【第一部完】ダンジョンで捕食者たちと獲物を求めるのは間違っているだろうか   作:れいが

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 黄昏の館にて、ラウルは遠征出発の事前準備に追われていた。

 他の団員達も荷物などを運んでは下ろしたりと、慌ただしく準備を

 しており緊張感が漂っている。

 

 「ラウルさーん。18階層のゴライアス討伐されたみたいです」

 「ラウルさーん。うちらに討伐してもらおうって放置してたみたいですけど、誰かが倒したみたいで」

 「ラウルさーん。発注していたサラマンダー・ウールとウンディーネ・ローブ、人数分が用意出来たって報告が...」

 「まっ、待つっス!ちょっと待ってほしいっす!」

 

 ラウルは中間管理職的な立ち位置として団員達の報告や意見などを

 覚える必要があるので、1人ずつでないと聞き分けるのは難しいとの

 事。

 尚、フィンは7人なら余裕だと言われており自分には到底出来ないと、

 諦めている。

 

 「えーと、それでアキ?ティオナさんを見かけたっていうのは...」

 「【医神の忠犬】のナァーザ・エリスイスからよ。 

  数日前に何をしているのかわからなかったけど見たらしいの。

  ねぇ、リーネ」

 「は、はい。

  何でも怪我はしていなかったらしいですけど、ポーションを渡してあげたそうで...」

 

 ラウルは名前からナァーザの人物像を思い出そうとする。

 名の知れている中堅ファミリアの団長であり、一級品の回復薬を

 作っている事で知られている。

 回復薬の効力はディアンケヒト・ファミリアで販売している物と同等に

 優れており、引けは取らないと言われてもいた。

 商業系ファミリアにしては珍しく腕利きのレベル4でダンジョンへ

 積極的に潜っているという噂はラウルの耳にも入ってる。

 なので、ティオナを見かけたというのも不思議ではないと思った。

 

 「じゃあ...遠征中にバッタリ会って、合流するって事になるかもしれないっスね。

  その時、傷だらけでヤバそうな状況になってないといいんスけど...」

 「大丈夫じゃろ。ティオナも馬鹿ではあるまいて」

 「ガレスさん」

 「それはそうっスけど...

  本当に大丈夫なんスかね...」

 「もしそうなっていた場合は遠征に同行させず、大人しくホームで待たせるだけじゃ」 

 

 重たそうな木箱を置きながらそう答えると、ガレスはギルドに本報告へ

 行く事を伝えた。

 遠征を行なう申請は前日にする事がいつも通りなのである。

 

 「お主ら遠征まで二日、今更特訓なんぞせずに十分に休んでおくんじゃぞ」

 「「「はは、ははは...」」」

 「全くどいつもこいつも...」

 「あ、そ、そういえばラウルさん。ナァーザさんの事で思い出したんですけど...

  こちらを購入する予定を確保しておきました」

 「ん?これは...ポーションっスか?何か特別な効果でも?」

 

 2本の試験管に入っているポーションは本来の青色をしたポーションと

 違う色をしていた。

 

 「デュアル・ポーションと上位になる、ハイデュアル・ポーションって言ってたわ。

  体力とマインドを同時に回復させる事が出来るらしくて、今日から売り始めて安くしてるからお得に買えるみたいなの」

 「へぇえ~~!それはすごいっスね...

  じゃあ、物は試しという事で買っておくっスか」

 「そうしておくといい。一筋縄でいかんのがダンジョンじゃ」 

 

 ガレスにも勧められたので、ラウルは忘れないように購入予定として

 メモを書き残す。

 安くなっているとはいえ、何故即決したのかというと予算が余っている

 からだ。

 ポイズン・ウェルミス対策として購入した特効薬が運良く手頃な値段で

 購入出来た事が理由だろう。

 

 ――――――――――――――――――――――――――――――――

 ヒュンッ! ヒュンッ!

 

 「...はぁ...」

 

 中庭でデスペレートを振るっていたアイズは鞘に収めると、呼吸を

 整えて室内へ戻ろうとした。

 しかし、花壇の縁に座っているベートの姿が目に入った。

 耳や尻尾を下ろして一目で落ち込んでいるとわかり、アイズは

 呼び掛けた。

 

 「ベートさん...?どうかしたの...?」

 「...気にすんな。大した事じゃねぇ...」

 

 そっぽを向きつつ、答えたベートにアイズは違和感を覚える。

 いつもなら口悪くどこかへ遠退かせようとするような言動を言うはず

 なのだが、そういった口振りを見せなかった。

 やはり何か大きな問題を抱えてしまっているのでは、とアイズは

 気になって2人分空けて座ると、必要以上の事を含まず問いかけた。

 

 「私で良ければ...言ってほしいです。気になるから」

 「あぁ?...大した事じゃねぇっつっただろ...」

 「でも...いつもと違う気がして...だから...」

 

 このまま続けていても、立ち去ろうとはしないと察したベートは

 深くため息をつきながら話した。

 2日前にレナから言われた自分の言葉の意味について。

 アイズは黙って話を聞き、最後に話した罵倒は傷付けるだけと

 言われた事に答える。

 

 「その人の言っている事は、あってると思います。

  それに...ベートさんが嫌われるのも、良くないですから...」

 「...はっ、雑魚が何て言おうが遠吠えにしか聞こえねぇ。

  種族のハンデがあるにしろ、結局雑魚は雑魚だ。

  お前みたいに強くなろうとしねぇから雑魚のままなんだよ」

 「...それなら、もしも皆が強かったらいいんですか?」

 「あ?」

 「モンスターにも負けないくらい強くなれば... 

