【第一部完】ダンジョンで捕食者たちと獲物を求めるのは間違っているだろうか   作:れいが

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 「うぅぅ...ちょっとだけって言ったのに...」

 「ごめん。つい歯止めが効かなくなって」

 「ダフネちゃん、いつもそう言ってるよね...」

 「でも毎度止めないカサンドラもどうかと思うけど?」

 

 止めようにも止められないから、カサンドラは内心でダフネに

 反論する。

 口を開こうにも口付けを止めず、快楽を与えてくる手も止めないので

 事実、止めようとするのは困難であるのだ。

 そんなやり取りをしている2人だったが、不意にダフネが立ち止った。

 何か異音が聞こえてきたので確認しようとする。

 

 「ダ、ダフネちゃ」

 「しっ...」 

 

 問いかけようとしてくるカサンドラの唇を指で押さえ、耳を澄ます。

 前方の右側面の壁から僅かに罅割れる音が聞こえ、目を細めたりはせず 

 瞳孔を開いて僅かな光をも取り込み、罅割れていく箇所を見つける。

 カサンドラに弓を用意するように伝え、ダフネは腰に掛けている鞘から

 フェンサー・ローリイットを引き抜く。

 カサンドラは腰に装備している弓を取り外し手に取ると、矢筒から矢を

 引き抜いて弦に矢筈を番えた。

 

 バキバキバキバキィッ! 

 ゴゴォンッ!

 

 グ ル ォ ォ オ オ オ オ オッ!

 

 壁から産み落とされたのはバーバリアンだった。

 そう、ここは深層最初の37階層ホワイトパレスの第2円壁と

 第3円壁に隔てられている、戦士の間である。

 この階層で生み出されるモンスターの多くは大型級の戦士系で、

 バーバリアンが主に出現するのだ。

 カサンドラは緊張で硬直しそうになるもダフネに狙いを定めるよう

 言われ、深呼吸をしてから弦を引き絞りバーバリアンに鏃を向ける。

 バーバリアンはカサンドラが攻撃してこようとしているのに勘付き、

 岩の棍棒を手にして咆哮を上げながら向かってきた。

 

 「(呼吸の終わりと鼓動の合間に射る事...)」

 

 グ ル オ ォ ォ オ オ オ オ オ オッ!

 

 「ッ!」

 

 視界が鮮明になり、姿をハッキリと捉えた瞬間、カサンドラは鏃を

 バーバリアンの頭部を狙って矢を射った。

 空を斬り裂きながら矢はバーバリアン目掛けて一直線に飛んで行き、

 見事急所となる眉間のど真ん中に刺さって、バーバリアンはその場に

 倒れる。

 ダフネは倒れたバーバリアンの体温が低下していくのを確認し、

 カサンドラを撫でながら褒め称える。

 

 「...お見事。また上手くなったね」

 「あ、ありがとう...ダフネちゃんのおかげだよ」

 「そう?...じゃあ、後でお礼してもらおうかな」

 「...うぅ...(また墓穴掘っちゃった...)」

 

 自分の言動に後悔するカサンドラを余所に、ダフネはバーバリアンの

 死骸に近付きフェンサー・ローリイットで背中を斬り付ける。

 深い裂傷部が出来て魔石を見つけると、手が血で赤黒く染まるのも

 気にせず抜き取った。 

 魔石を失った事でバーバリアンの死骸は灰となり消滅する。

 未だに落ち込むカサンドラに呼び掛け、魔石を投げ渡していると

 再び背後の壁から罅割れる音が聞こえた矢先、目の前の壁を突き破って

 バーバリアンが出現してきた。

 カサンドラはその光景を見て悲鳴を上げようになるが、手を向けてくる

 ダフネを見て慌てて口を手で押さえる。

 

 グ ル オ ォ ォ オ オ オ オ オ オッ!

 

 「...Blyng yto on」

 

 誰にも聞こえない声量でダフネは謎の言語を呟き、まず最初に目の前に

 出現したバーバリアンの岩の棍棒による攻撃を片手で受け止めると、

 隙だらけの胸部に足蹴りを叩き込む。 

 

 ド ガ ァ ァ ア ア ア ア ア アッ!!

 

 その蹴りの威力は凄まじく、バーバリアンの巨体を軽々と蹴飛ばして

 生まれ出てきた壁に衝突させる程だった。

 胸部に足蹴りを受けたダメージと壁との衝突で体内にある魔石は砕け、

 バーバリアンは絶命し、消滅した。

 背後のバーバリアンは同種が瞬殺された事に驚いているが、すぐに

 感情が怒りへと変わりダフネに襲い掛かってくる。

 

 「ダフネちゃん!」

 

 バシュンッ!

 

 今度こそ危険だと呼び掛けるカサンドラは、既に番えていた矢を

 射ってバーバリアンの左肩に命中させた。 

 それによりバーバリアンは足を止め、意識をカサンドラに向ける。

 その瞬間にダフネがアクロバティックに前方宙返りをして、頭上へ

 舞うと脳天にフェンサー・ローリイットを突き刺す。

 バーバリアンの後方へ落下しながら、その巨体を引っ張って仰向けに

 倒しながら引き抜いて刀身にへばり付いた血を振るい落とした。

 カサンドラは前屈みになりながらため息をついて、ダフネの無事に

 安堵していた。

 

 「ありがとう、カサンドラ」

 「う、うん...で、でも、心臓が縮みそうになるから気をつけてね?」 

 「大丈夫だって。私は...獲物を狩るだけだから」

 

