【第一部完】ダンジョンで捕食者たちと獲物を求めるのは間違っているだろうか   作:れいが

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 ...ゴ ウ ゥ ン...

 

 ...エンジンの起動音が聞こえた。

 マザー・シップが上昇していっているんだろうと思いながら、僕は

 まだ眠りに就きたいので薄く開けた瞼を瞑る

 

 ...ピピッ ピピッ ピピッ ピピッ

 

 ...起床時間に設定したアラームが鳴っている。

 今度は起きなければならないので上半身を起こす。

 眠気は抜け落ち、倦怠感も感じない。体調も万全のようだ。

 窓の外を除くと星が消えかける寸前となって朝焼けが見え始めていた。

 日光で照らされた地上の砂漠が淡い赤色に染まっていく。

 その光景を見ている中、ドアをノックする音が聞こえてきて僕は

 窓から離れるとドアを開けた。

 目の前に誰も居ないので、視線を下に向けると予想通りショーティが

 居た。

 

 『準備はいいな?降下ポッドに乗ってくれ』

 

 僕は頷いてショーティの後に続く。...歩幅が小さいのでもっと

 速く進めと言いたくなるが、ここは我慢だ。

 通路を進んで行き、降下ポッドが配備されている場所へ着くとパネルを

 操作して扉を開けてくれた。

 僕は中へと入っていき、垂直に立て並んでいる降下ポッドの1つに

 入り込んでガントレットで蓋を閉めるよう操作する。

 すると、我が主神からの通信が入って来た。

 

 『おはよう。気分はどうかしら?』

 『体調などに問題はありません。

  ...説明をお聞かせてください』

 『わかったわ。それじゃあ、まず...』

 

 目的地に到達するまでの間、僕は我が主神から説明を聞き続けた。

 不明な点があった際には質問をして詳細に教えてもらい、反対に僕へ

 我が主神が問いかけてくると、僕はそれに受け答えをする。

 

 ビビィーッ! ビビィーッ! ビビィーッ!

 

 やがて目的地周辺にまで近付いてきたらしく、降下準備を知らせる

 アラームが鳴り響いた。

 

 『幸運を祈るわ。

  名誉なき者は一族にあらず。そして名誉のために戦わぬ者に名誉はない。

  最高の名誉を掲げるために勝ちなさい』

 『...はい』

 

 通信が切れて僕は目を瞑り、アラームが収まるまで待った。

 そして、鳴り止むと手の傍にあるスイッチを指先で押し、降下ポッドの

 射出口を開かせた。 

 

 バシュウゥウッ...!

 

 僕が乗っている降下ポッドはマザー・シップの後方へと置き去りに

 されながら、後部に備えられている減速機構が展開する。

 同じ箇所に搭載されているジェットエンジンにより、落下ポイントを

 調整しながら数秒後に砂漠地帯に着地する事に成功した。

 説明された通り、しばらくは出られないので蓋が開くまで僕は

 待つ事となる。

 ...必ず僕は勝ち残って...ティオナと...

 

 ――――――――――――――――――――――――――――――――

 ロキ・ファミリアの遠征出発日。

 自室にてアイズはデスペレートの剣身に映る自身の目を見つめ、

 心構えを行なっていた。

 

 「...」

 

 鞘にデスペレートを収め、腰に引っ提げるとベッドの縁に座り

 心を静めようとする。

 

 「レフィーヤ、先に行ってるよー?」

 「あっ、はい。どうぞ!」

 

 レフィーヤも窓の外を眺めているとエルフィに呼び掛けられて自身も

 集合場所へ向かおうと深呼吸をし、気持ちを高めていた。

 外ではラウルが荷物の確認をしている最中にベートがやって来たのに

 気付く。 

 

 「...おい、アイズ達はまだ来てねえのか?」

 「まだ部屋にいるみたいっす。それと...

  ティオナさんはまだ戻って来てないっすね」

 「あぁ?...バカゾネスはどうでもいいとして、アイズの奴、飯食わねえつもりか?」

 「よかったらリーネと一緒に朝食、誘ってあげたらいいと思いますよ」

 「バッ!?んな、何でそうなんだよ!?ふざけんな!」

 「でも、実際の所アイズさんは朝食を食べてないすし...」

 「...ちっ、しょうがねえから呼びに行ってきてやる...!」

 「「お願いしまーす」」

 

 どこかベートとのやり取りに角が無くなっているのは、ある事が

 きっかけだった。

 リーネを押し倒した事案の数時間後、アイズが数人の団員達がベートの

 素行不良について話しているのを見かけた。

 身勝手な言動、他人を見下す態度などを酷く批難していた所をアイズは

 会話の中に割って入り、ベートから聞いた話を包み隠さず全て話した。

 団員達は極端に心配する心遣いが不器用なんだと各々で理解し、ベートの

 批難をアイズに謝罪した。

 それにベートの事を悪く言わなければそれでいい、とアイズは許した。

 そうして団員達はベートの不器用さを全員に知ってもらおうと、一度

 話し合いをした。

 ベートの性格上、自身の不器用な気遣いの意味をハッキリと理解して

 しまうと意地を張って逆効果となる。

 そこで出した結論は、気持ちは理解した上でやんわりとベートの言動を

 受け入れるという事であった。

 団員達は各自で周辺に居た同僚や先輩後輩にその旨を伝えていった。

 最初こそは信じられないと反対意見が上がっていたが、ベートの性格を

 踏まえ、これまでの言動を先程の極端なまでに不器用な気遣いで言って

 いたと考えた所、納得してもらえた。

 そこから枝分かれするようにベートとのやり取りの改善しようという

 話がロキ・ファミリアの団員達に行き渡った。

 最後にこれまで相談に乗っていたロキやフィン達幹部にも、その事を

 伝えると大いに感心されたという。

 そのフィンは執務室で、壁に飾られているタペストリーに片膝をついて

 祈りを捧げていた。

 

