくれたアストレア・ファミリアの情報が正しいのであれば、あの日捜索に行っていたティオネとアーディとはすれ違いになっていたと考えられるが...

  ティオナは一体どこで何をしているんだ...?」

 「深層まで行かず約束を守っておるのだったら、下層で頑張っているとそれだけじゃが...」

 「ああ、どうも腑に落ちないんだ...」

 

 ダンジョンに潜った冒険者が道中、他者と遭遇する事は至って

 不思議ではない。

 しかし、行方のわからないティオナはその逆で誰も見ておらず、

 又どこに居るのかすら把握出来ていないという点が不可解であった。

 

 「少なくとも下層までなら誰かしら見かけるはずなのに目撃証言も無ければ、ティオネ達が探した際にも見つからなかった。

  ...それなら、やっぱり深層へ行っているとしか考えられないんだけどね」

 「だが...深層へ降りたのなら、どうやって私達とすれ違わずに降りたか、だ」

 

 ウダイオスを倒し、リヴィラの街で一泊した後に地上へ帰還した

 アイズとリヴェリア。

 その際にティオナを見た覚えは一切無かった。

 全く知らないルートから降りるという事は、労力の割に合わないので

 まずあり得ないためやはり帰還している際に出会すはずであると

 リヴェリアは推測した。

 すると、ガレスがロキに問いかける。

 

 「そもそもじゃ、ロキ。

  本当にアリーゼ達は嘘をついておらんかったのか?

  ワシらを心配させないための口実を言っておっただけなんじゃ...」

 「いんや、この耳で聞いてちゃーんとホンマやったって確信しとるで。

  それにや。見かけたって伝えてくれただけで、どこに潜ってるかまでは言うてへんかったから疑う余地もあらへんと思うわ」

 「それもそうじゃのう...

  まぁ、それにあの馬鹿娘が偽善をするはずもないか」

 

 頑固親父が年頃の娘を気遣う様な口ぶりでガレスはアリーゼの

 疑いをすぐに消した。

 脳裏に思い浮かぶ無邪気な笑みが過ぎり、鬱陶しそうに手で

 空を払った。

 

 「しかし、これ以上の独り善がりは許せないと私は思うぞ」

 「とはいえ、深層へはそう易々と潜れない上に見つかる確証もない。

  無暗に探しには行けないよ。

  アリーゼ達の情報を信じて、僕らは待ってみよう」

 「...まったく。甘くなったな、フィン...」

 「それをお主が言う台詞かのう...」

 

 ジロリとガレスを睨むリヴェリアにフィンは苦笑いを浮かべる。

 

 ピピーッ ピピーッ

 

 「はうあっ!?」

 

 奇妙な音が鳴り響き、ロキは慌てて胡座から正座に座り直す。

 机の上なので品が無いのは変わりないが、ロキなりに正しているの

 だろう。

 ズボンのポケットから通信機を取り出し、ボタンを震える指で

 押した。

 

 「は、はいぃ!?こちらロキでございます!?」

 『おはよう、ロキ。今、話せるかしら?』

 「あ、え、えと、フィン達が居るんで話の内容にもよるんですが...」

 『あぁ、大した事じゃないから大丈夫よ』

 「さ、左様でっか。ほ、ほんなら、どうぞ話してもろうても...」

 『10日後のデナトゥスに私も出席する事にしたの』

 「...ほ...?」

 

 ネフテュスの発言を聞いた途端、ロキは真っ白になった。

 髪だけ、という訳ではなく全身が見てわかる通り白くなっている。

 フィン達は顔を見合わせて、何が起きているのか理解出来ず冷や汗を

 垂らした。

 

 「そ、そりゃあ、また、何で...?」

 『色々お話しする事があるからよ。特に...イヴィルスについてね』

 「...何か、情報掴んでるんですか?」

 『それは当日、詳しく説明するわ。

  あ、他の皆には既に伝えておいてあるから情報伝達の手伝いは気にしなくていいわよ』

 「は、はぁ...わかりました...」

 『それじゃあ。またね』

 

 そう言い終えると通信が途絶える。

 数分程、ロキは正座をしたまま脱力した状態でいたが、正座を崩して

 机の上から降りると、壁際まで歩きベタッとへばり付いた。

 

 「はぁぁあ~~~...」

 「...その様子だと、何か重大な問題が発生したようだね」

 「情報を掴んでいると言っていたが?」

 「...ネフテュス先輩やっぱ怖いわぁ。

  どこよりも先にイヴィルスを潰しに掛かる気やで、マジで」

 

 そう答えながら、ロキは体の向きを変えると壁に背を預けた。

 フィン達は予想だにしていなかった返答に、若干困惑していた。

 以前よりネフテュス・ファミリアはイヴィルスに対して、異常に

 敵愾心を向けているというのは知っていた。

 内臓を抜き取り、生皮を剥いで吊すという行為もイヴィルスの

 使者のみにしか行なっていないという事実も。

 尚、ディックス・ファミリアの件については当然把握していない。

 

 「それはまぁ、それでええんやけど...

  っかぁ~~!始まってン千回目にして真面目に進行役やらなあかんねやなぁ~」

 「おい、待て。真面目にというのはどういう意味だ?

  まさかいつも神々と悪ふざけをしているんじゃ」

 「い、いやいや、そんな事はあらへんて!あははは...」

 

 と言いつつも、脳裏に浮かぶのはこれまで行なってきたデナトゥスでの

 神々との呆れる程の戯れ。

 リヴェリアがその場に居れば、神であろうと性根を物理的に叩き直して

 いるであろう。

 

 「ま、まぁ、そういう事で!これにて会議は終いや!

  ウチちょっと進行の予定を確認するからほな!」

 

 会議室から去って行くロキにリヴェリアはため息をつき、頭を抱える。

 フィンとガレスも半ば呆れた混じりといった様子となるのだった。

 

 ――――――――――――――――――――――――――――――――

 「ふふっ...あの様子だと、皆と同じ様に真面目に取り組むようね。

  どうなるのか、楽しみだわ」

 

 カーテンの隙間から零れる光により、薄明かりの部屋。

 ベーレト・バビリの最高級な個室が並ぶ最上階を貸し切り、昨日から

 ネフテュスはアストレアと一夜を共にしていたのだ。

 以前、アリーゼ達に覗き見をされてしまった事を反省し、イシュタルに

 頼んだ通り宿泊して時間の許す限りお互いを求めたのだろう。

 

 「んぅ...ネフテュスさまぁ...」

 「はぁい。ここに居るわよ...」

 

 隣で寝ていたアストレアが寝惚けて擦り寄ってくるのに気付き、

 ネフテュスは通信機をベッドの傍にあるサイドテーブルに置くと

 覆い被さる様に抱きしめる。

 お互いに何も着ていないので、肌と肌が重なり合う温もりが

 心地良かった。

 自身の胸に埋まり眠るアストレアの寝顔に愛おしさを覚えた

 ネフテュスは足までも絡め、再び眠りにつくのだった。

 尚、護衛に当たっているケルティックは当然ながら、番となる

 アイシャと夜通し目合っていたそうである。

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