 そう答えるダフネは不敵な笑みを浮かべ、どこか楽しげだった。

 カサンドラはその様子にゾクゾクと悪寒が走り、固唾を飲む。

 

 ――――――――――――――――――――――――――――――――

 更に2人はある場所へ足を踏み入れていた。

 階層主以上に危険な大型空間であるコロシアムに。

 誰もが冒険者として学ぶ事だが、そこはモンスターが一定の数まで

 無限に産み落とされる事からその危険度をギルドが認定している。

 最初に見つけた冒険者が命辛々、ギルドにコロシアムの存在を報告した

 以降に誰も足を踏み入れないその場所へ無謀にも程があると言っても

 過言では無い行為をダフネとカサンドラは行なっているのだ

 

 「や、やっぱりこの場所に来るのは怖いね...」

 「そう?ウチにとっては興奮する以外ないけど」

 「...少しは気持ちを察してよ~!」

 

 バ キ ャ ァ ア アッ!!

 

 地団駄を踏みながらカサンドラが泣きべそを掻いている最中、ダフネも

 唐突に足元を踏み締めた。

 ビクリと体を震わせるカサンドラだったが、ダフネの足元を見て

 更に震え上がる。

 地面から這い出る様に生み出されようとしていた、スパルトイの

 死骸があったからであり、ダフネが頭部を粉々に粉砕した事で

 動かなくなってはいるが、死角から現われていた事にも戦慄していた

 からだ。

 

 バキバキバキバキィッ...! バキバキィッ!

 

 オオォォォォオオ...!

 

 気がつけば、空間を覆い尽くさんばかりにスパルトイが出現しており、

 剣、槍、棍棒、鎌など骨で出来た武器を手にしている。

 カサンドラは絶体絶命という状況に陥っていると判断するのには

 迷いがなかった。そもそも迷う暇もないのだが。

 しかし、出入口がある場所はスパルトイの大群で見えなくなっており、

 逃れられない事も察していた。

 

 「スパルトイか...はぁー...」

 「残念そうにしないで...!?」

 「だって、さっきのバーバリアンとかルー・ガルーがよかったからさ。

  こいつらだと...」

 

 徐ろに足元の石を拾うと、体を捻らせながら振りかぶって勢いよく

 投球する。

 石はカーブしながらスパルトイの数体に直撃し、砕け散った。

 それを見てカサンドラは痙攣する様に口をひくつかせて絶句した。

 

 「ご覧の通り、脆くてウチの相手にならないし...

  カサンドラ、還ろっか」

 「簡単に言ってるけど、あそこまでどうや!?」

 

 ド ゴ オ ォ オ オ オ オ オ オ ンッ!!

 

 カサンドラが言い終える前に、出入口の方から爆音と衝撃波が

 押し寄せてきた。

 思わずダフネに抱きついて、何が起きたのか彼女の肩越しにその光景を

 目にする。

 道が開かれる様にスパルトイが直線状に消滅し、その奥に人影が

 見えた。

 左右に生き残ったスパルトイはすぐに襲い掛かろうとはせず警戒して、

 その人影が悠々と通り過ぎるのを見るしかなかった。

 カサンドラはその人影の正体が、目の前まで来てようやくわかった。

 

 『あれ?ダフネもカサンドラと来てたんだ』

 「あ...ル、ルノアさん...?」

 『他にこんな装備してる奴なんて居ないでしょ。

  上での狩りはもうしてないの?』

 「まぁね。上のだと味気ないから」

 

 そう答えるダフネにルノアはクスッと苦笑いに似た微笑みを浮かべる。

 以前から数回会った事のあるカサンドラだが、ルノアの格好を改めて

 マジマジと観察した。

 口元を隠せる程のマフラーを首に巻き、裾が赤い白色のシャツは

 襟元から胸元の上半分のみ閉じたが状態で胸の下半分からへそまでが

 露出してしまっている。

 履いているズボンもショートパンツかと思えば、太腿部分を切り抜いて

 ガーターベルト風にしてある奇抜なデザインにしていた。

 更に目に付くのは装備だ。

 小さな穴が目の位置に4つずつある模様が描かれたヘルメットを被り、

 表面の3ヶ所が赤く点滅する正方形のガントレットを両腕に装着し、

 左上半身を覆い隠すような背中に大型のユニットを肩に乗せている

 鎧を身に纏っていて、膝当てを兼用しているブーツを履いていた。

 

 『言えてる。...で?この大群を狩るとこだったの?』

 「ううん。相手にならないし、帰ろうかなって思ってたから...

  任せてもいい?」

 『いいよ。とにかく狩りたかったから、遠慮なく...?』

 

 ルノアは足元からの揺れを感じ取り、訝っているとその揺れが一気に

 激しくなったかと思えば突如として巨大な影が姿を現わした。

 背中に猛毒を含む無数の針を生やした竜種のペルーダであった。

 カサンドラはその場に尻餅をつきそうになるが、ダフネが抱きしめて

 支えてくれた。  

 ペルーダに周囲に居たスパルトイを尻尾で薙ぎ払い、4本の足で

 踏み潰し、更には背中の針を飛ばして頭上からの攻撃で全滅させた。

 圧倒的な強さを見せつけるペルーダに、ダフネとルノアは顔を

 見合わせると頷き合って何かを決めたようだ。

 

 「カサンドラ。こっち」

 「わ、わわ...!?」 

 

 ダフネはカサンドラを抱き上げると、その場からひとっ飛びで

 スパルトイの大群を飛び越えていった。




ルノアさんが着けてるヘルメットはハンティンググラウンズのライバル・マスクで、装備もプレデター1作目のウォーリアー使用な感じです。
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