 「フィン、入るぞ。...おっと、邪魔じゃったか」

 「いや、大丈夫だよ。今終わった」

 

 立ち上がって、もう一度タペストリーに目を向ける。

 そこに描かれているのは、パルゥムにとって深く信仰されていた

 男神であるフィアナ。

 神々が降臨する以前の古の時代において、パルゥムのとある騎士団の

 騎士団長を擬人化した神。

 多くの怪物を屠り、多くの人々を救い、大いなる勇気を示し、最初で

 最後の栄光を手にしたとされるパルゥムだったとされる。 

 元々は女神だったとされていたが、いつしか正しくは騎士団長が男で

 あったので男神にすべきだという改正によりそうなったとされている。

 先が細長く尖った菱形の穂先が両端に備わっている槍を手にしており、

 周囲には6人の騎士も描かれており、それぞれ剣、弓、斧などを掲げて

 いた。

 更に、そのフィアナの頭上には空を飛ぶ船のような物に乗った天使の

 姿も描かれている。

 しかし、その姿は清く美しいとは言えず、まるで悪魔だと思えた。

 

 「準備は整った。物資を含め、不備はない」

 「あぁ、ありがとう。リヴェリア。

  皆の様子はどうだい?」

 「問題ない。しっかり体長は整えてきている。士気も上々だ。

  ...と言いたいところだが、1人は不安を抱えているようだった」

 「やっぱりか...」

 「まったく。当日になったというのに本当に戻って来んとは...

  前言撤回して馬鹿としか思えんわい」

 

 ガレスが呆れてため息をつくと、フィンとリヴェリアもつられて

 ため息をついた。

 ティオナが戻って来ていない。

 それに関して最も不安を抱えている1人とは姉であるティオネだった。

 前日の夜は早めの就寝を全員に言い渡していたのだが、日付が変わる

 直前までティオネは妹が帰って来るのを待っていたのだ。

 偶然にも空を眺めてティオネが居たのに気付いたフィンが声を掛け、

 不安なのは理解しつつも明日に備えて寝るよう伝えたのを、フィンは

 数分前の出来事のように覚えている。

 あの時に見せた、今にも泣きそうな面持ちのせいだろう。

 

 「多分、戻って来たら即行で叱り始める...

  いや、ティオナも言い訳をして啀み合うかもしれないね」

 「不思議な程、明確に思い浮かぶのう...

  まぁ、それも若さ故じゃ。ワシらとて出会った頃はのう」

 「ああ。あれだけ啀み合っていた我々が...

  今やこうして種族も関係なく、わかり合えている」

 

 3人の脳裏には同じ光景が浮かんでいた。

 かなり尖っていた。かなり短気だった。かなり互いを嫌っていた。

 それぞれが顔を見合わせず、全く違う方を向きながら無理矢理ロキに

 手を重ねさせられた思い出。

 懐かしい記憶に引かれ、ふと3人は手を前に出すと重ね合わせた。

 

 「熱き戦いを」

 「まだ見ぬ世界を」

 「一族の再興を」

 

 変わらぬ思いを告げ、互いの信頼を確かめ合った。

 

 ――――――――――――――――――――――――――――――――

 「...」

 

 着替え終えて装備も点検も完璧に確認した。

 後は集合場所へ向かうだけ、なのだが、ティオネは部屋から出ようにも

 出られなくなっていた。

 いつもなら気合を入れて騒がしく準備をしている妹の姿がなく、

 散らかっていた私物も居ない間に綺麗に仕舞って余計に狭く感じた。

 

 「...ティオナ。どこに居るのよ...」

 

 普段、叱っては反発してくると余計に怒ってばかりだった。

 今回の件でも遠征出発の当日には戻って来ると信じていた。

 しかし、それが叶わない結果となり、とうとう精神的にも耐えられなく

 なっていた。 

 数回に渡り、生存報告は聞いたがその見かけたという人物が別の

 アマゾネスだったとすれば今度こそ絶望的と考えていい。

 そんな不安が募り、ティオネは頭を抱えながら自身のベッドに座って

 妹の無事を祈った。また一緒に姉妹として楽しく過したいとも。

 そして絶対に叱りつけてやると決意した。

 

 「...行きましょうか」

 

 立ち上がったティオネはドアを勢いよく開けて、集合場所へ向かおうと

 したが目の前にフィンが居るのに気付き慌てて立ち止まる。

 

 「あ、だ、団長?どうかしたんですか?

  もうすぐ集合時間じゃ...」

 「ああ。いや、君が不安そうだと聞いてね。

  ...ただ、もうその心配もなさそうかな?」

 「...はい、もう大丈夫ですよ。

  戻って来たらこってり叱りつけてやりますから」

 「はははっ...それが君達らしい、のかな」

 

 微笑みを浮かべるフィンにときめき、ティオネは抱きつこうとするも

 華麗に避けられて壁に激突するのだった。

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