【第一部完】ダンジョンで捕食者たちと獲物を求めるのは間違っているだろうか 作:れいが
バベル前の中央広場にロキ・ファミリアの団員達が集合していた。
以前の打ち合わせで連れて行く事を約束したため、椿を筆頭に
ヘファイストス・ファミリアのスミス達も来ており、椿はベートに
フロスヴィルトを早急に修理させた事に文句をつけ始めている。
フィンに近寄って来たのはライラだ。
パルゥム同士の腐れ縁として、見送りに来たようだ。
「よっ、【剣姫】。調子はどうだ?」
「...あ、ルルネさん?どうしてここに?」
「遠征の見送り、かな。前に助けられたから...
これ差し入れな。1つ食べるだけで1日は腹持ちするぞ」
変なものは入っていない、と付け加えるルルネにアイズはそれを
感謝の意を伝えながら受け取ろうとする。
掌に乗せた際、死角になるように手で隠しながら、小さなクリスタルを
アクセサリーとしたネックレスを渡した。
見送りに来る少し前、フェルズからお守りと称してアイズに渡すように
と、預かった代物である。
曰く、深層を把握するための目となるそうだ。
「これ...お守りってやつで受け取ってもらえるか?
59階層に行く時、何かあっても大丈夫なようにさ」
「...うん。わかった」
「ありがと。じゃあ、帰ってきたら酒飲もうぜ?」
「あ...私、お酒は...」
アイズが言い終える前にルルネは、その場からそそくさと離れて
行った。
禁酒を命じられているという事を伝えられなかったアイズは落ち込み
ながらも、受け取ったネックレスを無くさないようポケットに仕舞う。
アイズとルルネの会話を遠目に見ていたレフィーヤの元へ、特訓に
協力してくれたフィルヴィスが見送りに来てくれていた。
「レフィーヤ、これまでの成果を存分に発揮するんだぞ。
そして...必ず還って来い。いいな?」
「...はい!」
一方、遅れて向かって来ないかとティオナを探すティオネの元には
アミッドとアーディがやってきた。
アミッドの手には箱、アーディは包みを持っている。
「ハイ・マジックポーション。それからハイ・ポーションとエリクサーも少々入っています。
皆様でお分けください」
「私からもこれ。きっと役立つから使ってね」
「アミッド、アーディ...こんなに沢山、悪いわよ」
「いいえ。オラリオ中がこの遠征の成功を願っています。
私もその1人なので、これだけの事しか出来ませんが...
どうかご武運を」
「ティオナが無事である事も...祈ってるよ」
「...ありがとう。何かあったらありがたく使わせてもらうわ」
そう答えながら様々な回復薬の入った箱と包みを受け取る。
受け取ったと同時に、周囲の団員達がフィン達の前へ集合し始めたのに
気付くと、再度アミッドとアーディに感謝してティオネは向かった。
アミッドはお辞儀をし、アーディは手を振りながら見送るのだった。
――――――――――――――――――――――――――――――――
その頃、黄昏の館ではロキが窓際に座って外を眺めていた。
これから向かう先に眷族達が何を見つけ、何を知るのか。
それは神でも知り得ない運命であり、ロキも知りたい事であった。
「さて、どうなるかなー...」
コンコンッ
「ん?...入ってええでー」
ロキが発した返事の後、ドアが開く。
しかし、誰かが入って来たようには見えないのだが、開いたドアは
独りでに閉まった。
ロキは首を傾げ、窓際から降りてドアに近付こうとする。
しかし、途中で何かフカフカと柔らかいモノが顔面にぶつかり、
更にその弾力で尻餅を付いてしまった。
「な、何や...?(このたわわんとした感触、どっかで...?)」
「ご、ごめんロキ!大丈夫?」
「へ?...その声、ティオナか!?何や見えへんのやけど...
ん?どこ居るん?」
「すぐ目の前」
ヴゥウゥン...
ロキは姿を見せたティオナの顔を見て、喜びの笑みを浮かべる。
が、視線を下に向けた途端、細めている目を見開いて絶句する。
片膝をついて屈んでいる状態になり、もう片方の膝が胸を押し上げて
その豊満さが強調されていた。
思考が停止していたロキはまず始めに、ティオナではなく別人なの
ではという考えが過ぎるが、体こそ変わっているものの顔つきこそは
紛う事なきティオナ本人であると自身が納得しかけている。
だが、どうにも以前までの姿が脳裏かは離れず、確信に変わらない。
「...えっと、ビックリしてる所悪いんだけど...
