【第一部完】ダンジョンで捕食者たちと獲物を求めるのは間違っているだろうか   作:れいが

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 「しかし、まさかあのメルティ・ザーラ本人だなんて...

  というかよくギルドに偽名だってバレなかったね」

 「まぁ、当時はそんな事、気にもしていなかったもの。

  今でこそ平穏になったから、通用はしないわ」

 

 レックスとアイシャ、そしてスカー達は深層の45階層へ足を

 運んでいた。

 茹だるような蒸し暑い火山が屹立しているその階層へ、7人のみの

 パーティで到達するのは、はっきり言ってしまえば無謀にも程が

 あるのだが、アイシャは全く気にしていなかった。

 自身が所属するファミリアですら、漸く辿り着けた階層であるのに。

 しかし、気にしていない理由が何かというと目の前に居るレックスは

 他ならないレベル9の冒険者であるからだ。

 オシリス・ファミリアが隠し持っていたとされる第一級冒険者クラスの

 1人でオッタルよりも先にレベル7になっていたとレックスは話し、

 その事は数時間前、イシュタルと対話した際に嘘ではないと証明されて

 いる。

 尚、以下の話でレベル9にランクアップしているという理由は察しが

 出来るはずである。 

 

 「で?ネフテュス様が神オシリスと交代すると同時にアンタを含めて全員がコンバージョンしたんだね?」

 「全員、ではないわ。納得のいかない第二級の団員は...

  アパテー・ファミリアにコンバージョンして、裏切り者として見せしめに殺されてしまったの」

 「...ケルティック達が殺したのかい?」

 「ええ...私はもちろん、反対していたわ。仲は良かったんだもの。

  それで殺さない条件を得るためにスカーと決闘をしたけど...

  全く歯が立たないままやられたわ。何度も立ち向かったけど、最後の一撃は死んだかと思ったわ」

 「あっははははは!その気持ち、痛いくらいわかるよ。

  もしかして、それがスカーとの馴れ初めかい?」

 「ご明察。最初は何を言ってるのか理解不能だったわね...

  まぁ、一緒に狩りをするにつれて好きになったのは否定しないけど」

 

 と、楽しげに話している中、レックスが笑みを消して気配を察知する。

 アイシャも遅れて岩が削れるような音に気付き、モンスターが近付いて

 来ているとわかった。

 

 ゴ オ オ ォ ォ オ オ オ...

 

 フレイム・ロック。

 全身が岩石で構成され、頭部中央の眼が燃えているのが特徴的である。

 普段は周囲のそこかしこに転がっている歪な岩に擬態しており、

 通り掛かった冒険者に襲い掛かるという危険なモンスターだ。

 数十体が周囲を囲っており、逃げ場を無くしているのに気付くと、

 すぐさまレックスとアイシャは得物を構えて迎え撃とうとする。

 

 「...折角だし、お手並み拝見させてもらってもいいかい?」

 「ん?...ええ。いいわよ、見てなさいっ」

 

 そう答えたと同時にレックスは構えていた槍を投擲し、1体の眼に

 突き刺した。

 弱点となる眼を貫かれたその個体は関節部から腕や足が剥がれて、

 ドロップアイテムの火炎石と魔石を地面に落しながら崩れた。

 同種の死に気が逸れた個体へレックスは全速力で接近し、左腕に

 装備している楕円形の黒い盾を突き出して突進する。

 

 ド ゴ ォ ォ オ オ オ オ オ ンッ!!

 

 凄まじい勢いで激突されたフレイム・ロックは全身が砕け散る。

 足元に転がる破片を踏み潰しながらレックスは着地し、先程倒した

 個体の死骸に近付いて槍を回収する。

 フレイム・ロック達はアイシャから視線を外し、レックスを敵対視して

 向かって行くも、レベル9の圧倒的な力には為す術もなく、槍での

 刺突や盾による体当たりと様々な戦闘手段により、ものの1分で

 全滅したのだった。

 

 「...これはまた、とんでもない奴が居たもんだね...」

 

 そう呟くアイシャはレックスのあり得ない強さに呆れつつも、

 紛う事なき無敵の勇姿を称賛した。

 フレイム・ロックを倒し終え、戻ってくるレックスにアイシャは

 数回の拍手をして頷く。

 

 「お見事。スカーが惚れたのも頷けるわ...」

 「ありがとう。...スカーも見直してくれたかしら?」

 

 カカカカカカ...

 

 「そう。よかった...」

 「ところで、気になってたんだけど...その槍と盾は特注品かい?」

 「これはとてつもなく危険な生物の尻尾と頭を作り替えた武器なの。

  その生物を倒す事が彼らにとって成人儀礼になるのよ」

 「ふーん。ケルティック達も苦戦はしたのかい?」

 

 その問いかけに誰も答えようとしない様子から察するに、アイシャは

 ノーコメントだと察して聞かなかった事にした。

 その後、フレイム・ロックと属性の違うウィンド・ロックや

 ビッグシャドウ・ロック、オブシディアン・ソルジャーなどを

 次々と狩り続けて数時間。

 夕暮れ時となった頃、地上へ戻る事にした。

 

 「アイシャ。私はちょっと担当者と話があるから、先に行ってて?」

 「ああ、わかったよ」

 

 ――――――――――――――――――――――――――――――――

 今朝から現時刻の夕方に掛けて、冒険者達は掲示板に掲載された記事に

 釘付けとなっていた。

 内容はアイズがレベル6にランクアップしたという発表である。

 元々【剣姫】として名の知れ渡っていたアイズがランクアップした

 という事に冒険者達は湧き上がり、成し遂げた偉業に戦慄もしていた。

 モンスターレックスのウダイオスを1人で倒したという、攻略するには

 大規模のパーティでなければ不可能と言われていた。

 それを覆したアイズに誰もが称賛し、自身の強さに落胆した。

 そんな中、エイナは仕事に没頭していた。

 アイズはロキ・ファミリアの団員で、担当者はミィシャなため

 自分の仕事を熟そうとしているようであった。

 