  ベートさんもそうやって見下さなくなるんですか?」 

  

 その問いかけにベートは少し苛立ちながら、呆れるようにして答えた。

 

 「言っただろ?雑魚はお前みたく強くなろうとしねぇって。

  そんな都合の良い話しなんざ」

 「もしも、って私は言いました。そうだったら...どうなんですか?」

 「...何も言わねぇ。雑魚じゃねぇって認識するだけだ」

 「...そうですか」

 

 これで満足して行ってくれると思っていたベートの予想通り、アイズは

 立ち上がってどこかへ行こうとする。

 しかし、立ち去る際に言い残した言葉に耳を疑った。

 

 「ベートさん...もう少し素直になっていいと思いますよ。

  そうしたら...皆もわかってくれるはずです」

 「...は?...はぁああ!?」

 

 ベートが顔を上げた時には既にアイズの姿がなかった。

 少しだけ空いた間の内に、正しく風の如く消えたのだ。

 あの発言の意味を問い詰めようと慌てて立ち上がり、ベートは

 渡り廊下の出入口に入ると、一先ず右側へ進もうとする。

 が、視界にリーネの姿が映った時には遅かった。

 

 「げっ!?」

 「キャッ!」

 

 あまりにも至近距離だったので、ベートは回避出来ずにリーネと

 真正面からぶつかりドサっと倒れ込んだ。

 リーネが運んでいたらしき書類が宙を舞い、周囲に散らばって

 降って来る光景が奇しくもベートがリーネを押し倒しているように

 見えてしまっていた。

 

 「あ...ぁ、ぁの、ベート、さん...?」

 「っがぁ、クソッ...!...あ?」

 「...きゅう」

 「お、おい...おい!嘘だろ、勘弁してく」

 「「あぁああああああああああああああ!?」」

 

 前方から聞こえてきた叫び声に耳が先に反応してから、ベートは

 顔を前に向ける。 

 そこに居たのはエルフィとアリシアだった。

 何故叫んだのか最初はわからないでいたベートだが、2人の発言で

 漸く自分がどういった状態なのか理解する。

 

 「ベートさんがリーネを襲ってる!

  真っ昼間から堂々とリーネを食べようとしちゃってる!」

 「なななな、な、なんて破廉恥極まりない...!

  エルフィ!見てはいけません!貴女には早いです!」

 「うわ!?ちょ、ちょっと~!」

 

 騒ぎを聞きつけ、付近に居た団員達が駆けつけてきてベートがリーネを

 押し倒しているように見える状態に数人は驚き、また数人の女性団員は

 歓声を上げて何故か興奮していた。 

 流石にこれ以上はマズイと思い、ベートは黙らせようと立ち上がろうと

 するも、背後から伝わってくる冷気にも似た威圧感に悪寒が走った。

 先程までワイワイとしていた団員達もその威圧感によって、押し黙る。

 

 「...ベート?」

  

 優しい口調で名前を呼ばれたベートは振り返ろうとはしないで、

 まずはどこへどうやって逃げようかという打開策を考え、前方へ

 全速力で逃げるという手を考えた。

 それならいくしかない、と3つ数える。

 

 「(3、2、1...!)」

 

 ゴッ!

 

 「ガフ...」

 

 ほんの少しだけ動いた瞬間にベートの意識は刈り取られた。

 リヴェリアの目にも止らぬ手刀が項付近に叩き込まれたからであり、

 そのままリーネの上に倒れる。

 ギリギリの所で顔同士の衝突は免れたようだ。

 

 「ん...え?...っ、えぇぇぇぇぇぇええええ!?

  な、なな、な、何で、ベートさんがはわわわわわわわわわ!?」

 「すまないなリーネ、こいつは少し説教しなければならないな。

  失礼するぞ」

 「は、はい...?」

 

 ズルズルと裾を掴まれたままリヴェリアに引き摺られていくベートに

 団員達が思ったのは1つだった。

 お気の毒に...という同情。

 状況が読めず、呆然としているリーネにエルフィとアリシアが近寄って

 話しかける。

 

 「大丈夫でしたか、リーネ?あの破廉恥狼に何かされそうになっていたんですか?」

 「え?え?」

 「あ、もしかしてリーネの方から誘い受けしたとか?」

 「はい?」

 「そ、そんな事していけません!いいですか、リーネ!

  乙女たるもの男性を選ぶのは慎重にしなければ...!」

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