ロキ、今すぐにステイタスの更新をしてくれる?」
「...あ、お、おう。じゃあ、そこに座ってもろて...」
困惑しつつも何とか理性を保ち、ティオナに座るよう指示をして
ロキは立ち上がる。
立ち上がったものの、酔ってもいないに衝撃的な出来事に足腰に
力が入らず千鳥足となりながら机の引き出しから針を取り出し、荷物を
テーブルに置いて座ったティオナの背後に回った。
指先に針を刺し、少量の血を背中に垂らすと淡い光が背中に灯り、
ロキ・ファミリアのエンブレムが出現する。
ロキが指先を少し動かすと眩く発光し、ヒエログリフで書かれている
レベル、基本アビリティ、発展アビリティ、魔法、スキルなどが
浮かび上がるとステイタスが更新されていった。
「...お?お?おぉん?」
だが、ロキは驚きを隠せなかった。
何故なら、5項目からなる基本アビリティ全ての数値がこれまで
見た事もない程の早さで繰り上がっていくからだ。
一度更新を始めれば、数値が上がり終えるまで止らない。
なので、ロキは未だに数値が上昇していく事に戸惑うが、主神として
最後まで見るべきだと腹を括り、更新されていく数値を見続けた。
そして、30分が過ぎた頃にようやく止った。その結果は...
「(...熟練度...トータル34950オーバー...?)」
等級は全てSという文字が6つ並んでおり、正しくデタラメと思える
上昇具合であった。
事前にネフテュスから熟練度がすごい上がっているかも、と伝えられて
いたものの、ロキは卒倒するのを堪えながら頭を抱えて内心で叫ぶ。
「(上がり過ぎやろぉぉぉおおおおおおおお~~~~~~~~~!?
何なんやこれ!?何なんやこれ!?何なんやこれ!?
ちょ待って?これ、ランクアップして6になるだけやんな?
そのまま10いかんよな?あははははは...それはないか)」
「...ロキ?まだ更新してるの?」
「あ。あー終わったで?多分、ランクアップ出来るみたいやけど...
する?してみる?やってもまうか?」
「うん。お願い」
「おし来た!」
「(...っか~!もうちょい待ってほしい言うてほしかったなぁ)」
固唾を飲んで覚悟を決めると、再度針を刺すと指先に血を滲ませ、
ティオナの背中に当てた。
3秒程度でランクアップが完了し、改めてステイタスを確認する。
[Tiona Hiryute
LV 50
STR SSSSS 2022
VIT SSSSS 2018
DEX SSSSS 1990
AGI SSSSS 2010
MAG SSSSS 1987
ABILITY
:Knuckle :SS
:Diving :S
:Guard Anomaly :S
:Clash :S
:Hunter :S
:Healing :S
:Indomitable :SS
:Runner :S
:Eyesight :S
:Insight :S
MAGIC:Die set down
SKILL
:Berserk
:Intense Heat
:Predator Realis
:Kong Physical ]
「...うぅーん」
「え?...ロキ!?」
今度こそ卒倒したロキをティオナは慌てて介護しようと、抱き抱えて
ソファに寝かせた。
耳元で呼び掛けるも、全く反応が返って来ない。
オロオロと狼狽するティオナだが、助けを呼ぼうにも自分がここに
居る事がバレてしまえば混乱を招いてしまうと思い、必死に考える。
すると、ハッと荷物の中に入っている竹筒を取り出す。
穴を塞いでいる木片を引き抜き、ロキの顔の前でゆっくりを揺らし、
その穴から匂いを漂わせた。
それは、ダンジョン内でゼノス達と飲んだ酒であった。
「...ん?」
「あ、よかったぁ。ロキ、ビックリさせないでよ~!」
「え?あ、あれ?何でウチ寝かされてるん?」
「何でも何も、私のランクアップに驚き過ぎて意識が飛んでたんだよ。
...どれくらい、上がってたの?」
「...50や。嘘やないで?