 「ねぇ、ちょっといい?」

 「あ、はい。何かご用で...?」

 

 書類に目を向けていたエイナは前を向いて、訪ねてきた来訪者に

 対応しようとする。

 しかし、目の前には誰も居ない。

 目の錯覚か、或いは幻聴でも聞こえたのかと少し不安になるが、 

 ふと、以前から同じ様な事をしてくる彼が思い浮かんできた。

 しかし、聞こえてきたのは女性の声だったため、やはり違うのかと

 思っていたエイナだが、カウンターに置かれた紙を見つける。

 先程まで何もなかったはずが、それを見てエイナは確信した。

 彼と同じ所属の団員であると。

 その紙を手に取り、書かれている内容を読む。

 

 [2人だけで話せる部屋はあるかしら?]

 

 そう書かれていたので、エイナは頷くとカウンターの上に休止中と

 書かれた札を置き、ついて来るよう伝えて対談室に案内する。

 姿は見えなくても足音が背後から聞こえてくるため、ついて来ていると

 わかった。

 対談室に入り、ドアを閉めると椅子に座るエイナ。

 対面する位置に置かれた椅子が勝手に動いているように引かれ、

 そこに誰かが座った。

 

 ...ヴゥウン...

 

 「!?」

 

 突然、目の前に姿を現わしたレックスにエイナは驚いた。

 いつも対応している捕食者は眼だけを光らせ、筆記による会話だけで

 あったのにも関わらず、レックスは事も無し事もなげに姿を

 見せたからだ。

  

 「あ、ぇ、あっ...」

 「あぁ、ごめんなさいね?

  いつも話してくれているあの子はヘルメットを脱げないし、無口でないといけないから貴女がビックリするもの無理はないわよね」

 「...あ、あの、貴女は...?」

 「私はアレクサ・ウッズ。レックスって呼んでいいわよ。

  貴女の名前は?」

 「私はエイナ・チュールと申します。」

 

 レックスはエイナに名前を問いかけてきて、エイナはそれに答えた。

 初対面であるのに、まるで親しい友人の様に話しているレックスに

 エイナは不思議と安心感を覚えた。

 正体が不明な相手との言葉のない対応と違い、明確に顔を見合わせて

 話している事が理由だろう。

 

 「今までご苦労様だったわね。あの子との対応には困ってたでしょ?」

 「ま、まぁ、はい...

  担当者となって2年経ちますけど、やっぱり慣れなくて...」

 「そうでしょうね...

  ...それじゃあ、エイナ。貴女に教えてあげるわ、彼らについて...

  というより、あの子についてね」

 

 唐突に知る事となる事実にエイナは驚愕するのだった。

 

 ――――――――――――――――――――――――――――――――

 ディアンケヒト・ファミリアの治療院へアナキティとリーネが

 訪れていた。

 用意してもらっているポーションなどの治療薬や医療品をキチンと

 数が揃っているのか確かめに来たのだ。

 

 「ティオナさん...本当に大丈夫なんでしょうか...」

 「ん~...でも、目撃証言が頻繁にある以上、生きてるのは間違いないと思うわよ?

  昨日だってレフィーヤがフィルヴィスって同じエルフから見かけたって聞いたし」

 「そ、そうですよね...」

 

 安否を気遣うリーネにアナキティも心配こそはしているものの、

 遠征間近となっている今では迂闊に捜索へ向かう事は許されないと

 いうのはわかっていた。

 自身よりもレベルが上であり、何より姉のティオネが生きていると

 断言した以上、信じるしかないとアナキティは思いつつ出入口の扉を

 開けようとした。

 

 バァァアンッ!

 

 「お外走ってくぅるぅうううううううう!」

 「ニャア!?」

 「キャッ!?」

 

 その瞬間、扉が勢いよく開かれてディアンケヒトが飛び出していった。

 何が起きたのかわからず、納得いかんぞー!と悔しそうに何かを

 叫びながら走り去って行くディアンケヒトをアナキティとリーネは

 見送るしかなかった。

 すると、治療院の中から高らかな笑い声が聞こえてくる。

 アナキティとリーネはカウンターを叩きながら、笑い続ける人物を

 見た。

 

 「あははははははっ!くふっ、あはははははっ!」

 「これこれナァーザ。何をそんなに笑っているのだ...

  アミッドに失礼だろう」

 「はぁ...はぁ...はい。すみませんでした...

  ごめん、アミッド」

 「い、いえ...あ、で、では...

  こちらはありがたく買い取らせていただきます。

  また完成品を納品してくださいね」

 

 お辞儀をするアミッドにナァーザは頷いて、ミアハはもちろんだと、

 答えた。

 そうしてナァーザとミアハは出入口から出ようとした際にアナキティと

 リーネを見つけて声をかけた。

 

 「これはこれは。ロキの子供達ではないか」

 「は、はい。どうも、神ミアハ...」

 「こ、こんにちは...」

 「遠征で使う物を買いに来たなら、丁度良いタイミングだね。

  すごいのを作ったから使ってみて」

 「初回という事で安くしておいたので、買って損はないはずだ」

 「は、はぁ...わかりました」

 

 頷くリーネにでは、と軽く会釈をして出入口から出ようとするミアハを

 追いかけるナァーザ。

 だが、あ、っと何かを思い出したのか2人に振り返ってこう伝えた。

 

 「そういえば、ダンジョンでティオナ・ヒリュテを見かけたよ」

 「「え?」」




尚、最後にレックスがステイタス更新したのは5年前。つまりは...
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