魔法と新しい発展アビリティが6つ、スキルは2つ発現しとる。
見た感じどっちもレアっぽな。特に...あぁ、いや何でもないわ。
とりあえずレアなのも含めて全部習得させといたで?
...もうホンマ...どういうこっちゃねん」
気を失う直前、意地で更新したロキは両目の上に左腕を乗せて
不可解なティオナの成長具合に頭痛が起きそうになっていた。
3日後のデナトゥスではランクアップしたアイズの話を自慢しようと
思っていたが、前代未聞のレベル50というランクアップをたったの
2週間で成し遂げたのだから言い訳を考えなければならないとロキは
考えたようだ。
しかし、ふとネフテュスに弁護してもらえば大丈夫では?と考えたが、
もしも助け船を出してくれそうになければ、自分自身で切り抜けるしかない。
「(...まっ、それはウチがやる事であってティオナは悪くないもんな。
強うなろうと頑張った成果やもんな、これは)」
「50...それで、また捕食者と勝負しても...
太刀打ち出来るかな...?」
「大丈夫やって。というかフレイヤの子供もワンパンやろ...
というか、ホンマに捕食者とやり合ったんやな...?」
「うん、ボコボコにされちゃったけどね。あはは...」
ふと、ロキは違和感を覚えた。随分大人しめな言動になっていると。
姉やベートからは馬鹿と称されている程、天真爛漫とした年相応の
少女だったが、今はどうだろか?
成長した体に合わせ、精神も大人になっているのでは?と思う程、
違和感があるのだ。
しかし、そもそもここまで成長した理由が何なのか問いかけようと
ロキはしたがティオナはあっ!と、声を上げて立ち上がる。
「ごめん、ロキ!もう行かなくちゃ!」
「え?あ、み、皆と合流するん?」
「それもあるけど...その前に行く所があるから。
あ、そうそうこれ!結構美味しいから、飲んでみて?」
と言われ、上半身を起こしたロキは酒の入った竹筒を受け取る。
竹の中一杯に入っているようで、ズッシリとした重みを感じた。
「お、おう...おおきにな」
「じゃあ、行ってきまーす!」
そうして更新されたステイタスを書き記した羊皮紙を手にティオナは
シフターで姿を消し、勢いよくドアを開けてどこかへ行ってしまった。
残されたロキは呆然としたままでいたが、受け取った竹筒を見つめて
鼻を近付ける。
鼻腔をくすぐる竹の匂いと混ざった酒の香りに口内で溢れる涎を
飲み込み、口に付けて一口飲む。
「んぐ...っかぁ~!こら美味いわぁ...!
え?これがダンジョンにあるん?...マジかいな...」
――――――――――――――――――――――――――――――――
誰も居ない中庭に辿り着き、ティオナは以前と同じ方法で手を鳴らし、
合図を出す。
すると、ドロップ・シップの後部ハッチ部分だけが露わになって
開いていくとすぐに乗り込んだ。
ティオナが乗り込んだと確認され、後部ハッチは景色と同化し見えなく
なる。
スカーに案内されたティオナはコックピットまで移動すると、
ネフテュスに話しかけられた。
「ステイタスの更新はどうだったのかしら?」
「もうロキが倒れちゃうくらいすごくなってたみたいだよ。
お酒の匂いで何とか目が覚めたけど...
「ふっふふふふふ...それは見てみたかったわねぇ。ちょっと残念」
まぁ...それはそれとして、早速向かいましょうか」
そう指示を出すと、スカーは操縦席に座り直してドロップ・シップを
飛行させる。
「ところで、どこに向かって何を見るの?」
「向かう先はカイオス砂漠で...
貴女には見届けてもらいたい儀式があるのよ」
「儀式...?」
「ええ。...きっと、貴女のためにもなるはずだわ」
その言葉の意味に理解が及ばず、ティオナは首を傾げるだけだった。
ドロップ・シップはオラリオから遠離って行き、南東方向へと向かって
いく。
ホントは10程度くらいにしようかと思いましたが、キングコングとあれだけ特訓して10だけってそりゃ無いわと思い50にしました。
魔法とレアスキルとレアアビリディの解説はデナトゥス回でやります。